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2011-03-11

エピソード「先輩、七咲家の初旅行に行きましょう 2日目」(ノベル)

「先輩」
「……」
「先輩!」
「……」
「先輩、起きて下さい」
「……」
「先輩!!」
「むにゃむにゃ……あ~い」
「何です?」

ぽよっ。

「えっ!?」
「柔らかくて温か~い」

パーーーーーン。

「いてえええええ」
「もう!いい加減目を覚まして下さい!」
「え?あれ?逢。……おはよう」
「……」
「ん?怒ってる?」
「当然です」
「……何で?」
「……呆れました。寝ぼけているとはいえ、いきなり胸を触るなんて……」
「あれ?僕そんなことした?」
「しました!」
「……覚えてない」
「……」

どうやら僕は起こしてくれた逢の胸を無意識のうちに触り、平手打ちされたようだ。
今の時間は……えっと……

「何だ、まだ午前7時じゃないか。もう少し寝かせてくれ」
「……はぁ。呆れました」
「何を?」
「7時半から朝食だからその前に先輩を起こして朝風呂に行ってもらおうと思ったのに」
「朝風呂?そっか」
「……」

寝ぼけ眼で逢を見つめる。
逢は頭にタオルを被っていて、何だか温泉のいい匂いがする。

「あれ?逢はもう行って来たのか」
「はい。先輩が起きなかったので、行って来ました」
「……」
「何ですか?まだ何か?」
「どうして髪洗ったの?昨日入ったから今朝は浸かるだけでいいはずなのに……」
「……」
「逢?」
「……まったく。誰のせいだと思っているんですか?」
「誰って……僕は寝てたし……さては祈におしっこかけられた……とか?」
「……違います!昨日の深夜です」
「昨日の深夜?」
「本当に何も覚えていないんですか?先輩にかけられました」
「えっ??僕がかけたの??おしっこを??そ、そんな……僕は違うぞ」

でも……逢におしっこをかけるとか……一度くらいやってみたい気もするけど……
いやいや!やめよう!!殺される!!

「はい??先輩、何を勘違いしているんですか?」
「逢こそ何言ってるんだ?」
「確かに先輩にかけられましたが……おしっこではなくて……その……」
「う・ん・……?」
「いえ!それでもなくて……」
「??」

逢が僕の股間をじっと見つめる。
て、照れるじゃないか!!
はっ!!そっか!!ようやく思い出したぞ!!
股間から出るおしっこ以外のものと言えば!!

「分かった!!ようやく思い出したよ!!あれだろ?」
「はい。あ、言わなくていいです。分かってもらえれば」
「あれだ……昨日の深夜……
「!」
逢と……
「!!」
エッ……
蚊!!

バシーーーーーン!!!!!

ぬおおおおおおおおおお!!!!!
「……あ、すみません。先輩の頬に蚊が止まったような気がして……気のせいでした」
「逢いいいいい、何てことを!!」
「だから……謝ってるじゃないですか」
「うう……痛い」
「ここの温泉の効能、痛みにも効くらしいですよ。早く行って来て下さい」
「う……分かった」
まったく。あんな恥ずかしいことを大声で言うなんて……
「どうかした?」
「ああ、いえ。寝ぼけて溺れないように気を付けて下さいね。私助けに行けませんので」
「分かってる。てか今ので強烈に目が覚めたから大丈夫」
「ならよかったです。クスッ」
「くそう……」

はぁ……朝っぱらから逢に二発も平手打ちされるなんて……。
しかも最後のはかなり強烈だった!!まだヒリヒリする!!
やっぱり……朝っぱらからあんな卑猥なことを考えるから罰が当たったんだな。
やれやれ。


そして僕が温泉戻って来た時、ちょうど配膳の時間で、逢と一緒に朝食をとった。

「いてて……」
「?」
「あれ相当強烈だったぞ。逢にあんな力があったなんて」
「すみません。突然現れた蚊にびっくりしてしまって、つい思わず……」
「もういいよ。僕が悪かったよ。あんな恥ずかしいことを大声で言おうとしたから」
「え?」
「蚊って言うのはただのハッタリ。本当は大声で言われたくないことを隠すために……」
「何だ……分かっていたんですね」
「うん。冷静になったら気付いた」
「……」
「温泉の効能が痛みだって言うから温泉の湯をかけたら余計ヒリヒリしたよ……」
「……すみません」
「あ……だからもういいって」
「いえ、本当にすみません」

逢が心配して僕の隣に移動した。
僕の痛む頬を優しくなでる。
しかし、僕は敢えて逢が伸ばしている手を戻させて、そっぽを向く。

「あ……いや、いいんだ。昨日あんないい思いをさせてもらったし、さっきだって……。きっと罰が当たったんだ」
「先輩……」
「あ、ほら。せっかくの温かいお味噌汁が冷めちゃうから早く食べないと」
「……はい」

逢が席に戻る。

まずいな……この微妙な空気を何とかしないと。
元はといえば僕のせいなんだ。
逢が起こしてくれてもちっとも起きないし、寝ぼけて逢の胸を触るし、言っちゃいけないことを言っちゃうし。

「あ、そうだ」
「ん?」
「祈のことなんだけど」
「祈の?何ですか?」
「その……将来どんな子に育ってほしいとかある?」
「え?どういう意味ですか?」
「ほら、何か習い事をさせたいとか。そういうのってもう今の段階から始めた方が祈のためになるだろうし」
「習い事ですか。そうですね……私は水泳しかやっていなかったので、水泳くらいしか思い付きませんね」
「水泳か。じゃあ将来は逢みたいな水泳の選手に育てたい?」
「いえ、別に。私はたまたま水泳がずっと続いただけです。それに、先輩が応援してくれたので続きました」
「そ、そうだったな」
「そう言う先輩は何か希望とかあるんですか?」
「僕は……特に考えてないな。僕の職場の先輩に、娘に3歳の時からピアノを習わせているって人もいるけどね」
「ピアノですか。確かに将来ピアニストになるには赤ん坊の時から始めさせた方がいいって聞きますからね」
「うん。習い事はなるべく早い方がいいからね」
「まあ、そうですけどね。でも、将来どんな仕事に就きたいかはこの子次第ですね」
「うん。この子の人生だ。どんな人生にしたいかはこの子自身に決めさせよう。僕ら親の出る幕じゃない」
「はい。その通りです。この子が将来迷ったり、道を踏み外しそうになったら私たち親がアドバイスしましょう」
「うん。任せたよ、逢」
「え?どうして私に任せるんですか?」
「だって……女の子だから。女の子の気持ちなんて男の僕には……」
「その女の子をうまく口説いて妻にした男の人がよく言いますよ……」
「えっ??それって誰のことだよ……」
「とぼけても無駄です」
「う……」
「私よりも案外先輩の方が得意なんじゃないですか?相談に乗ってあげること」
「そうかな?」
「そうです。私なんて何度先輩の言葉に泣かされたことか……」
「う……照れるなぁ」
「なるべく私がこの子の相談に乗りますが……いざという時は先輩、お願いします」
「……分かった。出来る限り頑張ってみるよ」
「はい。ふふっ」
「……」

こんな話題でよかったのか正直不安だったけど、最終的に逢を笑わせることができたし、まあいいか。
これから逢と二人で祈を立派に育てていく……そのための目標をちょっとずつ考えていかないとな。
お互い好きな人の子供だからこそ、優秀な子に育てたい……。
僕と逢、二人の力を合わせて……祈を幼い今のうちからちょっとずつ将来立派な子になるように育てていこう!

「逢」
「はい。何ですか?」
「この後どこか行きたいとこある?」
「そうですね……森林浴とかどうですか?」
「森林浴か……」
「夕方には帰りたいので、午前中森林浴しませんか?暑いので」
「そっか。森林浴は涼しいもんな。それに逢は静かな所が好きだっけ?」
「はい」
「じゃあ、森林浴に行こうか」
「ええ。そうしましょう」


朝飯を食べ終わり、チェックアウトを済ませ、荷物をフロントに預け、いざ向かうは森林。
逢の希望で森林をぶらぶら歩くことになった。
僕も逢もショルダーバッグを持ち、逢が僕の左隣でベビーカーを押す。

「森林は静かで涼しいのはいいんだけど、虫が多いのが欠点だな」
「虫?」
「ほら、森林って虫がよく大量に止まっているから」
「まあ、虫の住処ですからね」
「虫除けスプレーなんて持ってないよね?」
「ええ。持っていませんよ。まさか森林浴をするとは思わなかったので」
「だよな。僕も驚きだよ。都会と違ってこんなに自然が残っているなんて」
「もしかして……先輩は虫が恐いとか?」
「ば、馬鹿を言っちゃあいけない。僕が虫が恐いわけが……」
「そうですか?」
「う、うん」
「じゃあこの前目の周りを蚊に刺されて蚊を恐がっていたのは?」
「あ、いや、あれは恐いとかじゃなくてただ蚊を憎んでいただけだ」
「そうですか?本当に?」
「そ、そうだ」

その時だった。

ブーン。

僕のすぐ耳元で虫の羽音が聞こえた!!

「うわ!」

僕は咄嗟に耳を塞いで目を閉じて身体が縮こまった。

「ふふっ。ほら、やっぱり恐いんですよね?」
「う……今のはただびっくりしただけだ!!恐かったわけじゃない」
「クスッ」
「そう言う逢こそどうなんだ?僕を馬鹿にしていられるのも今のうちだぞ」
「私は……別に」
「ふ~ん」
「な、何ですか?」
「そっか。そうなんだ……」
「う……」

そしてまた……

ブーン。

今度は逢のすぐ耳元で!!

「きゃっ!」

逢も咄嗟に僕と同じ反応をした。

「ほーら、逢も同じじゃないか」
「う……先輩」
「僕を馬鹿に出来ないぞ。お互い様だな」
「……」

僕は赤面している逢の右手にそっと左手を乗せた。

「あ……」
「さ、早く行こう。虫は付き物だから仕方ないって。それよりもこの大自然を堪能しよう」
「そうですね」

僕と逢は気を取り直して森林浴を続ける。
輝日東ならこのくらいの自然は普通だろうけど、今住んでいる都会には結構珍しいくらいだ。
背の高い木々が覆い被さって木陰を作ってくれているおかげで涼しい。
たまに木々や葉の間から吹く風がとても心地良く感じられる。
また風によって葉が擦れる音がとても新鮮で心地良い。
そんな大自然を体感して、僕は思った。

「あのさ」
「……はい」
「祈も将来この大自然みたいな子に育ってくれたらいいなあって今思った」
「……先輩もですか?」
「もしかして逢も同じこと考えてた?」
「そうかもしれませんね」
「……この大木みたいに大きくて立派な身体に育って」
「……この葉っぱみたいに人々に安らぎを与える」
「……人々は安らぎを求めて祈の周りに寄って来る」
「……多くの人々を幸せにしてあげられる子」
「そんな子に育ってほしいよな」
「ええ、私もそう思います」
「逢……これからが本当に大変だろうけど、一緒に頑張ろうな。決して逢だけに無理はさせないから」
「はい!先輩もあまり無理をしないで下さいね」
「分かってる」
「……」

逢はベビーカーの中から祈を抱き上げた。

「ほら、祈。感じるか?これが森林浴だぞ。あの木みたいに立派に育ってくれよ」

そよ風がそっと祈の頬をなでる。
心なしか祈がそよ風を感じて少し微笑んだ。
きっと感じているのだろう。
もっともっとこの大自然を祈にも堪能してほしい。

その後、すれ違った人に森林をバックに家族写真を撮ってもらい、しばらく森林浴を堪能した後、帰路に着いた。


帰りの電車の中で、祈はともかく、逢まで爆睡した。
逢も色々あって疲れただろうからな。
僕も本当は爆睡したかったけど、逢と祈を見守るために起きていることにした。
逢を起こさないように僕はそっと逢の頭をなでた。

「お疲れ」

逢のかわいい寝顔を見ていると何だか心底ホッとする。
これからが本当に大変なんだ。
子供が学校に通うようになってから成人するまでが長い。
せめて今は逢をゆっくり休ませてあげよう。

あまり乗客がいなくて静かな車内で逢と祈が静かに眠っている。
まるでさっきの森林みたいに静かだ。
静か過ぎて逆に退屈だったけど、適当に時間を潰しながら帰路を目指した。
そうそう、おうちに帰るまでが旅行……だな。


……それからどれくらい時間が経ったのだろう。

「先輩」
「……」
「先輩!」
「……ん?ああ、逢」
「ほら、そろそろ着きますよ」
「あ、うん……あれ?」
「どうかしたんですか?」
「僕……寝てた?」
「はい。寝顔……かわいかったですよ」
「え?あああああ!」
「きゃっ!……び、びっくりしました!い、いきなり大声出さないで下さい」
「ご、ごめん。寝ないつもりでいたから」
「どうして謝るんです?」
「だって、僕まで寝ちゃったら祈は……」
「心配要りません。私がちゃんと見ていましたから。薄目を開けて先輩が眠りに落ちるのを」
「え?」
「ほら、降りますよ」
「あ、ああ」

「薄目を開けて……って、どういうこと?」
「私も先輩も寝ちゃったら祈が危ないので。先輩と交代で起きました」
「え?だったら……起きたなら教えてくれよ。僕は何のために睡魔と戦ったのか……」
「すみません。先輩が眠りに落ちるタイミングで偶然目が覚めたので」
「……」

その時、ちょうど人目につきにくい場所にさしかかった。

「ん?」

逢が僕の手首を掴んで僕を止めた。そして……

「逢……ん……」
「んん……」
「ん!?」
「はぁ……ありがとうございます。わざわざ気を遣って下さったんですよね?」
「あ、ああ。子供を守るのは当然だから。僕刑事だし」
「今夜、何がいいですか?」
「え?作るの?」
「はい」
「いや、今夜くらい外食にしようよ。逢、疲れているだろうから」
「でも、昨日からずっと外食ですよ?」
「あ、そうだ、思い出した!この近所にうまいラーメン屋があるんだ!一度逢を連れて行きたかった」
「え?」
「ほら、行くぞ」
「……はい!」

今回の七咲家の初旅行は祈の世話で疲れているであろう逢を気遣って僕が考えた旅行だ。
金曜日、土曜日と有給休暇をもらい、逢に精一杯羽を伸ばしてもらうのが目的だ。
だから、最後の最後まで逢に楽をさせてあげたい。
さっきの帰りの電車の中で疲れて爆睡していた逢を見ていたらなおさらそう思った。
ま、僕も逢のことは言えないけどな。僕も正直疲れた。
だから、旅の最後も二人して精一杯楽をしようと思う!!

「あ……このラーメン美味しいですね!」
「だろ!それ食べればスタミナがつくと思う!」
「先輩、ありがとうございます」
「……」
「ん?どうかしたんですか?私の顔に何か?」
「い、いや、別に」
「ん?」

幸せそうにラーメンを頬張っている逢の横顔を見て、僕は何だか嬉しくなった。
思わず見つめてしまった。

ちなみに次の日は日曜日だ。
七咲家の初旅行から帰った三人は……
この旅を締めくくるかのように……
それぞれ幸せそうな寝顔で……
幸せな夢を見ながら……
精一杯休みましたとさ。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、七咲家の初旅行に行きましょう」(ノベル)
END


最近なかなかブログを更新出来なくてすみません。
特に七咲逢SSは昨年12月からまったく更新していませんでした。
なかなかモチベーションが上がらなかったのと、今回のような長編を考えていたので。
普通の旅行話にちょっと18禁要素を加えた長編として今作がようやく完成しました。
今後は今以上に忙しくなって、もしかしたらSSをまったく更新出来なくなる可能性もありますが……
精一杯努力していきたいと思いますので、今後とも七咲逢SSをよろしくお願いします!!

僕の代表作であり自信作でもある「七咲アフターストーリー」は終わらない!!
永久不滅です!!(キリッ
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