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2010-05-02

第3話「先輩、また明日から頑張りましょう」

キーンコーンカーンコーン
梅原「いよっ、大将!やっとお待ちかねの昼休みだなぁ!」
橘「ああ」
梅原「……また、校舎裏の七咲の所へ行くのか?」
橘「ああ」
梅原「そっか。んで、お前何でそんなに元気なさそうなんだ?」
梅原「勉強させられているからか?」
橘「それもあるけど……ちょっと喉の調子がな……」
梅原「おいおい風邪か?みんなに移すなよ……受験期だし。ま、俺は受験しないわけだがな」
橘「ああ、気をつけるよ」
梅原「早く治すんだぞ?んじゃあな!」
橘「おぅ」

橘「お待たせ」
七咲「いえ。私も今来たところです」
橘「じゃあ食べようか」
七咲「はい。召し上がれっ♪」
橘「……」
七咲「どう……ですか?」
橘「うまい!このチャーハン、最高にうまいよ」
七咲「そうですか?それならよかったです」
橘「七咲はいいお嫁さんになるよ!」
七咲「えっ?」
橘「料理が上手だからさ、きっと喜んでもらえるよ」
七咲「あ、ありがとうございます……」
照れる七咲……しかし、どこかがっかりした表情だ。
橘「うん、おいしい!」
七咲「……」
七咲「あ、あの、先輩?」
橘「うん?」
七咲「そういえば最近勉強ばかりでまったくデートしていませんね」
橘「ああ、そういえばそうだったな」
橘「でも……僕はあんな低い成績だから、浮かれていられないよ」
七咲「でも、勉強には息抜きだって必要ですよ」
橘「そりゃあそうだけどさ、七咲は部活で忙しいんだろ?」
七咲「いえ……そうでもないんです」
橘「え?」
七咲「今週日曜日は空いてます」
橘「本当に?」
七咲「はい。それで先輩とデートでもしようかなと考えていました」
橘「やったー。それで……場所と時間は?」
七咲「それが……まだ決めていません」
橘「じゃあ、僕に任せて」
七咲「はい。わかりました。楽しみにしていますね」
キーンコーンカーンコーン
橘「まずい!予鈴が鳴ってる!早く食べ終わらないと!」
七咲「はい!」
こうして、七咲といつも通りのお昼休みを過ごした。
今週日曜日が楽しみだなぁ!

そしてデート当日
橘(駅前に朝10時集合。よし、少し早く着いたぞ)
橘(うう……それにしても喉がこの前よりも痛いぞ!)
橘(本当は安静にしていた方がいいんだろうけど、楽しそうな七咲を見てるとな……)
七咲「先輩、お待たせしました」
橘「おはよう」
七咲「おはようございます。それで……今日はどこに行くんです?」
橘「今までのデートコースを一通り回ってみる……なんてどうだ?」
七咲「今までの?」
橘「そう。去年のクリスマス前に行った水族館・砂浜・ファミレス……」
橘「それからクリスマスに行った温泉」
七咲「あ、それでこんな早い集合時間なんですか?」
橘「そう。全部回りきれるか不安だったからね」
七咲「では、ここでこうしているのも時間の無駄ですし、行きましょうか」
橘「うん」

橘「水族館に到着。中に入るよ」
七咲「はい」

橘「綺麗だな」
七咲「はい。あ、先輩、見てください!」
橘「うん?」
七咲「新たな魚がいますよ。前回来たときにはいませんでした」
橘「あ、本当だ。ずいぶん変わったなぁ」
橘「この魚、泳ぎ方がかっこいいよな。なんというか、キレがあるというか」
七咲「本当ですね!」
橘「まるで七咲みたいだ」
七咲「え?」
橘「前に一度、七咲の水泳の練習を見に行ったことがあっただろ?」
七咲「はい」
橘「七咲のターンってすごくキレがあるんだよなー」
橘「この魚、何もないところでクルッてターンするだろ?」
橘「それが七咲のターンと重なって見えてすごくかっこいいと思うんだ」
七咲「そう……ですか。ありがとうございます」
僕は七咲に正直な気持ちを伝えてあげた。
それを聞いた七咲は少し照れているようだ。
七咲「次、行きましょうか」
橘「ああ」
……
七咲「先輩、見てください!ペンギンです!……かわいいですね!」
橘「ああ。……そういえば、七咲が水泳を始めた理由もペンギンだったよな」
七咲「えっ?」
橘「ほら、去年のクリスマス前に僕と梅原と七咲の3人でクリスマスを中止するって話してただろ?」
七咲「ええ。覚えています」
橘「あの後、僕が七咲に身体と精神を鍛える方法を聞いたよな」
七咲「あ、思い出しました!確かその時に私は水泳で鍛えたと答えました」
七咲「水泳を始めた理由が、病弱な身体を鍛えるためには水泳がいいとお医者さんに勧められたんです」
七咲「最初は嫌々で始めました」
七咲「しかし、スイミングスクールの入り口にある巨大なペンギンの銅像に会うのが楽しくって……」
橘「……続けられたんだよな?」
七咲「はい」
橘「もしかして……だけど、その頃から七咲はペンギンに憧れていたんじゃないかな」
橘「ペンギンみたいに自由に泳ぎ回りたいって、思ってたんじゃないかな」
七咲「そう……かもしれませんね」
橘「そしてその願いは徐々に叶ってきている」
七咲「はい」
橘「……」
七咲「……」
ペンギンの水槽の前で、僕と七咲は付き合い出す前の思い出話に耽っている……
二人はしばし無言のままペンギンの水槽を眺める……
そこにはものすごく穏やかでゆっくりと流れる時間があった……
二人が積み重ねてきた年月がそこには確かに存在した……
ペンギンの水槽から離れ、水族館内を一通り見回した僕と七咲は次の目的地・砂浜へと向かった。

橘「そういえばお腹減ったなぁ。もう1時だしなぁ……」
七咲「では、潮風を感じながらのお弁当タイムとしましょうか」
橘「お弁当作って来てくれたの?」
七咲「はい。当然です。先輩のためならいくらでも作りますよ」
橘「さすが、七咲!」
七咲「いえ、それほどでも……。では、ピクニックシートを広げますね」
橘「あ、僕、手伝うよ」
波打ち際より10mほど離れた場所にピクニックシートを広げ……
その上に僕と七咲が座り、その間に七咲が作った豪華なお弁当が並ぶ。
橘「あ、これは!」
おかずの中にカニ焼売や唐揚げがある。
七咲「以前、先輩と学校の昼休みにお弁当交換をしたことがあったじゃないですか」
橘「うん。七咲のエビ焼売と僕のカニ焼売、七咲のチャーハンと僕の唐揚げ」
七咲「あの後、作り方を調べて、カニ焼売と唐揚げを作れるようになったんです」
橘「じゃあ、ちょっと食べてみるね。まずはカニ焼売から」
七咲「どうぞ」
橘「……」
七咲「どうです?」
橘「おいしい!あの時食べたのよりもおいしいじゃないか!」
七咲「ええ。ちょっと隠し味を使ってみたんです」
橘「へぇ……じゃあ、唐揚げを食べてみるね」
七咲「どうぞ」
橘「……」
七咲「どうです?」
橘「これもおいしいじゃないか!さすが七咲!」
七咲「い、いえ……ちょっと隠し味を使ってみただけですよ」
橘「いや、それでも七咲の手作り料理にはいつもびっくりさせられる!」
七咲「……」
すっかり照れてしまう七咲……一生懸命、話題を変えようとする。
七咲「あ、そういえば……ここでも色々と回想しましたね」
橘「うん。七咲が勝手に僕のかっこいい思い出を台無しにしてくれちゃってさ」
七咲「まだ怒ってるんです?」
橘「当たり前だよ。夜の小学校で犬を追い払うかっこいい僕に……」
橘「美也に『1等ハワイ』って顔に落書きされた僕を勝手に重ねるんだから!」
七咲「ふふっ!何度思い出しても笑えます」
橘「笑うな!あ、でもその後七咲の腹の虫が鳴き出したんだよな」
七咲「えっ……それは……」
恥ずかしそうに慌てふためく七咲。
橘「僕のかっこいい思い出を台無しにしてくれたしかえしだ!」
七咲「もう……しかたない先輩ですね」
七咲「……あ、先輩。じっとしててください」
橘「う、うん」
ペロッ。
七咲が僕の両肩に軽く両手を乗せ、まるでキスをするような体勢で……
目を瞑って自分の口を僕の口に近づけてきて、軽く僕の口周りをなめる。
七咲の舌が触れた瞬間、背筋がゾクッとした。
そして七咲の口から伝わってくる体温と甘い吐息に僕はとろけそうになった。
その瞬間だけ風邪による喉の痛みが取れた気がした。
七咲「先輩の口についたソース、取れましたよ」
橘「あ、ありがとう」
橘「……」
七咲「……」
その後はお互い照れくさそうに、視線をずらし、終始無言でお弁当を食べた
二人、無言になったことで、よりいっそう潮が砂浜に打ちつけてくる音が聞こえるようになった
潮風がそっと優しく二人の頬をなでる……
ああ、今日はいい天気だ。風邪引いているのに無理してデートに来た甲斐があったよ
その後、お弁当を食べ終わり、片付けを済ませ……
最後にピクニックシートを片つけようとした、そんな時だった……
ヒュー!バサッ!
七咲「きゃっ!」
橘「ああ!七咲のピクニックシートが!!ちょっと待ってて!」
七咲「あ、先輩!」
僕は、風に飛ばされる七咲のピクニックシートを無我夢中で波打ち際に向かって追いかける!
ちなみに、今のは待ちに待った神風イベントのはずだったが、
今日の七咲はスカートではなくズボンを履いている。
というわけで、ご期待に添えなくてすみませんでしたー!!
七咲「あの、先輩?誰のご期待に添えないんですか?なんで謝ってるんです?」
橘「……」
橘(悪いな、七咲。それは言えないんだ!男と男の約束……)
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……
バサッ、バサッ、バサッ……
橘(頼む!止まってくれ!僕と七咲の大事な思い出の品を奪わないでほしい!)
七咲「先輩、無理ですよ!もう辞めてください!!」
橘「くそっ!何としてでも取り返してやるー!!」
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……
バサッ、バサッ……
橘「止まったぞ!今がチャーンス!滑り込み……」
七咲「あっ!」
ザッバーーーーーーーーーーーーーーン!
橘「セーーーーーーーフ!ぐふっ」
七咲「あ、先輩!大丈夫ですか!?」
駆け寄る七咲……
橘「大丈夫だよ。ほら、この通り、しっかり掴んでいるから」
僕は、ピクニックシートを強く握っていた。大切な物を失いたくないからな。
七咲「そういう問題じゃありません!!」
七咲「先輩、こんなピクニックシートのためにずぶ濡れじゃないですか!!」
七咲「風邪引きます!もう……受験期だっていうのに一体何を考えているんですか!?」
怒る七咲。怒るのも無理ないか。僕を気遣ってくれているんだからな。
橘「こんなピクニックシート……じゃないよ。これは僕と七咲の大切な思い出の品じゃないか」
七咲「あっ」
橘「僕と七咲がここでお弁当を食べたっていう証拠の品だ」
橘「僕は、こんな大切な物をそう安々と失いたくなかったんだ」
七咲「先輩……」
橘「でも、僕ってカッコ悪いよな。挙句の果てにこのザマだもんな」
七咲「……」
橘「……僕は、どんなに背伸びして見せたってカッコ良くなんかなれないんだな」
七咲「そんなことありません!!……あ」
七咲が目を見開いたとたん、目の中に隠されていた熱い液体がこぼれ落ちた。
その涙という名の液体は七咲の頬を伝った後、僕の手の項に滴り落ちた。
橘「七咲……泣いてくれているのか。……僕って実にダメな先輩だよな」
橘「後輩の女の子を心配させるなんてな……」
七咲「先輩!」
七咲が猛烈な勢いで抱きついてくる!
七咲「橘先輩は……橘先輩は……ダメなんかじゃありません!」
七咲「思い出をちゃんと守ってくれたじゃないですか!カッコいいです!」
橘「七咲……ヘックシュッ!」
七咲「あ……先輩、早く砂浜へ上がってください」
橘「ああ」
七咲「今タオル出しますから」
橘「あ、七咲!これ、どうすればいい?泥まみれになっちゃったけど」
七咲「そうですね……じゃあ、この袋に入れてください。私が帰って洗いますので」
橘「わかった」
七咲「タオル、どうぞ」
橘「ありがとう」
七咲が取り出した、大きめのスポーツタオルで全身を拭く。
橘「これで少しはマシになったかな。……で、どうする?まだ3時だけど」
七咲「残念ですが、これでお開きにするしかありません」
七咲「こうなったのは私のせいなので、先輩を責任をもって家まで送り届けます」
橘「だから七咲は悪くないって!」
七咲「さ、先輩。立ちましょう。こんな所にいたら風邪引きますよ」
橘「ああ」
橘(まあ、すでに風邪引いているんだけどね。でも、なんだかさっきよりも喉が……)
橘(それに少しフラつくというか……)

七咲と、歩いてバス停に向かう。
七咲「先程は……ありがとうございました」
橘「……」
七咲「波の中に飛び込んでいく先輩を見て、あの日を思い出しました」
橘「ああ、放課後のプールでのことか。あの時も無我夢中だったからな」
七咲「先輩は一見抜けているように見えますが、いざという時は誰よりもカッコいいです」
橘「あ、ありがとう」
七咲の素直な気持ちを聞いて、少しうれしくなった。
七咲「先輩は、今のままで十分いいと思います」
橘「へ?」
七咲「前に、だらしない橘先輩を矯正するって言いましたよね?」
橘「う、うん」
七咲「その必要はなくなりました」
橘「え?」
七咲「私は、今のままの橘先輩が好きです。変わる必要なんてありませんよ」
橘「七咲……」
七咲「クスッ。しっかり者の橘先輩よりもだらしない橘先輩の方が私には合っている気がします」
橘「……ひどい」
七咲「こう見えても、褒めているんですよ。喜んでください」
橘「そっか。ありがとう」
橘「……」
七咲「……」
その後、バスに乗り、僕の家に着くまで会話が交わされることはなかった
それでもよかったんだ。そこには幸せな空気が確かにあった
しかし、まさかこの直後、とんでもないことが起きようなんて……誰にも予想できなかった!

七咲「それじゃ、美也ちゃん、先輩を頼んだよ」
美也「逢ちゃん、任せてよ。にししし……」
橘「だから、その笑い方は辞めろって!」
美也「いいんだもーん」
七咲「クスッ。仲の良い兄妹ですね。それじゃ、先輩、また明日」
橘「ああ。七咲も気をつけて帰れよ」
七咲「はい。では失礼します」
美也「逢ちゃん、また明日ねー!バイバーイ」
七咲「美也ちゃん、また明日!」
パッタン
橘「……さあ、美也、僕は風呂……」
七咲がドアを締めて帰ったことで安心したのか、僕はそのまま玄関で倒れた!
バタッ。
美也「にぃに?どうしたの?」
橘「……」
美也「そんなところで寝たら風邪引くよ?……にぃにってば!」
美也が僕の額にそっと手を当てる。
美也「うわわ……にぃに、すっごい熱ある!!」
美也「しっかりしてよ、にぃに!!にぃに!!」

にぃにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

第4話に続く。

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