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2010-12-06

エピソード「先輩、しっかりして下さい」(ノベル)

「その女のこと……殺してやりたいほど憎かったんだよ」
「どうして?あなたと被害者は夫婦じゃないですか。しかも中学の時から熱愛していた仲なのに」
「ふん。女なんて所詮そんなもんなんだ。あの時は大好きだったけど、最近性格変わっちまってな」
「性格が?」
「最近、無性に俺から金をせびりやがって!どうやら奴は不倫してるらしい!!!」
「不倫相手に貢ぐお金をあなたから?」
「そうさ。奴を問い質したら、俺と離婚してそいつと結婚するとかほざきやがった」
「それでついカッとなって?」
「ああ、そういうことだ。わかったか、刑事さんよぉ?悪いのは俺じゃない、その女さ。天罰だよ、これは」
「う……」


――ち、違う!!そんなの人を殺していい理由なんかじゃない!!
それに……どうして奥さんとよく話し合おうとしなかったの?
熱愛していた仲だったなら……どうして?
……それにしても先輩遅い。もう仕事終わってるはずなのに。
……
まさか!?
……
いや、あの先輩に限ってそんなことは!!

しゅう先輩と結婚してから数日経ったある日のこと。
現在、午後7時頃。
早く仕事から帰った私は夕飯の支度を終えて先輩が帰って来るのを待っていた。
二人で一緒に食べようと思い、何も食べずに待っていた。
暇だったので、今先輩がハマっているという刑事ドラマの録画を見ていた。
今回の話は中学時代から熱愛していた妻が不倫したため、カッとなった夫が妻を刺殺するという痛ましい事件。
先輩と私も高校時代から熱愛し、ついに、ついこの前夫婦になったばかり。
夫婦になる前に同棲していた時期があったけど、やっぱり先輩の帰りが遅いと不安になってしまう。

「先輩遅いなぁ。早く帰って来て下さい。じゃないとせっかくのご飯が冷めちゃいます」

――って……妻ってこんな感じでいいのかな?
私のお母さんも結婚したての頃ってこんな感じだったのかな?
同棲していた時期があったとしても、結婚の前後じゃ状況が違って、色々不安になる。
私は七咲しゅうの妻としてこの先ずっとやっていけるのだろうか。

そんなことを考えていたら玄関のドアが開く音がした。

「先輩、帰って来たのかな?」

私は先輩を出迎えるため、玄関に行った。

「先輩、お帰りなさい」
「あ、逢……た、ただいま」

ドサッ。

「えっ?」
「……」

先輩はいきなり玄関で倒れた。

「せ、先輩!どうしたんですか?しっかりして下さい!!」

私は先輩に駆け寄って先輩の前にしゃがみ込んで、先輩の両肩を両手で支えた。

「逢」
「はい」
「僕はもう……駄目かもしれない」
「えっ?はい??今何て?」
「今まで……本当に……ありがとう」
「せ、先輩!!何を……」
「……」
「と、とにかく中に入りましょう。着替えてご飯食べて下さい」
「わ、悪いな、いつも」
「いいから、早く」
「ああ」

先輩はこの世の終わりを見たようなすごく切ない顔をしていた。
全身疲れ切って弱々しい感じだった。
いったい先輩に何があったの?

……

「いただきます」
「いただきます」
「もぐもぐもぐもぐ……ごっくん。はぁ」
「もぐもぐもぐ……それで?」
「え?」
「そんなに疲れ切った顔をして……いったい今日は何があったんです?」
「あ、ああ。もぐもぐもぐ……ごっくん」
「……」
「じ、実は」
「はい」
「殺人事件の捜査に行ってたんだ」
「殺人事件ですか?」
「うん。中学時代から熱愛していた妻が不倫したため、カッとなった夫が妻を刺殺するという痛ましい事件」
「……」
「……」
「……ああ、何だ。ドラマの話ですか」
「ち、違うよ!現実現実!僕が行ったの!」
「……で?それのどこが辛かったんです?」
「事件現場で状況証拠を直接見てきたんだけど……夫の殺し方が残虐で!見てられなかったんだ」
「本物の死体を見て精神的に辛くなったってことですか?」
「うん」
「あれ?でも、先輩は刑事になってからもう1年経ってますよね?今更ですか?」
「いや、今までは警察署内の仕事が多かったんだ。殺人事件の捜査に行ったのは今回が初めてなんだ」
「そうなんですか」
「だから、初めて刺殺体を見て辛くなったんだ。しかも僕たちみたいに熱愛していた夫婦だったから尚更ね」
「同じ立場だから余計そう思ったってことですか?」
「うん」
「……」
「……」
「とりあえず」
「ん?」
「とりあえず安心して下さい」
「え?何を?」
「私は絶対に不倫しませんから!」
「は?」
「先輩の手を私の血で染めさせたりはしませんから」
「あ、逢」
「はい。何です?」
「み、見かけによらず、恐ろしいこと言うんだな?」
「……はい」
「は、ははは」
「私も信じてますから。しゅう先輩のことを」
「大丈夫さ!僕には逢しかいない。絶対に不倫なんてしないよ」
「先輩」
「ん?」

私は突然立ち上がって先輩の背後に移動した。
そして背後から先輩を包み込むように抱きしめた。

「お仕事頑張って下さい。私はここにいます。いつでも先輩の味方ですから」
「うん。分かった。どんな辛いことがあっても家に帰って来れば逢がいてくれる。それだけで僕は頑張れそうだ」
「ふふっ。応援してますよ、先輩」

毎日の仕事で疲れて帰って来る先輩を癒してあげることが妻である私の仕事。
少なくともこの時の私はそう思っていた。
でも、この考え方はちょっと甘かったのかもしれない。

先輩は次の日も同じように疲れ切った顔をして帰って来て、突然私に抱きついた。

「逢」
「せ、先輩?」
「ごめん、しばらくこうしていたい。逢の温もりを感じていたい」
「……」
「……」
「……もう、本当に甘えん坊なんですから」
「ごめん」
「別にいいですよ。また昨日の事件の捜査ですか?」
「うん」

先輩は昨日のことをまだ引きずっていた。
何だか精神的に辛そう。
こうして私が包み込んであげても先輩は次の日にはまた疲れ切ってまた私に抱きついてくる。
さすがの私も心配になった。

そして次の日。

ジュージュージュー。

「先輩今日も遅くなるのかなぁ。今日は先輩の大好物であるハンバーグを作ってるけど……」

……
先輩……またあの事件の捜査なのかな?今日もまた辛い目に遭って……。
……
私は……妻として先輩に何がしてあげられるんだろう?今日一日考えてたけど、やっぱり答えは出ない。
……
こういう時……やっぱり誰かに相談すべきなんじゃ?一人で抱え込むのが一番よくないことは分かってる。
……
でも、こういう時、誰に相談したらいいんだろう?
……
一番身近なのは私の両親。それに郁夫や美也ちゃん。
……
いや、それは駄目!結婚したんだから、やっぱりこういう問題は私と先輩の二人で解決しないと。
じゃなきゃ、この先ずっと家族に頼ってたんじゃ何のために結婚したのやら……。
夫婦の問題は夫婦で解決しないと意味がない!家族には迷惑をかけられない!
うん、大丈夫!あの記憶喪失を何とか乗り越えられた私と先輩ならきっと!
……
でも、あれだってみんなの力を借りたから何とか乗り越えられた。
先輩の大学のお友達、美也ちゃん、梅原先輩、森島先輩、そして……。
あ!そうだ!塚原先輩だ!塚原先輩ならきっといい知恵を貸して下さるはず!
塚原先輩ならこういう時、どうするんだろう?
……
いや、やっぱり塚原先輩にも相談できない!あの時、散々迷惑をかけた。
夫婦になってまで迷惑をかけたくない!
やっぱり私と先輩だけで解決しないと!!

そんなことを考えていたら、気持ちを察してくれたのか電話がかかってきた。

「はい、もしもし。七咲です」
「あ、七咲。私よ。塚原響」
「えっ?塚原先輩!?」
「どう?最近うまくいってる?」
「えっ?あ、はい」
「そ。ならよかった」
「あの、どうしてお電話を?」
「ん?ちょっと久しぶりに七咲の声が聞きたくなってね。迷惑だった?」
「い、いえ!そんなことは!!」
「ふふっ、冗談」
「あ、あ、はい」
「今七咲一人だけ?」
「はい。先輩はまだ仕事から帰っていません」
「そう。彼も大変なのね」
「はい……そうみたいです」
「七咲?」
「あ、はい」
「もしかして……また何か悩んでるの?」
「えっ?」
「声のトーンがいつもより低めだから。何だか元気なさそう」
「……」

やっぱり塚原先輩はすごい!
私の声を聞いただけで私が何かに悩んでることを突き止めた!
塚原先輩には敵わない。

「……」
「やっぱり……分かっちゃいますか?塚原先輩にはすべて」
「当然よ。何年七咲と一緒にいたと思ってる?」
「そう……ですね」
「その様子じゃ、誰かに相談したいけど相談できなくて困ってるといった感じかしら?」
「当たりです」
「まったく……。毎度のことながら世話が焼ける夫婦ね」
「すみません」
「いいわ。私でよければ相談に乗る。支障がなければ話してくれる?」
「はい。実は……」

私は今悩んでることを塚原先輩にすべて話した。

「なるほどね」
「どうしたらいいですか?」
「甘すぎる」
「えっ?」
「七咲は甘すぎるのよ!彼にはもっときつくすべきだわ」
「えっ?そんな……」
「かわいそう……って言いたいの?」
「はい」
「その考えが甘すぎるわ」
「えっ?でも……」
「七咲」
「はい」
「『飴と鞭』って言葉知ってるわよね?」
「はい」
「七咲は彼に飴しか与えてない。だから彼は成長しない。時には鞭も必要なのよ」
「そんな……」
「いい?」
「はい」

――彼は毎日の仕事が辛いと言って帰宅するなり七咲に抱きつく。すぐ甘えたがる。
彼の期待に応えるべく、七咲は彼を甘やかす。
そして次の日もまた次の日も彼は同じように七咲に甘える。その繰り返しよ。
やがては彼は七咲に依存し、七咲なしじゃ生きていけなくなる。
不謹慎な言い方かもしれないけど、七咲を失ったら彼は生きていけなくなる。
これが飴ばっかりを与えた結果よ。

「う……じゃ、じゃあ鞭も与えろと言いたいんですか?」
「ええ。そういうことよ」
「私がですか?」
「当然。だってあなたにしかできないから」
「う……そ、そんなの……私が辛いです」
「でも、辛いからと言ってこのままにしておいたら彼はどんどん駄目になるわよ」
「う……でも私には先輩に鞭を与える勇気なんて……」
「勇気?」
「はい」
「違うわ」
「えっ?」
「これは勇気なんかじゃない!彼に鞭を与えることは彼自身のためなんだから!むしろ、愛情だと思う」
「愛情?」

――そう。愛情よ。
彼は刑事になる前、少なからず辛い目に遭う覚悟があったはず。だから刑事を目指した。
そんな彼を七咲は全力でバックアップした。
そして彼は念願の刑事になった。勤務開始から1年経ってやっと殺人事件の捜査に参加することができた。
しかし彼は事件現場を見て辛い気持ちになった。その気持ちを癒すため七咲に甘えた。
殺人事件の捜査に参加し始めてからまだ間もないっていうのにもう弱音を吐き始めている。
ひどい言い方だけど……私に言わせれば、彼はだらしないわ。
刑事になる前の、辛い目に遭う覚悟はいったいどこに消えたの?
刑事になりたいという夢を全力でバックアップした七咲に申し訳ないと思わないのかしら?

「塚原先輩……」

――そこで、七咲……あなたの出番よ。
今度彼があなたに甘えてきたら、思いっきり突き放してやりなさい!

「えっ?」

――さっきも言ったけど、これは勇気なんかじゃない!愛情なのよ!
あなたが「甘えてんじゃない!覚悟はどうした!?」って思いっきり厳しく叱ってやるのよ!
そうすれば彼は目が覚めるはず!
これはあなたにしかできない。

「で、でも……そんなことをしても平気なんですか?」
「……というと?」
「その……離婚とか?」
「ふふっ」
「えっ?塚原先輩」
「大丈夫。それはないから。彼はあなたの言うことだったら大人しく聞くと思う。むしろ感謝するんじゃないかしら」
「感謝?」
「私は今まで彼と七咲のことを散々見て来たから分かる。自信を持って言える」
「で、でも……先輩を信じないわけじゃないですが……万が一、離婚なんてことになったら?」
「そしたらすぐに別れなさい」
「えっ?」
「彼が所詮それだけのだらしない男だったってことですぐに別れるべきだわ」
「……はい」
「七咲」
「はい」
「何度も言うけど、飴を与えるだけが愛情じゃないわ。時には鞭を与えて間違いを正してあげる、それも愛情だわ」
「はい」
「彼に、見せてあげなさい!あなたの『愛の鞭』って奴を。七咲逢だけに『逢の鞭』って奴をね!」
「『愛の鞭』……『逢の鞭』……分かりました!」
「やるなら、思いっきりね!ぶっ倒れるくらい激しくやってもいいわ!中途半端は絶対に駄目!」
「はい!頑張ります!」
「彼に覚悟を持たせるなら、あなたも覚悟しなさいよ。七咲」
「はい!ありがとうございます」
「ううん。礼はいいから。とにかく頑張ってね。私はあなたたち夫婦をいつまでも応援してるから」
「はい!塚原先輩、どうもありがとうございました」
「じゃ、そろそろ彼も帰って来ると思うし、私も忙しいから。それじゃあね」
「お疲れ様です。おやすみなさい」
「おやすみ、七咲」

『飴と鞭』……
私は今まで先輩に飴しか与えてこなかった。
だから今度は鞭を与えてあげなきゃ!
これは先輩のためなんだから、頑張らないと!
先輩が一人前の刑事さんになるために、私が全力でバックアップする!!
そのためにも頑張って先輩に鞭を与える!!

「逢、ただいま」

来た!先輩が帰って来た!やるなら今しかない!

「先輩、お帰りなさい。今日も遅かったですね」
「逢……」
「今夜は先輩の大好物のハンバーグですよ。早く着替えて……」
「逢!」

予想通り、先輩は私に抱きついた。

「もう……またですか?本当に甘えん坊ですね」
「ごめん。でも、しばらくこうしていたい」
「だったら、まずは着替えてご飯を食べて下さい。冷めちゃいます」

私はわざと先輩を離し、居間に向かった。

「う、うん」

――ま、ご飯食べてからでいっか。逢はどこへも行かない。

「いただきます」
「いただきます」
「もぐもぐもぐもぐ……ごっくん。はぁ」
「もぐもぐもぐ……それで?また同じ事件ですか?」
「うん」
「……」
「本当に……嫌になっちゃうよ」
「……」
「毎日精神的に辛いんだ。逢がいてくれるから毎日何とか頑張れるけど……」
「……私がいるから?」
「うん」
「そうですか」

やっぱり塚原先輩が言った通りだ。
先輩は私に依存しつつある。

その後、ご飯を食べ終わって後片付けも済んだ。
二人ともお風呂に入り終えた。
就寝前になって……

「はぁ。明日も仕事か。またあの事件の捜査ね」
「大変ですが、頑張って下さい」
「もう……毎日辛くて仕方がないんだ、逢」
「先輩」
「逢……」

先輩は泣きそうな表情で私に抱きついてきた。
やるなら今しかない!
中途半端は駄目!思いっきりやる!!
先輩に『逢の鞭』を打ち込む!!

「先輩」
「逢」

先輩が私を放した、そのタイミングを見計らって!

「ふふっ。せーんぱいっ」
「逢?」

パーーーーーーーーーン!

「うぐっ!」

私は右手で先輩の左の頬を思いっきり平手打ちした!容赦なく!!
先輩はあまりにも痛かったのか、両手で左の頬を押さえた。

「逢……」
「しっかりして下さい!!」
「う……」

――それでもあなたは七咲しゅうなんですか!?
私の愛してる七咲しゅうはこんな人じゃない!!
七咲家に婿養子となって七咲家のすべてをその背中に背負う覚悟があったはず!
刑事になってどんな辛い目に遭っても乗り越えられる覚悟があったはずです!
あの時、記憶喪失を乗り越えられたあなたにならそれができたはずなんです!
なのに……どうしてそんなに弱気になるんです?
覚悟はどうしたんですか?
あなたの夢を全力でバックアップした私に恥をかかせないで下さい。
お願いですから……もっと強くなって下さい。
う……う……

「逢……」

どうしよう?先輩を思いっきり、引っ叩いてしまった!
強気なことを言ってしまった!
その罪悪感から来る恐怖で全身が震える!
両手の握りこぶしに力が入る!
顔は俯いて、歯を食いしばって、今にも涙が出そう。

――ごめんなさい。痛かったですよね。
でも、私は先輩に強くなってもらいたいんです。
弱気になって私にどんどん依存していく先輩を見ていて辛くなりました。
このままじゃ私がいなくなったら先輩は生きていけなくなる……そう思ったので。

「逢……」

――確かに私は先輩に頼りにされて嬉しいですよ。
でも、頼りにされすぎると私まで駄目になってしまいそうです。
先輩のことが心配で、大好きな水泳にまで影響が出てしまいそうで怖いんです。
またあの記憶喪失の時と同じようなことが繰り返されるって思うと……私……。

「……」
「……」

先輩はさっきからずっと固まったままだ……。
私のこと……嫌いになっちゃったのかな?
私は今まで先輩にこんなに厳しいお説教をしたことがない。
私のこと、ひどい妻だとか思ってるのかな?
それならそれでいい!私は先輩のためにやれるだけのことはやった!
もう……後はどうなっても……。

「逢!」
「えっ?はい」
「……」
「……」
「ありがとう」
「えっ?あ……」

先輩は私のことを強く抱きしめた!

「ありがとう。う……う……迷惑かけてごめんな」
「先輩……」

先輩は涙を我慢していた。

――本当は自分でも気付いていたんだ。強くならなきゃいけないって。
でもな……逢を見ているとどうしても甘えたくなる。僕の意志が弱いからなんだ。
そんな僕を逢はいつも包み込んでくれた。
だから、このままでいいんだって余計甘えてしまった。
でも、今逢に思いっきり引っ叩かれて、厳しく叱られて、やっと目が覚めたよ。
僕の刑事になりたいって夢は僕だけの夢じゃなかった。
それを全力でバックアップしてくれた逢の夢でもあるんだ。
なのに、僕はそのことを忘れて自己中心的になっていた。
逢のことまで考えてやれてなかった。
本当に駄目だよな、僕って奴は。

「先輩……。先輩は駄目なんかじゃないです!」
「えっ?」

――確かに今までの先輩は駄目でした。
でも、今こうして今までの間違いに気付けました。
だったら、ここから変わればいいんです!
人は、どれだけ時間がかかろうと、努力すれば……変わろうと思えば変われるんです!

「逢……」

――先輩が私の夢を全力でバックアップしてくれたように、私も先輩の夢を全力でバックアップします!!
ですから、精一杯変わる努力をして下さい!!
私は先輩のことを信じています!
私の愛してる七咲しゅうはここから再び立ち上がるんです!

「逢……分かった!僕、頑張るから!!」
「はい!」

――僕は必ず変わってみせる!
また何度も同じ間違いをするかもしれない!
逢にも迷惑をかけるかもしれない!
でも、必ず変わってみせるから!!
ずっと、僕のことをそばで見続けていてほしい。
逢にはずっとそばにいてほしい。

「先輩!」
「逢!」

私も先輩も我慢していた涙を流した。
私は先輩に抱きしめられたまま、先輩の胸を借りて号泣した。
もうホッとして全身の震えは止まった。

「な、泣くなよ」
「だ、だって……怖かったんですから」
「怖い?何が?」
「先輩に嫌われてしまうんじゃないかと思って」
「僕に?」
「はい……」
「ふっ」
「えっ?」
「馬鹿だなぁ。逢は馬鹿だよ。僕がそんな人間だと思ったか?」
「う……」
「僕は殴られようが引っ叩かれようが蹴り飛ばされようが踏み潰されようが逢のことが好きだよ」
「先輩」
「それが僕を想っての行動なら絶対に逢のことを嫌いになんかならないよ」
「先輩」
「むしろ、もっともっと逢のことが大好きになる!」
「先輩!」
「ほらほら、泣くなって!」

先輩は右手で私の頭を撫でた。

「う……う……そ、そういう先輩こそ目から涙が出てますよ」
「う……こ、これは……涙なんかじゃない!!そう、心の汗だ!!」
「……」
「ん?どうした?」
「う」
「う?」
「うまいことを言ったつもりですか?」
「う、うん」
「全然うまくありません……よ!」
「あ……んん」

私は突然顔を上げて先輩にキスをした。
お互い涙を流してるから口の中がしょっぱくなった。
今日のキスは……涙の味。
先輩が新たな決意をしたその証!

「逢……」
「先輩」
「逢……う……」
「先輩?先輩?」

先輩が私を抱きしめる力がどんどん弱くなっていく。
まるで先輩から力が抜けていくみたいに。
どんどん力が抜けていく先輩を今度は私が支えた。
そのまま二人ともその場にしゃがみ込んだ。

「……」
「先輩?だ、大丈夫ですか?」
「……」
「……寝て……る?」
「……」

どうやらちょっと強く叩きすぎたらしい。
先輩は気絶してそのまま寝てしまった。

「先輩……やっぱり痛かったんですね。本当にごめんなさい」
「……」
「いつまでも、愛してますからね!先輩」

私は先輩の左の頬を労るようにそっとキスをした。
ちょっと『逢の鞭』は強すぎたのかな?
鞭を与えた後はご褒美に飴を与えてあげてもいいよね?

「おやすみなさい、先輩」

先輩を寝室に運び、ベッドに寝かしつけ、私も寝ることにした。

最初は不安で怖かったけど……どうやら『逢の鞭』は痛いくらいよく効いたらしい。
先輩は次の日から変わった!
強くなって、もう私に甘えすぎなくなった。
先輩曰く……

――僕は逢のことが好きになったその日から逢を一生守るって決めたんだ!!
逢を守るためには僕自身も強くなきゃいけない!!
僕自身が強くならなきゃ逢を守れっこない!!
だから僕は強くなる!!もっともっと強くなってみせるさ!!
すべては僕自身と逢のためにな!!


先輩は本当にたくましくなった。
それでも先輩はたまに私に甘えてくるけどね。
そんな時は私が全力で先輩のことを包み込んであげる。
頑張ってるご褒美に食べる飴は格段においしいはず!
だから、たまには先輩においしい思いをさせてあげたい。
大好きな先輩だからこそ、余計に。

こうして私と先輩の愛情はさらに深まった。
刑事ドラマや先輩が捜査している殺人事件みたいに、なかには分かり合えない夫婦もいる。
長年熱愛しててもその関係がほつれてしまう夫婦もいる。
でも、私と先輩は違う!!絶対に違う!!胸を張って自信を持って言える!!
私と先輩の絆はこの先何十年経っても絶対に切れることはない!!
二人がお互いを愛し合ってる限り、絶対に!!
そう思えたのもすべて塚原先輩のおかげなんです。
塚原先輩のアドバイスがあったからこそなんです!
もちろんしゅう先輩には塚原先輩のことは内緒にしてある。
後でこっそり塚原先輩にお礼を言おうと思う。

本当にありがとうございました!!



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、しっかりして下さい」(ノベル)
END


……うん。
自分で書いておきながらすごい展開だなぁと思います(笑)
この話のテーマは七咲に依存しすぎるな……か。
何か、このブログと反しているような。
だって、見て下さい、一番上を!!
「アマガミ・七咲逢をこよなく逢する七咲逢依存症患者の家」……ですよ?
もうこの話を書いてる作者自身が七咲逢依存症患者ですから(笑)
ひどいですね(笑)
たぶんこの話は大学を留年している僕自身に対する戒めなんじゃないかなぁと思います。
努力して変わってみろよって僕自身に問いかけてます。
『愛の鞭』……『逢の鞭』……いいなぁ。僕も受けてみたい!!
……と、またドM発言をしています(笑)
ぼ、僕はド、ド、ド、ドMちゃうわあああ!(笑)
僕自身もこれを機に頑張れたらいいなぁと切に願います。
皆さんも頑張って下さい!!
人は努力すれば変われると思いますよ。
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