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2010-10-22

エピソード記念作「先輩との出逢い~恋はみずいろ~」(ノベル)

今日は11月上旬のある日曜日。
先月某体育大学への進学を決めた七咲と一緒に、
僕のアパートから電車で少し行った先にある、先月出来たばっかりの新しい遊園地に来ている。
この遊園地の売りは中心部にある大きな噴水だ。
前に電話でこの遊園地のことを七咲に話したらものすごく行きたがっていたので、
大学受験合格祝いに一緒に行くことにした。

「すごいなぁ、地元の遊園地とは桁違いの規模だ」
「そうですね。びっくりしました」
「早速入り口で入場券を買うか」
「はい」

僕と七咲は入場券売り場に並ぶ。
僕はポケットから財布を取り出す。
ふと七咲を見ると七咲も鞄から財布を取り出そうとしている。

「あ、いいよ。財布しまって」
「え?」
「今日は全部僕の奢りだから」
「でも……」
「いいって。七咲の大学受験合格祝いだから」
「……」
「七咲はこの1年ものすごく頑張った!だから今日一日その努力を僕が労ってあげるよ」
「でも、それを言うなら先輩こそ私の学費を稼ぐためにアルバイトを……」
「いや。そんなの、ただ七咲を助けただけだよ。僕が好き好んでやっただけのこと」
「……」
「本当に努力したのは七咲の方だから」
「でも……何だか先輩に悪い気がします」
「うーん……」
「……」
「よし。だったらこうしよう!」
「え?」
「僕はこれから好き好んで七咲に全部奢る!!これならいいだろ?」
「……」
「まだ納得がいかないか」
「はい」
「……僕は七咲のことが好きだ。大好きなんだ」
「はい……私も先輩のことが大好きです」
「大好きな七咲に奢ってあげたい。大好きだからこそ……してあげたいんだ」
「先輩……」
「僕に……任せてくれないか?」
「……仕方ありませんね。そういうことでしたら」
「よし。じゃあ僕が二人分の入場料出すね」
「はい。そうしてください」

ふっ、こんな朝っぱらからものすごく甘い台詞を言ってしまったよ。
でも、僕の言ったことに嘘なんて一つもない。
僕が七咲を想う気持ちは本当なんだから。

「じゃあ、中に入ろうか」
「はい」

僕と七咲は遊園地の中へ入る。

「七咲は何に乗りたい?」
「そうですね……」

僕は七咲の目線を追った。
七咲の目線があるアトラクションに止まった!
一瞬僕は嫌な予感がした。
ははは……ま、まさか……これとか言わないよな?

「じゃあ、あのジェットコースターで」
「え?ええっ??」
「嫌なんですか?」
「い、嫌じゃないよ。別に。でもな……」
「大好きな七咲に奢ってあげたい。大好きだからこそ……してあげたいんだ」
「え??」
「先輩。さっきのこの台詞は嘘だったんですか?」
「え……う、嘘なんかじゃないよ!!」
「じゃあ、私の乗りたいアトラクションに乗らせてください」
「う、うん……」
「ほら、早く行きますよ」
「え?僕も行くの??」
「当たり前です。まさかジェットコースターが怖いんですか?」
「そ、そんなことない!!断じてない!!」
「じゃあ、行きましょう」
「……うん」

とほほ……あんな台詞言うんじゃなかった。
つい勢いで口を突いて出た台詞に少しだけ後悔した。

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ」
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん。何とか」
「もう……ジェットコースターが苦手なら最初からそう言ってください」
「ご、ごめん。七咲がどうしても僕と一緒に乗りたいって言うから……」
「……」
「……」
「バカ」
「え?」
「先輩のバカ」
「七咲」
「また私のために無理なさったんですね」
「う……ごめん」
「もう……いいです。その代わり、次からは無理しないでくださいね」
「分かった。じゃあ、気分が直ったから次に行こう」
「はい」

ちょっと気分を害してしまったな。これはさすがにまずかったか。
以前、風邪を引いていたにも関わらず、七咲とデートして
風邪をこじらせてしまったことがあった。
あの時も今日と同じ。七咲のために無理をしちゃったんだ。
僕はあの時と全然変わってない。全く反省してないんだな。
この先、七咲にどれだけの心配をかければ気が済むんだろうか?
ま、いいや。今はデート中なのでそれは考えないことにしよう。
気を取り直していつものように明るく!明るく!

「七咲!ゴーカートにでも乗らないか?」
「あ、いいですね!」

「よし、七咲よりも速いぞ!!このまま行けば勝てる!!」
「う……先輩に負ける!!」
「よし!!楽勝だ!!」

ヒュ~~~。

「きゃっ!風でスカートが……」
「え?風でスカートだと!?」

僕は思わず後ろを振り返った!
神風が吹いて七咲のスカートがめくれて……あとちょっとで見えそうだ!!

「お、おお……こ、これは……」

七咲のスカートに目が釘付けで、僕は前を見るのを忘れていた。

ガッシャーン。

「うわあ……か、壁に激突した!!」
「ふふっ。私のスカートの中を見ようとした罰です。先輩、お先に」
「な、七咲いいい」

七咲が逆転し、そのまま独走、ゴールした。
僕は……皮肉にも神風と七咲のスカートの誘惑に負けたんだ。

「はい、温かいココア」
「ありがとうございます」
「はぁ~~~悔しいなぁ」
「先輩……まだ落ち込んでいるんですか?」
「当たり前だよ。あそこで風さえ吹かなければ僕が勝っていた」
「ふふっ。それを言うなら私がズボンを履いていたら……じゃないんですか?」
「違うよ。七咲はむしろスカートの方がいい」
「覗けるからですか?相変わらずエッチな先輩ですね」
「ち、違うよ」
「何が違うんですか?」
「そ、その……スカートが……似合ってるから」
「……え?」
「い、いや……え?じゃなくてさ……その……褒めてるんだから」
「……ちょっとトイレ行って来ます」
「え?な、七咲!?」

……逃げられた。

こうして午前が終わり、二人で昼食を取った。

午後も思いっきり遊んで気付いた時にはもう夕方だ。

「はぁ……」

七咲が噴水の柵に両腕をのせ、身を任せ、噴水を眺めながら、そっとため息をついた。

「疲れた?」
「はい。ちょっとだけですが」
「だよね。僕もだ」
「先輩もですか」
「うん。七咲と一緒だと時間が経つのがあっという間な気がする」
「分かります。私も先輩と一緒だと時間が経つのがあっという間な気がします」
「噴水……きれいだね」
「はい」

それから二人でじっと噴水を眺めた。お互いに終始無言で。
僕はふと水面に映った七咲の顔を見つめた。
七咲は……黄昏ていた。
何だか元気なさそうな顔をしていた。疲れ切ってしまったのかな?
心配になって七咲に声を掛けようとしたその時だった。

「先輩」
「え?どうした?」
「人の心って……まるでこの水みたいですね」
「え?あ……うん」

――水って……何も外から刺激がない限り、水面が動くことはありません。
でも、風が吹いたり、石が投げ込まれたりして……
外から何らかの刺激が加わったら水面はゆらゆらと動き出します。

「そう……だな」

――私がこの水だとしたら……先輩は石ですね

「七咲が水で、僕が石……?」

――はい。
先輩という石が私の中に投げ込まれて、私の水面(みなも)が動き出した……
先輩と出逢ってから私の心はゆらゆらと動き出した……
初めは小さな揺れでちょっとくすぐったかったけど、心地良かった……
でも、だんだん揺れは大きくなり、停まらくなっていった……
それだけ先輩という石が私の中で大きな存在になったからです。

「七咲……」

――正直、不安でした。
あまりにも先輩に心を揺られ過ぎて、私はどうしていいか分からなくなりました。
大好きな水泳にも波紋は広がってしまいました。

「……」

――先輩は私に必死に石を投げ続けた。私の水面(みなも)はずっと揺れ続けました。
私は何とかして揺れを隠そうとしました。いつもの私でいるために。
でも、それはついに限界に達してしまいました。
揺れが大きくなり過ぎて、ついには容器から水が溢れ出てしまいました。
心という名の容器から、気持ちという名の水が溢れ出てしまったんです。
もう、我慢出来なくなって……しまいました。

「七咲……」
「先輩……先輩!」

七咲は涙を流していた。

「あ……」

ポタン……。

七咲の流した涙が噴水に落ちて水面に波紋が広がった。

「七咲……好きだ!大好きだ!」
「先輩……あ……」

僕はそっと七咲を抱きしめた。

ここの遊園地の売り、噴水は日没とともにライトアップされる仕掛けになっていた。
噴水の水が水色に照らされた。
水面(みなも)にライトからの光が反射して僕と七咲も水色に照らされた。

「ん……」
「ん……」

僕は七咲の唇にキスをした。
涙が混じっててちょっとだけしょっぱい味がした。

「んん……」
「んん……」

うん、やっぱりしょっぱいな、このキスは。
でも、僕は敢えて七咲の涙を拭くことはしなかった。
七咲から溢れ出て来た気持ちと一緒に、僕の心で七咲の涙をそっと受け止めてあげる。
僕の心は僕自身の気持ちを貯めておく場所であるのと同時に七咲の気持ちの受け皿でもある。
僕がしっかりと七咲の気持ちを受け止めてあげなくちゃいけないんだ。
一滴もこぼすことなく、七咲の気持ちを受け止めてあげなくちゃいけないんだ。

「七咲」
「はい」
「さっきの話、ちょっとだけ間違っているぞ」
「え?」
「僕は石なんかじゃない!僕も……水だよ」
「えっ?」
「だって、石じゃ当たった時に痛いだろ?」
「ええ、まあ」
「僕……七咲を痛めつけるようなことしたっけ?」
「いえ!そんなこと……ないです」
「よかった。あるとか言われたらどうしようかと思った」
「クスッ。それはないですから安心してください」
「うん」
「でも、どうして水なんです?」

――さっき、七咲の涙が噴水にこぼれ落ちるのを見て思ったんだ。
恋っていうのはさ、お互いの気持ちのぶつかり合いだろ?
みんながみんな、心という名の容器に気持ちという名の水を持っている。
僕が偶然七咲の心に垂らした一滴の気持ちが、七咲の水面(みなも)を揺らした。
それが恋の始まりだと思うんだ。違う?

「いえ、それで合っていると思います」

――それでさ、相手のことを考えずに水ではなく石を投げつけた時……
相手の気持ちは痛む。激しく動揺する。
僕は七咲のことを想うあまり、無理をしてしまい、七咲に心配をかけてしまう。
その時の僕ってきっと七咲に水ではなく石を投げつけていたんだろうな。
それも無意識に……。ごめんな。

「そんなこと……ありません。先輩は……決して石なんかじゃありません!!」

――ありがとう。そう言ってもらえて安心したよ。

「先輩……」

――逢。これからも僕は逢に迷惑をかけ続けると思う。
出来るだけ迷惑をかけないように努力するけど、それでも迷惑をかけてしまうと思う。
そんな僕で良ければ、これからもよろしくな!!
一生、一緒にいような、逢。

「先輩……迷惑だなんて、言わないでください。私は先輩と一緒にいられるだけで幸せですから」
「これからもよろしくお願いします」

それから僕と逢は噴水の水色の光に照らされ、静かに抱き合った。キスをした。
永遠の愛を誓い合った。



七咲アフターストーリー
エピソード記念作「先輩との出逢い~恋はみずいろ~」(ノベル)
END


如何だったでしょうか?
アマガミSS七咲逢編エンディング・テーマである七咲逢(cv.ゆかな)「恋はみずいろ」
及び
そのカップリング曲である七咲逢(cv.ゆかな)「minamo」の発売を記念して書いてみました。
前作の七咲アフターストーリーエピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~」
引き続くノベル版として書きました。
アマガミSS七咲逢編もTBSでは昨日で終わってしまって、僕の心には虚しさだけが残りました。
あまりに虚し過ぎて感想を書く気力も失せるほどです(大げさ?)
あ、感想の方はいずれ必ず書きますよ。「恋はみずいろ」「minamo」の感想とともに。
でも、その前に急遽「恋はみずいろ」「minamo」を僕なりに解釈したSSを書いてみたくなりました。

僕の代表作である七咲アフターストーリーの橘しゅう大学生活編の話数が少なかったという理由で(笑)
そこを舞台にして書いてみました。
僕は大学1年生になってしまっていますが、七咲はまだ高校3年生なので時期的にはギリギリセーフかと。

七咲に限らず、人は誰しも心という名の容器に気持ちという名の水を持っている。
初めは悪意という名の穢れのないきれいな水。水面も安定している。
そこに相手からの水が落とされて気持ちがぶつかり合う。水面に波紋が広がる。水面がゆらゆら揺れる。
きれいな水が落とされれば、心はきれいになる。良心や恋に満ちた心となる。
逆に汚い水や石が落とされれば、心は汚れたり傷ついたりする。悪意や悲しみに満ちた心となる。
七咲は主人公に心をゆらゆら揺られ続け、ついには気持ちが溢れ出てしまった。
そんな七咲の心境を表した曲が「恋はみずいろ」「minamo」なんです。

――これが「恋はみずいろ」「minamo」が訴えたかったことだと僕なりに解釈しました。
皆さんはどんな風に解釈しましたか?
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