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2010-10-21

エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~」(ノベル)

七咲逢(23)、妊娠5ヶ月を過ぎた頃のエピソード。
2月のある日曜日のことだった。
今年は暖冬で雪はまだ一度も降っていない。
天気予報によると今日一日特に冷え込んで、
所によっては雪が降るとのこと。
本当かなぁ?

僕は今日ちょうど仕事が休みなので、
逢を誘って外を軽く散歩してみようと思った。
妊娠が発覚してからドクターストップがかかり、
逢は大好きな水泳が出来ずにずっと家で大人しくしている。
僕が無理をするなと念を押しているため、
逢は一人で外出することも出来ない。
毎日が暇で暇で仕方がない。
そんな逢を不憫に思った僕は、
日曜日を利用して逢を外に連れ出してあげることにした。
他の曜日は仕事なので、
逢と丸一日一緒にいられるのは日曜日だけなんだ。

逢と丸一日一緒にいられる日曜日。
逢にとってはこの日が一番楽しみなんだ。
僕にとってもこの日が一番楽しみなんだ。
この日のためだけに一生懸命仕事していると言っても過言ではない。

「逢、行くよ」
「あ、ちょっと待ってください」
「う、うん。わかった」
「んしょ……っと。いいですよ、行きましょう」
「よし、行こうか」
「はい」

ドアをそっと開ける。

ヒュ~~~。

「う!さ、寒い!!」
「当然ですよ。今日は特に冷え込む一日なんですから」
「そんなの知ってるよ」
「知ってるならどうしてそんな薄着なんです?」
「いや、別に薄くないよ」
「その格好、寒そうですよ」
「そう?」
「いいから、早く着替えて来てください」
「わかった」

僕は急いで着替えて玄関に戻った。

「こ、これなら寒くないだろ?……よし」
「ええ。それなら大丈夫そうですね」
「じゃ、気を取り直して出掛けよう」
「はい」

逢といつもの散歩コースを廻る。
道の途中で逢が突然立ち止まった。

「先輩、ここ左です」
「え?右だろ?」
「いいえ、左なんです」
「そ、そっか。そういえば左は行ったことないな」
「付いて来てください」
「うん」

逢に付いて左の道を進む。
新しい散歩コースの開拓だ。

「あ、公園だ!」
「はい。ここに公園があること、ご存知でしたか?」
「いや、知らない。逢こそ、どうして知ってるの?まさかこっそり……」
「それはありません。先輩との約束なので」
「そっか。じゃあ、出歩かずにどうやって知ったの?」
「ふふっ。インターネットって便利ですね」
「そっか。インターネットの地図を使ったのか」
「はい。先輩の留守中に来た私の大学時代の友達に教えてもらいました」
「インターネットを?」
「はい」
「そっか。逢もインターネット使えるようになったんだな」
「私だって、やれば出来ますよ……」
「あ、ごめん。そういうつもりじゃ……」
「いえ、いいですよ」
「それより、せっかく公園に来たので少し遊びませんか?」
「うん。そうだな……えっと……」
「じゃあ、このブランコで」
「え?ブランコ??む、無理するなよ」
「大丈夫です。普通に乗って漕ぐだけです」
「それならいいか。よし、ちょうど二人分ある!」

僕と逢はブランコに乗って漕ぎ始めた。
一つのブランコに逢と二人で乗ってキスしたあの日が懐かしく感じられる。
またあれをやってほしいなと思っていたら……

「懐かしいですね」
「え?」
「忘れたんですか?キス……したじゃないですか!」
「ああ、それなら覚えてるよ。今僕も同じこと思っていた」
「あの時は本当にエッチな先輩でしたね」
「まあ、あの時はね。だけど今……」
「今もです!」
「う!」
「そういうところ、全然変わっていませんね」
「……」
「……先輩?」
「逢……」
「はい。何ですか?」
「また……してほしいな」
「え?」
「お願い!……だめ?」
「だめ……ではないです。先輩のためならいつでもしてあげます」
「本当!?じゃ、じゃあ早速」
「はい」

逢がブランコから降りて僕の正面に立つ。
僕はブランコの鎖を両手で持ったまま身体を反らす。
逢が僕の乗っているブランコの鎖を両手で持って
僕の唇にキスしようとしたその時だった。

「あ……」

逢がそう呟いた。
逢の頬に白く冷たい何かが当たった。
逢がそっと上を見上げる
―――雪だ。初雪だ。

「先輩、見てください。初雪です!!」
「おお!やっと降り出したか!」

結構、大粒の雪だ。これはきっと積もるに違いない!!

「積りそうですね」
「うん。よかったじゃないか、いい暇潰しが出来て」
「え?あ……さすがにこの歳なので雪遊びはちょっと」
「しかも一人だからな。さすがに恥ずかしいか」
「はい」
「あ、えっと……続きを」
「あ……すみません」

初雪に気を取られて一瞬二人とも肝心のキスを忘れかけていた。

「ん……」

逢の柔らかい唇が僕の唇にそっと触れた。気持ちいい。

「んん……」

逢はちょっと強めにキスしてくる。幸せだ……

(逢……逢……大好きだ!)
(先輩……私もです!)

一瞬逢と心が通じ合ったような気がした。

キスしている僕と逢の周りにはどんどん雪が降り積もっていく。
大粒の雪が何故か二人だけを避けて降り積もっていく。
まるで二人の熱いキスが二人に降り積もる雪を溶かしているかのように。

キスを終え……
逢は僕の乗っているブランコの鎖を両手で持ったまま僕の正面に立つ。

「逢……ありがとう」
「ふふっ。どういたしまして」
「あはは」
「ふふっ……くしゅっ!」
「ん?寒い?大丈夫?」
「はい。逆にちょっと暑いくらいです。こんなに熱いキスをしたので」
「そっか。ならいいんだ。風邪引くなよ」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
「じゃあ、そろそろ帰るか?」
「いえ、もう少しだけここにいたいです」
「そっか。じゃあ、もう少しだけな」
「はい」

それからしばらく僕と逢は降り積もる雪を見つめていた。
お互い何も言葉を交わさず、ただただ雪を見つめていた。
その沈黙を破ったのは逢の方だった。

「先輩」
「うん?」
「何だか不思議ですね」
「何が?」
「これだけ降り積もった雪もいつかは溶けてなくなってしまうんです」
「そうだな」
「雪って……何だか切ないですね」
「……う、うん。それがどうかしたの?」

逢が急にしんみりしたことを言い出すから僕はちょっと驚いた。

「私が雪なら……先輩は太陽ですね」
「逢?」
「でも、私先輩になら溶かされても……いいですよ」
「逢?ど、どうしたんだ?いきなり」
「暑い……先輩……私を……溶……か……し……て……」

逢は倒れ込むようにして僕に抱きついてきた。

「逢!どうしたんだ、逢!?」
「先……輩……」

僕は逢の額にそっと手を当ててみた。

「……あ、熱だ!!それもものすごい熱じゃないか!!」
「ん……」
「大変だ!早く逢を家に連れて帰らなくちゃ!!」
「先輩……あ……」
「逢!しっかりするんだ!!逢!!」

逢……逢いいいいい!!!!!


―――それから私の意識は遠くなっていった。
先輩が私を呼ぶ声が完全に聞こえなくなった。
私はそのまま意識を失った。


「逢!逢!起きなさい!!」
「え?」
「早く起きないと学校に遅刻するわよ」
「あ……お母……さん?」
「寝ぼけてるのね。早く顔を洗ってらっしゃい」
「う、うん」

どうなってるの?どうして私の目の前にお母さんが?
しかも今よりも若い。
あれ?私、背が縮んだ?……いや、違う。まだ小学生なんだ……。
じゃあ、この夢は小学生時代?

「いただきます」
「しっかり食べるのよ、逢」
「はーい」
「それと今日は特に冷え込むらしいから、あったかい格好をしなさい」
「特に冷え込む?え、じゃあ雪降るの?」
「ふふっ、実を言うと……」

お母さんがそっとカーテンをめくると……

「もう降ってるわよ」
「わあ……雪だ……やった!」
「ふふっ」
「今日は友達と雪合戦とかしたいな」
「そうね。初雪だからね。思いっきり楽しんでらっしゃい」
「うん!……くしゅっ!」
「あら、風邪?寒くない?」
「ううん。大丈夫。おコタに当たってるから逆に暑いくらい」
「そう?ならいいんだけど……ちょっといい?」

お母さんが私の額にそっと手を当てようとしてくる。

「え?お、お熱なんてないよ」
「いいから。じっとしてて」
「う、うん……」
「……あらやだ!ものすごい熱じゃない!」
「え?」
「逢。今日は学校休んで大人しく寝てなさい」
「え?だ、だって雪が……」
「雪遊びもいけません。大人しく寝てるの!いい?」
「いやだ!!友達と雪合戦したい!!雪だるまだって……」
「だめ!風邪をこじらせたらどうするの?」
「いやだ……いやだよ、お母さん」
「早く、寝に行きなさい!!お母さんの言う事聞いて!!」

私のためを思って私を叱りつけるお母さん。
でも、私はそんなお母さんに必死に抗おうとした。
だって、どうしても初雪を体験したかったから!!
お母さんに厳しく叱られ、私はとうとう……

「いやだ……いやだ……お母さん嫌い。大っ嫌い」
「逢……」

私は泣きながら寝室に戻った。
お母さんのことを恨みながら寝室に戻った。

「ぐすん……ぐすん……雪……雪……」

私は寝室で思いっきり泣きじゃくった!!

「……」

その様子をドア越しにお母さんがそっと見ている。
泣いている私を不憫に思ったんだろう。

しばらく寝室で泣きじゃくった後、
私は疲れ果てて眠りに就いた。
何時間眠ったんだろう?気付いたら辺りは真っ暗になっていた。

「あれ?なんか……頭が……冷たい……」

気付いたら私は水枕に頭を付けて寝ていた。
かわいいペンギンの枕カバーに包まれた水枕で。

「おはよう、逢。と言ってももう夕方だけどね」
「お母さん……ふん!」

私はまだお母さんのことを恨んでいた。

「まだ怒ってるの?もうそろそろ許してくれてもいいんじゃない?」
「お母さんなんか……お母さんなんか……嫌いだもん」
「そう。嫌いで結構」
「……」
「それよりも水枕、ちょっとぬるくなってきたから貸して」
「……」

私は無言でお母さんに水枕を渡す。
数分してお母さんが戻って来た。

「はい、これで大丈夫」

お母さんが水枕を持って来るが、口が閉じられていない。

「……こぼれるよ?」
「大丈夫。だって中身は水じゃないから」
「え?」
「ほら、見てみなさい」

お母さんが私に水枕の中身を見せた!

「あ……雪だ!どうして?」
「だって……お母さんのこと嫌いになってほしくなかったから」
「あ……」
「逢の今朝のあの切なそうな顔を見ていたら、何だかかわいそうになって」
「……」
「せめて初雪の冷たさだけでも味わってほしくてね」
「お母さん」
「ん?」
「お母さん!ごめんなさい!!嫌いなんて言ってごめんなさい!!」
「逢……」
「お母さん!好きだよ、大好きだからね!!」
「逢……」
「お母さん……」

私とお母さんはしばらく抱き合った。
二人とも嬉し涙を流しながら。

「あ、それと」
「ん?」
「お母さんだけじゃなく、このペンギンさんにも感謝しなさい」

そう言ってお母さんは私の枕カバーのペンギンを指差した。

「ペンギンさん?」
「実はね、お母さん今日お仕事があったの」
「うん」
「それでね、忙しかったから、このペンギンさんに雪かきしてもらったの」
「ペンギンさんが?」
「そう。玄関先に雪の積もったバケツを置いてあるんだけど……」
「それをペンギンさんが?」
「うん」
「そうだったんだ……ペンギンさん、ありがとう」

そう言って私は枕カバーのペンギンを優しく撫でてあげた。


―――そうだ、思い出した。
これは私がまだ水泳を始める前の小学1年生の時の初雪の思い出。
風邪で熱を出して家で大人しくしてなきゃいけなくて……
せっかくの初雪を体験出来なくて悔しい思いをしたんだ。
この時、私はペンギンが大好きになった。
後に病弱な身体を鍛えるためにスイミングスクールに通い出すけど、
最初は嫌々だった。
でも、スイミングスクールの入り口にある大きなペンギンの像が
大好きになって、それから今まで水泳を続けてこれたんだ。
この日のお母さんのおかげで今の私がある。
本当にありがとう。

「……」
「逢?」
「……」
「逢?逢ったら!」
「……」
「もう……安心してまた寝ちゃったのね?」
「……」
「ちゃんと布団で寝ないと風邪引くわよ」
「……」
「逢!起きなさい!逢!!逢!!」


逢!!逢!!


―――ん?あれ?先輩?
私はやっと意識を取り戻した。
目の前には先輩がいて……ここは……自宅?

「よかった、意識を取り戻したみたいだな」
「先輩」
「もう、びっくりしたよ!!逢ったら突然泣き出すんだから」
「え?私泣いてました?」
「うん。思いっきりね。涙の跡もちゃんと残っている」
「あ……」
「悲しい夢でも見てたのか」
「いえ……別に悲しくは……」
「あ、それはそうとさ」
「はい」
「その水枕の中身……何だと思う?」
「え?まさか……雪?」
「え?ど、どうしてわかった?」
「あ、いえ。何となくです」
「そ、そっか。そうだよな」

そうに決まってる!絶対!!
僕が初雪を体験出来ない逢のために水枕に雪を詰めたことが
逢に一発で分かるわけない!!
逢はきっと当てずっぽで答えたんだろう。

「くすっ。ありがとうございます、先輩」
「え?」
「だって……私のために……」
「え?」

まさか、逢……すでに感づいているのか?
女は直感が鋭いってよく言うけど、逢は鋭過ぎるぞ!!

「そ、そうだよ。初雪を体験出来ない逢のために水枕に雪を詰めたんだ」
「ペンギンが……ですか?」
「え?ペンギン??何のこと?」
「え?あ……な、何でもないです」
「ん?」


―――いけない、思わずペンギンって言ってしまった。
先輩に通じるわけない。
というか当時のお母さんもきっとわざと嘘を吐いたんだと思う。
仕事で忙しいからペンギンに頼んだ……だなんて。
きっと照れ隠しに決まってる。
でも、それでも私は嬉しい。
お母さんの優しさはとても温かかった。逆に私の心は冷たかった。
お母さんの優しさで私の心は溶かされた。まるで雪のように。
そして先輩も、お母さんと同じ優しさで私の心を溶かしてくれた。
私は結局、二度の初雪を体験し損ねたけれども、
代わりにもっと大切な何かを手に入れたんだ。

「逢?どうした?ボーッとして」
「え?いえ、別に」
「まだ熱あるんじゃないか?」
「そ、そんなこと……ないですよ」
「本当?」
「はい」
「ならいいか」


―――そして今私のお腹にはこれから生まれて来る新しい生命が宿っている。
この子にも同じ優しさを分けてあげたい。
私が二度味わった、この優しさを……。


何だかよく分からないけど、逢は喜んでくれたみたいだ。
これが僕と逢にとっての初めての、初雪の思い出となった。
甘く切なく、でもとっても温かい思い出となった。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~」(ノベル)
END

エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~続編」(ノベル)に続く。


僕の約2ヶ月弱ぶりの七咲アフターストーリー新作です。
復活戦に相応しく(?)初のノベル版を書いてみました!!
昨日突然思い付いたネタで勝負してみました。
皆さんの初雪の思い出と照らし合わせてみて、いかがでしたか?
すでに素敵な初雪の思い出があるという方へ……羨ましいぞ、この野郎!!(笑)
未だに素敵な初雪の思い出がないという方へ……きっとそのうちあるから!!頑張ろう!!(笑)
ちなみに僕も後者です(笑)はい、どうでもいいですね(笑)
皆さんにもきっと素敵な出逢いが訪れると信じていますよ。
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