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2010-08-10

エピローグ特別編「先輩、私最高に嬉しいです!! 前編:一緒に過ごした半年間」

それからというもの……
僕と逢の子供ができたという噂は瞬く間に広がっていった。
例えば、まずはここ!

警察署
松原「ええええっ!?嘘だろ!?」
華村「お前、一体どんな罪を犯したんだ!?」
しゅう「本当だよ。罪って何だよ?僕はただ……」
華村「ただ?」
しゅう「……普通に一緒に過ごしてきただけだよ」
華村「何だ、つまらん」
しゅう(危ない……勢いに任せてつい本当のことを言ってしまうところだった)
しゅう(逢とほぼ毎晩……なんて言えないよな。それこそ懲戒免職ものだ)
華村「なあ、キスとかしたのか?」
しゅう「ぶーーーっ!」
僕は思わず口に含んだ缶コーヒーを吹いてしまった。
しゅう「げほっ、げほっ」
しゅう「いきなり何を言い出すんだよ!?びっくりしたじゃないか!」
松原「やっぱ、してたんだな!分かるよ」
松原「嫌な事件の捜査の翌日にも関わらず……」
松原「前日にも増して明るいしゅうちゃんを見てればな!」
松原「……癒してもらってたんだろ?大好きな逢ちゃんに」
しゅう「う……」
華村「いいよなぁ!俺なんか昨日選択肢間違えて……」
華村「キスするはずがBADENDになっちゃったし。マジ泣きたい!」
しゅう「あれ?来週発売じゃなかったの?」
華村「それは新作だ。今やってるのは前に買ったゲームだ」
華村「攻略が難しくてな。まだ終わってないんだよ」
しゅう「そういうことか」
しゅう(いい加減現実見ろって!)
上司「七咲、この度はおめでとう!」
しゅう「ありがとうございます!」
上司「ちゃんと、大切にしてやるんだぞ?」
上司「お前のためにあんなに一生懸命な奥さんをな!」
しゅう「はい!もちろんです!」
そういえば、前に僕の失態を隠すために逢が一生懸命嘘を吐いてくれたことがあった。

回想
エピローグ「先輩、私を助けてください」
しゅう「さて、帰るか」
逢「はい」
上司「待ちたまえ!」
しゅう「え?あ、はい」
上司「説明してもらおうか?」
上司「どうしてキミの奥さんが昨日キミに渡したはずの小型発信機を持っていたのかを!!」
しゅう(やべ!!)
しゅう「そ、それは……」
逢「先輩……」
逢(私のせいで先輩が!!今度は私が先輩を助ける番!!)
上司「もしかして……言えないのか?」
しゅう「い、いえ……えっと……」
しゅう(くそう!!これまでか!!)
しゅう・逢「ごめんなさい!!」
しゅう・逢「え?」
上司「ん?」
しゅう「何で逢が謝るんだ?」
逢「すべて……私のせいなんです!!」
しゅう「え?」
上司「奥さんの?」
逢「昨日、夫が風呂に入ってる時に夫の部屋を掃除したんです」
逢「その時に鞄を引っ掛けて倒してしまい……」
逢「鞄の開いていたわずかな隙間からその小型発信機が飛び出したんです」
逢「慌てて捜しましたが、見つからず……夫が風呂から出て来たので捜すのを断念しました」
逢「そして今朝夫が出勤した直後にもう一度捜し、見つけたんです」
逢「おそらく捜査に使う大事なものだろうから……私がなくしたなんて知られたらって思うと……」
逢「怖くて今までずっと黙っていました!」
逢「すみませんでした!!」
しゅう(逢……僕のために懸命に嘘を……)
逢「悪いのはすべて私なので、どうか夫を叱らないであげてください!!」
逢「罰するなら私を!!」
逢は俯いて、今にも泣き出しそうな表情で必死に訴えかける……
いや、必死に演じていると言った方が妥当か。
上司「もういいよ」
逢「え?」
上司「そこまで言われたら……さすがの私も怒れない」
上司「それに奥さんの過失がなかったら、今頃奥さんはこの世にはいなかったかもしれないし」
しゅう「そ、それじゃあ?」
上司「お咎めはなしだ。七咲はいい奥さんを持ったな。大切にしろよ」
しゅう「はい!!もちろんです」
逢「よかった……」

上司はあの時のことを言ってるんだな。
しゅう「……」
上司「七咲、一緒に飯休憩行くぞ」
しゅう「あ、はい」


他には……

七咲家
夕食の時間帯に家の電話が突然鳴り出した。
しゅう「あ、電話鳴ってる!」
逢「こんな時間に誰からでしょうか?」
しゅう「とりあえず出よう……もしもし」
美也「あ、にぃに!おめでとう!!」
しゅう「美也か。何がだ?」
美也「とぼけてもダメダメ!みゃーには全部お見通しなんだから!」
しゅう「だから、何が?」
梅原「やっちまったんだろ?ついに……」
しゅう「梅原!何でお前まで……二人してどうしたんだ?」
梅原「せっかく久々に電話して祝ってやろうと思ったのに、その態度か……」
梅原「悲しいぜ、大将」
しゅう「祝う?」
しゅう(何となく言いたいことは分かってきた)
梅原「とりあえずスピーカーをオンにして拡声させろ」
しゅう「あ、ああ……」
僕は言われた通りにする。
逢「先輩、一体誰と電話してるんです?」
しゅう「正体不明の怪しい二人組」
逢「え?」
しゅう「嘘」
逢「もう、驚かさないでください……」
美也「おっほん!にぃに、逢ちゃん!!」
逢「この声は美也ちゃん?」
梅原「この度は妊娠……おめでとう!!」
美也「おめでとうなのだ~!!」
逢「それに梅原先輩まで……」
しゅう「はぁ……こんな事のためにわざわざ電話してきたのか」
しゅう「しょうもない奴らだな」
美也「しょうもない言うな!バカにぃに」
梅原「お前らのために、わざわざ店抜け出して来てやったんじゃねぇか!」
しゅう「一体どうやって知ったんだ?」
梅原「さあな。風の噂だ!」
美也「そうなのだ!」
しゅう(考えられる情報源は……僕の職場の人間、特にあの二人……)
しゅう(もしくは逢の両親と郁夫か……)
しゅう(塚原先輩と森島先輩にはまだ何も言ってないしな)
しゅう(松原たちは今日一緒に行動してたけど、そんな素振りはなかった)
しゅう(となれば……逢の両親と郁夫かな)
しゅう(間違いない、犯人はおしゃべりな郁夫の可能性が非常に高い!!)
しゅう(でもどうやって言葉を発することなく……)
しゅう「う~ん……悩みどころだ」
梅原「お前は一体何を悩んでいるんだ?」
美也「もしかして怖いのー?」
しゅう「は?」
美也「そうだよね」
美也「にぃにみたいな変態がお父さんになったら、その子は気が気じゃないよね!にししし」
しゅう「誰が変態だ、こら!それににぃにって呼ぶな!」
美也「いいんだもーん」
梅原「おい、七咲……じゃなかった。何て呼べばいいんだ?」
美也「逢ちゃん!」
梅原「いや、それはさすがにな……」
しゅう「そのままでいいよ。慣れないだろうし」
梅原「さっきから七咲の声が聞こえないんだが……どうしたんだ?」
しゅう「あ、そういえば!」
逢「……」
しゅう「逢?どうしたの?」
逢「あ、いえ……別に」
逢「あ、ありがとう……ございます」
しゅう(ん?気のせいか……逢の両目がちょっと潤んでいるような……)
逢「私は本当に、最高の親友と先輩を持ちました」
美也「逢ちゃん……」
梅原「七咲……」
逢「私、頑張りますから!これからも応援、よろしくお願いします!」
美也「もっちろんなのだー!!みゃーは逢ちゃんのことを全力で応援するのだ!!」
美也「だって、逢ちゃんはみゃーにとって最高の親友であり……義理のお姉ちゃんでもあるしね!」
しゅう「あ……そっか。法律上そうなるのか」
逢「美也ちゃん……」
美也「頑張ってね、ねぇね!」
しゅう(美也が初めて逢のことをねぇねって呼んだ……何だかすごく新鮮な気がする)
逢「うん!」
梅原「頑張れよ、姉貴!」
逢「えっ?」
しゅう「お前が呼ぶな!気持ち悪い!!」
梅原「いいじゃねぇか……減るもんじゃねぇし」
美也「じゃあね、おやすみ!」
梅原「邪魔したぜ!あとはお二人でよろしくやってくれ!」
しゅう「おい、ちょっと待て!僕に対する応援はなしか!?」
電話は切れた……
しゅう「まったく、薄情な奴らだな!」
逢「……」
しゅう「どうした?」
逢「ねぇね……美也ちゃんが今初めてそう呼んでくれました……」
しゅう「ああ」
逢「クスッ。何だかちょっとだけ嬉しいです」
しゅう「うん……」


そして、この人にも……


七咲家
逢が一人でテレビを見ながらくつろいでいる。
逢「……」
時折、お腹を優しく摩る。
ピンポーン。
逢「はーい」
ガラッ。
逢「あ……森島先輩!」
森島「おはよう、逢ちゃん」
逢「どうしてここへ?あ、とりあえず上がってください」
森島「うん。お邪魔します」
逢「今お茶いれますね」
森島「あ、いいわ。その気持ちだけありがたく受け取っておく」
逢「はい……」
森島「しゅう君は?」
逢「たった今仕事に行ったところです」
森島「そっかぁ。せっかく有給使って逢いに来たのに残念」
逢「それで……どうしてここへ?」
森島「ひびきから聞いたわよ!おめでとう!!」
逢「え?あ、はい。ありがとうございます」
森島「むむむ……あまり嬉しそうじゃない」
逢「私、塚原先輩にお話した覚えないのですが……どうしてでしょう?」
森島「何でも、小児科のひびきちゃんと産婦人科の先生が仲がいいらしくて……」
森島「逢ちゃんのことを聞いたらしいの」
逢「え?塚原先輩ってあの病院の小児科医なんですか?」
森島「もうじき小児科の科長になるって話よ」
逢「そうだったんですか!?」
森島「それで忙しくて逢いに来れなくて、私に祝電を託したの」
逢「祝電?」
森島「はい、これ読んで」
逢「はい」

……七咲しゅう様、逢様
この度はご懐妊おめでとうございます
直接あなた方からお伺いすることなく
仲の良い産婦人科医から勝手に聞いたご無礼
どうかお許しください
私事ではありますが
近々小児科の科長に昇進することになり
忙しない日々を送っております
あなた方になかなかお逢い出来る機会が得られない為
この祝電を以て代わりのご挨拶とさせていただきます
どうか今後とも健やかに末永くお幸せに
過ごされることを心よりお祈り申し上げます

平成○○年12月○○日
○○病院小児科医 塚原響

逢「塚原先輩……」
森島「もう、なーんていい子なの、ひびきちゃん」
逢「私、今度小児科で塚原先輩のお世話になりたいです」
森島「え?どうやって?」
逢「ふふっ」
逢はお腹を摩った。
森島「わぉ!そういう事ね!!」
逢「はい。ふふふっ」
森島「あははは……」
逢「あ、やっぱり私も喉渇いてきました。お茶いれてきますね」
森島「うん。お願い」
逢が席を立って台所へ向かう。
お茶をいれて戻って来ると……
逢「あ、それ……」
森島「ん?これがどうかしたの?」

森島先輩はタイトルのない1冊のB5のノートを手に持っている。
表紙をめくると……
『12月○日晴れ』

森島「これ、日記なの?この字は逢ちゃんの字ね?」
逢「あ、はい。お恥ずかしいながら」
森島「ごめんね。そこに置いてあったから気になっちゃって……」
森島「ちょっと……読んでもいい?」
逢「えっ?あ、どうぞ」


タイトルのない1冊のB5の日記帳……
そのタイトルが付けられるのは約半年後。


『一緒に過ごした半年間』
懐妊から出産予定日までのありとあらゆる出来事が……
日記という形で毎日綴られている。
逢がしゅうには内緒でこっそりと毎日綴っている日記。
実家で逢の身を心配する両親のために……
逢は毎日欠かすことなく綴っている。
そして実家に帰る度に両親がこれを読む。
いわば、近況報告みたいなものか。
その内容をいくつか挙げてみる。

『12月○日晴れ』
今日は今まで一生懸命練習してきたクロールのタイムを測る日。
私は気合いを入れて50mを泳ぎ切った。
今までで一番いいタイムだった。私は嬉しかった。
しかし、その直後だった!
急に腹痛に襲われ、立っていられなくなって、運悪くプールへ転落した。
泳ごうにも腹痛で泳げなくて死ぬかと思った。
でも、コーチが早めに異変に気付いてくれたおかげで命拾いした。
すぐに救急車で病院に運ばれ、コーチが私の携帯から先輩に連絡を入れてくれた。
診断の結果、何と、妊娠3ヶ月だと宣告された。
私は嬉しくてたまらなかった!
その後、病室へ移され、先輩が来るのを待つことに。
早く先輩にこのことを報告したくて胸がドキドキしていた。
そして先輩が到着した。
先輩ったら私を見るなり、
「コーチに変なことされた?」とか「え?余命3ヶ月??」とか
変な質問してきて正直あきれた。
だけど、ちゃんと分かってもらえたみたいで、
「家事とか何か手伝える事があったらぜひ僕に任せてほしい」と
すごく頼もしいことを言ってくれた。
だけど、全然基本が為っていなくて結局私が一から指導する羽目に。
これじゃあ全然頼りないなぁと正直諦めかけていたら
私が疲れて眠っている間に先輩が夕飯を作ってくれた。
色々調べたり私が言ったことをちゃんと覚えていてくれたみたいで、
すっごくおいしいカレーとレバニラ炒めを作ってくれた。
聞けば調理に3時間かかるなど手際の悪さは天下一品だったけど、
私に対する思いやりも天下一品だった。
私は嬉しくてつい泣いてしまった。
そんな私を先輩は静かに受け止めてくれた。
そして先輩は私のためにこれから半年間努力し続けるって約束してくれた。
期待しても……いいよね?

『12月14日曇り』
今日は先輩の24歳の誕生日。
朝、先輩を仕事に送り出した後、私も日課の筋力トレーニングをしに行った。
それが午前中で終わるから午後はゆっくりと商店街を回って、
先輩への誕生日プレゼントを買いに行く予定だった。
でも、予想以上に疲労が激しくて、それどころじゃなかった。
先輩に申し訳ないと思いつつ、家でゆっくり休むことにした。
そして仕事を終えた先輩が帰宅する。
私は先輩に正直に話し、謝った。
毎年恒例の行事だったのに私のせいで毎年恒例じゃなくなった。
でも、先輩は私を抱きしめてこう言ってくれた。
「いいんだよ。その気持ちだけありがたく受け取っておくよ」
「逢の判断は正しかったと思う」
「もしも逢が無理して買い物に出掛けて倒れたりしたら……」
「僕は一生自分を責め続けることになる」
「ひょっとしたら逢と絶交してたかもしれない」
「だって、僕にとって一番大事なものは逢本人なんだから!」
「絶対に無理をしないっていう僕との約束を守ってくれたことが何よりも嬉しいよ」
先輩はプレゼントをもらえなくて残念がるどころか、
私が無事でいたことを大いに喜んでくれた。
本当に私の事を他の何よりも大切に思ってくれている。
私はそんな優しい先輩が大好きだ。

『12月24日晴れのち雪』
今日はクリスマスイヴ。
去年までは先輩とデートしてたけど、今年はどこにも行かないことになった。
先輩がケーキを買って来てくれて、家でクリスマスパーティをすることになった。
先輩の大学時代からのお友達で同僚の松原さんや華村さんも招待した。
今年は久しぶりに二人っきりじゃないクリスマスイヴを過ごした。
先輩も言っていたけど、たまにはこういうのもありなんじゃないかと思う。
先輩の幼馴染みの桜井先輩との思い出話や美也ちゃんの昔話を聞いたり、
松原さんや華村さんの初恋の話を聞いたり、
私自身も自分の過去について勇気を振り絞って話したりした。
先輩たちの話はおもしろかったけど、私の過去話で場がしんみりとしてしまった。
そこで先輩が機転を利かせて、アルバムを引っ張り出して来た。
先輩が私との出逢いから今までの経緯を話すと、
松原さんや華村さんは笑い転げてしまった。
だって、普通あんな変な出逢い方しないし……ある意味運命的な出逢いだった。
とにかく楽しい1日だった。

『1月1日雪』
今日は私の実家に美也ちゃんを招いて、正月を一緒に過ごした。
先輩に内緒でこの日記帳を両親に見せた。
私の両親に褒められてかなり照れていた先輩、可愛かった。
「逢の事は僕に任せてください!絶対に無理はさせません!」と
両親に強く今年の抱負を語っていた先輩、すごくカッコ良かった。
やっぱり自分たちの目に狂いはなかったと両親が言った。
私も強くそう思った。
ずっと、死ぬまで自分の身を任せても大丈夫だって改めて思った。
そんな強い期待を胸に、今年一年を過ごしていこうと思う。

追伸
郁夫、ごめんね。
誕生日近いけど(15日)、お姉ちゃんそれまでこっちにいられないんだ。
代わりに妹の美也ちゃんが来て一緒に遊んでくれるから楽しみにしててね!
「みゃーがいるからだいじょーぶなのだ!にししし」
「だから、ねぇねは安心してバカにぃにの世話を見てあげてね!」
「本当にだらしないんだから……」
クスッ。確かにだらしないにぃにかもね!

『2月○日晴れのち曇り』
妊娠5ヶ月が経過。安定期を迎えた。
今日は一日天気が良さそうだったので、先輩と一緒に散歩に出かけた。
久しぶりのデートかもしれない。
大学時代に同棲していたアパートの周辺を歩いた。
まだ引越してから1年も経ってないからあまり懐かしくは感じられない。
よく一緒に歩いた神社の周辺も歩いた。
この辺り、昔からよくナンパ男が出没する危険な場所だけど、
あの時とは違い、先輩は正真正銘刑事さんなので、
襲って来たら国家権力を行使できるという何よりの強みがあって頼もしい。
幸い襲われなかったから安心した。
先輩に安産のお守りを買ってもらい、ちょっと嬉しかった。
そんなのんびりした日曜日だった。

『2月21日晴れ』
今日は私の23歳の誕生日。先輩は覚えているかな?
去年までは毎年恒例で誕生日プレゼントをもらっている。
たぶん、今年も……いや、今年は無理かな?
だって私が先輩の誕生日をすっぽかしちゃったから。
案の定、先輩から電話が来た。
「大事な会議で遅れるから夕飯先食べててくれ」
私は心のどこかで先輩ならきっとくれるって信じていた。
だけど、こんな夕飯時から会議じゃ終わる頃には店は確実に閉まっている。
誕生日プレゼントを買う余裕なんてない。
私がそう諦めかけていた時、先輩が帰宅した。
「先輩、会議お疲れ様です。意外と早かったですね」
「ああ、ただいま。それと……ごめんな」
「いえ、仕方ないですよ。会議ですから」
「そういう事じゃなくて……嘘吐いてごめん」
「えっ?」
「お誕生日おめでとう!これ、ささやかだけど、誕生日プレゼントな」
「えっ?」
私は驚いて何が何だかよく分からなかった。
とりあえず、包を開けてみた。
中身は……私が以前から欲しいと思っていたアクセサリーだった!
「あ……これって!」
「逢が前すごく欲しがってたのを思い出して急いで買って来たんだ」
「この近辺の店には置いてなかったから1時間くらいかけて隣町まで行って来た」
「先輩、私をびっくりさせるために会議だと嘘を吐いて……」
「そういう事。だから……ごめん」
「……」
「……逢?」
「許しません」
「えっ?」
「私に……嘘を吐くなんて……ひどいです」
「えっ?もしかして……怒ってる?」
「……」
「逢……ご、ごめん。でも僕悪気があってやったんじゃ……」
たぶん先輩は私が怒ってると本気で思い、自分を責め始めているに違いない……
そう思ったから早速行動に出た。
「絶対に許しません。だから……えいっ!」
「逢?んん……」
「んん……んんん……」
「んんん……?」
「はぁはぁ……苦しかった」
「それは僕のセリフだよ。何だよ、怒ってるかと思えば、いきなりキスして?」
「すみません。先輩に騙されるのが悔しかったので、つい仕返しを」
「そ、そっか……ははは」
「ふふふ……」
「でも、どうして誕生日プレゼントを?」
「決まってるじゃないか!今日が逢の誕生日だから」
「でも、私は先輩の誕生日に何も……」
「覚えてないのか?ちゃんと受け取ったじゃないか!気持ちを」
「え?でも、そんなのでいいんですか?」
「そんなのでいい……じゃなくて!それがいいんだよ!」
「僕にとって一番大事なものは逢本人だって言っただろ?」
「すなわち逢の気持ちは僕にとって、一番もらって嬉しいプレゼントだ」
「だから、僕はそのプレゼントに対して今お返しをしたんだよ」
「先輩……ごめんなさい」
「どうして謝るのさ?逢は悪くないって!」
「正直、何ももらえないんじゃないかと、さっきまで不安で仕方がなかったんです」
「先輩のことを疑ってしまいました。だから……」
その時、先輩が私に急接近して来た。
「ごめ……んん……」
「んん……」
先輩は私に「もうそれ以上言うな」と言わんばかりにキスで私を口止めした。
「あ……」
「さあ、早くご飯にしよう。お腹減った」
「はい!」
こうして、私の23歳の誕生日はとても甘い一日に変わった。

他には6月の結婚記念日、美也の誕生日……などなど。


そして7月の始め

七咲家
森島先輩が半年ぶりに訪ねて来て日記を読んだ。
森島「へぇ、あれから色々なことがあったんだね」
逢「はい。本当にどれも懐かしい思い出です」
森島「逢ちゃんのお腹も大分大きくなってきたね」
逢「ええ。そろそろ予定日が近付いて来ました」
森島先輩が逢のお腹に耳をくっ付ける。
森島「あ!今動いた??」
逢「ええ、たぶん。時々動くんですよ!」
森島「そっかそっか。うらやましいな」
逢「森島先輩は……好きな人とかいないんですか?」
森島「そうでさぁねぇ……モテるのはいいんだけど……」
逢「全員タイプじゃない……と?」
森島「そう……逢ちゃんとひびきがうらやましい」
逢「そういえば、塚原先輩も近々ご結婚なさるとか……」
森島「わぉ!そうだったの?」
逢「はい。数日前にうちに葉書が届きました」
逢「先輩と私が仲人を頼まれたんです」
森島「へぇ、そうだったんだぁ」
森島「ひびきめ!どうして私には黙ってるのかしら?」
逢「恥ずかしいとか?森島先輩は高校時代からの親友なので余計に……」
森島「むむむ、ひびきに限ってそれは……。たぶん意地悪なんじゃ?」
森島「もしかして私のことを忘れちゃったとか?」
逢「あ、それはありませんよ。森島先輩じゃあるまいし……」
森島「あーいーちゃーん?いーま言ったね??」
逢「冗談ですよ。クスッ」
森島「このー、許さないんだから!」
逢「も、森島先輩!?何を……」
森島「くらえー、にゃんにゃーん!!」
逢「あは……や、やめてください、森島先輩」
森島「良いではないか、良いではないか!」
逢「く、くすぐったい……お、お代官様、お許しを……」
森島「えいえーい!」

こうして、二人はじゃれ合った……?
いや、森島先輩が一方的に楽しんでいるだけだ。
とにかく、あれから約半年経って季節はもう夏。
いよいよ誕生の時が迫るのであった。



中編へ続く

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