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2010-07-15

第26話(完結)「先輩、私はずっと先輩のそばにいますから」

自宅を目指して雨の中、傘をさしながら全力疾走する七咲……
七咲(やっぱり私は橘先輩を諦める事なんてできない!!)
七咲(例え、傷ついて死ぬことになっても……)
七咲(私は塚原先輩を死ぬまで愛し続けた立花直生君みたいに……)
七咲(最期の最期まで橘しゅう先輩を愛し続けたい!!)
七咲(せっかく手に入れた温もりをもう二度と失いたくない!!)
七咲は俯いていた顔を上げ、笑顔で……
七咲(クスッ。橘先輩、死ぬ時は……一緒ですからね)


新居
橘しゅうの部屋
橘「はぁ。外は雨か。そして塚原先輩に連れて行かれた七咲は帰って来ないし」
橘「でも、もし帰って来たら、まず最初に何て言えばいいんだ?」
橘「別れようって言っちゃったしな」
橘「七咲……どうしてそんなに僕のことが好きなんだ?」
橘「僕とこれ以上関われば傷つくって分かってるはずなのに」
橘「僕は、僕のせいで誰かが傷つくのなんて見たくないんだ」
橘「くそっ。頭痛い。もう9時だし、ちょっと早いけど寝るか」
僕は電気を消して布団に入った。
橘「それにしても……あのお守り、一体どこ行っちゃったんだろうな?」
橘「そしてあの男はどうして僕のことを覚えていたんだ?」
橘「……わからない。あと一歩ですべてを思い出せそうなのに思い出すのが怖い」
橘「僕は……どうして……」
よほど疲れていたのか、僕は布団に入って数分で眠りに就いた。


悪夢(回想)
第20話「先輩、私を忘れたんですか」
橘(ここは……どこだ?見た感じ、山なのか?)
橘(あ……あれは僕と松原と華村?どうしてここに?)

橘(夢)「はぁはぁはぁ……」
松原「もうちょっとで次の休憩所だ。頑張れ」
華村「きっついなぁ、しかし」

橘(夢)「はぁ。どうする?何だか雨足強くなってきてないか?」
松原「確かにな。家出た時は小雨だったのに、本当に山の天気は変わりやすいんだな」
華村「もうちょっと先まで行こうぜ」
橘(夢)「う、うん。ちょっとくらいなら大丈夫か」
松原「よし、出発だ」
橘(登山してるのか。それにしてもひどい雨だな。大丈夫なのか?)



橘(夢)「なぁ、もうやばくないか?この雨、相当強いぞ!」
松原「確かにな。こりゃ山頂までは無理だな」
華村「ええっ。だってまだ20mしか登ってないぜ」
橘(夢)「でも無理だよ、この雨じゃ。視界悪いし」
松原「だな。引き返そうか」
華村「しゃーない」
松原「じゃあ、しゅうちゃん先頭で」
橘(夢)「わかった!」
橘(夢)「……えっ?」
橘(どうしたんだ?何で僕は下りるのを躊躇っているんだ?)
松原「ん?どうした?早く行けよ」
華村「俺らも下りられないじゃないか!」
橘(夢)「わ、わかってるって!」
夢の中の僕は目線を上に送って足場を見ずに発進した。
松原「おーい、大丈夫か?」
華村「おい、バカ!止まれ、そこは崖だぞ!!」
橘(夢)「何も見えない……何も聞こえない!!」
橘(危ない!!落ちるぞ!!引き返せ!!)
夢の中の僕は足場を見ず、彼らの言葉もシャットダウンしていた……

それが命取りとなった!!
ツルッ。
橘(夢)「えっ?何だか身体が軽くなったみたいだ……」
橘(夢)「回転して宙に浮いて……えっ?そんな……」
気づいたら夢の中の僕は崖から足を踏み外していた!!
松原・華村が上の方に見える!!
僕は……どこに行くんだ……どこに行ってしまったんだ!?

松原「しゅうちゃん……しゅうちゃん!!」
華村「あ、あのバカ!!そっちは崖だって言っただろ!!」
松原「しゅうちゃああああああああああん!!!!!!!!」


落下中……
僕はどんどん下に落ちていく……奈落の底へと。
この高さから落ちたらまず助からない。
僕は死ぬのだろうか?
僕はこのまま大切な人を残して死んでしまうのだろうか?
……そんなの嫌だ!!
絶対にその人を幸せにしてみせるって、あの時、その人の両親の前で誓ったじゃないか!
僕はその約束をこんなくだらない事故で破ってしまうのか!?
大切な人を……悲しませてしまっていいのか!?よくない!!
……でも、僕にとって大切な人って誰なんだ?
それに……あの時っていつだったっけ?
いや、今はそんなこと考えている場合じゃない!!とにかく……

僕は……僕は……死にたくない!!生きたい!!
怖い……怖いよ……助けて……七咲!!
……え?僕今、何て思った?誰の名前を呼んだ?
僕は落下中涙を流しながら、自分の胸にそう言い聞かせた。
すると……願いが通じたのか……
僕の懐から安全祈願のお守りが飛び出してきた。
大切な人が今朝持たせてくれた、大事な大事なお守りだ。
僕は咄嗟にお守りを右手で掴み、強く握りしめた!!
その瞬間、お守りが残り3m地点の木の小枝に引っかかって落下が止まった。
と、同時に落下の恐怖から僕の意識も飛んだ……
な……な……さ……き……。


一方、その頃
現実
悪夢にうなされている僕
橘「僕は……僕は……死にたくない!!生きたい!!」
橘「怖い……怖いよ……助けて……七咲!!」
橘「な……な……さ……き……」
七咲「先輩!!」
パシッ。
七咲が僕のベッドに飛び乗り、僕の右手に安全祈願のお守りを握らせ……
僕の右手を両手で包み込むようにして握った!!
七咲「せんぱーい!!」
七咲は僕に必死に呼び掛ける!!


悪夢
一瞬、意識が飛びかけた……
しかし、遠くから僕を呼ぶ声がする……
「先輩!!」
「せんぱーい!!」

夢の中の僕は恐怖から目を強く閉じていたが……
その声に、ふと目を開けると……
何と……安全祈願のお守りが引っ掛かっていた木の小枝が……
誰かの手のように見えた!!
その手は冷たくて、弱々しくて……でも柔らかくて温もりがあった。
え?これは……一体……誰の手なんだ!?
僕を……僕の手を……こんなにも優しく……愛情を込めて握ってくれている。
「先輩っ!」
はっ!?僕がその伸びている手の先を見上げると……
そこにはよく知っている人の顔があった。
橘(夢・現)「七咲?七咲なのか?」
七咲(夢・現)「先輩!先輩!」
そうか。やっぱりこの手は七咲の手だったのか。
七咲逢……僕がこの世界で一番愛している人。僕にとってすごく大切な人。
やっと……思い出せた。そうだよ……キミだよ……七咲。
僕は一生キミを守り、幸せにするってキミの両親の前で誓ったじゃないか!!
こんなくだらない事故で死んでたまるか!?
僕は……七咲のために生きるんだ!!
それが僕の……生きる目的なんだから!!

七咲(夢・現)「先輩、私と一緒に生きましょう!!」
橘(夢・現)「ああ。もちろんだ」
七咲(夢・現)「それじゃあ、早く上がりますよ!!」
橘(夢・現)「ああ。思いっきり引っ張り上げてくれ!!」
七咲(夢・現)「はい。よいしょ……よいしょ……」
現実で七咲が僕の手を全力で引いてこの悪夢から僕を引き上げようと頑張っている。
夢でも七咲が僕の手を全力で引いて暗ーい奈落の底に落ちかかっていた僕を……
明るく安全な場所まで引き上げようと頑張っている。
もう二度とあんな暗ーい奈落の底には落ちたくない。七咲を忘れてたまるか!!


そして、ある程度引き上げられたところで僕は目を覚ました。
すると……

現実
七咲「ん……」
橘(あ……)
気づいたら……僕は七咲とキスをしていた。
七咲は右手で僕の右手を掴んで、左腕を僕の肩に回していた。
七咲「んん……」
橘(七咲……)
僕はしばらくの間、七咲とキスをしていた。
橘「七咲……」
七咲「先輩……」
橘「……」
僕が七咲に何と話しかけたらいいのか分からず、黙っていると……
七咲「すべてを……思い出したんですね?」
橘「……うん」
七咲「よかった。本当に……よかった」
ホッとしたのか七咲は僕から手を離し、そのまま脱力した。
橘「な、七咲!?大丈夫か!?」
今度は僕が七咲を支えた。
七咲「はい。大丈夫です」
その目には……さっきまで必死にこらえていた涙が……溢れていた。
橘「そっか。よかった」
七咲「先輩……」
橘「でもさ、どうして……分かったんだ?」
七咲「ああ、それは……簡単な推理ですよ」
七咲「先輩にはいくつか不自然な点があった……」
七咲「20mの高さから転落したのに、全身軽度の打撲で済んでいること……」
七咲「その原因がどこかに掴まって助かったからだと仮定したら、当然あるはずのものがない」
七咲「そう。手の平にあるはずの過擦り傷です」
橘「……」
七咲「これらの不自然な点はこの安全祈願のお守りですべて説明がつきます」
橘「と言うと?」
七咲「先輩の手の平に過擦り傷がなかったのは当然なんです」
七咲「何故なら、その時先輩が掴んでいたのは木の小枝ではなく……」
七咲「この安全祈願のお守りだったからです!」
橘「お守りを……?」
七咲「さっき私がやって見せたように、先輩は右手でお守りを掴みました」
七咲「そしてそのお守りが偶然木の小枝に引っ掛かって落下を止めました」
橘「なるほど」
橘「でもさ、それが軽傷の原因だったとしても記憶喪失とは一体どういう関係なんだ?」
七咲「直接は関係しません。記憶喪失の原因は他にあるからです」
橘「え?」
七咲「山から転落したことによるショック……そう、高所恐怖症です」
橘「あ!!」
七咲「先輩は確か20mの高さから転落したんですよね?」
橘「うん」
七咲「だったら相当ショックは強かったはず」
七咲「運良くお守りのおかげで助かったとしても高所恐怖症で記憶が飛んだ」
橘「当たり……だな。でも、どうして僕が高所恐怖症だってわかったんだ?」
七咲「さっき塚原先輩からお聞きしました」
七咲「事故発生当時の先輩の様子について松原さんたちがこう言ってたそうです」

回想
第20話「先輩、私を忘れたんですか」
塚原「ねぇ」
松原「はい」
塚原「彼が転落する前、妙な動きしてなかった?」
松原「妙な動き?そうですね……あ!」
松原「そういえば、しゅうちゃん、登りも下りもずっと上を向いてました」
塚原「上を?」
華村「あと、下山の時、俺が『そっちは崖だ!!』って注意したにも関わらず……」
華村「聞こえていなかったみたいで、そのまま崖から転落しました」
塚原「……」

七咲「高所恐怖症の人は怖いから下を見ようとしない」
七咲「怖さから焦って自分の世界に入り込み、周りの声が聞こえなくなる」
七咲「……ですよね、橘先輩?」
橘「す、すごい……全部当たってる!」
七咲「以上が今回の事故と、それによる先輩の軽傷及び記憶喪失の真相です」
橘「……」
僕は驚きの余り、声が出なかった。
七咲「先輩?どうしました?」
橘「あ……ごめん。ちょっと、びっくりしちゃってさ」
七咲「そうですか。クスッ」
橘「あ……えっと……その……七咲」
七咲「はい」
橘「さっきは……ごめんな。助けてくれて……ありがとう」
七咲「さっき……?」
橘「ほら、『別れよう』って言って、七咲を無理やり突き放そうとした……」
七咲「あ……」
橘「でも、あれは本当に七咲のために……」
七咲「もう……いいですよ。気にしてませんから!」
橘「え?」
七咲「現に私はここにいる。それは許したっていう証拠ですよ」
橘「七咲?」
七咲「だって……私は死ぬまで先輩と一緒にいるって決めたので」
橘「……」
七咲「さっきの先輩のおかげでその決心がつきました」
七咲「例え、傷ついて死ぬことになっても……」
七咲「最期の最期まで橘しゅう先輩を愛し続けたい!!」
七咲「こうしてせっかく手に入れた温もりをもう二度と失いたくない!!」
七咲は俯いて涙で濡れたその顔を上げ、笑顔で……
七咲「先輩、私はずっと先輩のそばにいますから!!」
七咲「いつまでも……そばにいますから!!」
橘「七咲……」
橘(あ……七咲の身体、冷えてるじゃないか!)
橘(僕のためにわざわざ傘をさして戻って来てくれたのか!)
橘(何ていう無茶を!!)
橘「ふっ。僕は……つくづくダメな彼氏だな」
七咲「え?」
橘「守るって約束した彼女に迷惑をかけ、逆に守られている」
橘「最低だよ……」
七咲「先輩、そんなこと……」
橘「でもさ」
七咲「はい」
橘「こんなダメな彼氏でもよければ、ずっと一緒にいてほしい」
橘「こんなダメな僕にはやっぱり、しっかり者の彼女が必要みたいだな」
七咲「先輩……」
橘「全く……身体冷えてるじゃないか。無茶ばっかりして」
七咲「いえ、別に寒くないですよ」
七咲「このくらい、水泳で慣れてますし」
橘「よくないよ」
七咲「え?」
橘「ほら、こっちおいで。さっきまで僕が温めていた布団がある」
橘「一緒に入ろう」
七咲「……はい!」
橘「違うって。こうだよ」
七咲「え?」
僕はまず、七咲をベッドの向かって左側に仰向けに寝かせ……
七咲と向きあうようにその隣、ベッドの向かって右側に正座した。
自分の背中に掛け布団をかぶせ、そのままうつ伏せになった。
七咲「先輩?一体何を?」
橘「……」
七咲「え?」
僕は寝ている七咲の肩に手を回し、自分の上体を七咲の上体に乗せ……
橘「好きだよ、逢」
七咲の唇にキスをした。
七咲(先輩……私もです!!)
七咲「ん……」
橘「ん……」
七咲「んん……」
橘「んん……」
僕たちはもはや欲望を抑えきれなくなっていた。
記憶喪失の時にもキスをしたこともあったけど……
あの時の僕は、僕であって僕じゃなかった。
本当の僕は……約一週間ぶりに大好きな人に再会したんだ。
もう二度と……離れたくない。
ずっと、このままでいたい!!
橘(逢……逢……)
七咲(先輩……先輩……)
僕たちはお互いに夢中で気が付かなかったけど……
外は台風の影響で嵐となっていた。
僕たちも外の嵐に負けないくらいに……何度も何度も……
そう、まるで嵐のように……キスを繰り返した。
お互いの存在を証明するかのように……
ただただ、深くて熱いキスを数分間続けた。
橘「もう……寒くないよな?」
七咲「はい。とても……温かいです」
橘「そっか。よかった」
七咲「先輩、ありがとうございました」
橘「いや。感謝するのは僕の方だよ」
橘「逢が、一生僕を愛し続けたいって言ってくれて、本当に嬉しかった」
七咲「先輩」
橘「おかげで、僕もついさっき決心がついたよ」
七咲「決心……?」
橘「逢……聞いてくれるか?僕の……一生のお願いを!」
七咲「はい。喜んで」



一週間後の日曜日
輝日東・七咲家
橘「懐かしいなぁ。去年のゴールデンウィーク以来か」
七咲「私はつい最近帰ったばっかりなのでそんなに懐かしくはないですね」
橘「……」
七咲「どうしたんですか、先輩。早く入りましょう」
橘「その……何て言うか……入るのが怖い」
橘「ご両親にも心配かけたわけだし」
七咲「ああ、それでしたら大丈夫ですよ」
七咲「私の両親なら、事情を話せばわかってくれるはずなので」
橘「そ、そういえば、そうだったな」
七咲「じゃあ、入りましょう」
七咲「ただいま」
橘「お、お邪魔します」
梅原「ようっす!大将!よく来たな!」
橘「う……梅原!?どうしてここにいるんだよ?」
七咲「梅原先輩」
梅原「おお!その様子だと俺のこと思い出してくれたんだな?」
橘「……さあな。お前、誰だっけ?」
梅原「お、おい!!それはねぇよ!!」
橘「人ん家に勝手に入るような奴を僕は友達に持った覚えはないぞ」
七咲「そうですね。通報しましょうか」
梅原「おい、待て待て!!誰のためにここにいると思ってんだ?」
梅原「お前の記憶が戻ったって聞いて、わざわざ先回りして……」
梅原「東寿司から無料でお寿司を届けてやったんじゃねぇか!」
橘「え!?」
七咲「本当ですか!?」
梅原「嘘だと思うならお寿司は持って帰る」
橘「あー!!今やっと思い出したわ!!そういえば、そんな友達が僕にはいたなぁ」
橘「小学校から一緒の梅原正吉君!スポーツが得意で高校時代の所属は剣道部!」
橘「幽霊部員気味の困った一面が!」
橘「高校時代はクラスも一緒で、家も近い!寿司屋の次男坊で僕の親友じゃないか!」
梅原「……驚きの変わり身っぷりだな」
橘「……すまん」
梅原「へへっ、いいってことよ。むしろその食いつきを待ってたぜ」
七咲「ありがとうございます、梅原先輩」
梅原「いいってことよ。さあ、上がって食えよ。みんな待ってるぜ」
橘「みんな?」

七咲家・居間
橘「あ……」
七咲「美也ちゃんに塚原先輩、森島先輩。それに……松原さんや華村さんも!」
美也「にぃに、逢ちゃん、おかえり!!」
塚原「あ、ごめんなさいね。私まで御厄介になって」
森島「私たちも呼んでくれてありがとう」
橘「い、いえ。呼んだのは僕たちじゃないですけど」
七咲「もしかして梅原先輩?」
梅原「そういうこった」
橘「なるほど」
松原「俺、輝日東に来たの初めてだ。何か凄く場違いな気がする……」
華村「お、おい。ウメちゃん。本当にいいのか?」
梅原「七咲のご両親が許可してくれたんだ。素直に喜べよ」
松原「あ、ああ。そういうことなら」
華村「ありがとうございます」
父「今日はゆっくりして行きなさい」
母「皆さんのおかげで橘君の記憶が元に戻ったのだから」
梅原「それじゃ、全員揃ったところで、寿司を食べようぜ!!」
美也「そだね。みゃーお腹空いたよ」
梅原「ほら、大将。挨拶しろよ」
橘「ああ。えっと、皆さん」
橘「今日は僕のためにこのような食事会を開いていただき、本当にありがとうございます」
橘「僕が元に戻れたのは本当に皆さんのおかげなんです」
橘「その感謝の気持ちを込めて……いただきます!!」
皆「いただきます!!」
みんなが笑顔でお寿司を頬張る。
本当にみんな、幸せそうだ。
七咲「塚原先輩、森島先輩、本当にありがとうございました」
塚原「ううん。私は何もしてない。お礼なら、妹さんに言ってくれる?」
七咲「え?美也ちゃんですか?」
森島「そう。すべて美也ちゃんのおかげよ」
塚原「あなたたちが輝日東を去る日の早朝、妹さんが電話をくれてね」
塚原「『このままだとお兄ちゃんも逢ちゃんも、ボロボロになっちゃう』」
塚原「『でも、美也にはどうしようもできないんです』」
塚原「『どうか、美也の代わりに二人を助けてあげてください』」
塚原「……と泣きながらお願いしてきてね……」
森島「ひびきちゃんからその話を聞いて、私も協力しようと思ったの」
橘「美也が……」
七咲「美也ちゃん……」
森島「もう、美也ちゃんったら!な~んていい子なのかしら!大好き!!」
橘「そっか。美也がな……」
七咲「私たちはいい妹といい親友を持ちましたね」
橘「うん!」
松原「親友って、俺のことか?」
橘「まっちゃん!」
松原「おお!初めてそのあだ名で呼んでくれたな!ありがとう」
華村「しゅうちゃん、ありがとうな。おかげで法学の小テストは3人揃って合格だ!!」
橘「ううん。ほんのお礼の気持ちだよ」
橘「法学の小テストのことを教えてくれたお礼に法学の勉強を教えてあげたんだ」
七咲「ええ。ゴリラ先生が怒りますからね」
華村「あああ……」
橘「全く。どうして口が滑ったのかな?」
松原「それはそうと。しゅうちゃんに渡すものがあるんだ」
橘「僕に?」
華村「これ、見覚えあるだろ?」
橘「あ……これは!?」
七咲「先輩が無くしたお守り!?」
橘「どうしてこれを?」
松原「これを見ろよ。事故現場から3mくらい上の木の小枝に引っ掛かっていたんだ」
松原が見せてくれた事故現場の写真には確かに木の小枝に引っ掛かっているお守りが写っていた。
華村「塚原さんに電話で頼まれて二人で取りに行ったんだぜ」
橘「本当ですか?」
塚原「ええ。確かにそうよ」
塚原「七咲が私のアパートから橘君の元に向かった直後、二人にお願いしたの」
塚原「はるかのヒントで七咲も私もピーンと閃いてね」
塚原「橘君の傷の度合いからして落下地点から3mくらいだと踏んで……」
塚原「ちょうど松原君と華村君が肩車をすれば届く高さだと思ってね」
松原「塚原さん、すげぇんだぜ!本当にその通りだった!!」
華村「俺がまっちゃんの上に乗って思いっきり手を伸ばしたら何とか取れた」
松原「ほらよ。こんな大事なもの、もう二度と無くすんじゃねぇぞ」
橘「ありがとう。塚原先輩、松原、華村……ありがとう!!」
七咲「よかったですね、先輩。無くしたお守り、ちゃんと帰って来ましたよ」
橘「このお守り……僕と七咲、二人の絆が僕の生命を救ってくれたんだな……」
橘「ありがとう。大切にする!」
僕はもう二度と失いたくないと思い、お守りを強く握りしめた。
そして自分の懐に大事にしまった。
七咲「先輩、これでやっと証明できましたね」
七咲「お守りは、信じればきっと、その人の役に立ってくれます!」
橘「うん。どんな願いでも信じれば必ず叶うんだな」
梅原「……っと!俺はそろそろ次の配達に戻らないといけないんで、失礼しまっす!」
橘「おい、梅原!もう行っちゃうのか?寂しいなぁ」
梅原「なーに。また逢えるぜ。お互い生きていればな」
塚原(お互い生きていればまた逢える……そうだよね、直生君)
塚原「すみません。私もちょっと急用が。ほら、はるか。あなたもでしょ?」
森島「そ、そうね。……あの!」
母「はい」
森島「私、この子気に入ったので、一緒に遊んで来てもいいですか?」
郁夫「……」
郁夫はいつになく満面の笑み。
母「ええ。どうぞ」
森島「やったね!いこ、郁夫君。お姉ちゃんと一緒に遊ぼうね」
郁夫「……」
郁夫は嬉しそう!!
七咲「もう、郁夫ったら。森島先輩相手だと何であんなに嬉しそうなの?」
七咲はちょっと森島先輩に嫉妬してるようだ。無理もない。
美也「本当だよね!にぃにも森島先輩の前じゃデレデレしちゃって!!」
橘「こら!美也!何てこと言うんだ!?」
美也「あ!お兄ちゃんタンマタンマ!トイレ行って来る~」
橘「あいつ、逃げたな」
松原「えっと、そうだ。俺らもそろそろおいとまを」
華村「じゃ、しゅうちゃん、また逢おうな!」
橘「おい、お前らまで……」
七咲「……」
その場に残ったのは僕と七咲と七咲の両親の4人だ。
もしかして、みんなして僕たちに気を遣ってくれたのか?
僕はとりあえず、七咲のご両親の前で正座した。
七咲も僕の左隣に正座した。
橘「……」
七咲「……」
父「……」
母「……」
橘「この度は……本当に、ご心配おかけしました」
橘「去年のゴールデンウィークに初めてここを訪れ……」
橘「娘さんを幸せにすると誓ったばかりなのに、逆に迷惑をかけてしまい……」
橘「本当に申し訳ございませんでした!!」
橘「でも、彼女はこんな頼りない僕でも一生そばにいてほしいと言ってくれました」
橘「正直言って、僕にはそんな権利、ないと思います」
橘「現にこうして彼女を守るどころか、逆に彼女に守られました」
七咲「……」
父「……」
母「……」
橘「それでも僕は、彼女と一生一緒にいたいです!!」
橘「僕は、心の底から逢のことが好きなんです!!」
七咲「……」
橘「その気持ちは去年のゴールデンウィークの時と全く変わっていません」
橘「……」
橘「彼女を……逢を……僕にください」
橘「今現在、彼女に迷惑をかけた分、一生努力し、必ず彼女を幸せにすると誓います!!」
橘「去年も同じこと言ったのに約束を破って……信用していただけないのも無理はないと思います」
橘「ですが、一生その罪を償っていきたいと思います」
橘「今度こそ、約束を果たせるように頑張ります!!」
橘「なので、どうか!どうかよろしくお願いします」
僕は深々と頭を下げた。
七咲も無言のまま深々と頭を下げた。


回想
橘「逢……聞いてくれるか?僕の……一生のお願いを!」
七咲「はい。喜んで」
橘「……」
七咲「……」
橘「結婚しよう」
七咲「……はい」
橘「本当に?」
七咲「本当に決まってるじゃないですか」
七咲「こんなこと、嘘なんかじゃ言えませんよ」
橘「そっか」
七咲「あ、でも」
橘「ん?」
七咲「今はまだ駄目ですよ。まだお互い学生なので色々不安です」
七咲「大学を出て、立派に就職できたら……その時はよろしくお願いします、先輩」
橘「うん。もちろんだよ。じゃなきゃ何のための学業成就のお守りだ?」
七咲「そうですね。クスッ」

橘「……」
七咲「……」
父「二人とも、頭を上げなさい」
僕と七咲は言われた通りに頭を上げる。
父「橘君」
橘「はい」
父「逢を……よろしく頼んだよ」
橘「え?あ……はい。こちらこそ」
七咲「お父さん?いいの?」
父「いいに決まってるじゃないか。おかしなこと聞くんじゃない」
橘「でも、僕は迷惑を……」
母「橘君、ありがとう。ちゃんと無事に戻って来てくれてありがとう」
母「確かに逢を始め、みんなに迷惑をかけたことは事実」
母「それは一生許されることじゃない」
母「だけどね、あなたはこうして無事な姿をみんなに見せてくれた」
母「ちゃんと、生きていてくれた」
橘「……」
母「生きてさえいれば、いくらだって罪を償うことはできる!」
母「例え何年かかっても、何回失敗してもいずれ必ず逢を幸せにすることはできる」
母「橘君、あなたになら必ずできると信じているわ」
橘「……」
母「私はあなたが逢に迷惑をかけたことなんて全然気にしてない」
母「あなたが無事だったことが何よりも嬉しい」
橘「……」
僕は七咲のお母さんの言葉に一瞬うるっときたが、何とか涙をこらえた。
父「それにな、君を助けようとあんなに必死だった逢の顔を見たら……」
父「逢がどれほど君のことを愛していたかがわかったよ」
父「最初から二人のことは認めていた。というよりも最初から反対はしていなかった」
橘「え?どういうことです?」
母「去年のゴールデンウィーク……橘君と初めて逢った時から……」
母「逢のお婿さんは橘君しかいないなって思ってた」
橘「え……」
僕は何と返事をしたらいいのか分からず、一瞬戸惑った。
七咲「お母さん……ありがとう」
母「いいのよ、逢」
橘「ありがとうございます。僕、一生逢を幸せにします!!約束します!!」
梅原「せいの!!」
皆「婚約おめでとう!!」
橘「み、みんな……聞いてたのか!?」
塚原「ええ……、悪いとは思ったんだけど聞いてたの……ごめんね」
森島「オーキードーキー!!」
パーン!!
橘「うわああ……びっくりした!!クラッカーを耳元で鳴らさないでくださいよ」
橘「心臓止まるかと思った」
美也「そしてまた記憶喪失に逆戻りなのだ~にししし」
七咲「美也ちゃん!!変な冗談はよして」
松原「はいはい。冗談はそのくらいにして。ほら、ケーキの差し入れだ」
華村「俺とまっちゃんで注文したんだ」
松原「二人は知ってるだろ?大学の近くにある銘菓専門店のケーキだ」
華村「ついさっき届いたばっかりだ」
橘「あれ?でも呼び鈴鳴らなかったぞ?」
松原「当たり前だ。外に出て待ち伏せしてたからな」
華村「せっかくの大事なプロポーズだってのに、呼び鈴に邪魔されちゃかわいそうだしな」
橘「……」
七咲「……」
梅原「二人とも赤くなってらー!!さあさ、さっさと食べようぜ」
橘「ふっ」
七咲「クスッ」

こうして僕と七咲は七咲のご両親、それに周りのみんなに認められて晴れて婚約した。
と言ってもあと3年半も待たないといけない。長いなぁ……。
だけど、僕と七咲なら3年半なんて期間、あっという間な気がする。
どれだけ待とうと関係ない。その先に確かな幸せがあるならば。
僕は3年半後まで、そしてそれから先もずっと……
逢を守り幸せにすると誓おう!!今度こそは絶対だからな。

だから、これからもよろしくな。僕の愛しの逢。
僕の未来の妻であり、一生のパートナーでもある七咲逢。




           七咲逢スキエピローグBEST
アフターストーリー「私はずっと先輩のそばにいますから」
               完

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