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2010-07-14

第25話「先輩、私を思い出してください」

翌日
お昼過ぎ
新居
橘「ただいま」
七咲「ただいま」
今朝、七咲が僕の実家に迎えに来て……
僕と七咲は美也と別れてアパートに戻って来た。
美也の奴、昨夜はあんなに悲しそうな顔をしていたのに……
今日は笑顔で僕たちを見送ってくれた。
結局色々あって、梅原や高橋先生とはたった一度しか逢えなかった。
もっと長く向こうにいられたらよかったのに……
すべては法学の講師、ゴリラのせいだ!!
あいつのせいでやむなく帰って来ることになった。
そしてその法学の小テストのことを知らせてくれた華村には感謝しないとな。
橘「どうする?今から行けば4限には余裕で間に合うよ?」
七咲「あ、いえ。長旅で疲れたので、学校は明日からにします」
橘「珍しいな。そんなこと言うなんて」
七咲「先輩こそ、珍しいですよ。自分から学校に行きたがるなんて」
橘「いや?学校行くのは当然だと思うけど」
七咲「そうですか?」
七咲「先輩には、私に起こされなければ大学をサボっていた時期もあったんですよ?」
橘「え?それ本当?」
七咲「はい。先輩が大学に入学したての頃はよく私がモーニングコールしてました」
第10話「先輩、私水泳部の部長になりました」
七咲「こうして一緒に住むようになってからもよく私が先輩を起こしていました」
第18話「先輩、ちゃんと自力で起きてください」
七咲「本当に先輩は出逢った当初からだらしなかったんですから」
橘「う……」
七咲「でも……そんな先輩でも時折すごく頼りになって、かっこよいい一面を見せてくれた……」
七咲「この何とも言えないギャップが私は好きなのかも……」
橘「ん?どうした?ボーッとして」
七咲「あ……いえ。とにかく今日は休みましょう」
橘「あ、うん」
橘(この様子だと七咲は昨夜もよく眠れなかったんだな)
橘(美也の言ってた通り、このままじゃ僕も七咲も身がもたないかもしれない)
橘(僕はともかく、七咲にまでこれ以上迷惑をかけたくない)
橘(なぜなら、僕は……七咲のことが好きなんだ。理由はよくわからない)
橘(だけど!何故か守ってやりたくなる。守らなきゃいけない気がする)
橘(それなのに!僕は七咲に迷惑をかけっぱなしだ。だらしない!本当にだらしない!)
橘(これ以上七咲に迷惑をかけない手段はたった一つだけある!!)
七咲「先輩?どうしたんです?どこか具合でも……」
橘「七咲」
七咲「はい」
橘「落ち着いて聞いてくれ」
七咲「え?あ、はい」
橘「……」
七咲「先輩?」
僕は言い出すのが怖くて一瞬躊躇ったが……勇気を振り絞って言った!
橘「……別れよう」
七咲「え?今何て?」
橘「七咲、別れよう」
七咲「……」
橘「……」
七咲「冗談……ですよね?」
橘「いや、本気だ」
七咲「どうしてですか?だって、先輩……あの時、保健室で……」

回想
第23話「先輩、輝日東って温かいですね」
橘「あの……七咲の彼氏だったっていう橘しゅうがどんな奴だったかは知らない」
橘「僕はそいつには全然及ばないかもしれない」
橘「だけど、こんな僕でよければ、その橘しゅうの代わりになりたい」

七咲「そう言ってたじゃないですか!」
橘「……」
七咲「なのに……どうして?」
橘「……」
僕は返答に困った。
七咲「先輩!ちゃんと理由を教えてください!!」
七咲が両手で僕の両肩を掴み……僕の身体を大きく揺さぶりながら……
今にも泣き出しそうな顔で……僕に必死に問いかけてくる!
本当に真剣な表情だ。見ていてすごく痛々しい。
橘「……」
七咲「もしかして……ご迷惑でしたか?」
橘「え?」
七咲「いきなり私が先輩の彼女だと言い出し、強引に先輩を連れ回した」
七咲「先輩は本当は嫌だったかもしれないのに……私に無理やり付いてきた」
七咲「私は先輩のことを何も考えずに、ただただ自分勝手に……」
橘「それは違う!」
七咲「何が違うんですか?」
橘「迷惑なのは……むしろ僕の方だ」
七咲「え……?」
橘「僕は……七咲のことが好きなんだ!」
七咲「……先輩」
橘「正直、その理由はよくわからない」
橘「だけど!何故か守ってやりたくなる。守らなきゃいけない気がするんだ」
七咲「え?じゃあ、どうして!?どうして別れたいだなんて……」
橘「守らなきゃいけないはずなのに、僕は七咲に迷惑をかけっぱなしだ」
橘「これ以上、僕のせいで七咲が傷つくのを見たくないんだ!!」
橘「好きだからこそ、傷つけたくない!!」
七咲「先輩!」
橘「本当は僕だって別れるのはつらい。嫌なんだ!!」
橘「だけど!そうしないと守りたいものも守れなくなる」
七咲「……」
橘「だから……わかってくれ!!」
七咲「……」
橘「さて、そうは言ったものの、これからどうするか……」
七咲「嫌です」
橘「え?」
七咲「やっぱり先輩を放っておくことなんて私にはできない!!」
橘「七咲?」
七咲「私だって先輩を守りたい!例え自分を犠牲にしてでも」
橘「でも、それじゃあ……」
七咲「例え別れても、私は先輩を独りにしたことを悔み……」
七咲「そのことが原因で私は壊れてしまうかもしれません」
七咲「別れても別れなくても私たちはお互いにボロボロになっていく」
七咲「それだったら、私はずっと先輩のそばにいたい」
橘「七咲……」
七咲「先輩……死ぬ時は……一緒です」
橘「う……」
橘(まさか……こんな答えが返って来るなんて。僕は一体どうすれば?)
七咲「……」
ピンポーン
七咲「え?」
橘「あれ?こんな時間にお客さん?誰だろう?」
僕は立ち上がって玄関のドアを開けた。
橘「あれ?……塚原先輩じゃないですか!」
七咲「あ……塚原先輩」
塚原「こんにちは。橘君に七咲。もしかしてお取り込み中だった?」
橘「あ……いえ」
塚原「橘君。悪いんだけど……ちょっと七咲を借りてっていい?」
七咲「え?」
橘「え?別に……構いませんが」
塚原「そ。じゃあ、七咲、一緒に行きましょう」
七咲「え?どこにです?」
塚原「あ、橘君」
橘「はい」
塚原「後ではるかが来るから。よろしくね」
橘「はるか?ああ、森島先輩ですね。わかりました」
塚原「それじゃ、お邪魔しました」
七咲「え?え?」
バタン。
橘「……あ」
僕は事情がわからず、その場にポカーンと立ち尽くした。
塚原先輩は……一体何しに来たの?


15時頃
塚原先輩のアパート
塚原「ただいま。さ、入って、七咲」
七咲「え?あ……お邪魔します」
塚原「そこに座って。今、お茶出すから」
七咲「あ、いえ。お構いなく」

塚原「どうぞ」
七咲「いただきます」
塚原「……ごめんね。狭い部屋で」
七咲「あ、いえ。さすが塚原先輩ですね。手入れが行き届いてます」
塚原「そう?七咲のアパートの方がキレイだったわよ」
七咲「そんなこと……ないですよ」
塚原「それで……本題に入るけど」
七咲「はい」
塚原「さっきは……何をもめていたの?」
七咲「え……?聞こえてたんですか?」
塚原「ええ……、悪いとは思ったんだけど聞こえちゃったの……大丈夫?」
七咲「あ……はい。塚原先輩でしたら別に」
塚原「もし差し支えなければ私に事情を話してくれない?」
七咲「ええ。いいですよ」


塚原「なるほど。その選択は確かにきついわね」
七咲「はい。どうすればいいかわかりません」
塚原「……」
七咲「……」
塚原「とりあえず……一度休んで気持ちを落ち着けてみたら?」
七咲「……」
塚原「あまり根詰めずに、一度彼のことは忘れて……」
塚原「気持ちをリフレッシュしてから出直す」
塚原「努力も確かに大事だけど、疲れた時には無理せず休んだ方がいいわ」
七咲「でも、私はそれでいいとしても、先輩は……」
塚原「ああ、彼のことならはるかに任せておいて」
七咲「森島先輩に?」
塚原「はるか……ああ見えて、こういう時結構頼りになるから」
七咲「なるほど。確かに」
塚原(そう、私は知っている。はるかはその天然で人の心を明るくすることができる)
塚原(現に、七咲も病院ではるかに元気づけられていた……)
塚原(私は、あの子を信じている。きっと、うまくやってくれるって信じている!)


一方、その頃
新居
橘(塚原先輩、七咲を連れて行ってどうするつもりなんだろう?)
ピンポーン
橘「はーい」
僕はドアを開けた。誰が来るかはさっき塚原先輩から説明があったのでわかっていた。
森島「ジョン、お手」
橘「え?あ、はい」
僕は何故か森島先輩に『お手』をした。
森島「グー!いい子ね!それじゃ、ジョン。散歩に行きましょう」
橘「あの……人違いじゃないですか?僕はジョンじゃなくてしゅうですよ?」
森島「ありゃ……犬違いだったか。それじゃあ、しゅう!行くわよ」
橘「あ……はい」
橘(犬違いって……あのなぁ)

駅前通り
森島「あ!見て見て!あれすごくない?」
橘「あ、はい。すごいです」
森島「むむむ……キミ、何かつまんなそう」
橘「え?あ、すみません」
森島「私とお散歩するのは楽しくないのかな?」
橘「そ、そんなことないです!楽しいです!」
森島「だったら、もっと楽しんで!ほら、笑顔で」
橘「はい!」
森島「……色々悩むのは仕方ないことだよ」
森島「でもね、それをずっと引きずるのは駄目!」
森島「楽しむ時はとことん楽しむ!気持ちを切り替えてね」
橘「わかりました」
橘(森島先輩って……何だか特別な感じがする)
橘(そばにいるだけで僕自身も明るくなっていくような……)
森島「またそんな神妙な顔して……」
橘「すみません!!」
僕は笑顔になった。
森島「そう。それでこそキミらしいよ」
橘「はい!……あ、あの神社」
森島「どうしたの?心当たりあるの?」
橘「前にも行った覚えが」
森島「ちょっと、寄って行かない?私もお守りがほしくなった」
橘「はい。行きましょう」


塚原先輩のアパート
七咲「あの……一つ聞いてもいいですか?」
塚原「いいわよ」
七咲「どうして塚原先輩は私を助けてくださるんですか?」
塚原「七咲は、私の大事な後輩だからよ。ついついお節介を焼きたくなる」
七咲「本当に……それだけなんですか?」
塚原「……というと?」
七咲「塚原先輩は……私に何か隠していますよね?」
七咲「2年生の創設祭の時に、塚原先輩は私に何かを言いかけました」
塚原「……」
七咲「あの時、本当は何が言いたかったんですか?教えてください」
塚原「……」
七咲「……」
塚原「……参ったわね。この話をする時がついに来るなんて」
塚原「はるかにも、他の誰にも話したことはなかった」
塚原「話したくなかった。私のつらい……初恋の話なんて」
七咲「え……?あ、すみません。今のは、聞かなかったことに……」
塚原「別にいいわよ。七咲になら話してもいい」
塚原「はるかには恥ずかしくて言えないけど、今の七咲ならきっとわかってくれるはず」

CLAGAMI~クラガミ~塚原響編~初恋さよなら~より
塚原「それは……私がまだ小学4年生の時だった」
塚原「私はその時からすでに今のような強面でね」
塚原「しかも勉強もスポーツもできなくて」
塚原「だから、クラスメイトの男子からも女子からもいじめを受けていた」
七咲「そんな……意外です!」
塚原「そう思うでしょ?でも、それが事実なの」
七咲「……」
塚原「教科書に落書きをされたり、上履きを隠されたりと……」
塚原「よくあるいじめを受けて泣いてばかりいたわ」
塚原「もういっそのこと登校拒否しようかと諦めていたの」
塚原「でも、そんな時、クラスメイトの一人の男子が私の味方をしてくれた」
塚原「彼は私のことを励ましてくれた!ずっと見守っていてくれた」
塚原「だから私は勉強やスポーツに打ち込むことができた」
塚原「それでも、時々いじめに遭って心が折れそうになったこともあった」
塚原「だけど、彼がずっと私を支えていてくれたから私は頑張ることができた」
塚原「勉強もスポーツも得意となり、自分に自信がついたわ」
塚原「今まで暗かった表情も次第に明るくなっていき、徐々にいじめを受けなくなっていた」
塚原「それどころかクラスメイトにだんだん打ち解けていった」
塚原「彼にも誉められて、本当に嬉しかったわ」
七咲「よかったですね」
塚原「ええ」
七咲「じゃあ、もしかして塚原先輩の初恋の相手って……」
塚原「そう。その彼よ。立花直生(なお)君」
七咲「たちばな!?」
塚原「立つ花って書いて立花君。苗字は同じだけど、漢字が違う」
塚原「なおは、真っ直ぐ生きるって書く」
七咲「立花……直生。いい名前じゃないですか!」
塚原「ええ」
七咲「それが……どうしてつらいんですか?」
塚原「彼、急に転校したの。両親の仕事の都合だって」
七咲「……」
塚原「ちゃんと、彼が旅立つ前に彼から新しい住所を教えてもらったわ」
塚原「だけど……それから1年たったある日を境に彼から返事が来なくなった」
七咲「そんな……!?どうしてですか!?」
塚原「さあね。私にもよくわからなかった」
塚原「でも、私は彼が必ず生きているって信じた。それだけは信じたかったの」
塚原「だから、彼は転校先で私以上に好きな子ができたんだって……」
塚原「勝手に思い込んで、その日を境に私は恋を捨てた」
塚原「彼を失った今、また強面へと戻ってしまった」
七咲「……」
塚原「七咲……泣いて……くれてるの?」
七咲「当たり前じゃないですか!その直生君とはそれからもう逢ってないんですよね?」
塚原「ええ。あれからずっと何の音沙汰もなかった」
七咲「……」

CLAGAMI~クラガミ~塚原響編~10年ぶりの涙~より
塚原「……でもね。つい最近になって偶然、彼のお兄さんに逢った」
塚原「彼のことがやっとわかった」
七咲「え?本当ですか?」
塚原「うん。それも、他ならぬ橘しゅう君のおかげでね」
七咲「え?橘先輩の?」
塚原「あ……こんな言い方、不謹慎かもしれないけど……」
塚原「彼があの病院に運ばれたおかげで偶然巡り逢えた」
塚原「彼を診察した精神科の先生、覚えてる?」
七咲「ええ。確かネームプレートに『立花』って……あ!」
塚原「そう。あの人が直生君のお兄さんの立花直也先生」
塚原「月曜日に大学の友達のお見舞いに行ったら偶然彼と再会して話を聞いた」
塚原「彼、日曜日に橘君の病室で私と逢った時から何となく感づいていたらしい」
塚原「私がかつて直生君と付き合っていた塚原響だってことを」
七咲「それで?お兄さんは何て?」
塚原「直生君は転校してからもずっと私のことを愛していたらしい。心の底からね」
七咲「でも、それならどうして何も連絡を……まさか!?」
塚原「そう。そのまさかよ。私が一番信じたくなかった事……彼の死」
七咲「……」
塚原「さっき、彼が急に転校した理由は両親の仕事の都合だって言ったでしょ?」
七咲「はい」
塚原「あれは……嘘だったの」
七咲「嘘……」
塚原「本当は……彼の持病である小児癌の闘病のためだった」
七咲「癌……」
塚原「彼は幼い頃からずっと癌で、彼の成長とともに癌も進行していった」
塚原「彼は転校の一ヶ月前の定期検診で余命1年と診断された」
七咲「……」
塚原「だから、彼は私を悲しませたくなくて両親にせがんで、転校することに決めたの」
塚原「転校して、そこでずっと生きているって私に思わせたくて」
七咲「じゃあ、その直生君なりの思いやりだったんですね」
塚原「そういうことになるわね。悲しいけど」
塚原「彼は、お兄さんにこんな遺言を託した」

回想
直生「最期に、一つだけお願いしてもいい?お兄ちゃん」
直也「最期だなんて言うなよ!」
直生「ごめん。でも、これだけは言っておきたくて」
直生「もしもお兄ちゃんが将来お医者さんになって、響に逢ったら伝えてほしい」
直也「おう。何だ?」
直生「ありがとうって」
直生「こんなひ弱な僕でも、助けられた人間がいたことを誇りに思う」
直生「僕は幼い頃から病気で、しょっちゅう、僕は何のために生きているんだろうって考えてた」
直生「死にたくなった時もあったんだ」
直生「でもね、響が、僕の生きる目的になってくれた」
直生「僕は響の笑顔を守れて本当によかった。僕はずっと響のことが好きだったんだ」
直生「死んでもあいつのそばでずっとあいつを守り続けたい」
直也「そ、そっか。頑張れよ」

七咲「塚原先輩が……生きる目的」
塚原「彼が私を助けてくれた理由はね……」
塚原「いじめを受けて自殺した彼のお姉さんを救えなかったことらしいの」
塚原「私をお姉さんみたいな目に遭わせたくなくて助けてくれたんだって」
七咲「いい話じゃないですか!」
塚原「ええ」
七咲「それにしても不思議な運命ですね」
七咲「橘先輩が立花直也先生の診察を受けたおかげで……」
七咲「彼と塚原先輩が偶然逢うことができて……」
七咲「そのおかげで10年前の真実を知ることができた」
塚原「ええ。そうよ。最初はお節介のつもりで橘君と七咲を支援していた」
塚原「でも、この真実を知ってからはお節介ではなく恩返しに変わった」
塚原「私は橘しゅう君に感謝している。だから、彼のために全力を尽くしたい」
七咲「塚原先輩!」
塚原「七咲は疲れているだろうから、今日はここに泊まってゆっくり休むといいわ」
塚原「橘君のことははるかに任せておけば大丈夫だから」
七咲「ええ。私もそう思います」
塚原「七咲、真剣に話を聞いてくれてありがとう。ちょっと気が楽になった」
七咲「いえ。私の方こそ、ありがとうございます」
七咲「おかげで何だか元気が出ましたから。本当に塚原先輩のおかげなんです」
塚原「七咲。私が水泳部部長だった時の活動目標って覚えてる?」
七咲「はい。最後まで諦めず、努力する……でしたよね」
塚原「ええ。だから……最後まで諦めず、努力しなさい」
塚原「でも、あの時みたいな無茶は決してしないこと。いいわね?」
七咲「はい!わかりました!!」


一方、その頃
神社
森島「わぉ!お守りいっぱいあるねぇ!」
橘「どれにするんですか?」
森島「うーん……そうでさぁねぇ……」
僕はいっぱいあるお守りを森島先輩と一緒に見渡す。
橘「あ、これ!」
森島「安全祈願のお守り?それがどうかしたの?」
橘「はい。輝日東に帰省する時、七咲が鞄にこのお守りをつけていたんです」
森島「逢ちゃんが?」
橘「はい。それでこのお守り、どうしたのかって聞いてみたんです。そしたら……」

回想
第23話「先輩、輝日東って温かいですね」
橘「あ。その鞄についてるお守り、どうしたの?」
七咲「これは私の入学前に先輩と一緒に行った神社で買いました」
橘「僕が?神社?」
七咲「あ……先輩が覚えてないのも無理はないですね」
七咲「あのアパートの近くに神社があって、そこで先輩と同じものを買いました」
七咲「この安全祈願のお守りと、もう一つは学業成就のお守りです」
七咲「今は旅の安全と、先輩の記憶が戻ることを祈って、安全祈願のお守りを鞄に」
橘「安全祈願のお守り?そんなの僕買ったかなぁ?」
七咲「え?どういうことです?」
橘「実は、記憶を取り戻すために自分の持ち物を一通り調べたんだ」
橘「そしたら筆箱に学業成就のお守りは入っていたけど、安全祈願のお守りはどこにも……」
七咲「え?それ調べたのいつです?」
橘「日曜日。寝る前に調べたんだ」
七咲「日曜日……ということは記憶を失う前!?病院じゃないことは確か」
突然、七咲の表情が変わった。
何やら僕がお守りを持っていないことをすごく気にしているらしい。
橘「どうしたの?お守りがどうかした?」
七咲「い、いえ。別に」
橘「……」
僕が持っていない安全祈願のお守り……それに一体何の意味があるのだろうか?

森島「ここでお揃いの安全祈願のお守りを買ったにも関わらず、キミが持っていなかったんだね?」
橘「はい。覚えていませんが、たぶん無くしたんじゃないかと」
森島「むむむ……一体どこで無くしたんだろうねぇ」
森島「いやはや、謎は深まるばかりだねぇ」
橘「それで、森島先輩はどのお守りにするんです?」
森島「そうでさぁねぇ……わからない。今度ひびきと一緒に来て決める」
橘「そうですか」
森島「あ、ねぇ!」
橘「はい」
森島「あっちの通り、もみじがすごくキレイだよ!行こっ」
橘「はい」
橘(あれ?あの通りも何か見覚えがある!)
森島「ほら、早く!」
橘「は、はい!今行きます」

通り
森島「わぉ!キレイだねぇ!!」
橘「そうですね!」
橘(森島先輩、すごくはしゃいでる!!ちょっといいかも!!)
森島「こーら!また何か余計なこと考えていたでしょ?」
橘「は、はい!すみません。つい見とれていました」
森島「見とれるのも訳ないか。こんなにキレイなんだもんね」
橘「は、はい。キレイです。その……先輩が」
森島「……え?もう、やだ!この子ったら!かわいいんだから!この、この!!」
森島先輩が笑顔で僕を肘で突いてくる。
橘「あ……あ」
僕は少しだけ照れている。
橘「あ、森島先輩」
森島「どしたの?」
橘「お腹、空きませんか?あそこに、お団子屋が!」
森島「あ、本当だ!食べたいね」
橘「僕、買って来ましょうか?」
森島「うん。じゃあ、みたらし団子をお願い」
橘「はい!」

橘「森島先輩!お待た……えっ?」
森島「もう!離してって言ってるでしょ?」
男「残念だったな。もう離しはしねぇよ!!」
男「幸い、この前の強面で気の強そうな女はそばにいねぇしな」
橘(強面で気の強そうな女!?塚原先輩のことなのか!?)
森島「離して!!」
森島(ひびき!!助けて!!)
橘「あいつめ、許さない!!」
僕の身体が無意識に動いた!!
僕はその場に買ったばっかのお団子を置いて咄嗟に森島先輩の元に駆け寄る!
そしてナンパ男と森島先輩の間に割って入る!
橘「そのきったない手で僕の彼女に触るな!」
僕は力一杯ナンパ男の手を森島先輩の腕から引き離した!
森島(この子……今私のことを彼女って!)
男「お前もこの前の!?」
橘「この前だと!?どういう意味だ!?」
男「確か4月の頭だったな。お前は黒髪ショートの女と一緒にいた!!」
男「その時もお前、同じこと言ってた」
男「そいつはどうしたんだ?まさかこの女に乗り換えたのか?」
橘「は?何が言いたいんだ!?」
森島(4月に逢ちゃんと歩いてて同じ場面に遭遇していたの!?)
男「とぼけても無駄だ!お前に用はねぇんだよ」
男「早くその姉ちゃんを差し出せ!!」
橘「何がなんだかよくわからないけど、断る!!」
男「ああん?痛い目に遭いたいのか?」
森島「隙あり!!」
男「ぐお!」
男が僕に注目している隙に森島先輩が不意打ちし、男の足を引っ掛けて転ばせた。
森島「逃げるよ!!」
橘「はい!!」
森島「あ、お団子を拾わなきゃ」
森島先輩がちゃっかりお団子を拾って、僕たちは逃走した。
途中で雨が降り始めたので、コンビニでお弁当を買って帰宅した。


新居
橘「はぁはぁはぁ」
森島「ねぇ」
橘「はい」
森島「さっきの神社と通り、4月の頭に一度逢ちゃんと来たんでしょ?」
橘「……」
森島「神社でお守りを買った後、さっきの通りでキミがお団子を買っている間に……」
森島「さっきの私同様、逢ちゃんがあの男にナンパされた」
森島「そこでキミがさっきと同じことを言って男を撃退した」
森島「……違う?」
橘「そう……だったような気もします」
森島「やっぱり」
橘「何で覚えてないんでしょうか。お守りのこともあの男のことも」
森島「わからない。でも、ゆっくり思い出せばいいと思う」
橘「そうですね。あの、すみません」
森島「ん?」
橘「疲れたので、休んでもいいですか?」
森島「わかった。それじゃ、キミも独りになりたいだろうし、私は帰るね」
森島「傘、借りてっていいかな?」
橘「あ、はい。どうぞ」
森島「ありがとう。お休み」
橘「お休みなさい」


塚原先輩のアパート
塚原「……なるほど」
七咲「森島先輩、お疲れ様です」
森島「ごめんね、お役に立てなくて」
七咲「あ、いえ。ありがとうございます」
塚原「あの男、まだいたんだ。もっと懲らしめるべきだったかな?」
七咲「やっぱり、先輩、あのお守りのことは覚えてないんですかね」
七咲「そしてお守りはどこに無くしたのか……」
森島「あ、ねえねえ!!見て見て、ひびきに逢ちゃん!!」
塚原「はるかったら、またここでテレビ見てる」
塚原「テレビ見るんだったら自分の部屋に行けばいいのに」
七咲「確かお隣でしたね?」
塚原「そうよ」
森島「んもう!固いこと言わないの!」
森島「それより見てよ、このワンちゃん!!おっかしくて」
塚原「はぁ。どうかしたの?」
森島「ほら!自分で登ったくせに冷蔵庫の上から降りられないでいるよ」
塚原「ん……?」
七咲「あ……」
森島「身体がぶるぶる震えて、かわいいわ!」
塚原「これは……」
七咲「高所恐怖症!?」
塚原「あ!そっか。そういうことだったのね!」
七咲「ええ。やっとわかりました。森島先輩のおかげで!」
森島「え?何が?」
塚原「橘君にあった不自然な点の謎……」
七咲「20mの高さから転落したのに、全身軽度の打撲で済んでいること」
塚原「落下途中で運良くどこかに掴まった跡が彼の手の平にはないこと」
七咲「そして……記憶喪失」
塚原「さらには無くなったお守りの行方と……」
七咲「高所恐怖症」
塚原「これですべての謎が繋がった」
七咲「塚原先輩!私、行ってきます!!」
森島「でも、外は雨よ」
七咲「森島先輩がさっきうちから持ち出したこの傘を使わせてもらいます」
森島「あ、なるほど。その手があったわね」
塚原「でも、雨激しくなってきたわよ。今日はやめた方がいいんじゃない?」
七咲「塚原先輩。私、最後まで諦めません!!努力してみせます!!」
塚原「あ、七咲!……行っちゃった」
塚原「止めても聞かないのがあの子の長所かもね」
塚原「だったら……次に私が打つべき手は……!」
森島「ああ、かわいい!!」
塚原「はるか……」



七咲が傘をさして、まっすぐ自宅を目指し、走っている!

待っていてください、橘先輩。
私、わかっちゃったんです。
先輩の記憶喪失の本当の原因が!!
私の推理が正しければ、おそらく今度こそ……
今度こそ記憶が元に戻るはずです!!
私、絶対に諦めません!!



森島先輩の偶然のヒントを元に……
事故の真相に辿り着いた塚原先輩と七咲。
はたして、この二人の推理は合っているのか!?
そして橘しゅうは元に戻るのか!?
次回、いよいよ感動のクライマックス!!



第26話(完結)に続く。

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