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2010-07-09

第23話「先輩、輝日東って温かいですね」

翌朝
新居
七咲が誰かに電話している。
七咲「……っていうわけでね、しばらく講義に出られないの」
七咲「出席とかノートとかお願いね。……うん。ありがとう。頑張るから!」
七咲「じゃあね!」
七咲「……と。塚原先輩や梅原先輩にはさっき電話したし、後は先輩の……」
橘「おはよう。こんな朝早くから何やってるの?」
七咲「先輩、おはようございます」
七咲「先輩も早く支度してください。今日からしばらく輝日東に帰るので」
橘「あ、そう。輝日東に?ふーん。って!ぶーーーーーーっ」
僕は思わず紅茶を吹いてしまった!
橘「き、輝日東だと??何で輝日東に??大学は??」
七咲「大学は……仕方ないのでサボります」
七咲「さっき大学のお友達に電話しました」
七咲「塚原先輩や梅原先輩にも電話しました」
七咲「後は迎えに来る先輩のお友達にも直接事情を説明します」
橘「え?それでいいのか?だってまだ1年生だし……」
七咲「いいんです。大好きな先輩に比べたら大学なんて……」
橘「よくないだろ!?せめて週末まで……」
七咲「待てません!!」
橘「う……」
七咲「もう……嫌なんです……限界なんです……」
橘「……」
七咲「先輩、記憶を失ってから毎晩悪夢にうなされて……」
七咲「私もそんな先輩が心配なので毎晩眠れなくて……」
七咲「このままだと二人ともどうにかなってしまいそうで……怖くて、怖くて」
橘「七咲……」
七咲「早く先輩の記憶を取り戻して……この悪循環から解放されたいです」
橘(松原、華村の言っていた通りだ……まさか七咲も同じ考えだったとはな)
橘(こんなことなら昨日のうちに相談しておけばよかった)
橘(でも、どの道結果オーライだ。よかった)
七咲「それに……」
橘「ん?」
七咲「私、つらいんです……大好きな人が私のこと、全く覚えていないんです」
七咲「今までの人生で初めて本気で好きになった人を私は失いかけている……」
七咲「私が心から慕い、頼りにしていた人が……私の目の前から消えようとして……」
俯いて、今にも泣き出しそうになった七咲を僕は必死に元気づけようとした。
橘「諦めるな!」
七咲「え?」
橘「七咲の彼氏だったっていう橘しゅうがどんな奴だったかは知らない」
橘「だけど!最後まで馬鹿みたいに信じ続けていれば、きっとそいつは帰って来るさ」
橘「だから……行こう!輝日東へ」
七咲「先輩……」
橘「……実は僕も昨日松原や華村に相談して輝日東行こうかなって思っていたんだ」
橘「だけど、何か悪い気がして、それを七咲に相談するのを躊躇っていたんだ」
七咲「そうだったんですか?」
橘「うん。ごめん」
七咲「いえ。別に構いませんが」
橘「それじゃあ、僕も支度する!」
七咲「では、私も」


七咲「お待たせしました」
橘「それじゃ行こうか」
七咲「はい」

こうして僕たちはアパートを出てまっすぐ、故郷である輝日東を目指した!
アパートに迎えに来た松原と華村に事情を説明し、協力してもらうことになった。
松原「おう!そうか。大学のことは俺らに任せておけ!何も心配しなくていいからな」
華村「そんじゃ、夫婦水入らずで行ってらっしゃいませ。ちくしょー羨ましいぜ!」
橘「馬鹿!夫婦じゃねぇよ!」
七咲「変な冗談は辞めてください!!」
華村「わりーわりー!とにかく二人とも元気でな!」
松原「ついでにお土産よろしく」
橘「お土産?そんなものないよ」
松原「おいおい!協力したご褒美はないのかよ、冷たいな」
七咲「あ、お土産でしたら別に構いませんよ」
橘「え?」
松原「マジで?」
七咲「はい。私は大学の友達にお土産を買うつもりなので、そのついでに」
松原「ありがとう。さすが七咲!」
華村「しゅうちゃんも見習え!!」
橘「う、うるさい。覚えてたらな」
松原「じゃあ、俺らは大学行くから。いいなぁ、二人ともサボれて」
華村「まぁ、お土産で許してやるから!とにかく頑張れよ!じゃな!」
橘「ありがとう!松原に華村!」
七咲「ありがとうございます!」
松原「ああ、お礼は記憶取り戻してからでいいから!じゃな!」
駅まで二人に見送ってもらい、僕と七咲は輝日東へ向かう。


道中
橘「あ。その鞄についてるお守り、どうしたの?」
七咲「これは私の入学前に先輩と一緒に行った神社で買いました」
橘「僕が?神社?」
七咲「あ……先輩が覚えてないのも無理はないですね」
七咲「あのアパートの近くに神社があって、そこで先輩と同じものを買いました」
七咲「この安全祈願のお守りと、もう一つは学業成就のお守りです」
七咲「今は旅の安全と、先輩の記憶が戻ることを祈って、安全祈願のお守りを鞄に」
橘「安全祈願のお守り?そんなの僕買ったかなぁ?」
七咲「え?どういうことです?」
橘「実は、記憶を取り戻すために自分の持ち物を一通り調べたんだ」
橘「そしたら筆箱に学業成就のお守りは入っていたけど、安全祈願のお守りはどこにも……」
七咲「え?それ調べたのいつです?」
橘「日曜日。寝る前に調べたんだ」
七咲「日曜日……ということは記憶を失う前!?病院じゃないことは確か」
突然、七咲の表情が変わった。
何やら僕がお守りを持っていないことをすごく気にしているらしい。
橘「どうしたの?お守りがどうかした?」
七咲「い、いえ。別に」
橘「……」
僕が持っていない安全祈願のお守り……それに一体何の意味があるのだろうか?


お昼過ぎ
輝日東駅
七咲「さぁ、着きましたよ。ここが私たちの故郷、輝日東です」
橘「わぁ……ここが輝日東か。あ……あれって!」
梅原「いよっす!大将!俺様がお出迎えだぜ」
橘「あ、梅原」
梅原「何だよ、何だよ。その冷たい態度は。せっかくのお出迎えが台無しだぜ」
梅原「それとも……俺じゃなくて美女の方がよかったか?」
橘「いや、別に。ありがとう、梅原」
七咲「美女?何のことです?」
梅原「あ……いや、久しぶりだな、七咲!!」
七咲「久しぶり?まだ2日しか経っていませんよ」
梅原「あれ?そうだっけか?いやぁ、2日前より美女になってるから気付かなかったぜ」
七咲「お世辞は結構です。それより、美也ちゃんは?」
梅原「うわ……バッサリ斬られた……」
梅原「美也ちゃん……来たくないってよ。逢ちゃんとは逢いたくないって」
橘「やっぱりか……」
七咲「美也ちゃん……」
梅原「何があったかは知らねぇが、早く仲直りしろよ」
梅原「じゃ、行こうぜ。輝日東高校へ」
橘「……ああ」
七咲「……そうですね」

住宅街
七咲「ところで梅原先輩。仕事はどうしたんです?」
梅原「ああ。休暇をもらったよ。親父が行って来いって!」
梅原「くぅ!我が親父ながら、泣かせてくれるぜ!」
梅原「おめぇの大事なダチなんだろ?だったら行って来い!こっちは俺に任せろ……」
梅原「だってよ!」
橘「いい親父さんじゃないか!」
七咲「後でちゃんとお父さんにお礼を言うんですよ、梅原先輩」
梅原「ったりめぇだ!じゃなきゃ罰が当たる!」


輝日東高校・正門
梅原「さぁ、ここが輝日東高校だ。俺たちの母校だ!」
梅原「麻耶ちゃんには予め伝えてあるから早速逢いに行こうぜ」
橘「麻耶ちゃん?誰?お前のガールフレンド?」
梅原「まぁ、そんなところだ。とにかく逢えばわかるって!」
七咲「まさかとは思うけど……」

輝日東高校・職員室
橘「え?ここ職員室だけど?麻耶ちゃんって生徒じゃないの?」
七咲「……」
梅原「失礼します!」
高橋「あら。梅原くんと……それに橘くんに七咲さん!お久しぶりね」
七咲「高橋先生、ゴールデンウィーク以来ですね。お久しぶりです」
梅原「麻耶ちゃん、お久!!相変わらず美人だねぇ」
橘「え?麻耶ちゃんって……先生だったの!?」
高橋「うん?梅原くんに橘くん!麻耶ちゃんじゃないでしょ!」
高橋「高橋先生とお呼びなさい!」
梅原「はいはい!高橋先生」
橘「え?た、高橋先生?うわ……何と言うか……美人」
高橋「梅原くん、『はい』は一回でよろしい」
梅原「はーい」
高橋「それに橘くんも……どうしたの?何か様子が変よ」
梅原「麻耶ちゃん、よくぞ聞いてくれた。実はな……」
七咲「梅原先輩。ちょっと黙ってください」
梅原「うっ」
七咲「高橋先生。大事なお話があるので、場所を変えてもらってもいいですか?」
高橋「大事なお話?……それじゃあ、応接室でいい?」
七咲「はい。お願いします」

輝日東高校・応接室
高橋「それで?大事なお話って?」
七咲「はい。橘先輩の……ことです」
高橋「やっぱりね。さっきの七咲さんの表情がすごく真剣だったからわかったわ」
七咲「高橋先生も薄々感づかれたと思いますが、橘先輩は……記憶喪失なんです」
七咲は僕が記憶喪失になった経緯と輝日東に帰省した理由を高橋先生にすべて説明した。
七咲「……ですから、是非ともご協力をよろしくお願いします」
高橋「わかったわ。私にできることなら何でもするから」
高橋「まずは自己紹介からね」
高橋「私は3年間橘しゅうくんの担任をしていた高橋麻耶です。よろしく」
橘「高橋……麻耶……先生。ああ!それで麻耶ちゃんか!」
梅原「そういうことだ!」
高橋「こら、梅原くん。彼に余計なこと言わないで」
梅原「すいません。あーあ、麻耶ちゃんに怒られちゃったぜ。やったな!」
高橋「梅原くん、あなたは出て行きなさい」
七咲「そうですよ。外で待っていてください」
梅原「な、七咲まで……わかったよ。後でな」
梅原はまさかの退場。
高橋「まったく。いちいち話の腰を折るんだから」
橘(この人が……こんな素敵な人が僕の担任の先生だったのかー!)
橘(僕は……何て幸せ者なんだ……!!)
高橋「それで、話の続きね」
橘「は、はい!どうぞ」
僕は緊張のあまり、背筋をピーンと伸ばした!
七咲「ん?何やってるんです?先輩」
橘「ほら、真面目に話聞くんだよ」
七咲「……はい」

その後、高橋先生は僕の3年間について話してくれた。
担任の目から見て、僕がどんな生徒だったのか話してくれた。
だけど、それを聞いても僕は何も思い出せない。
高橋先生がすごく一生懸命に説明してくれたのに、何だか申し訳ない気持ちになった。
話は3時間にも及んだ。もう夕方だ。空がすっかり赤く染まっている。
幸い高橋先生は授業がなかったので落ち着いて会話できた。
さすがに梅原は待ちくたびれてどこかへ行ってしまったみたいだ。
最後に、高橋先生の許可を得て放課後の校舎内を散歩することになった。
すでに生徒の下校時間が過ぎているので、校舎内に生徒はいない。
最初に教室、図書館、屋上などを順番に回る。しかし、何も思い出せない。
次に二人の思い出が一番深いと思われる校舎裏、プール、ポンプ小屋を回った。

校舎裏
七咲「2年前のお昼休みによくここで二人でお弁当を食べていましたね。覚えていますか?」
橘「うーん……」
七咲「私が毎日先輩の分のお弁当も作ってました。懐かしいですね」
橘「そう言われれば……そうだったような……でもな、うーん」
七咲「校舎裏と来れば……先輩、こっちです」
橘「うん」

プール
橘「あ!ここって……」
七咲「どうしました?」
橘「何だろう?何か引っかかるんだよ。ここで……何かあったはずなんだ!!」
橘「何て言うか……こう……ちょっと衝撃的な出来事が……」
七咲「例えば、私を追って制服のままプールに飛び込む……とか?」
橘「うーん、それ近いような、遠いような。だめだ。わからない」
七咲「大分思い出してきているんですね?でしたら次は!」

ポンプ小屋
七咲「ここはどうです?」
橘「見たところ、ただの汚いポンプ小屋だけど……ここで何が?」
七咲「先輩と私が……キスをしたところです」
橘「え?七咲と……キス??ここでか?」
七咲「はい」
橘「ここが……」
七咲「あの!」
橘「うん」
七咲「先輩が、よければ」
橘「うん……」
七咲「キス……いいですか?」
橘「えっ?」
橘(な……何を言ってるんだ!いきなりキスするのか?)
七咲「あ、やっぱり……駄目ですよね」
橘(で、でも、せっかくのチャンスなんだ!ここで断ったら僕は男じゃない!)
七咲「そうですよね。今の橘先輩は……別人ですから」
橘「いいよ」
七咲「え?」
橘「キスすれば……何か思い出すかもしれないんだろ?だったら!」
七咲「ほ、本当ですか?」
橘「うん。い、いいよ。緊張するけど」
七咲「では、私から」
橘「うん」
七咲の顔が徐々に近づいて来る。そして……
七咲「ん」
橘「ん」
橘(記憶喪失になってから初めてのキス……この感覚、何故か覚えている)
橘(七咲の唇って確かこんな感じだったっけか?すごく気持ちいい)
七咲「んん」
橘「んん」
橘(この感じ、何か思い出せそう!もっと味わっていたい)
しかし、そう思った矢先!まただ!
橘「う……く……」
ドンッ!
七咲「きゃっ!」
僕は突然激しい頭痛に襲われ、痛みに耐え切れなくなって……
思わず七咲を突き飛ばしてしまった!
幸い七咲の後ろにはワラが積んであったので……
それがクッションとなり、七咲は無傷で済んだ。
七咲「先輩!突然何を!?あ……大丈夫ですか??」
僕は思わず、その場にしゃがみ込んだ。
橘「うあ……くそっ。まただ!また……激しい頭痛が!」
橘「何かを思い出そうとするたびにこの頭痛に襲われる」
橘「今せっかく、思い出しかけたのに!!」
七咲「先輩。とりあえずここを出ましょう。立てますか?」
橘「う、うん。何とか」

輝日東高校・保健室
僕は保健室のベッドに仰向けに寝ている。
七咲「今高橋先生にお願いして職員室からタクシーを呼んでもらいました」
橘「あ、ありがとう」
七咲「いえ。それよりもう頭痛は大丈夫ですか?」
橘「うん。さっきよりは引いたけど、まだ痛む」
橘「どうしてだろう。せっかく思い出しかけたのに、頭痛が邪魔する」
橘「よっぽど怖い思いをしたのかな?思い出しちゃいけないのかな?」
七咲「……」
橘「あ、ごめん。その前に言うことがあった」
橘「さっきは……いきなり突き飛ばしたりしてごめん。怪我、なかった?」
七咲「あ、いえ。平気です。ワラの上に倒れたので」
橘「ごめん。本当にごめん。僕、ひどいことしたよな」
七咲「仕方ないですよ。先輩がひどい頭痛に襲われているのも知らずに……」
七咲「私ったらいつまでも先輩を離さなかったので」
七咲「悪いのはむしろ私の方なんです。ごめんなさい」
橘「そんなことない!七咲は悪くない」
七咲「いえ。本当に。悪いのは……私なんです」
七咲「あれは私の欲だったんです。先輩を……離したくなくて」
橘「七咲……」
七咲「せっかく取り戻した先輩のぬくもりを決して無くしたくはないから……」
七咲「二度と……失いたくないから。先輩を絶対に離さないって決めたんです」
橘「……」
七咲「ごめんなさい。ご迷惑……ですよね」
橘「え?」
七咲「……」
橘「……」
七咲はその場に俯いた。
橘「そんなことない!」
七咲「え?」
僕は何故か無性にそう叫びたくなった。
そうせずにはいられなくなったんだ。
橘「僕、嬉しいよ」
七咲「え?先輩?」
橘「七咲が僕のことをそこまで想っていてくれたなんて」
橘「僕も……七咲が好きだから」
七咲「え?ほ、本当ですか?」
橘「うん」
自分でもどうしてかわからない。
突然、聞き覚えのないセリフが口を突いて出た。
でも、前にもどこかで同じセリフを言ったような気もする。
どこだったかまでは思い出せないけど。
七咲「先輩……」
七咲(このセリフ……確か私が温泉で先輩に告白した時に先輩が返してくれたセリフ)
七咲(先輩、覚えてたんだ……覚えててくれたんだ……)
橘「七咲?どうしたの?ボーッとして」
七咲「あ、いえ。嬉しくて……つい」
橘「そっか」
七咲「はい」
橘「あの……七咲の彼氏だったっていう橘しゅうがどんな奴だったかは知らない」
橘「僕はそいつには全然及ばないかもしれない」
橘「だけど、こんな僕でよければ、その橘しゅうの代わりになりたい」
橘「いい……かな?」
七咲「……」
橘「……」
七咲「いいに……決まってるじゃないですか」
橘「七咲……」
七咲「是非とも、私の橘しゅう先輩の代わりになってください」
橘「……」
七咲「でも、言っておきますが、あくまで代わりですからね」
七咲「だって、先輩は私の橘しゅう先輩にはまだまだ及びませんので」
橘「うう……ひどい」
七咲「冗談ですよ、クスッ」
橘「その冗談がきついよ……」
僕は掛け布団で顔を隠した。
七咲「あ、すみません。私、そんなつもりでは……」
橘「冗談ですよ、クスッ」
僕は顔を出してそう言った。
七咲「う……先輩、ひどいです」
橘「ひどいのはどっちだよ!まったく」
七咲「仕方ないですね。ここはお相子ということで」
橘「そうだな」
橘「……ところでさ」
七咲「はい」
橘「僕、実家までの帰り道がわからないんだけど……一緒にタクシーに乗ってくれる?」
七咲「ええ。最初からそのつもりですよ。当然じゃないですか」
橘「やった」
七咲「先輩、はしゃぎ過ぎです。何だか子供みたいですよ」
橘「そ、そうかな……」
七咲「ええ、大きな子供です」
橘「ははは……」
七咲「ふふふっ」
高橋「橘くんに七咲さん。タクシーが来たわ」
橘「はい。すぐ行きます」
七咲「ありがとうございます」
高橋「どういたしまして。二人とも、気をつけて帰るのよ。もう8時なんだから」
橘「え?もうそんな時間ですか?道理でお腹が空くわけだ」
七咲「時間が経つのが早いですね」
橘「高橋先生、ありがとうございます。さようなら」
七咲「ありがとうございます。お疲れ様です」
高橋「二人とも元気でよろしい!また遊びに来てね」
橘・七咲「はい」

高橋「橘くん、記憶喪失になっても七咲さんとあんなに仲がいい」
高橋「これは期待できそうね。クスッ」

その後、僕と七咲は正門からタクシーに乗った。
七咲の道案内でタクシーは無事に僕の実家に到着した。

20時半
橘家前
橘(へぇ。ここが僕の実家か。結構大きいんだな)
七咲「……」
橘「どうした?この前のこと、気にしているのか?」
七咲「はい。美也ちゃんのことが心配です」
橘「そっか。でも、お腹空いただろ?家で何か食べて行けば?」
橘「ついでに美也と仲直りできたら……」
七咲「そうですね。では、そうします」
カチャッ。
橘「え?ドアが勝手に開いた」
七咲「違いますよ。ほら、美也ちゃん……です」
美也「……逢ちゃん」
橘「美也……」
美也「いらっしゃい!!カレー作ったから食べて行って」
七咲「えっ?」
美也「ほら、お兄ちゃんも入った、入った!」
橘「う、うん。ただいま」

橘家・居間
美也「ほら。これがみゃー特製カレーなのだ!!」
橘「うわ……見た目はうまそうだけど……これ本当に食えるのか?」
美也「失礼ね!!お兄ちゃんのバカ。食べてみればいいでしょ?もう」
七咲「そうですよ、先輩。せっかくなのでいただきましょう」
橘「うん。いただきます」

橘「あ……う、美味い!!」
七咲「本当に、おいしいですね」
美也「でしょでしょ?にししし」
美也の作ったカレーは冗談抜きで美味しかった!
七咲「美也ちゃん、このカレー、一体どうしたの?」
七咲「味付けといい、野菜の切り方といい、前よりも断然上手くなっている」
美也「練習したんだよ。逢ちゃんに負けたくなくて一生懸命に」
七咲「美也ちゃん……」
美也「私、二人の役に立てないのがすごく悔しくて」
美也「まずは料理から頑張ってみようかなって思ったの」
美也「料理の本買って、一生懸命練習した!」
七咲「……」
美也「逢ちゃん……この前は本当にごめんね。みゃーもできるだけ努力するから!!」
美也「だから……いつまでもみゃーの親友でありライバルでいてほしい」
七咲「美也ちゃん……ありがとう」
七咲「うん!美也ちゃんは……いつまでも私の親友そしてライバルだよ」
美也「逢ちゃん!!」
七咲「美也ちゃん!!」
二人は涙を流し、抱き合った。
この前とは全く違う、深い深い、そして温かい友情がそこにはあった。
二人とも仲直りできて本当によかった。
美也「今日はもう遅いから泊まっていってよ、逢ちゃん」
七咲「え?いいの?」
美也「いいに決まってるよ!!だってみゃーの親友そしてライバルだし」
七咲「美也ちゃん……」
美也「あ、ちなみに、逢ちゃんの家には予めみゃーが連絡しておいたのだ」
美也「だから安心して泊まっていってね」
七咲「ありがとう、美也ちゃん」
僕はその場に二人を残し、電話機へと向かった。
何となく察しはついていた。

橘「やっぱり梅原か。美也に何か言ったんだろ?」
梅原「バレちまったか。そうだよ、俺があの二人を仲直りさせたんだ」
梅原「うまくいってよかったぜ」
橘「俺がって……まるで自分の手柄みたいに」
梅原「ははは……」
梅原「いやな、美也ちゃんが七咲と喧嘩したって聞いて……」
梅原「何とか仲直りさせる手段はないかと思って、美也ちゃんに喧嘩の原因を聞いたんだ」
梅原「そしたらそれが料理だとわかって、美也ちゃんにアドバイスしたんだ」
橘「そうだったのか」
梅原「ちなみにあのカレー、俺も作るの手伝ったんだぜ」
橘「え?あれ美也一人じゃないのか?」
梅原「ああ。お前は覚えてないかもしれないが、美也ちゃんは相当料理が下手なんだ」
梅原「料理の本を見ながら作ってもうまく作れないんだ、なっさけねぇことに」
梅原「何でも、隠し味とか言って変なものをドバドバ入れるんだ」
橘「え?そうなのか!」
梅原「ああ。だから、応接室からわざと追い出されて、美也ちゃんの元に急いだ」
梅原「仲直りのきっかけとなるおいしいカレーを作るためにな」
梅原「感謝しろよ。大将」
橘「梅原、ありがとう」
梅原「いいってことよ。お前も美也ちゃんも似たもの同士だからな」
梅原「まったく、二人とも世話が焼けるぜ」
橘「梅原……本当にありがとう」
梅原「ああ。お前も頑張れよ。んじゃ、また明日な。おやすみ!」
橘「ああ。また明日。おやすみ!」

橘「……」
橘「梅原……か」
梅原正吉……僕は本当にいい友達を持ったよ。
梅原がこんなにも友達思いな奴だったとはな。
僕は、世界一、幸せだ。

その夜、七咲は美也と一緒に寝た。
この前とは違い、隣の部屋からは時折笑い声が聞こえて来た。
二人とも満面の笑みで本当に幸せそうだ。
結局、二人は一晩中語り明かし、眠れなかったらしい。
僕も二人の笑い声のせいで眠れなかった。
案の定、翌朝三人とも欠伸を連発する始末……。
でも、僕はすごく幸せだ。
眠れなかったおかげで悪夢を見ずに済んだっていうのも一つの理由だけど……
それ以上に、二人の笑い声を聞けたのがとても嬉しかった。
本当に、輝日東って温かいんだな。
ありがとう、僕の故郷・輝日東。
僕は今日も頑張るよ!



第24話に続く。

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