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2010-07-01

第20話「先輩、私を忘れたんですか」

夏休みが終わり、季節は秋。
始業から数週間経った……
10月中旬のある日

橘しゅうの大学
橘「え?登山?」
松原「ああ。しゅうちゃんも一緒にどうかと思ってよぉ」
華村「前々から行きたかったんだよ」
橘(と、登山だと?やめろ!!僕は高い所が大の苦手なんだ……)
橘(登山なんて行った日には……怖くて山から降りられないよ)
松原「ん?どうした?何か顔色悪いぞ?」
橘「へ?」
華村「まさかお前……山が怖いの?」
橘「そ、そそ、そんなことないよ!」
松原「あー。何か明らかに動揺してるぞ」
松原「連れて行かない方がいいんじゃね?」
橘「そんなことない!僕は行くよ」
橘(こいつらに僕の弱点を教えたくない!男として!)
華村「んじゃ、まぁ。本人がこう言ってることだし、一緒に行きますか」
松原「うん。そうだな!」
橘(とは言ったものの、どうしよう……)


新居
橘「というわけで今週の日曜日、登山に行くことになった」
七咲「登山ですか?先輩、山は平気でしたっけ?」
橘「も、もちろんさ」
橘「天気予報では今週一杯晴れだっただろ?」
橘「だから山は絶景だと思う」
七咲「じゃあ、ぜひ山の写真をお願いしますね」
七咲「私も見てみたいです」
橘「う、うん。任しといて」
橘(でもな……正直山怖いんだよな……)


天気予報では晴れ……
しかし当日の朝は小雨がパラついていた……
新居
七咲「雨、降ってますね。本当に大丈夫なんですか?」
橘「大丈夫。あいつらも来るって言ってたし」
七咲「雨だと足場が滑りやすくなって危険なんですよね」
七咲「下山中の先輩にもしものことがあったら私……」
橘「大丈夫だって!今夜ちゃんと帰って来るから」
七咲「あ、そうだ」

七咲「これ、念のため、持って行ってください」
橘「安全祈願のお守り……あの時買ったやつか」
七咲「先輩は危なっかしいので、ちゃんとこれを懐に忍ばせていてください」
橘「あ、危なっかしいは余計だよ。何と不吉な」
橘「でも、そうするよ!七咲がそう言ってくれているんだから」
七咲「先輩、ご武運をお祈りしています!」
橘「うん。行って来るよ」
七咲「今夜は疲れている先輩のためにカレーにしますね」
七咲「必ず無事に帰って来てください」
橘「うん。楽しみだよ、七咲のカレー」
橘「じゃ、行って来ます!」
七咲「行ってらっしゃい」
僕は家を出た。

七咲「先輩……必ず無事に帰って来てください」






橘「はぁはぁはぁ……」
橘(絶対に下を見るな!上だけ見ろ!そうすれば怖くない)
松原「もうちょっとで次の休憩所だ。頑張れ」
華村「きっついなぁ、しかし」

橘「はぁ。どうする?何だか雨足強くなってきてないか?」
松原「確かにな。家出た時は小雨だったのに、本当に山の天気は変わりやすいんだな」
華村「もうちょっと先まで行こうぜ」
橘「う、うん。ちょっとくらいなら大丈夫か」
松原「よし、出発だ」


一方、その頃
新居
七咲(さて、私もサークルに行かなくちゃ)
プチッ。
七咲(えっ?靴ひもが……切れた)
七咲(……)
七咲(いや、そんなまさか)
七咲(昔からよく靴ひもが切れるのは不幸の前触れって言うけど……)
七咲(あの先輩に限ってそんなことは!お守りも持たせたし)
七咲(うん。きっと大丈夫。信じてる)






橘「なぁ、もうやばくないか?この雨、相当強いぞ!」
松原「確かにな。こりゃ山頂までは無理だな」
華村「ええっ。だってまだ20mしか登ってないぜ」
橘「でも無理だよ、この雨じゃ。視界悪いし」
松原「だな。引き返そうか」
華村「しゃーない」
橘(やった!これで帰れる!!帰ったら七咲のおいしいカレーが僕を待っている!!)
松原「じゃあ、しゅうちゃん先頭で」
橘「わかった!」
橘「……えっ?」
僕は下を見てしまった!こ、こ、こ、怖い!!
思わず、その場に足がすくんだ……。動けない。
怖くて動けないんだ。
僕の高所恐怖症がそうさせている!
松原「ん?どうした?早く行けよ」
華村「俺らも下りられないじゃないか!」
橘「わ、わかってるって!」
橘(でもな……いや、ダメだ。ここは勇気を出せ、橘しゅう)
橘(要するに登り同様下を見なければいいんだ!)
僕は目線を上に送って足場を見ずに発進した。
松原「おーい、大丈夫か?」
華村「おい、バカ!止まれ、そこは崖だぞ!!」
橘「何も見えない……何も聞こえない!!」
僕は足場を見ず、彼らの言葉もシャットダウンしていた……
それが命取りとなった!!
ツルッ。
橘「えっ?何だか身体が軽くなったみたいだ……」
橘「回転して宙に浮いて……えっ?そんな……」
気づいたら僕は崖から足を踏み外していた!!
松原・華村が上の方に見える!!
僕は……どこに行くんだ……どこに行ってしまったんだ!?
松原「しゅうちゃん……しゅうちゃん!!」
華村「あ、あのバカ!!そっちは崖だって言っただろ!!」
松原「しゅうちゃああああああああああん!!!!!!!!」


落下中……
僕はどんどん下に落ちていく……奈落の底へと。
この高さから落ちたらまず助からない。
僕は死ぬのだろうか?
僕はこのまま七咲を残して死んでしまうのだろうか?
……そんなの嫌だ!!
絶対に七咲を幸せにしてみせるって、あの時七咲の両親の前で誓ったじゃないか!
僕はその約束をこんなくだらない事故で破ってしまうのか!?
七咲を……悲しませてしまっていいのか!?よくない!!
僕は……僕は……死にたくない!!生きたい!!
怖い……怖いよ……助けて……七咲!!
僕は落下中涙を流しながら、自分の胸にそう言い聞かせた。
すると……願いが通じたのか……
僕の懐から安全祈願のお守りが飛び出してきた。
七咲が今朝持たせてくれた、大事な大事なお守りだ。
僕は咄嗟にお守りを右手で掴み、強く握りしめた!!
その瞬間、お守りが残り3m地点の木の小枝に引っかかって落下が止まった。
と、同時に落下の恐怖から僕の意識も飛んだ……
な……な……さ……き……。


しばらくして……
山の麓
松原「おい、しゅうちゃん!!しっかりしろ!!」
松原「ダメだ……意識がない。呼吸も脈拍も止まってるっぽい」
華村「まっちゃんはすぐそこの公衆電話で救急車を呼ぶんだ!!」
華村「心臓マッサージや人工呼吸は俺に任せろ!!」
華村「高校で救急救命講座を受けていたからな。嫌々だったけど」
松原「わーった!」
華村「しゅうちゃん……お前バカだよ」
華村「あの時俺の忠告を聞いていればこんなことには」
そう言って、華村がまず気道の確保から応急処置を開始した。


病院
廊下
塚原「本当に大丈夫なの?」
女性「うん。ありがとう、ひびきちゃん」
塚原「そう。よかった」
女性「来週には大学に復帰できると思うから、引き続きノートお願いね」
塚原「ええ。任せて。じゃあね」
女性「うん。じゃあね」

塚原「……ふっ。元気そうでよかった」
松原「おい!!目を覚ませ!!」
華村「しゅうちゃん、しっかりしろよ!!」
看護師「大丈夫ですから、お二人とも落ち着いてください!!」
塚原「ん?あれは……橘くん!?」

橘しゅうの病室
医師「生命に別状はありません。幸い全身軽度の打撲で済んでいます」
松原「でも、先生。意識が……」
医師「回復を待つしかないでしょう。しばらく様子を見る必要があります」
華村「そうですか。ありがとうございます」

松原「軽傷で……よかったな」
松原「お前、20mの高さから落下したのによく無事で済んだな」
華村「ある意味奇跡の生還だな。九死に一生」
塚原「なるほど。そういうことだったのね」
松原「えっ?誰?」
塚原「私は塚原響。この橘しゅうくんと同じ輝日東高校出身よ」
塚原「ちなみに私は1個上の先輩」
華村「つ、つかはら……ひびき?」
塚原「ん?どうしたのかな?」
松原「ああ!!思い出した!!七咲と同じ輝日東高校水泳部!!」
華村「おおおお!!そういやそうだった!!」
塚原「ん?七咲?ねぇ、あなたたち、七咲のこと知ってるの?」
松原「知ってるも何も……こいつの彼女なんですよね?」
華村「この前こいつん家でカレーご馳走になりました」
塚原「そっか。知ってたんだ……」
松原「それで、あの……やっぱり七咲に連絡した方がいいですよね?」
華村「でも、家には行ったことあるのに電話番号知らなくて」
塚原「それなら大丈夫よ。もうすでに連絡しておいたから」
松原「仕事はやっ!」
華村「ありがとうございます」
塚原「あなたたちこそ、私の大事な後輩を救ってくれてありがとうね」
松原「い、いえ。お礼なんて……。俺たちはむしろ加害者ですよ」
塚原「どうして?」
松原「だって。こんな天気の悪い日に登山に誘ったせいでこんな目に!!」
華村「雨で足場が滑りやすくなってたのに、下山の時にしゅうちゃんを急かして……」
華村「そのせいでしゅうちゃんが滑って崖から転落したんです」
塚原「……」
松原「本当に……ごめんなさい。俺たちが悪いんです」
華村「ごめんなさい!!」
塚原「ううん。あなたたちは悪くない。だから自分を責めないで」
松原「でも……」
塚原「過去を嘆いても現状は変わらないわ。むしろ自分が辛くなるだけ」
塚原「とりあえず、彼の意識の回復を待ちましょう」
華村「……そうっすね。ありがとうございます。おかげで少し救われました」
塚原「そう。よかった」

塚原先輩の推理
でも……それにしても橘くんには不自然な点がある。
彼らの話では橘くんは20mの高さから転落した。
なのに、全身軽度の打撲で済んでいる。
普通なら即死あるいは脳や脊髄や骨格が大きな衝撃を受けてただでは済まない。
仮に落下途中で運良くどこかに掴まったとしたら手の平に強く擦った跡があるはず。
なのに、素手で登ったはずの彼の手にはそれがない。
そして……意識がないのはなぜ?

塚原「ねぇ」
松原「はい」
塚原「彼が転落する前、妙な動きしてなかった?」
松原「妙な動き?そうですね……あ!」
松原「そういえば、しゅうちゃん、登りも下りもずっと上を向いてました」
塚原「上を?」
華村「あと、下山の時、俺が『そっちは崖だ!!』って注意したにも関わらず……」
華村「聞こえていなかったみたいで、そのまま崖から転落しました」
塚原「……」
塚原(ずっと上を?要するに下を見なかった……いや、見れなかった?)
松原「……て、何かこれ事情聴取っぽくないっすか?」
華村「俺ら……容疑者役?」
塚原「ああ……ごめん。変なこと聞いたね」
松原「あ、いえいえ」
華村「はぁ。もうここに来てから2時間経ったか。遅いな、七咲の奴」
塚原「仕方ないわ。留守だったみたいだから。一応留守録は入れておいた」
松原「雨は止むどころかますます強くなってきている」
松原「そして一向に起きないしゅうちゃん……」
華村「はぁ。一体どうなるのかね」
塚原「……」
七咲「塚原先輩!お待たせしま……あ……先輩!!」
七咲「先輩!!目を開けてください、先輩!!」
松原「大丈夫だよ。死んじゃいない。意識がないだけだ」
華村「すまないな。しゅうちゃんをこんな目に遭わせて」
七咲「あ……松原さんに華村さん……」
松原「いきなりでびっくりしただろ?実はな……」
松原と華村が事の経緯を七咲に説明した。
七咲「……そんなことが」
華村「幸い、俺の心臓マッサージと人工呼吸のおかげで一命を取り留めた」
七咲「え?人工呼吸……?」
華村「ああ。高校で習ったからな。見よう見まねでやってみた」
七咲「人工呼吸……つまり先輩と……ええっ?」
塚原「ん?どうしたの、七咲?」
七咲「い、いえ……別に」
松原「わかった。ひょっとしてあれだろ?」
華村「あれって?」
松原「ほら、人工呼吸のやり方を思い出してみろよ」
華村「気道確保して、患者の口に自分の口を……ああ!!そういうことか!!」
塚原「なるほどね」
七咲「ち、違います!!」

回想
今年の夏休み
海の家
橘「……おっ、七咲の唇、元の赤に戻ってきた。よかった」
七咲「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
橘「あ、待て。口元にラーメンのスープが跳ねてる!」
七咲「え?」
橘「……」
七咲「ん……」
橘「これでよし。あんな小さな子には負けてられない!」
七咲「もう……先輩!いきなりキスをしてまたチアノーゼになったらどうするんです?」
橘「その時はまたキスをすればいい。人工呼吸をね!」

七咲(もう……すべて先輩のせいですよ!!人工呼吸って聞くたびにドキドキしてしまうのは)
塚原「だけど……それを聞いたらますますわからなくなってきた」
松原「何がです?」
塚原「彼は軽傷で済んだのにどうして脈拍と呼吸が止まったのかしら?」
華村「絶叫マシンと同じじゃないですか?落下の恐怖で心臓が止まるって聞きますから」
塚原「落下の恐怖……なるほど」
松原「そういえばさっきから塚原……さん?が……」
塚原「それでいいわよ。もっと気軽に話しかけて」
松原「はい。塚原さんがずっと何か考え事をしてらっしゃったみたいですが……」
松原「一体何を?」
塚原「うん。ちょっとね」
塚原「彼……不自然だと思わない?」
七咲「え?何がです?」
塚原「橘くんは20mの高さから転落した。なのに、全身軽度の打撲で済んでいる」
塚原「普通なら即死あるいは脳や脊髄や骨格が大きな衝撃を受けてただでは済まない」
松原「た、確かに」
華村「偶然じゃないっすか?」
七咲「運良く途中でどこかに掴まれたんじゃ……」
塚原「仮にそうだとしたら手の平に強く擦った跡があるはずよね」
塚原「でも、見て。素手で登ったはずの彼の手にはそれがない」
松原「本当だ!?手の平がきれい……」
塚原「彼が軽傷で済んだ理由……そして未だに意識が戻らない理由」
塚原「その2点がどうも引っかかるのよ」
松原「……」
華村「……」
七咲「……」
梅原「確かに不思議な話っすね!」
美也「お兄ちゃんは超能力者なんじゃないの?」
松原「ぬおおお、びっくりした!」
華村「誰だよ!?」
七咲「梅原先輩に美也ちゃん……どうしてここに?」
松原「梅原……だと?あの例の梅原か?」
梅原「ん?こいつら……誰だ?そしてなぜ俺の名前を知っている?」
美也「塚原先輩が連絡をくれたの」
美也「うちのお兄ちゃんがどうもお騒がせいたしました!」
華村「え?お兄ちゃん?キミ、しゅうちゃんの妹さんなの?」
美也「しゅう……ちゃん?にししし。しゅうちゃんだって」
華村「な……何がおかしい?」
塚原「はいはい。みんな静かにして。ここは病院よ」
梅原「はーい」
美也「わ、わかりました」
塚原「これで全員揃ったわね。自己紹介しましょ」
塚原「まずは、あなた方から」
松原「はい。えっと、俺はそこの橘しゅう……」
松原「通称しゅうちゃんと同じ大学・学部・学科の2年生、松原正義です」
梅原「まつはらまさよし?奇遇だな!」
梅原「俺は橘と同じ輝日東高校出身で元同級生の梅原正吉だ」
松原「うめはらまさよし?ああ!!お前が梅原か!?しゅうちゃんの親友の」
梅原「おおお!!よく知ってんじゃねぇか」
松原「ああ。しゅうちゃんと七咲から前聞いたからな」
松原「俺は『せいぎ』と書いて『まさよし』だ」
梅原「俺は『正しい吉』『まさきち』と書いて『まさよし』だ」
松原「梅原、よろしくな!しゅうちゃんの親友同士な」
梅原「おう!梅と松の仲じゃねぇか!お互い協力し合おうや!」
松原「後は……竹原正よしがいれば松竹梅トリオを結成できるのにな」
梅原「だな」
華村「おっほん!俺は同じく華村政治だ」
梅原「は、花園誠治!?あのイケメン・ハナヂ王子か?」
華村「ちがーう!」
塚原「しーっ。もっと声落として」
華村「ごめんなさい。俺はそんな鼻血野郎とは違う」
華村「いいか?中華の華に村で華村。『せいじ』は政治だ」
梅原「そ、そか」
七咲「二人とも間違えられても仕方がない名前をしてますからね」
七咲「これで3人目ですね」
塚原「ごめん。私を含めて4人」
美也「私も。だから5人」
松原「って!ここにいる俺ら2人以外の全員ってことか!」
華村「ったく。これだから輝日東は」
梅原「えっと、次は順番的に……」
七咲「私はもうすでに自己紹介したので、塚原先輩」
塚原「私もさっきしたわ」
松原「待てよ。さっきから引っかかってたんだが……」
塚原「何が?」
松原「塚原響さんに七咲逢……。ああ!!そうか。そういうことだったのか」
七咲「ん?」
松原「よく考えたらここに輝日東高校水泳部の2トップがいるわけだ!」
七咲「あ……」
華村「そうかぁ。俺らの高校の水泳部の宿敵!!輝日東高校の2トップ!!」
塚原「それが……どうかしたの?」
七咲「あ。そういえば。前にこの人たちが塚原先輩と私を……」
松原「やめろ!!それを言っちゃあおしめぇよ!」
七咲「バケモノって言ってましたよ」
華村「あっちゃあ……言っちゃった」
塚原「バケモノ?……なるほどね。別に怒らないわ。ありがとう」
松原「え?だって……」
塚原「そう呼ばれるくらいの実力の持ち主って意味でしょ?」
華村「は、はい」
塚原「だからありがとう」
華村「い、いえ」
美也「……」
七咲「さて、先輩の意識はいつ戻るのかな」
梅原「大丈夫だって。大将は意外とタフだからな。心も身体も」
梅原「そう、特に心は以前の失恋のおかげで強くなったしな」
松原「え?しゅうちゃんって、以前失恋したのか?」
梅原「ああ。中学ん時な。聞きたいか?」
華村「教えてくれ、ウメちゃん!」
梅原「おいおいウメちゃんはやめてくれ」
美也「あの……」
七咲「ん?美也ちゃんどうしたの?」
美也「あああ!!逢ちゃんまで……それはないよ」
七咲「うん?何が?」
美也「あの……みゃーだけ自己紹介まだなんだけどー!!」
七咲「あ……そういえば」
梅原「あれ?美也ちゃんさっきしてなかったっけ?」
美也「してないよー!みんなひどいー」
塚原「どうぞ、橘さん」
美也「えっと、私はそこの橘しゅうの妹の橘……」
橘「う……うう」
松原「しゅうちゃん?目覚めた??」
華村「しゅうちゃん!?」
七咲「先輩!……先輩!!」
梅原「大将!!」
塚原「橘くん?」
美也「ひどいー。みゃーの大事な自己紹介をぶった切るなんて」
美也「バカにぃに!」
橘「……あれ?ここは……どこだ?」
七咲「先輩。気がついたんですね。ここは病院です」
七咲「先輩は、山から落ちて病院に運ばれたんです」
橘「山?落ちた?僕がか?やめてくれ、つまらない冗談は」
松原「そ、そっか。確かに思い出したくないよな」
華村「とりあえず無事みたいだ。よかったな」
七咲「先輩……本当によかったです!!心配したんですよ!!」
橘「何……泣いてるんだ?」
七咲「あ……す、すみません。私ったら嬉しいのに涙が」
橘「うん?」
僕は周りを見渡した。
ここは……病院?どうして僕は病院にいるんだ?
そして……
橘「誰?」
七咲「え?」
橘「誰なんだ、君たち?」
七咲「え?誰って……」
橘「人の病室で何やってるんだ、君たちは?」
七咲「人の病室って……先輩こそ何言ってるんです?」
七咲「ここは先輩の病室で、私たちは先輩の知り合いですよ。忘れたんですか?」
梅原「おいおい。冗談はよせやい、大将」
塚原「……」
美也「塚原先輩?どうしたんです?」
塚原「ねぇ?キミ」
橘「はい。何でしょう?」
塚原「そういうキミは一体誰なの?」
七咲「え?塚原先輩?」
梅原「誰ってこいつは……」
塚原「黙って」
梅原「あ……はい」
塚原先輩「キミの名前は?」
橘「僕の……名前?」
橘「……」
橘「……思い出せない」
七咲「え?」
橘「僕は……一体誰なんですか!?」
一同「えええええええええええっ!?」
塚原「……」

それは長い長い夢から覚めた後に起きた、不思議な現象だった。
目の前には見たこともない光景が広がり……
目の前には見知らぬ人たちがいて……
僕の顔を不思議そうに覗き込んでいる。
誰なんだ……一体誰なんだ、彼らは!?
そして僕は一体何者なんだ!?
この後一体どうなってしまうのだろうか……



第21話に続く。

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