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2010-06-23

第15話「先輩、私受験頑張ります」

9月上旬
七咲推薦入試前日
16時
某駅
七咲「あ、先輩。お待たせしました」
橘「七咲。お疲れ~」
七咲「ここ思ったよりも田舎なんですね」
橘「もっと都会だと思ってたのか」
七咲「はい。駅構内で迷ったらどうしようかなと思ってしまいました」
橘「あはは……うん、確かにな」
七咲「でも、ここは大丈夫そうですね」
橘「うん。じゃあ、行こっか」
七咲「はい」

駅前通り
橘「そういえば、どうしてホテルじゃなくて僕のアパートにしたんだ?」
七咲「それは前も言ったじゃないですか。節約って」
橘「でもさ、僕なんかが一緒じゃ勉強できないんじゃないの?」
七咲「いえ。面接なので勉強は特に必要ないですね」
橘「そっか。でもさ、僕の部屋狭いし、散らかってるよ」
橘「荷物置いたり寝るスペースがあるかどうか……」
七咲「一晩だけなので……我慢します」
橘「それならいいんだけど……」
七咲「あ。一つだけ気になることが」
橘「ん?」
七咲「食事はどうしますか?外食もいいですが、私が何か作りましょうか?」
橘「ああ、それなら任せといて。もう材料は買ってあるから僕がごちそうするよ」
七咲「先輩が?先輩、料理できるんですか?」
橘「ああ。来年に向けて試しに色々作ってるんだ」
橘「ほら、僕の方が帰りが早かった時、七咲を待って二人ともお腹を空かすよりは……」
橘「僕が作っておく方が効率がいいだろ?」
七咲「ええ。確かに」
橘「僕だって負けてられないさ」
七咲「先輩……」

橘しゅうのアパート前
橘「ほら、これが僕のアパート。すぐ着いただろ?」
七咲「ええ。本当に駅から近いんですね」
橘「どうする?まだ明るいからここから一緒に試験会場に行ってみるか?」
七咲「そうですね。その方が明日道に迷わなくて済むので」
橘「よし、行こう」
七咲「はい」

駅前通り
橘「ところで自信の程は?」
七咲「え、ええ。たぶん大丈夫かと思われます」
橘「七咲にしては妙に自信なさそうだな」
七咲「先輩?今の表現は正しくありませんよ」
橘「何が?」
七咲「今のじゃまるで私が何事にも自信があって強い人間だと誤解されるじゃないですか」
七咲「私はこう見えて結構繊細なんですよ…」
橘「……ごめん。だって今まで幾多の水泳の大会を突破してきた七咲だから……」
橘「てっきり今回の大学受験も自信あるのかと」
七咲「……」
橘「そうだよな。どんなプロだって最初から自信があるわけじゃないんだよな」
橘「どんなに出慣れた大会でもやっぱり不安な時は不安なんだよな」
橘「だけど、七咲は実力の持ち主なんだ。それは誇りに思うべきだよ」
橘「その誇りがあるからこそ自信を持って戦うべきだと思う」
七咲「そう……ですね。その通りだと思います」
橘(まずい。僕のせいで空気が重くなってしまった。話題を変えよう)
橘「そういえばさ、美也って何してんの?」
七咲「美也ちゃんですか?それは先輩の方がご存知なんじゃ……」
橘「いや、まったく連絡とってないんだ。あいつ受験するのかな?」
七咲「するみたいですよ。去年アニメ研究所を卒業したそうです」
橘「ああ、中多さんと組んでいたアレか。連中ロクな奴じゃないからな」
橘「二人とも心配だったんだ」
七咲「いえ、卒業したのは美也ちゃんだけだそうです」
橘「中多さんはまだ続けるのか……」
橘「美也はどっか受けるとか言ってた?」
七咲「それがですね……模試の成績がひどすぎてどこにも行けないそうです」
橘「あっちゃあ!美也らしいって言ったら美也らしいけど……」
橘「先が思い遣られるな」
七咲「ええ。一般試験を受けない私でさえ努力して順位が真ん中よりも上なのに……」
橘「ああ。確か前そんなこと聞いたなぁ」
七咲「クスッ。でも、そのおかげで評定平均値4なので推薦は余裕なんですけどね」
橘「七咲にとってネックだった数学を一緒に克服していた時期があったなぁ」
七咲「懐かしいですね」

七咲の試験会場前
橘「……と話しているうちに、ほら。目の前に見えるアレが試験会場だよ」
七咲「……建物が大きいですね。びっくりしました」
橘「アパートからここまではほぼ一本道だったな。会話に夢中でも迷わず辿り着けたな」
七咲「ええ。これなら明日の心配は要らなくなりましたね」
橘「じゃあ、帰ってご飯にしようか。僕もう腹ペコだよ」
七咲「私もです」

駅前通り
七咲「ところで先輩。今夜のメニューは何ですか?」
橘「肉野菜チャーハンにしようかと思ってる」
橘「ほら、七咲は明日受験だから、肉野菜をしっかり食べてスタミナを付けた方がいいかなって」
橘「僕一人だともっと簡単なメニューで済ますんだけど、今回はそうもいかないだろ」
七咲「お気遣いありがとうございます」
橘「僕の自慢の逸品だからな。食べて感動のあまり泣いたりするなよ?」
七咲「さあ。それはどうでしょうね」
橘「おっ。今僕の腕を疑ったな?見てろ、泣かせてやるからな」
七咲「ふふっ。臨むところです」

橘しゅうのアパート
橘「ただいま。さあ、入って。汚いとこだけど」
七咲「お邪魔します。でも、先輩にしては綺麗なんじゃないですか?」
橘「……それどういう意味?」
七咲「あ、いえ。何でもありません」
橘「じゃあ、早速支度するか」

橘「野菜はこう切って……」
七咲「ああ、先輩。それは違います。ここはこう切るんです」
橘「え?そうなの?」
七咲「はい。こうした方が火の通りがいいんですよ」
橘「えっと、こうだっけ?」
七咲「いえ、こうですよ。手、そのままにしててくださいね」
橘「……!!」
橘(な、七咲が僕の手の上から包丁の柄を掴んでいる……)
七咲「ここはこうやって……」
橘(七咲の手、温かくて柔らかい。ちょっと……意識してしまう)
七咲「こうですよ。ん?先輩?聞いてますか?」
橘「……」
七咲「あの、先輩?どこか……具合でも悪いんですか?」
橘「あ、いや。何でもないんだ。ただ、ちょっとだけ……」
七咲「ちょっとだけ?」
橘「意識……してたんだ。七咲が僕の手を触った時」
七咲「あっ」
頬をちょっとだけ赤らめる七咲。
橘「あ、変なこと言ってごめん。早く、作ろうか」
七咲「そ、そうですね」



橘「おいしい!はぁ。完全に僕の負けだ。やっぱり七咲には勝てないよ」
七咲「ふふっ。先輩が料理で私に勝とうだなんて100年早いですよ」
橘「おっ。言うねぇ。でも勝てなくて当然か」
橘「幼い時から家事を手伝っていた七咲には敵わないや」
橘「経験の差ってやつか」
七咲「そうですね」
橘(七咲は今まで、ずっとそうやって苦労してきたんだもんな)
橘(だから、何としても僕が幸せにしてあげないと)
七咲「ごちそうさまでした。後片付けは私がやっておくので……」
七咲「先輩は先にお風呂にどうぞ」
橘「うん。ってこれじゃどっちが受験生かわかんないな」
七咲「クスッ。そう言われてみれば」

僕が先に風呂に入ってる間に七咲が夕食の後片付けを終え、
入れ替わりで七咲が風呂に入った。
「覗かないでくださいね、橘先輩」
やっぱり言われると思ったよ。僕は変態じゃないのに!!
七咲の着替えられる場所がないので、七咲は風呂でパジャマに着替えたようだ。

橘「か、かわいい……」
七咲「えっ?あ。これ似合いますか?」
橘「そのパジャマすごく似合うよ!」
七咲「そ、そうですか。ありがとうございます」
橘「じゃ、じゃあ、明日に備えてそろそろ寝るか」
橘「と言っても、ベッドは一つしかないんだよな」
橘「七咲は僕のベッドを使ってよ。僕はリビングで寝るから」
七咲「え?それは先輩に悪いですよ」
七咲「先輩こそベッドを使ってください」
橘「何を言ってるんだ?大事な受験生を変な所で寝かせて……」
橘「風邪でもひかせたら僕はどう責任をとればいいんだ?」
七咲「でも、私も先輩に風邪をひいてほしくないです」
七咲「受験生ではないですが、先輩だって私にとって大事な人ですから」
橘「七咲……。でも一体どうすれば?」
七咲「簡単なことです。先輩、ここどうぞ」
橘「え!?な、七咲の……隣……だと??」
橘「1つのベッドに……男女2人。まさかとは思ったが本当にやるのか?」
七咲「嫌……ですか?」
橘「別に嫌じゃないんだけど、七咲はそれでいいの?」
七咲「はい。私は別に構いません。先輩がよければ」
橘「じゃ、じゃ、じゃあ、ここに寝るね」
七咲「は、はい」

まさかとは思ったが……
この展開は最初から予想していたが……
本当に実現してしまうとはな。
大学受験前夜に何やってるんだよ、僕らは……
ほ、本当にこんな甘い展開でよかったのだろうか……

橘「……」
七咲「……」
お互いに頬を赤らめる二人。
橘「な、七咲?」
七咲「は、はい。先輩」
橘「何か、すごく緊張するなぁ」
七咲「え、ええ。明日の受験が」
橘「そ、そっか。そうだよな」
七咲「は、はい」
橘(ど、どうしよう。この後って何話したらいいんだ!?)
橘(緊張し過ぎて頭が真っ白に)
橘(興奮し過ぎて眠れないよ)
橘「あ、あの、七咲」
七咲「はい」
橘「明日の面接は緊張するだろうけど、落ち着いて頑張るんだぞ」
七咲「はい。そうします」
橘「七咲の人柄の良さはみんなが認めているからな」
橘「塚原先輩、森島先輩、向井さんや他の水泳部員、高橋先生、それに僕も」
橘「その他大勢の人が応援してるからな」
橘「この前の向井さんとの会話を聞いてて思ったんだ」
七咲「はい」
橘「七咲のその優しさは周わりのみんなに向けられているんだなって」
橘「だから、きっと、面接官も一目見ただけで見抜いてくれるさ」
橘「自信持って頑張れよ」
七咲「先輩……。ありがとうございます」
橘「ううん。いいって」
七咲「……よかった」
橘「何が?」
七咲「私、実は不安で不安で仕方なかったんです」
七咲「先輩がそばにいてくれないとなかなか自信が持てなくて」
橘「七咲……」
七咲「だから無理を言って先輩のアパートに泊めさせてもらうことにしたんです」
七咲「試験前夜はものすごく不安で緊張して眠れなくなりそうだったので……」
七咲「先輩にそばにいてほしかったんです」
橘「七咲……そうだったのか。ごめんな、さっきはあんな適当なこと言っちゃって」
橘「七咲がそこまで不安だったなんてわからなかったから」
橘「それなのに僕と来たら、七咲にしては妙に自信なさそうとか言っちゃって……」
橘「ごめん。本当にごめん」
七咲「いえ、いいんです。あれはあれで励みに……」
いい終わらないうちに……
橘「七咲!」
七咲「あっ」
天井を向いていた七咲の顔を両手で僕の方に向けてそのまま唇にキスをした。
橘(こんなんで……許してもらえれば……)
七咲「ん……」
橘「これ、お詫びのつもりなんだけど……ど、どう……かな?」
七咲「……ダメですね。そんなんじゃ全然気持ちが伝わりません」
橘「え?じゃあ、どうすれば?」
七咲「お詫びと言うならもっとこうでなくちゃダメですよ」
今度は七咲から、先程よりも強く長いキスをした。
七咲「んん……」
橘(そうきたか!僕も負けないぞ)
僕の方が押されがちになっていたので、思いっきり強く押し返した。
七咲「んん……」
七咲も負けじと強く押し返してきた。
橘(それならもっと強く!)
七咲「んんん……んんん……」
橘(うっ、僕も息が苦しくなってきた。そろそろやめよう)
七咲「はぁはぁはぁ……」
橘「はぁはぁはぁ……あははは」
七咲「あははは」
橘「まったく、明日は大事な試験だってのに何やってんだよ?」
七咲「それは私のセリフです。先輩ったらいきなりキスをしてきて」
七咲「本当に、えっちな先輩ですね」
橘「あははは……」
七咲「笑い事じゃないです」
橘「ごめん、ごめん。でもさ、よく考えたら試験よりもこっちの方が緊張するよな」
七咲「あ……確かに。そう言われてみれば」
橘「だろ?試験よりも緊張することを平気でやっているっていうことは……」
七咲「明日の試験は案外楽かもしれませんね。クスッ」
橘「そういうこと。って、早く寝なきゃまずいぞ」
七咲「もう、先輩のせいで緊張して眠れません」
七咲「やっぱり先輩には変な所で寝てもらった方がよかったですね」
橘「馬鹿言え。風邪ひくじゃないか。あ、でもむしろ風邪ひいた方がいいのかも」
七咲「私は看病しませんよ。風邪ひきたいならどうぞ、ご勝手に」
橘「ひどい……」
七咲「冗談ですよ、クスッ。一緒に寝ましょう、先輩」
橘「一緒にって、ここもともと僕のベッドなんですけど」
七咲「そうでしたっけ?ま、いいです。別に」
橘「うう……。最後までしてやられたな」

こうして僕と七咲は試験前夜にちょっとだけえっちな馬鹿騒ぎをした。
本当、何やってるんだろう?


七咲推薦入試当日
7時
橘「ん……ああ。もう、朝かぁ」
橘「僕はいつの間に眠ってたんだろ?」
橘「あれ?そういえば、隣に寝ていた七咲がいつの間にかいなくなってる」
橘「しかも台所からはいいにおいが……七咲かな」

橘「七咲、おはよう」
七咲「あ、先輩。おはようございます」
七咲はすでに輝日東高校の制服に着替えていた。
橘「おっ!ご飯に目玉焼きに味噌汁……定番の朝ご飯だな」
七咲「冷蔵庫にあったもので作りました。先輩の分も用意したのでどうぞ」
橘「ありがとう。いただきます」
七咲「いただきます」
橘「昨日あんなことがあったのにお互いよく眠れたな?」
七咲「本当に不思議でした。私もいつの間にか眠っていました」
橘「どう?緊張はとれた?」
七咲「ええ。おかげさまで」
橘「ならよかった」
七咲「本当にえっちな先輩ですよ、まったく」
橘「あははは…」
七咲「ふふっ」
橘「こうして二人で朝ご飯を食べているとまるで新こ……」
七咲「あっ。受験の準備は大丈夫だったかな?」
橘「う……」
七咲「ん?今先輩何か言いました?」
橘「いえ。何でもありません」
七咲「ならいいです。クスッ」
橘(よくないよー!!)
七咲「さてと、それじゃ私はそろそろ行く準備をしますね」
橘「頑張れよ」
七咲「はい」

七咲「受験票は持った。面接だけど筆記用具もある」
七咲「他には……特に忘れ物なし」
橘「一緒に行くか?」
七咲「いえ。私一人で十分です」
橘「本当に大丈夫か?」
七咲「ええ。逆に先輩が一緒だと恥ずかしいです」
橘「……そっか。そうだよな」
橘(彼氏を連れて受験しに来る受験生がどこにいるんだよ??)
七咲「じゃ、行って来ます」
橘「……」
七咲が後ろを向いてドアを開けようとした、その時……
橘「待って」
七咲「はい?」
橘「忘れ物だよ」
七咲の振り向きざまに、七咲の唇に軽くキスをした。
七咲「あっ。ん……」
橘「……頑張れよ。行ってらっしゃい」
七咲「行ってきます」
七咲は少し照れているようだ。当たり前か。


こうして七咲を見送った。
この日は午前中に面接が終わり、午後ちょっとだけ七咲と街を散歩した。
本人曰く緊張せずに落ち着いて、いつも通りの七咲で面接に臨んだようだ。
やっぱり昨夜のアレが効いたのだろうか。うん、きっとそうだ。
七咲のお役に立てて僕は光栄だ。
そして、受験を終えた七咲は再び輝日東へと戻って行った。
別れ際にまたキスをした。
七咲が合格しているといいな。うん、七咲なら合格してるだろう。
そう信じて僕は合格発表の日を待つことにした。



第16話に続く。

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