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2010-06-22

第14話「先輩、私2度目のインターハイ頑張ります」

季節は過ぎ、大学の試験も無事に終わり、夏休みに入った。
僕は勉強して何とかすべての試験科目を合格した。たぶん。
でも、松原と華村は……。

松原「ちくしょうううううううう!!」
華村「何で俺が不合格なんですか!?」
橘「そんなもん、勉強しなかったからに決まってるじゃないか」
松原「よく言うよ。自分は勝ち組のくせしやがって!」
橘「勝ち組?僕が?」
華村「精神的に支えてくれる彼女がいる奴はうらやましいよなぁ」
橘「精神的に支える?馬鹿を言っちゃいけない……」

回想
試験数日前の夜
橘しゅうのアパート
七咲と電話している。
七咲「先輩。アルバイトもいいですが、ちゃんと勉強してますか?」
橘「う……」
七咲「……してないんですね?はぁ」
橘「ご、ごめん」
七咲「いいですか?もし先輩が留年でもしたら、その時は絶交ですからね」
橘「え?ぜ、絶交だと……??」
七咲「はい。留年すると余計学費がかかりますよね」
橘「ああ。当然だな……」
七咲「……ただでさえ苦しい家計なのに、先輩の留年のせいで余計苦しくなったら困ります」
橘「そ、そう……だな。わかった、次の試験頑張ってみるよ」
七咲「はい。期待してます!」
橘「うう……」

橘「精神的に支えるどころか、余計プレッシャーを与えてくれたよ、まったく」
橘「絶交なんてことがないように頑張らなきゃいけない」
松原「……」
華村「……」
橘「ん?どうした?」
松原「……行こうぜ」
華村「……ああ」
橘(僕、何かまずいことでも言ったかな?)



その日の夜
橘しゅうのアパート
七咲と電話している。
橘「……でさあ、何とか全部合格できたと思う」
七咲「お疲れ様です。先輩、頑張ったんですね」
橘「誰かさんが絶交とか言うもんだから……」
七咲「クスッ、誰が言ったんでしょうね」
橘「……」
橘(またとぼけて……七咲らしいな)
七咲「それはそうと、先輩。夏休みの予定は?」
橘「ああ、ごめん。夏休みは帰れそうにない」
七咲「アルバイトですね」
橘「うん。まだ全然足りないからな。夏休みが稼ぎ時なんだ」
七咲「頑張ってください」
橘「うん」
橘「七咲の予定は?」
七咲「はい。8月の中旬にまたインターハイがあります」
橘「どこ?」
七咲「えっとですね……」

橘「え?それって僕んちのすぐ近くじゃないか!?」
七咲「はい」
橘「よし、今年も応援に行くよ!!」
七咲「え?でもアルバイトは……」
橘「店長に頼んで日程を変更してもらうよ」
橘「だって、これは七咲にとって大事な大会だもんな。行くに決まってる!」
七咲「ありがとうございます」
橘「この大会で8位以内になれば、特殊な推薦が狙えるんだろ?」
七咲「ええ。ちょっと日程は急ですが、インターハイで入賞して……」
七咲「その3日後までに出願すれば試験を受けられます」
橘「ずいぶん急な話だなぁ」
七咲「そうですね」
橘「試験って……書類と面接だっけ?」
七咲「はい。それでもう10月の頭には合否がわかるそうです」
橘「早いなぁ。そしたらさ、僕といっぱい遊べるじゃないか!」
橘「頑張ろうよ!僕も絶対に応援に行くから」
七咲「来てもいいですけど……」
橘「けど?」
七咲「またあんな大声出さないでくださいね」
七咲「恥ずかしくて余計集中できなくなります」
橘「う……うん。気を付ける」
七咲「はい。そうしてください。クスッ」
橘「それじゃ、お互いに頑張ろうな」
七咲「ええ。もちろんです」



8月中旬
インターハイ当日
12時
インターハイ会場
橘(よし、会場に到着したぞ)
七咲たち輝日東高校水泳部の一行は前日にホテルに泊まって、すでに会場入りしている。
輝日東高校水泳部女子は、部長の七咲を含め……
3年生5名、2年生4名、1年生1名の計10名が出場する。
たった1名だけ出場する1年生は、前に七咲が言っていた練習熱心な子で、名前は向井るり。
去年は直前まで他校志望だったらしいが、インターハイでの七咲の勇姿を見て……
七咲に憧れて輝日東高校に入学したらしい。
そして七咲の熱心な指導で徐々に1年生の中で頭角を現し……
1年生でたった一人、インターハイの代表に選ばれた。
七咲同様、彼女も将来有望なアスリートと言えるだろう。
「先輩。私だけじゃなくて向井さんや他の部員もちゃんと応援してあげてくださいね」
と、七咲に言われたので、そうすることにした。


13時
競技開始!
まずは100m自由形予選。
1年生が最初で、次に2年生、最後に3年生という順に行われた。
向井さんは序盤から独走し、その組のトップとなった。
七咲も負けていない!同様に序盤から独走し、その組のトップとなった。
しかも皮肉にも二人と同じ組に松原・華村の出身高校の選手がいた。
またあいつら悔しがるんだろうな。いい気味だ。
そして決勝。
決勝では学年関係なく組まれる。
七咲、向井さんの他に、3年生1名、2年生1名が残る。
七咲と向井さんは何と、同じ組で競うことになった。
運命のいたずらってやつだろうか。
開始の合図で二人はほぼ同時に発進する。
七咲は2位の他校の選手と頭一つ分の差をつけてトップで泳ぐ。
対する向井さんは2位の他校の選手と頭一つ分の差で3位で泳ぐ。
結果は七咲がそのままトップを譲らずゴールした。
向井さんも3位をキープした。
他の組と合わせ、最終的な結果は七咲が見事に優勝……
向井さんは惜しくも4位に終わった。
しかし、入学早々インターハイ4位というのは大したものだ。
彼女は七咲以上の実力の持ち主かもしれない。

続いて400mリレー。
七咲と3年生2人、それに向井さんの4人組で行う。
50mプールを4人が1往復ずつする。
七咲がトップとアンカーを担当し、他の3人が間を繋ぐ。
七咲の独走でトップに立ち、その後もトップを維持した輝日東高校だったが……
最後から2番目の向井さんが突然失速する。
何と、頑張りすぎて足がつったらしい。
2人に抜かれて輝日東高校はピンチに陥る。
それでも向井さんはみんなに迷惑をかけまいと懸命に泳ぎ……
3位でアンカーの七咲に繋いだ。
彼女の必死さが伝わり、七咲が懸命に追い上げようとする。
ついにトップに並ぶが、タッチの差で輝日東高校は準優勝に終わった。
去年と同じく準優勝だった。
責任を感じてその場で泣き崩れる向井さん……。
それを慰める七咲や他の部員たち。
本当に輝日東高校は温かいんだなと思った。


そしてインターハイは終了した。
時刻はもう16時だ。
七咲に逢いに行った僕だが、そこで目にしたものは……
橘(あ……七咲のそばにいるのって向井さんじゃないか)
橘(今は声をかけない方がいいな。ここで様子を伺おう)

向井「ぐすっ。ぐすっ。七咲先輩……ごめんなさい」
向井「私、個人でも4位だったし、団体ではみんなの足を引っ張ってしまいました」
向井「アンカーの七咲先輩に……本当に申し訳ないと思っています」
七咲「……」
七咲はそっとハンカチを彼女に渡す。
向井「え?」
七咲「それを使って」
向井「ありがとうございます。ぐすっ。ぐすっ」
七咲「足、まだ痛む?大丈夫?」
向井「大丈夫です。いたっ」
七咲「ちょっとそこに座って」
向井「はい」
七咲が丁寧に向井さんのふくらはぎのケアをしてあげる。
七咲「こんなに腫れて……よく頑張ったね」
向井「え?いえ、私は全然」
七咲「ううん。よく頑張った。偉いと思う」
七咲「だって私なんか1年生の時は地区大会止まりだったから」
向井「そうだったんですか?」
七咲「うん。だからこの結果にもっと誇りを持って」
向井「でも私、リレーではみんなの足を引っ張ってしまいました」
向井「せっかく七咲先輩が作って下さったリードを私が無駄にして……」
向井「アンカーの七咲先輩に負担をかけてしまいました」
向井「私は憧れの七咲先輩に何も恩返しができませんでした」
向井「本当に……本当に……ご迷惑をお掛けしました」
七咲「ううん。迷惑なんかじゃない!」
向井「え?」
七咲「このふくらはぎを見ればわかる。一生懸命頑張ってくれたんだなって」
七咲「こんなになるまで全力で頑張ってくれたんだなって」
七咲「だから私がアンカーとして何としても取り返してあげようと思った」
七咲「向井さんの努力を無駄にしないように私がやるしかないって思った」
向井「先輩」
七咲「でも、惜しかったな。タッチの差で負けちゃった」
向井「先輩……」
七咲「だから、泣くのはやめて。ほら、笑って」
向井「先輩!はい!わかりました。ありがとうございます」
向井さんは七咲の言葉を受けて、涙を拭いて、精一杯笑ってみせる。
七咲「そう。その笑顔。大切にね」
向井「はい!」
七咲「立てる?」
向井「はい!!」
橘(七咲……まるで向井さんのお母さんみたいだな)
橘(塚原先輩みたいにすごく温かい雰囲気を感じる)
橘(本当に、誰に対しても優しいんだな)
向井「あ。何だか足が楽になりました」
七咲「うん。ストレッチしておいたから。楽になったはず」
向井「七咲先輩、何から何まで本当にありがとうございました」
向井「一緒の舞台に立てたこと、誇りに思います。それでは、失礼します」
七咲「うん。また後でね」
向井「はい」
向井さんは嬉しそうに去っていく。
橘「へぇ、優しいんだな」
七咲「あ、先輩。見てたんですか?」
橘「うん。邪魔しちゃ悪いと思って物陰からこっそりと」
七咲「ふふっ。また覗きですか?」
橘「ち、違うよ。真面目に言ったんだ!!」
七咲「冗談ですよ、クスッ」
橘「もう……人聞きの悪い冗談だな……」
橘「あ、それはそうと、お疲れ様。そして連覇おめでとう」
七咲「ありがとうございます」
橘「これで、受験資格が得られたね」
七咲「はい。急いで願書を書かなければなりませんね」
橘「どうする?この後どこか寄る予定ある?」
七咲「そうですね……帰りのバスまでまだ時間があるので……」
七咲「ちょっとこの辺を散歩でもしましょうか」
橘「うん。そうしよう」


16時半
インターハイ会場周辺
橘「さっきの向井さんって子……本当に努力家なんだな」
七咲「ええ。彼女は間違いなく努力家です」
橘「まるで2年前の七咲みたいだ」
七咲「いえ。彼女は私以上ですよ」
橘「そうか?」
七咲「ええ。本当に……私以上です」
橘「……」
七咲「部活の合間に彼女から聞きました」
七咲「彼女は、本来は地元の高校に行く予定だったそうです」
七咲「当時の彼女には明確な将来の夢がなかったので……」
七咲「両親の勧めで地元の高校に通うはずでした」
橘「それが去年のインターハイの七咲を見て考えが変わったんだろ?」
七咲「はい。彼女曰く、私が他の選手よりもすごく輝いて見えたそうです」
七咲「何でって聞いたら……」
七咲「よくわからないけど他の選手よりもすごく努力しているんだなってわかった……」
七咲「と彼女は答えました」
橘「うーん。他校の選手のことは僕にもよくわからないけど……」
橘「七咲がすごく努力しているっていうのは、そばにいる僕が一番よくわかる」
七咲「ええ。でも、当時の彼女には一生懸命打ち込めるものがなかったそうです」
七咲「だから、一生懸命何かに打ち込むことで得られる快感がわからなかったんだと思います」
七咲「友達に誘われて仕方なく見に来たインターハイで……」
七咲「私の泳ぎを見てすごく魅せられたそうです」
七咲「この人みたいに水泳を頑張ってみたい……」
七咲「何か努力したことで得られる快感を味わいたい……」
七咲「そう思ったそうです」
橘「いい話じゃないか!」
七咲「ええ。私が頑張ったことで触発された人がいたんだなってわかって嬉しかったです」
橘「うん。そうだな。でもさ」
七咲「はい」
橘「地元の高校じゃなくて輝日東高校を受験することになって……」
橘「彼女の両親はどうしたんだ?」
七咲「はい。それが……彼女の両親は一応賛成したそうです」
橘「よかったな」
七咲「でも、条件付きで、部活で結果が出せなかったら即退学させると言われたそうです」
橘「は?ひどい話だな。でも、こうやって結果が出せたからよかったな」
七咲「ええ。私が責任をもって彼女の夢を叶えてあげられたので……」
七咲「これで安心して輝日東高校水泳部を引退できます」
橘「さっき向井さん……七咲に恩返しできなかったって言ってたけど……」
橘「僕は違うと思うな」
橘「彼女が七咲の後継者となって輝日東高校水泳部を引っ張っていくことこそ……」
橘「七咲への最高の恩返しだと思う」
七咲「はい。私もそう思います」
七咲「そう考えると私も塚原先輩に最高の恩返しができたんでしょうか?」
橘「もちろんだよ。だって七咲は塚原先輩に続いてインターハイで2連覇したんだし」
橘「これ以上の恩返しはないと思うよ」
七咲「先輩……」
橘「後は……僕への恩返しだけかな」
七咲「え?橘先輩に……ですか?」
橘「うん。必ず、合格しろよ。じゃなきゃ何のためのアルバイトか……」
七咲「クスッ。そうでしたね。私頑張ります」
橘「うん。僕も頑張りながら応援してるから」
七咲「はい。あ……そろそろ行かなくてはいけません」
橘「もうそんな時間か。早いなぁ。気を付けて輝日東に帰れよ」
七咲「はい。それじゃ、失礼します」


こうして汗と涙の熱いインターハイは終わった。
七咲たち輝日東高校水泳部一行もまたバスで輝日東へと帰って行った。
会場に一人残された僕はこのままここにいても寂しいので……
さっさとアパートへ帰ることにした。

次に七咲と逢えるのは受験なのかな?いや、無理か。
さすがに受験の時くらい僕のアパートじゃなくてホテルに泊まるよな、きっと。
しかし、後日七咲から電話がかかってきて……
意外にも、宿泊代を節約するために僕のアパートに泊まりたいと言って来た!
さあ、受験の前夜は一体どんな夜になるのだろうか?



第15話に続く。

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