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2010-06-17

第11話「先輩、お帰りなさい」

4月29日
17時
輝日東高校
橘「久しぶりだなぁ!」
僕は帰省して、約2ヶ月ぶりに母校・輝日東高校にやって来た。
今日は七咲と逢う約束をしている。七咲の部活が終わるのを待って一緒に下校する。
まあ、ついこの前まで普通にやっていたことなんだけどな。
橘「よし、このまま待っていても退屈だから高橋先生に挨拶して来よう」

職員室
橘「失礼します」
高橋「…あら、橘くんじゃない!?帰省してわざわざ逢いに来てくれたのね?」
橘「はい。…高橋先生、これお土産のお菓子です。どうぞ、お召し上がりください」
高橋「えっ!?お土産を買って来てくれたの!?どうもありがとう」
橘「いえ…どういたしまして」
高橋「それで…大学生活はどうなの?順調にやってる?」
橘「はい。もちろんです」
高橋「ええ?本当に?寝坊とか遅刻とかしてないの?」
橘「あ…それは…」
高橋「ふっ、図星のようね」
橘「はい…。でも、高橋先生。どうしてそれを?」
高橋「そのくらいわかるわよ。何年あなたの担任をしてきたと思ってるの?」
橘「あ、そうですよね」
高橋「それに…彼女からちょくちょく聞いていたのよ。あなたの近況を」
橘「え?彼女って?」
高橋「またまた~。七咲さんでしょ?とぼけても無駄よ。すべてお見通しなんだから」
橘「あ…」
橘(七咲の奴…余計なことを)
高橋「それで?今日は逢いに来たんでしょ、七咲さんに」
橘「はい」
高橋「そろそろ部活が終わる時間でしょ?行ってあげたら?」
橘「はい。それでは、失礼します」
高橋「あ、橘くん…」
橘「はい」
高橋「いつまでこっちに?」
橘「えっと、連休が終わる6日までです」
高橋「そう。じゃあ、また後日ここに来て大学生活について話してくれる?」
高橋「ちょっと興味があるから」
橘「あ…はい。わかりました」
高橋「じゃあ、またね」
橘「はい、失礼しました!」

橘(また後日か…。今度は午前中に来るか)
橘(早く校舎裏へ行こう)


17時半
校舎裏
橘「うーん。まだ七咲は出てこないみたいだ。ちょっと覗いてみるとするか」

プール
橘(えっと、七咲は…と。あ、いたいた!ん?あれは…)
七咲「そうじゃなくて、手の位置はこうね。こうやって水をかくの」
1年「なるほど、こうなんですね!」
七咲「そうそう」
1年「わかりました!ありがとうございます」
七咲「どういたしまして。頑張ってね」
1年「はい」
橘(こっちに来るぞ!)
七咲「あ…橘先輩。お久しぶりです」
橘「七咲、お久しぶり」
七咲「着替えて来るので校門で待っていてください」
橘「うん、そうするよ」


校門
七咲「じゃあ、行きましょうか」
橘「うん」
七咲「先輩は…どこか行きたい場所、あります?」
橘「うーん…そうだな。ゆっくり話したいから丘の上公園で」
七咲「はい」


住宅街
橘「さっきの1年生、すごく熱心な子だったね」
七咲「ええ。いつも他の部員よりも遅くまで残って練習しているんです」
橘「まるで昔の七咲みたいな子だよな」
七咲「ええ、そうかもしれませんね」
橘「じゃあ、きっと将来有望だ。七咲の後継者…かな」
七咲「え…あ、はい。そうだと思います」
橘「ん?どうしたの?顔赤いよ」
七咲「あ、それはきっと…」
橘「きっと…?」
七咲「夕日の…せいだと…思いますよ」
橘「…うん。今日の夕日は…きれいだな」
七咲「ええ。とてもきれいですね」
橘「…」
七咲「…」


18時
丘の上公園
橘「着いた」
七咲「着きましたね」
橘「…」
七咲「…」
橘「えっと、まず何から話そうか」
七咲「それじゃ、まずは…」
橘「うん」
七咲「橘先輩、お帰りなさい。大学生活、ご苦労様です」
橘「ただいま、七咲。こっちも色々大変だよ」
七咲「例えば…早起きとかですか?」
橘「うん…それもある」
七咲「それ…も?あの、先輩?」
橘「うん?」
七咲「ちゃんと毎日学校行ってますか?」
橘「うん、一応行ってる。けど、講義が眠いしだるいんだよな」
七咲「わかりました。先輩、もしかして授業をサボったり居眠りしたりしていますね?」
橘「う…」
七咲「図星ですか。まったく、だらしない先輩です」
橘(まずいぞ、またお説教が始まる!話題を変えなくちゃ!)
橘「あ、そうだ。七咲にもお土産を買って来たんだ」
七咲「お土産ですか?」
橘「さっき高橋先生にもプレゼントしたんだけど…向こうで有名なお菓子なんだ」
七咲「ああ…これ…」
橘「どうかした?」
七咲「前にテレビで見たことあります。郁夫が食べたいと言っていました」
橘「もしかして、郁夫の好物だったりする?」
七咲「かもしれませんね。先輩、ありがとうございます」
橘「どういたしまして。姉弟仲良く食べるんだぞ」
七咲「はい、もちろんです」
橘「それから、これ。入学式の写真」
七咲「あ…このスーツ着た人、橘先輩ですよね」
橘「うん。なんか…変だろ?」
七咲「いえ…すごく似合います」
橘「本当?」
七咲「はい」
橘「ならよかった」
七咲が写真を1枚1枚見ながら言う。
七咲「大学って…こんなに広いんですね。驚きました」
橘「この写真はほんの一部だよ。実際はこんなもんじゃないよ。もっと広いんだから!」
橘「だって、この大学の敷地は、輝日東高校の敷地が3つ分くらいなんだから」
七咲「そんなに広いんですか?」
橘「うん。七咲も一度オープンキャンパスとかで来てみるといいよ」
橘「僕みたいに実際に行ってみればもっとびっくりするから!」
七咲「はい。それは楽しみです」
七咲「でしたら…今年は何かと忙しいので、来年行きますね」
橘「うん、じゃあ来年来てくれ」
七咲「はい」
橘「…そっか。考えてみれば、七咲は今年3年生だもんな。忙しいに決まってる」
橘「ん?待てよ…3年生?ってことは…今年受験か」
七咲「ええ。そういうことになりますね」
橘「あ、そういえば…七咲の夢って1回も聞いたことないな」
七咲「はい。まだ一度も先輩に話していませんでしたね」
橘「うん。ぜひ聞いてみたい。七咲は将来何になりたいの?」
七咲「そうですね…保育園の先生みたいな、人の面倒を見る仕事ですね」
七咲「そういう仕事にすごく憧れています」
橘「保育園の先生…か。うん、七咲の性格からすれば、ぴったりかもな」
橘「面倒見が良くて思いやりがある…それが七咲の長所だと思うし」
七咲「…ありがとうございます」
橘「でも、僕からすれば、七咲は競泳の選手も向いてると思うんだけど」
七咲「え?そんなこと…ないですよ。私なんかまだまだですよ」
橘「そうかなぁ…だってインターハイ優勝でしょ?可能性あると思うんだけど」
七咲「そうですか?」
橘「うん。…あ、だったら!」
七咲「はい?」
橘「進路は体育大学なんてどうだ?」
七咲「体育大学…ですか?」
橘「うん。実は僕の大学の近くに有名な体育大学があるんだ」
橘「確かそこはアスリートとトレーナーの両方を養成しているんだ」
橘「仮にアスリートが無理だったとしても、その実力ならトレーナーも勤まると思う」
橘「それにトレーナーもアスリートの面倒を見る仕事だから七咲に向いていると思うよ」
七咲「…なるほど。今やってる水泳を活かせて、さらに人の面倒を見ることもできる」
七咲「まさに、一石二鳥ですね!」
橘「だろ?けど、それだけじゃない」
七咲「まだ何かあるんですか?」
橘「うん。同時に僕の夢も叶うんだ」
七咲「先輩の…夢?確か刑事さんになることでしたよね?それと何の関係が…」
橘「あ…今言ってるのはそっちじゃなくて」
七咲「違うんですか?」
橘「うん。実は、七咲がその体育大学に入学して、一緒のアパートに住むことが僕の夢なんだ」
七咲「それってつまり…同棲ってこと…です…か?」
橘「…うん」
七咲「え………ええっ??せ、先輩…何を言ってるんですか??」
七咲の顔が突然真っ赤くなる。当然の反応だ。
橘「何をって…言われてもな」
七咲「こ、こんな恥ずかしいことを、よくそんな涼しい顔で言えますね??」
七咲「先輩…頭、大丈夫ですか??」
橘「え?べ、別に何ともないけど…」
七咲「ぜ、絶対頭おかしいですって!わ、私…そろそろ帰りますね」
恥ずかしいからか、かなり取り乱す七咲。
橘「ちょ…七咲。待ってよ。ゆっくり、落ち着いて聞いて」
七咲「…」
橘「僕が七咲と同棲したいって言ったのは…ずっとそばにいてほしいからなんだ」
橘「だって、今みたいに離れ離れになるのはお互いに寂しいだろ?」
橘「数ヶ月に一度しか逢えないなんて…僕はつらいよ。そう思わないか?」
七咲「…」
橘「…」
七咲「…そう、言われてみれば…」
橘「だろ?だから僕は来年、七咲と一緒に暮らしたいんだ」
橘「ずっと、そばにいてほしい。この頼りない僕の面倒を見て欲しい!」
七咲「……」
橘「七咲?」
七咲「そういうことなら…別に…いいですよ」
七咲「あの…さっきは…取り乱してすみませんでした」
橘「え?じゃあ…」
七咲「…ですが、それはやっぱり無理かもしれません」
橘「え?どうして?…やっぱり恥ずかしい…から?」
七咲「いえ、それもなくはないのですが……先輩も知っての通り、うちは貧乏です」
七咲「なので、もしかしたら大学に行けるお金が…ないかもしれません」
橘「えっ?つまり受験料や学費が払えないってこと?」
七咲「そういうことです」
橘「そんな…!?嘘だろ??」
七咲「いえ、悔しいけど…本当なんです」
七咲「それに問題はお金だけじゃないんです」
七咲「私がいなくなったら郁夫の世話をする人がいなくなります」
橘「…そっか。それもあるよな」
七咲「…はい」
橘「学費だけじゃなくて…弟の世話。こりゃ前途多難だ」
橘「こういう時って…いったいどうすればいいんだ!?」
七咲「…はぁ」
グ~~
橘「あ…」
七咲「ふふっ、そうですよね。もうそんな時間ですよね」
橘「う…うん。会話に夢中で気付かなかったけど…もう暗くなってたんだな」
七咲「じゃあ…帰りましょうか」
橘「うん。…と言っても家に帰っても誰もいないんだよな」
七咲「え?」
橘「間が悪いことに母さんと美也は温泉に行ってて今日は帰らないんだ」
橘「それに来る時、向こうでお土産買ったから、今残金そんなにないんだ。困ったな」
橘「けど、カップ麺なら…なんとか買えそうだな」
七咲「カップ麺ですか?…もう、仕方ないですね。先輩がよければ…うちに来ますか?」
橘「え?いいのか?」
七咲「はい。それに先輩はまだ私の両親に逢ったことがないですから」
橘「そういえばそうだな…」
橘(去年の夏休みの件もあるし、一度行って挨拶しておくべきか)
橘「あれ?でも、七咲の両親って帰り遅いんじゃなかったっけ?家にいるの?」
七咲「あ、それなら大丈夫です。今日は早く帰って来るって言ってました」
橘「そっか。じゃあ、お邪魔しようかな」
七咲「はい。行きましょうか」
橘「うん」


19時半
住宅街
橘「今日の七咲家の夕飯は何だろう?楽しみだなぁ」
七咲「今日は久しぶりにお母さんが夕飯を作ります」
七咲「いつもは私なのですが、今日はお母さんの帰りが早いので」
橘「七咲のお母さんの手料理か。楽しみだなぁ」
七咲「栄養満点でおいしいですよ」
七咲「先輩さっき、今日の夕飯をカップ麺で済ますとか言ってましたよね?」
橘「う…うん」
七咲「やっぱり向こうでもそういう偏った食生活なんですね」
橘「…ま、まあな」
七咲「先輩、食生活にもっと気を付けた方がいいですよ」
七咲「先輩みたいに一人暮らしだと外食やインスタント食品に頼りがちになって栄養が偏ります」
橘「う、うん。確かにな」
七咲「ですから今日、うちでしっかり食べて、栄養をつけて帰ってくださいね」
七咲「そのために先輩をうちに呼んだのですから」
橘「七咲…ありがとう」
七咲「いえ…どういたしまして」
橘「でも…仕方ないだろ。あっちじゃ僕一人だもんな」
橘「せめて料理のできる女の子が一緒に住んでくれればなー」
僕はそう言いながら、ちらっと横目で七咲を見る。
七咲「…なるほど。それこそが同棲したい一番の理由なんですね」
七咲「つまり先輩は最初からそれが目的だった!というわけですか。わかりました」
橘「ち、違うよ。それだけじゃなくって…」
七咲「冗談ですよ、クスッ」
橘「ひ…ひどい」


七咲家
玄関
逢「ただいま」
母「あ、逢。お帰り。夕飯はもうできてるから、早く手を洗ってらっしゃい」
七咲の声を聞いて七咲のお母さんが居間から玄関に出てくる。
逢「はーい」
母「あら?そちらの方は?」
逢「あ…えっと…」
橘「七咲の…知り合いです。今年輝日東高校を卒業して現在…」
郁夫「…」
郁夫が満面の笑みで居間から飛び出して来る!
母「郁夫?どうしたの??」
郁夫「…」
郁夫がお母さんに耳打ちする。
橘「現在…」
橘(っておい、郁夫!!人が話してるっていうのに!!)
母「ええっ??何ですって??それ本当なの?」
郁夫「…」
郁夫が満面の笑みでアクションヒーローのポーズを決める!
逢「え?郁夫…何話したの?」
橘「おいおい…変なこと話してないだろうな…」
母「と、とにかく二人とも上がって。お腹空いてるでしょ?」
逢「うん」
橘「あ、僕もですか?ありがとうございます。お邪魔します」


居間
七咲のお母さん、逢、郁夫、そして僕の4人で食卓を囲む。
橘「おお…おいしそう」
母「どうぞ、召し上がって」
橘「そ、それでは…お言葉に甘えて。いただきます!」
逢「いただきます!」
橘「…」
逢「…」
橘「…おいしい!おいしいです、おばさん」
母「そう?それならよかった」
橘「あ、すみません。食事に気を取られて肝心の自己紹介がまだでした」
橘「僕は…」
母「橘しゅうくんでしょ?」
橘「あ…はい。そう…ですが」
母「郁夫からすべて聞いたわ。逢の…彼氏なんですって?」
橘「うぐっ…ぐはっ」
僕はびっくりしてむせた。
母「あ、だ、大丈夫?」
橘「けほっ、けほっ。は、はい」
橘(郁夫の奴…余計なことを……でも、いずれ言わなきゃいけなかったことだからな)
橘(そうだよな。これから七咲と同棲するのに七咲の両親の許可が必要だしな)
逢「お母さん…ごめんなさい、このことをずっと黙ってて…」
母「いいのよ、逢。そうよね、恥ずかしくて言い出せないものよね」
母「あ、橘くんって…もしかして、あの時の…」
橘「あの時?」
母「去年の夏休み。逢の水泳部の県大会の日…」
母「帰りのバスの中で疲れ果てて寝ちゃった逢を親切に家に泊めてくれた…」
橘「あ、はい。それ僕です!」
母「そう…。あなただったの?」
橘「あ…ごめんなさい。別に悪気があったわけじゃなく…」
橘「バスの中に娘さんを残すわけにもいかず、しかも連絡先を知らなかったもので」
橘「それに…親御さんはいつも忙しいと聞いていたので…」
母「ううん。別に悪いなんて思ってない。むしろ感謝してる」
橘「でも…僕、親御さんの許可なく…」
母「ううん。それはもういい。ちゃんと後で逢から事情を聞いたし…」
母「それに、今こうして橘くん本人がちゃんと話してくれたし」
橘「え…じゃあ…」
母「うん。そのことはもういいから。たくさん食べて」
橘「ありがとうございます。すみません、僕がごちそうになって」
橘「帰省したのはいいのですが、家族が家にいなくて…」
橘「しかも外食できるだけの残金がなくて…」
逢「それでね、終いには先輩、カップ麺食べるって言い出したから…」
逢「私が先輩にうちに来たらどうかって誘ったの」
母「なるほど。逢らしいわ。それと、お土産ありがとう、橘くん」
橘「あ、いえ」
七咲のお母さんが台所に戻ろうとする。
橘「あの…おばさん」
母「うん?どうしたの?」
橘「あの…僕、本当にここにいてもよかったんですか?」
母「え?それはどうして?」
橘「だって、いきなり娘さんの彼氏だとか言って、家に上がり込んで来たんですよ」
橘「本当によかったんでしょうか?」
逢「え?先輩??何を言ってるんですか?」
橘「だって…七咲は認めても親御さんに僕が七咲の彼氏だって認めてもらえるか…」
逢「あ…そっか。ねぇ、お母さん?どうなの?」
母「……」
橘「…」
逢「…」
母「ふふっ。私はいいと思うわ。橘くん」
橘「えっ?本当ですか?」
母「なーに?嘘だって言ってもらいたいの?」
橘「いえ…」
逢「お母さん…」
母「確かに、最初はびっくりしたわ。郁夫が突然耳打ちしてきて…」
母「お姉ちゃんの彼氏の橘しゅうくんだって説明するもんだから」
母「でもね、今話を聞いてた限り、橘くんはすごく丁寧で、真面目で…」
母「逢のことを大切に思ってくれているんだなってわかった」
橘「…」
逢「…」
母「それにね。橘くんと一緒にいる逢、なんだか楽しそう」
母「逢は今まで恋したことなくて…逢のこんな表情、私は見たことなかった」
橘「…え?じゃ、じゃあ…」
母「うん。私はいいと思うわ。後はもうじき帰ってくるお父さんの意見次第ね」
逢「お母さん…ありがとう」
母「逢、泣かないの!」
橘「ありがとうございます」
郁夫「…」
郁夫が満面の笑みで僕のお尻を人差し指でつつく。
橘「うん?どうした?」
郁夫「…」
橘「ふむふむ…え?そうだったのか。おーまえ、やるなぁ!」
郁夫「…」
郁夫が満面の笑みでアクションヒーローのポーズを決める!
橘「ありがとな。感謝してるぜ」
橘(そっか。郁夫があの時のことを覚えてて、気を利かせてくれたのか)

一昨年のクリスマスの2週間前…
七咲と夜の小学校に忍び込んだ日の2日後…
僕が登校していると、郁夫を連れて登校している七咲が僕の方に向かって来た。
郁夫を先に小学校に行かせて、七咲と二人で本屋さんに寄って行くことになった。
しかし、その本屋さんの、しかもムフフコーナーにいる郁夫を僕が偶然発見した!
七咲には内緒にしてやるから早く小学校に行けと僕は郁夫に言ったんだ。
その時、僕は初めて郁夫と“男と男の約束”を交わした!

橘(郁夫はあの時のお礼に、さっき僕を助けてくれたんだな)
橘(七咲、お前はいい弟を持ったな!)
父「ただいま」
逢「あ、お父さんが帰って来た!お帰りなさい」



父「なるほど。事情はよくわかった」
七咲のお母さんが僕と七咲のことをちゃんと説明してくれて…
七咲のお父さんも把握してくれたようだ。
橘「あの…それで…お二人に折り入ってお願いしたいことがあります」
父「うん。言ってみなさい」
橘「来年、僕は、娘さんと一緒に暮らしたいと思っています」
父「何!?」
母「えっ!?」
橘「僕の通っている大学の近くに有名な体育大学があるんです」
橘「僕は彼女にそこに通ってみてはどうかと勧めました」
橘「そこはアスリートとトレーナーの両方を養成しています」
橘「彼女は今の競泳の実力を見るとアスリートに向いてると思うし…」
橘「仮にそれが無理だとしても、トレーナーにも向いてると思います」
橘「彼女の長所は面倒見がよくて思いやりがあることです」
橘「なので、トレーナーになれる素質もあると思うんです」
母「確かにそれは私たち両親もわかるけど…でも、いきなり同棲って…」
橘「勝手なのはわかっています。でも、僕は彼女とずっと一緒にいたいんです」
橘「彼女にずっと、そばにいてほしいんです」
橘「今みたいに離れ離れで、数ヶ月に一度しか逢えないなんて寂しいんです」
父「うーむ」
母「気持ちはわかるけど…うちは貧乏だし、郁夫の世話だってあるし」
逢「…」
橘「郁夫の世話は無理でもお金なら僕が何とかします!!」
父「えっ?どうする気だね?」
橘「僕が…彼女のために…一生懸命アルバイトします!」
逢「えっ!?」
母「…!?」
橘「これは、元はと言えば僕の自分勝手なお願いなんです」
橘「だから、彼女や親御さんには絶対負担をかけません」
橘「僕が責任をもって、学業とアルバイトを両立し、彼女の学費を稼ぎます!」
橘「ですから、お願いします!!」
僕は七咲の親御さんに向かって深々と土下座をする。
逢「……先輩」
逢「……」
逢「お父さん、お母さん。私からもお願いします」
七咲も僕と一緒に親御さんに向かって深々と土下座をする。
橘「七咲…」
父「…」
母「…」
七咲の親御さんがお互い難しい表情で顔を見合わせる。
郁夫「…」
さすがの郁夫も真剣に悩んでいるようだ。
父「…もう9時か。橘くん、君、時間は大丈夫かい?」
橘「あ、はい」
父「とりあえず、話は終わりだ。私は仕事で疲れたから、寝るとしよう」
父「この話は…また今度にしてくれ」
逢「わかった。お父さん、お休み」
母「お休みなさい」
橘「お疲れ様です。お休みなさい」
父「橘くん、夜遅くにすまないが、ちょっと私の部屋に来てくれるか?」
父「大事な話があるんだ」
七咲のお父さんが僕に耳打ちする。
橘「はい」
母「さ、郁夫は早く寝なさい。逢も早くお風呂に入っておいで」
郁夫「…」
郁夫は真剣な表情のまま寝室に向かう。
逢「わかった」
七咲もお風呂に向かう。
それを確認した七咲のお母さんは僕に付き添う。


七咲のお父さんの部屋
橘「あの…お話って…?」
父「そこに座りなさい」
橘「はい」
僕は言われた通りに座る。
母「ああ、そんなにかしこまらないで。もっと楽な姿勢でいいわよ」
橘「え?でも…」
母「いいから」
父「これから長い話をする。だから、もっと楽な姿勢でいいよ」
橘「あ、はい。わかりました」
橘「あの…それで…話って…?」
父「……」
母「……」
母「たぶん…橘くんは知らないと思う。あの子も…逢も…話さなかったと思うから」
父「逢…それにこの七咲家の過去についてだ」
橘「…えっ!?」


突然、七咲のお父さんの部屋に呼び出されて…
何の話をするのかと思えば…
僕と七咲の2年間の付き合いの中で一度も語られることのなかった…
七咲の過去、そして七咲家の過去について…だそうだ。
いったい、この家に、何があったというのだろうか!?

第12話に続く。

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