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2010-05-25

第6話「先輩、夏休みですね」

5月の模試で成績が上がった僕は、その後も毎日七咲と一緒に勉強し、
6、7月の模試でも成績が上がった。
今ではクラスで10番以内、学年でも30番以内の成績をキープしている。
4月とは大違いだ。本当に絢辻さんや七咲のおかげだ。
1学期の期末テストも良い成績で終え、現在は夏休みの真っ只中だ。


8月中旬
夕方
橘家・居間
七咲「すみません。先輩、遅くなりました」
橘「いいって。部活だったんだろ?しょうがない」
七咲「はい。何せ、明日はインターハイなので」
橘「インターハイ?何それ?」
七咲「え?先輩、インターハイをご存知ないんですか?」
橘「うん。初めて聞いた」
七咲「インターハイっていうのは全国高等学校総合体育大会のことです」
七咲「高校総体って言ったりもします」
七咲「確か、インター・ハイスクール・チャンピオンシップスの略です」
橘「へぇ、詳しいなぁ。つまり、全国大会ってことか」
七咲「はい」
橘「そうかぁ。それは楽しみだ」
七咲「何が楽しみなんです?」
橘「だって、全国大会だろ?楽しみに決まってるよ」
七咲「え……」
橘「しかもその前の大会は模試とか色々あって行けなかったし」
橘「というか、いつ行われたのかすらわからなかった」
七咲「……」
橘「全国大会ってことはその前に県大会とかあったんだろ?」
七咲「はい。ありましたね」
橘「どうやったら全国大会に行けるの?」
七咲「はい。まずは、県予選で県大会の標準記録を突破し……」
七咲「次に、県大会で地区大会の標準記録を突破し……」
七咲「最後に地区大会でインターハイの標準記録を突破する必要があります」
橘「ああ。わかった。次に出る大会の目安となるタイムがあって……」
橘「そのタイムをクリアすると次に進めるわけか」
七咲「そういうことです」
橘「へぇ。大変だな」
橘「でも、七咲はそれらをクリアして来たんだろ?すごいなぁ」
七咲「いえ、それほどでも」
橘「あれ?」
七咲「はい?どうかしました?」
橘「確か七咲は去年のクリスマス前に大会選考に落ちたとか言ってなかった?」
橘「それってインターハイに関係のある大会だったの?」
七咲「ああ、えっと。インターハイには関係ありませんね」
七咲「シーズンオフに行われるちょっとした大会でした」
七咲「でも、出られなくてすごく悔しかったです」
橘「ああ、あの時は色々あったもんな。しょうがないって!」
七咲「……はい」
橘「じゃあ、インターハイまでの一連の大会は毎年春から行われるのか」
七咲「ええ」
橘「そっかぁ。僕、必ず応援に行くよ!!」
七咲「……」
ややうつむき、急に黙り込む七咲。
橘「場所はどこなの?輝日東?」
七咲「…」
橘「ん?七咲?どうした??」
七咲「あの…明日は私一人で行きます」
橘「え?どうして?僕応援に行くのに」
七咲「この夏休みは、先輩の受験にとって大切な休みですよね」
七咲「この夏休みでどれだけ頑張ったかで勝敗が別れてしまいます」
七咲「だから、先輩には勉強に集中してもらいたいんです」
橘「七咲…」
七咲「私は、先輩の邪魔をしたくないんです」
橘「邪魔なんて…とんでもない!」
橘「明日の大会は七咲にとって大事な大会じゃないのか?」
橘「だから、僕は応援しに行きたい。場所を…」
七咲「教えませんよっ!」
橘「う…」
七咲「それに、橘先輩がいたところで結果は変わりませんから!クスッ」
橘「さりげなくきつい一言だな。そんなことないのに」
七咲「じゃあ、私は麦茶を作りますので、先輩は勉強を始めていてください」
橘「う…うん」

七咲が勢い良く立ち上がって台所に向かう。
しかし、その横顔はなんだか少し寂しそうだ。
本当は応援に来てほしいのかもしれないな。
でも、勉強しろって言われたんだ。
明日は大人しく勉強するかな。

橘「この問題は…うーん…こう…かな。よし、解けた!」
七咲「先輩、麦茶できましたよ」
橘「ああ、サンキュー」
七咲「それ…確率の問題ですか?」
橘「うん。そうだよ」
七咲「あー…私…いまいちよくわからないんです、確率って」
橘「じゃあ、教えてあげるよ」
七咲「本当ですか!?お願いします」
橘「まず、このPっていうのはね………」
七咲「………」

約30分間、七咲に数学ⅠAの確率の講義をする。

橘「というわけなんだ。意外と簡単だろ?」
七咲「なるほど。そう言われてみれば確かに」
七咲「先輩、ありがとうございます」
橘「どういたしまして」
グーー。
橘「あ…」
七咲「ふふ。先輩、何もお腹を鳴らしてまで返事をしなくても…」
橘「ち、違うって。これはだな…」
七咲「わかってます。今ご飯の支度をしますから」
橘「うう…七咲は相変わらず意地悪だ…」
七咲「クスッ」

ちなみに、美也は両親と一緒に今日から2泊3日の旅行に行っている。
おかげで七咲と二人っきりでいられる。
と言っても七咲は日中は部活なので、
一緒にいられるのは夕方から夜にかけてだ。
しかし残念だな。
明日はインターハイだから七咲は来られないらしい。
明後日も疲れていて勉強どころじゃないだろう。
実質、この3日間で一緒に家にいられるのは今日だけだろうな。
ああ、明日は応援に行きたいなぁ…。
行きたい、行きたい、行きたい!勉強さえなければ行けるのに!!
くそう…。

七咲「先輩、手が止まっていますよ」
橘「え?ああ、ごめん…」
七咲「また考えごとですか?勉強に集中してください!」
橘「ごめん…」
橘(はぁ…七咲に叱られちゃった…)
橘「あれ?この独特なにおいは………うなぎか??」
七咲「ええ。今日はうなぎの特売日でしたので」
七咲「それに、先輩も私もスタミナを付けなきゃいけないので、今晩はうなぎです」
橘「やったあ!よし、勉強を頑張るか」
七咲「はい、そうしてください」
七咲「もうちょっとでできるので待っていてください」
橘「うん。楽しみだよ」

それから10分ほど経過する。

橘「よし、これで終わりだ」
七咲「お疲れ様です。ご飯ができたので、テーブルを片付けてください」
橘「うん。僕も手伝うよ」

食卓にはご飯、うなぎ、味噌汁の他にトマトサラダやメロンも並ぶ。

橘「メロン!?」
七咲「はい。メロンも安かったので買いました。先輩が喜ぶかと思って」
橘「ありがとう!最近暑かったし、メロンでも食べたいなって思ってたんだ」
橘「その思いが七咲に以心伝心したのかな」
七咲「きっとそうですね。だって、先輩と私は似たもの同士ですし」
橘「そういえばそうだったな。いただきます」
七咲「いただきます」
橘「うまい!このうなぎ、今まで食べたなかで一番うまいかも」
七咲「そうですか?それならよかったです」
橘「きっと七咲が愛情を込めて選んでくれたからなんだろうな」
七咲「え…?い、いえ、そんなこと……ないですよ」
橘「え?愛情込めてないの?」
七咲「あ、いえ、愛情………込…め…ま…」
橘「え?よく聞こえないよ」
七咲「もう!先輩、意地悪です…」
橘「ははは…ごめん、ごめん」
橘(照れる七咲もかわいいんだよな)
橘(これだから七咲に対する意地悪はやめられない…ははは)
橘「ところで、明日の大会は大丈夫そう?」
七咲「はい。タイムも安定しているので問題ありません」
橘「そっか。それならよかった」
七咲「心配してくださってありがとうございます」
橘「ううん。いいんだ。僕はここで勉強しながら応援してるから」
七咲「はい、そうしていただけるとありがたいです」
橘(でも、本当は行きたいんだけどな)
橘「あ、ちなみにさ……去年はインターハイどうだったの?」
七咲「去年ですか?去年は地区大会止まりでした」
七咲「塚原先輩と3年生だけがインターハイに行きました」
橘「そうか。それは残念だ。じゃあ、今年こそは頑張らなくちゃな」
七咲「はい!」
橘(塚原先輩、さすがだなぁ)
七咲「あ、先輩。うなぎだけではなく、トマトサラダもちゃんと食べてくださいね」
橘「う…わ、わかったよ。しかたないなぁ」
七咲「しかたない?私がせっかく愛情込めて作ったトマトサラダを、しかたないって…」
七咲「ぐすっ。ぐすっ」
橘「わーい、トマトサラダはおいしいなぁ!!!」
パクパクムシャムシャ…
七咲「ならよかったです!クスッ」
橘(くそぅ、七咲のやつ、嘘泣きまでするなんて…反則だぁ。結局僕の負けか)

夕食が終わり、七咲は食器を片付けた。
もう時刻はすでに20時を回っていた。
夏と言えど、さすがにこの時間はもう真っ暗だ。

玄関
七咲「それじゃ、先輩。私はもう帰りますね」
橘「明日はインターハイだからな。帰ってゆっくり休むんだぞ」
七咲「はい」
橘「それと…明日は頑張れよ。応援してるから」
七咲「はい、ありがとうございます」
七咲「それじゃ、失礼しますね」
橘「暗いから気をつけて帰るんだぞ」
七咲「わかりました。失礼します」

こうしてインターハイの前日を七咲と楽しく過ごした。
それにしても、明日は本当に応援に行かなくても大丈夫なんだろうか。
本人の希望だから行かないことにするけど…
でも、あの少し寂しそうな表情を見ていると…
なんだか不安になってくる。



翌日(インターハイ当日)
輝日南第一競技場
部長「いい?みんな今日は100%実力を出し切って頑張るのよ」
部員「はい!!」
七咲「…」
部長「七咲」
七咲「はい」
部長「今大会はあなたにかかっているのよ」
七咲「…」
部長「悔しいけど、塚原先輩なき今、うちの学校で最有力候補は七咲なんだから」
七咲「…はい」
部長「そんなに緊張しないで!もっとリラックスして」
七咲「はい!」
部長「みんなもリラックスして頑張りなさい」
部員「はい!」

一方その頃
橘家・居間
風鈴の美しい音色が部屋中に響く。
今日は一人ぼっちだからなおさら響く。
橘「七咲は今頃大会か。僕も行けばよかったな」
橘「でも、行ったら七咲に怒られるんだろうな」

妄想
七咲「先輩、勉強をほっぽらかして何しに来たんですか?」
橘「何って…その…」
七咲「女の子の水着目当てですか?」
橘「ああ、それも悪くは…って違うって!」
七咲「変態。もう…帰ってください」
橘「そ、そんな…僕は変態じゃないのに」
七咲「先輩がいなくても私は勝てますから。お帰りください」
橘「ま…待ってよ、七咲…」
七咲「近寄らないでください、変態」

橘「うわああああああああ!!こんなの嫌だああああああああ!!」
橘「ハッ!何をしてるんだ、僕は。勉強に集中しないと」
橘「集中、集中、集中っと」

その時、突然電話が鳴り出した!

橘「こんな時に誰だよ!?せっかく勉強に集中しようとしたのに」
橘「はいはい。もしもし?」
梅原「もしもしじゃねぇよ…」
橘「ああ、梅原か。何の用だ?」
梅原「お前…なんで電話に出てんだ?」
橘「は?何でって…僕しか出る人間いないし」
梅原「んなこた知ってる。それより、どうしてお前が家にいるか聞きたいんだ」
橘「どうしてって言われてもな…」
梅原「お前…今日何の日か知ってるか?」
橘「え?今日は………ああ、インターハイの日だな」
梅原「なんだ、知ってるんじゃねぇか。だったらどうしてお前が家にいるんだ?」
梅原「彼女の応援をしに行ってやらないのか?」
橘「ああ、それはいいんだ。だって行かずに勉強をするのが七咲との約束だしな」
梅原「あきれたよ。お前、本当にそれでいいと思っているのか?」
橘「だって、僕は行きたいって言ったのに七咲が止めたんだから」
橘「しかたなかったんだよ」
梅原「それ…あいつの本望だと思っているのか?」
橘「え?」
梅原「あいつの性格を考えてみろよ」
梅原「自分のことで他人に迷惑をかけたくない…」
梅原「自分の問題は自分だけで抱え込もうとするタイプだな」
梅原「だからいつも無理をして空回りする。違うか?」
橘「そう…だな」

梅原の言ったことに間違いは何一つなかった。
今までの七咲を思い出すと、いくつか思い当たる節がある。
去年のクリスマス前…まだ僕と七咲が恋人同士になる前…
七咲は僕に好意を寄せるあまり、部活に集中できなくなった。
しかもその異変に気づいた塚原先輩にさえ、悩みを打ち明けられなかった。
面倒見のいい塚原先輩に迷惑をかけられなかったんだろう。
増してや僕に相談するのは恥ずかしくてできやしない。
僕に対する好意は次第に膨張していき、七咲にオーバートレーニングをさせ、
彼女の心と身体はますます疲れはてていった…
あの時の七咲は正直見苦しかった。すごくかわいそうだった。
もうあんな想いは二度とさせたくない!!
もう…あんな七咲は二度と見たくないんだ!!
そう思った瞬間、独りでに身体が動き出した。

橘「ありがとう、梅原。おかげで目が覚めたよ」
梅原「いいってことよ。頑張れよ」
橘「ああ」
橘「…ところで梅原。お前、何で僕が家にいるってわかったんだ?」
梅原「ああ、そのことか」
梅原「実はな、俺親父に頼まれて買い物に出掛けていたんだ」
梅原「そしたら偶然駅前のバス停にいた七咲を見かけたんだよ」
橘「七咲を?」
梅原「ああ。あいつ、なんだかすごく真剣そうな顔をしててな」
橘「そりゃ勝負前なんだから当たり前だろ?」
梅原「いや、あれは…自信なさそうっていう感じの顔に見えた」
橘「不安…なのか」
梅原「ああ。だからひょっとしたらって思ってお前んちに電話をかけたってわけよ」
梅原「さっきまでは親父の手伝いで忙しくて今やっと暇になったからな」
梅原「間に合ってよかったぜ」
橘「梅原…ありがとな。僕、行って来る!」
梅原「ああ、行って来い!後悔だけはすんなよ!」

僕は電話を切り、直ちに支度を済ませ、七咲の元へ向かう。
梅原によると、場所は輝日南第一競技場…ここからバスで30分の距離にある。
七咲の出る女子100m自由形、女子400mリレーは13時からだそうだ。
まだ12時過ぎなのでなんとかギリギリ間に合うはずだ。
どうか、間に合ってほしい!
着水してからではこちらの応援が届かない!

それにしても、今日はとても暑い!!
天気予報によると今日は真夏日なんだそうだ。
この炎天下のなかを僕は懸命に走る!
ちょっと走っただけでも滝のような汗が出る暑さ…
だけど…それでも…僕は走る!!
この想いを七咲に早く届けたくてひた走る!!

橘「はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ。喉渇いたぁ…」
橘「もっと…熱く…なれよ…!!はぁ、はぁ」

なんとかバスに飛び乗り、輝日南第一競技場へと向かう。



12時55分
輝日南第一競技場
アナウンス「それでは、まもなく女子100m自由形の予選を行います」
アナウンス「選手のみなさんは速やかに位置についてください」
橘(はぁ、はぁ。ギリギリ、間に合ったか。七咲は…どこだ!?)
七咲「………」
橘(いた!1コースだ!!)
七咲「………」
橘(ん?様子が変だ…まさか、緊張しているのか?)
七咲「………」
橘(表情が固い…それにわずかに手足が震えている)
橘(あんなに緊張していたら実力を発揮できるわけがない!)
橘(昨日は問題ないって言ってたのにな。あれはやっぱり強がりだったのか!)
橘(そうとわかれば、僕がとるべき行動はただ一つ!)

13時
アナウンス「それではこれより、女子100m自由形の予選を始めます」
観客「りょーちゃん頑張れー!!かなちゃん頑張れー!!」
観客「輝日南高校ガンバーーーーーー!!」
橘(この声援に……この僕が……負けるもんかあああああああああああああ!!)
橘(炎天下を爆走して喉がカラカラだけど…そんなの関係ない!)
橘「すぅ・・・・・・・・・・・・」

ななさきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
がんばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!


観客「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
アナウンス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
七咲「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?ええっ??」
部長「……」
部員「あーあ」

僕は魂の叫びってやつを思いっきり七咲にぶつけてみた。
観客や七咲を始めとした会場の全員がドン引きしたみたいだ…
ちょっと、まずかったのかな…?

七咲「もう、先輩、恥ずかしいですよ…。だから来てほしくなかったのに。クスッ」
橘(七咲が…笑っている…これは成功だったのか…??)
アナウンス「ごっほん!!では、みなさん、位置についてください」
アナウンス「よーい!」
七咲「!!」
橘(七咲の目、燃えている!!これならいけるかもしれない!!)
アナウンス「どん!!」

そのレースは驚くべき展開だった。
25mのターンからクロールの七咲が独走した。
そのまま抜かれることなく、無事100mを泳ぎ切った。
タイムは…なんと、大会新記録をマーク。
100%なんて生易しいものじゃない。
七咲は120%の実力を出し切ってレースをぶっちぎった!!

橘「やったああああああああああああああああああああ!!」

部長「ふっ、あの塚原先輩に一目置かれていただけあるわね」
部長「七咲も…彼も」

女子100m自由形決勝には輝日東高校からは部長、七咲と2名の3年生の部員が残り、
結果は七咲が大会新記録で優勝、部長は惜しくも4位、部員は入賞できなかった。

続く、女子400mリレーは七咲の活躍もあり、準優勝だった。
ちなみに去年の大会では3位だったらしい。

輝日東高校は今年もインターハイで大金星を挙げた!
ちなみに去年は自由形で塚原先輩が優勝し、3年生の部員1人が5位入賞したらしい。
リレーは4位入賞だったらしい。


16時半(大会終了)
帰りのバス
橘「七咲、優勝と準優勝おめでとう!!」
七咲「ありがとう…ございます」
橘「やっぱり来てよかったよ」
七咲「私は…そうは思いませんでした」
橘「え?」
七咲「勉強してくださいってあれほど言ったのに」
七咲「それに、先輩が来ると私が恥ずかしいんです」
七咲「あんな大声を出すなんて…先輩の頭はおかしいですよ!」
橘「…ごめん。でも、七咲のことを考えていたら勉強に集中できなくなって」
橘「僕はただ…そばで応援したかったんだ」
七咲「…」
橘「でも、ほら。僕ってバカだからさ、あんな方法しか思いつかなくて」
橘「周りにすごくドン引きされてたよな…ははは」
七咲「先輩…」
橘「それに…もう二度と七咲の苦しむ姿を見たくなかったんだ」
七咲「え?」
橘「去年のクリスマス前、七咲は独りで抱え込んで…」
橘「心と身体がぼろぼろになっていた…」
橘「今日もそうだった。本当は僕に来て欲しかったはずなんだ」
橘「だけど、僕に迷惑をかけまいとして、つい本音を言えなかった…」
橘「本番前の七咲はきっとそのことを後悔していたんだ」
橘「緊張のあまり、表情が固くて、手足がわずかに震えていた」
橘「そんな状態では実力を出し切れるわけがない!」
橘「だから!僕は…そんな七咲を見かねた僕は…」
橘「無性に応援したくなったんだよ!!」
七咲「先輩…!」
喜びのあまり、今にも泣き出しそうな七咲。
橘「カッコ悪くてもいい!!恥をかいてもいい!!」
橘「この思いが七咲に伝わるなら方法は何だってよかったんだ」
橘「七咲を元気づけてあげられるなら…それだけでよかった」
七咲「先輩!私、嬉しいです!!」
七咲の目からは隠しきれなくなった涙が滲み出ている…
橘「逢…。僕もだよ」
抱き合う二人…すると…
乗客「………」
橘(うお…乗客がこっちを睨んでいるよ!!まずい!!)
橘「七咲、離れろ」
七咲「………」
橘「ちょ!みんな見てるから離れてくれよ、七咲」
七咲「………」
橘「七咲ってば!…ん?この感触…寝てるのか?」
七咲「………」
橘「そっか。バテちゃったんだな。しかたないか」
橘(いや、待てよ!七咲、熟睡してる!このまま起きなかったらどうしよう?)
橘(まあ、輝日東に着く頃には起きるだろ。そのまま寝させてあげよう)


17時
輝日東駅前
七咲「………」
橘(ついに…起きなかった。僕はいったい、どうすればいいんだ!?)


インターハイで120%の実力を出し切ってバテた七咲…
大会が無事に終わって安心したのか、僕の左肩に寄り添って熟睡している…
しかも、バスは終点の輝日東駅に到着してしまった。
僕は…僕は…いったいどうすればいいんだ!?
眠ったままのこの少女を…いったいどうしろと……
これはチャンスなのか!?それとも僕に課せられた試練なのか!?

第7話に続く。

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