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2011-07-14

エピソード「先輩、今日は素晴らしい七夕です」

僕と逢の娘、七咲祈が4歳の7月上旬。
今月はもうすぐ七夕で、それが終わったら祈の5歳のお誕生日、そして夏休み……。
毎年恒例の行事が目白押しだ。
今日も相変わらず家事と育児は逢に任せて僕は仕事を一生懸命こなしている。
家事と育児を任せっきりにして逢には何だか申し訳ない気分だ。
もうすぐ夏休みだし、またどこか温泉旅館でも連れて行って骨休めをさせてやりたいと思う。
ちなみに祈を僕と逢の母校、輝日南小学校に通わせようか考えているけど、それもまだ目処が立っていない。
しばらくは今まで通り都会暮らしをして、目処が立ったら僕と逢の故郷である輝日東へ引越そうと考えている。
今のところ、輝日東よりもこちらの方が祈にとって顔馴染みの人が多くて過ごしやすい。
例えば、近くの総合病院の小児科長の塚原響先輩とか。
この前、祈が風邪をひいて初めて塚原先輩の診察を受けた。
塚原先輩の顔を見て泣き出すかと思いきや意外に冷静で、終いには塚原先輩と仲良くなった。
この肝の座り方……本当誰に似たんだろうな?
まあ、そんなわけで今日も七咲家は平常通り……のはずだったが。

警察署
朝礼
署長「最近街を騒がせている連続殺人犯についてだが……市内の小学校付近で目撃情報が相次いでいる」
署長「あの近辺には保育園もある。園児や児童の安全に十分注意するように」
しゅう(保育園……祈に何も起きなければいいが)

朝礼後
松原「連続殺人犯ねぇ」
華村「そういやしゅうちゃんの娘さんも保育園通いだっけ?」
しゅう「うん。まさに危険区域なんだ」
松原「大丈夫か?」
しゅう「ああ、一応逢には連絡してある。直接迎えに行くようにって」
華村「犯人まだ捕まらねぇからな。俺らで早く捕まえて安心させてやりたいな」
しゅう「祈が生まれる前に逢も一度誘拐されたことあるからな。心配だ」
華村「そうだな。一応保護者だけど女だからな。いくらあの七咲といえど危険なことには変りない」
松原「最悪二人とも……なんてこともなくはないね。そうならないように今日も頑張ろうよ」
しゅう「うん」
しゅう(逢じゃ心配だな。今日は僕が迎えに行こう)

逢に連絡して僕が迎えに行くことになった。


一方、その頃……
保育園
先生「ほらほら、君たち喧嘩しないの!もう」
祈「あの……せんせい?」
先生「ん?どうしたの、祈ちゃん」
祈「むーくんはきょうもきてないの?」
先生「むーくんか……うん、先週からずっとお休みなんだ。病気でね」
祈「……」
先生「心配?」
祈「う、うん」
先生「優しいね」
祈「え?そ、そんな……」
先生「でも、むーくんならきっと大丈夫よ」
祈「うん、だといいけど。ありがとう、せんせい」
先生「どういたしまして」
男の子「おい、いのりん。なにしてんだ?」
祈「ちょっとむーくんのことがしんぱいで」
男の子「ああ、あいつか。そういやしばらくきてないな」
女の子「どうしちゃったんだろうね?」
男の子「しんぱいか?だったらあとでちかくのじんじゃにみんなでおまいりにいくか?」
女の子「じんじゃ?」
男の子「ああ。むーのやつがはやくよくなりますようにって」
祈「いいかも」
女の子「でもさいきんあぶないひとがちかくにいるってよ。だいじょぶかな?」
男の子「なーに。へっちゃらさ。おとこにはきけんがつきものだぜ」
女の子「あたしおんなだけど?」
男の子「こわいか?うん?」
女の子「ん!こ、こわくなんかない!!」
男の子「いのりんはどうする?」
祈「え……?」

祈の回想
逢「いい?危ない人がうろうろしてるから、絶対に一人で出歩いちゃだめ」
逢「保育園終わったらお母さんが迎えに行くから。それまで先生と一緒にいなさい」
祈「うん。わかった」

祈(おかあさん……で、でもむーくんが。むーくんが)
男の子「おーい、いのりん。きいてっか?いくのかいかないのかどっちだ?」
祈「……え?あ、ああ、いく」
男の子「よーし。きまりだ。あとでじんじゃのまえにしゅうごうな」
女の子「う、うん」
祈(おかあさん……ごめん。でも、あたしは……むーくんが……)

そして夕方……
祈たち3人組は保育園が終わると保護者が迎えに来る前に足早に神社に寄った。

男の子「よーし。ぜんいんそろったな。んじゃいくぜ」
女の子「うん」
祈「……」

現在祈が住んでいる都会。
祈の自宅周辺に実はもう一つ神社があって、そっちは森に囲まれている。
祈の名前の由来となった安全祈願のお守りが売っている神社とは別の、保育園の近くの神社である。
明かりなどは一切なく、夕方になると真っ暗くなる。まさに危険な場所。

男の子「……」
女の子「……」
祈「……」
男の子「し、しぜんがゆたかだな……はは」
女の子「う……ちょっと……ぶきみ」
祈「……」
男の子「お、おれは、こ、こんなの、へ、へいきだからな」
女の子「ねぇ……きょ、きょうはもうくらくてあぶないから、か、かえら……」

アーッ。アーッ。

女の子と祈「きゃっ」
男の子「うお!びっくりした。か、からすのなきごえぐらいでひめいあげるなよ」
女の子「だって!」
祈「びっくりしたんだもん」
男の子「ったく、これだからおんなってやつぁ」

3人は何とか神社に到着。

カラン。カラン。カラン。ガラガラ。パンパン。

男の子「……」
女の子「……」
祈「……」
男の子「さてと、それじゃそろそろかえろうぜ。さすがにもうおやきてるだろ」
女の子「うん」
祈「ひとり10えんでたりるかな?」
男の子「さあな。そんじゃかえろうぜ」

3人は再び真っ暗な森を抜けようとする。

男の子「……」
女の子「……」
祈「……」

カサカサ

祈(ん?いまだれかいたような?)

しばらくして

男の子「よっしゃ、ぬけられた。はぁ、ハラハラしたぜ」
女の子「よかったぁ」
男の子の母親「こら!こんな時間に何してたの!?」
女の子の母親「早く帰るわよ」
男の子「……はぁい」
女の子「ごめんなさい」
男の子「じゃあな、いの……」
女の子「じゃあね、いのりちゃ……」
男の子「あ!?」
女の子「うそ!?」
男の子の母親「どうしたの?」
男の子「いねぇんだよ!!」
男の子の母親「誰が?」
女の子「いっしょにもりにはいったいのりちゃんがいないの!」
女の子の母親「いのりちゃん?ああ、七咲さんの娘さん」
男の子の母親「いないってどういうこと!?」
男の子「じんじゃでおまいりしてかえるところまではいっしょだったんだ」
女の子「でもいまがきがついた。いないの」
男の子の母親「あんた……たいへんなことをしてくれたね!?いのりちゃんがあぶない」
男の子の母親「こんな真っ暗な森の中でたった一人!!」
女の子の母親「どうすれば?」
女の子「たしか、いのりちゃんのおとうさんってけいじさんだよ」
男の子の母親「そうだわ!警察に通報しましょう」


警察署
華村「はい、こちら警察署。え?七咲刑事ですか?ついさっき娘さんを迎えに行きましたが?」
華村「それでご用件は?……はい。はい」
華村「えっ!?娘さんが!?」
華村「わかりました!と、とにかく、彼が行くまでそこで待機していて下さい」
松原「しゅうちゃんの娘さんがどうしたって?」
華村「友達と真っ暗な森に入って一人で遭難してるって」
松原「そうなんだぁ……ああっ、ダジャレじゃなくて!!だ、大丈夫かな?」
華村「一応、あいつにも連絡しとっか?いくらしゅうちゃんといえど一人は危険だ」
松原「そ、そうだね。で、でもさ、連絡したところで女が単身で乗り込むのも危険だよ」
華村「だから俺らも一緒に行くんだ!あいつらを危険な目に遭わせられない!!」
松原「わかった」


七咲家
逢は夕飯の支度をしていた。

逢「遅い。いくらなんでも遅すぎる。先輩も祈も何をやっているんだろ?」
逢「保育園に電話を……」

その時、家の電話が鳴る。

逢「はい、七咲です……えっ!?」


保育園
園児の保護者が警察署に電話した直後……

しゅう「ごめん、祈!待たせた!」
女の子「あ、いのりちゃんのおとうさん」
しゅう「あ、どうも」
男の子「た、たいへんなんだ!!いのりんが……いのりんが!!」
しゅう「!?」
……
しゅう「と、とにかく、皆さんは危ないのでここで待機していて下さい!!僕が行きます」
しゅう(仕事帰りだから拳銃も持ってないけど、取りに行ってる暇なんかない!)
しゅう(逢に連絡……いや、余計な心配をさせるだけだ。今日は僕が責任をもって祈を連れて帰ると約束した)
しゅう(それに逢を呼んだところで危険な目に遭わせるだけだ)
しゅう(ここは僕一人で乗り込む!)

真っ暗な森
祈(たしか、こっちのほうだった)
祈(……みうしなっちゃった。ここはどこ?)
祈(いま、なんじかな?おとうさんとおかあさんがしんぱいしてるよね、きっと)
祈(はやく……かえらなくちゃ。でも、どこにいけばいいかわからない)
祈(むーくん……おとうさん、おかあさん……)

真っ暗な森に独り取り残された祈は恐怖から泣き出す。

祈「うぐっ、ひっく……」
?「お嬢ちゃん、怖がることはないんだよ」
祈「えっ、だれ?」
?「君のパパだよ」
祈「おとうさん?」
?「そうだ。いい子だ。こっちに来るんだ」

真っ暗だけど、今日は満月。月明かりに照らされて祈は男の顔を見てしまった。

祈「……!?だ、だれ?しらない……おじさん」
?「ふふふ、そうさ。さっきのは嘘だ」
祈「わ、わるいひと……」
?「いいや、おじさんはとってもいい人だよ~。さあ、おいでよ。一緒に森から出よう」
祈「森から?」
?「そして一緒に行こう、あの世にな」

男は拳銃を取り出す。

祈「!!」

祈は泣きながら一目散に逃げようとするが……男に腕を掴まれる!

祈「いや!!はなして!!」
?「聞こえなかったか?一緒にあの世に行こうって約束したじゃないか」
祈「してない!!」
?「ふふふ、だが、君にもう逃げ場はないよ。おじさんに腕を掴まれちゃってるからねぇ」
祈「いや!!助けて、おとうさん!!」
?「さあ、大人しく……」
しゅう「監獄に入ってもらおうか?」
?「!?」
祈「!?」
しゅう「ナナサ……キック!!」

僕は男の背後の暗闇から必殺技を放つ!

?「ぐお!」
しゅう「やれやれ。見つけたはいいが拳銃なしで仕留めるのは難しいな」

僕は男から拳銃を奪い取った。

祈「おとうさん……おとうさんっ!!」

泣いて僕の胸の中に飛び込んで来た祈をそっと抱きしめた。

しゅう「祈!!無事か?怪我はないか?」
祈「うん、大丈夫。怖かった」

必殺技・ナナサキックをまともに食らって伸びている連続殺人犯をよそに僕は祈を抱きしめた。

しゅう「さあ、祈。ここは危険だ。早く帰るぞ」
祈「うん」

そう言って祈をおんぶしようとしたその時!

??「ちょっと待てよ」
しゅう「!?」
??「よくも俺の仲間をやってくれたな?」
しゅう「おまえは……あれ?連続殺人犯って一人じゃ……」
??「残念だったな。俺はずっと身を潜めていたんだ」
しゅう(なん……だって!?て、てっきり一人かと思ってた!)
祈「……」
しゅう(い、祈だけじゃない!僕も危ない)


一方、その頃……
保育園に向かう松原と華村。

松原「早くしないと!」

ピリリリリ……

華村「ああ?なんだってだ、こんな時に?」
華村「もしもし。俺だ。どうした?……えっ?何だって!?」
華村「わ、わかった」
松原「どうした?」
華村「大変なことになったぞ!連続殺人犯、実は仲間がいるらしい!」
松原「はっ!?」
華村「別の区域で聞き込みしてた奴が情報を掴んだらしい」
華村「連続殺人犯の仲間らしき男が数日前に目撃されているらしい」
松原「じゃ、じゃあ!」
華村「ああ、急ぐぞ!!」


しゅう「祈……お父さんの後ろに隠れていろ」
祈「うん」
しゅう(相手はさっきの奴同様拳銃所持!僕を盾にしてでも祈を銃弾から守らないと!)
しゅう(くそ、元はと言えば僕が迎えに遅れたのがいけないんだ!)
しゅう(逢……祈は僕が責任をもって絶対に守ってみせる!)
連続殺人犯の仲間「おまえ、刑事か?」
しゅう「だったら?」
連続殺人犯の仲間「ふっ、刑事とその娘……面白いな」
しゅう「……」
祈「おとうさん……」
しゅう(何とかしてあいつの気を逸らしてその隙にこの拳銃で一気に……)

カチャッ。

僕はこっそりと拳銃の発射準備をする。

連続殺人犯の仲間「おっと!」

スドーン。

バサバサッ。

男は空に向かって発砲し、音に驚いた鳥たちが一目散に逃げた。

しゅう「!」
祈「!!」

祈が恐怖から僕の背中にしっかりとしがみついてくる。

連続殺人犯の仲間「俺の気を逸らして拳銃を発砲しようだなんて物騒なことは考えるなよ。七咲刑事」
しゅう「!?ど、どうして僕の名を?」
連続殺人犯の仲間「ふっ、たった今思い出した。おまえ確か前に妻の逢を誘拐されたことがあったな?」
しゅう「あ、ああ」
祈「え?おかあさん、ゆうかいされたの?」
しゅう「ん?ああ、昔の話。祈が生まれる前」
祈「そうなんだ……」
連続殺人犯の仲間「あの時の犯人は俺のダチでな、おまえの話をよく聞いてた」
連続殺人犯の仲間「あいつ、おまえの妻に感謝してるとかほざきやがって。ふふ、笑えるな」
しゅう「……」
連続殺人犯の仲間「あの時はおまえもおまえの妻もまんまと殺し損ねたが、俺はそんなミスはしない」
連続殺人犯の仲間「今ここで消してやる。あの時死ぬはずだった二人と、生まれるはずもなかったその娘も!」
しゅう「……ふっ、残念だな。娘には指一本触れさせない」
連続殺人犯の仲間「そんなにその娘が大事か?だったら助けてやらないこともない」
しゅう「は?」
連続殺人犯の仲間「今すぐ、その拳銃を捨てろ。そしてこの俺を見逃せ。そしたら無事に生かしてやる」
しゅう(こいつを……見逃せだと?どうせ拳銃を捨てた瞬間に僕らを射殺するに決まってる!)
しゅう(それに……もし仮にここで生還出来たとしても、また襲われる!祈が!!)
しゅう「そ、そんな相談乗れるわけ……」
連続殺人犯の仲間「じゃあ決まりだ。ここで……」
祈「!?」
祈「ま、まって!」
しゅう「!?祈?」
祈「わ、わかった。けんじゅう、すてるから。いのり、いいこにするから、たすけて」
しゅう「い、祈。おまえ、何を?」
祈「おとうさん!このひとのいうこときこう。あたしもおとうさんもたすけてほしい。おねがい」
しゅう「……」
連続殺人犯の仲間「ほぉ。聞き分けのいい子じゃないか。それに比べて頭の硬いお父さんは」
しゅう「くっそ、調子に乗って!い、祈。これは罠だ。従っちゃ……」
祈「いいから、はやく!」
しゅう「おい!」

祈は僕から素早く拳銃を奪い取ると素早く拳銃を力一杯後ろに向かって投げた。

しゅう「ぬあ……!」
連続殺人犯の仲間「そうだよ、最初からそうしていれば楽で済んだ……」

男が拳銃を突きつけてくる!

しゅう「!これはまず……」
祈「えいっ!」
しゅう「うお!」

祈が僕を力一杯押し倒した!
それと同時に!

ズッガーーーーン!

しゅう「や、やられ……てない」
連続殺人犯の仲間「うお!」

どこからともなく飛んできた銃弾が男の手を撃ち、拳銃を吹き飛ばすとともに男が体勢を崩す。

しゅう「な、何が起きたかよくわかんないけど……やるなら今しかない!」
しゅう「食らえ!ナナサ……キック!!」

男をノックアウトした!

しゅう「ふぅ、危なかった。それにしてもさっきのは?」
祈「おかあさん!」
しゅう「は?」

後ろを振り返ると拳銃を持った逢が立っていた。

しゅう「あれ?その拳銃、さっき祈がぶん投げたやつ……って、そうじゃない!」
しゅう「逢、ありがとう。助かった」
逢「……」

逢が拳銃を捨て、無言のまま近付いて来て僕の正面に立つ。

しゅう「逢、祈は無事……」
逢「!!」

パーーーンッ。
バサバサ。

逢の渾身の平手打ちを食らった。またしても音に驚いた鳥たちが逃げた。

しゅう「え?あ……」
逢「あなたは一体何をやっているんですか!?娘をこんな危険な目に遭わせて!最低です!」
しゅう「……ごめん」
逢「絶対に許しません」
しゅう「……」
祈「お、おかあさん、ちがうの。おとうさん、たすけに」
逢「祈も祈よ。こんな遅い時間まで出歩いて。先生と一緒にいなさいって言ったでしょ?」
祈「ごめんなさい。でも……」
華村「こんなところにいたか。ったく、危ないのに先に行くなよ」
松原「七咲、誤解してるよ。祈ちゃんとしゅうちゃんは……」
逢「黙っていて下さい」
松原「……はい」
華村「……ったく、何で俺らまで怒られなきゃなんねーんだよ」
しゅう「……ごめん、僕が迎えに遅れたせいでこんなことに。本当に……ごめん」
逢「……とにかく、こんなところで立ち話は難です。一旦帰りましょう」
祈「……」
逢「お二人とも、ありがとうございました」
華村「いいってことよ。そんじゃこいつは連れてっから。じゃな」
松原「しゅうちゃん、また明日」
しゅう「おう」

連続殺人犯二人を署へと連行する松原と華村に付き添い、森を出てそのまま帰路に着いた。


七咲家
重い空気の中、家族3人で夕飯を食べる。

しゅう「……」
逢「……」
祈「……」
しゅう(……それにしても祈は何だってあんな時間にあんな場所にいたんだろう?)
しゅう(逢があれほど迎えが来るまで出歩くなと言っていたのにな)
しゅう「あ……あの……何でもない」
逢「……」
祈「ごちそうさま」
逢「……食器、洗っておいてくれますか?もう遅い時間なので祈をお風呂に入れてそのまま寝かせます」
しゅう「わかった」

結局この日の夕飯時の家族の会話はこれだけだった。
逢は祈と一緒にお風呂に入り、お風呂から出た後祈と一緒に早めに休んだ。
僕も二人の後にお風呂に入り、同じく早めに休んだ。


翌日
警察署
しゅう「はぁ」
華村「お疲れ。まあまあ、そう落胆すんなって」
松原「そうだよ。七咲同様祈ちゃんのおかげでまた犯人が捕まったんだから」
華村「ある意味、似た者母子だな」
しゅう「笑い事じゃないよ。こっちは大変なんだから」
松原「あの様子じゃ七咲は相当ご立腹だろうね。たぶん帰ってからもほとんど無口だったんでしょ」
しゅう「はぁ」
華村「大切な一人娘と大切な旦那が命落としかけたんだ。仕方ねぇよ」
華村「迎えに遅れたのもよくねぇけど、たぶんあいつそれだけで怒ってるんじゃない」
華村「いくら大切な一人娘のためとはいえ、たった一人で連続殺人犯とやり合うのは無謀だ」
華村「と言ってもまあ、状況的にあいつが来るの待ってたら祈ちゃんは今頃……」
松原「状況的に言ったらしゅうちゃんも正しいけど、でも、どうなんだろうね?」
しゅう「……」


保育園
男の子「い、いのりん。き、きのうはわるかったな」
祈「いいよ、べつに」
男の子「で、でも、おれらだってむーのことがしんぱいだからさ」
女の子「むーくん、きょうもきてないね」
祈「……」
男の子「いのりんのおやはだいじょうぶか?」
女の子「ケンカ……してるの?」
祈「うん。どうしよう……あたしのせい」
男の子「……」
女の子「……」
男の子「あれ?いて、いてて」
女の子「どうしたの?」
男の子「は、はらいてぇんだよ」
女の子「え?だいじょうぶ?」
男の子「わかんねぇ。なんかとつぜんきた」
祈「せんせいよんでくる」
……
先生「じゃあ、この子をちょっと病院に連れて行くからみんなこの先生の言う事聞くのよ」
園児「はあい」
祈「せんせい、いっしょにいきたい」
女の子「あたしもいく」
先生「え?せんせいひとりでだいじょうぶよ」
祈「だって、ともだちだから」
女の子「あたしも」
男の子「お、おまえら……」
先生「わかった。じゃあ先生から絶対に離れないでね」
祈「うん」


総合病院
塚原「……心配ないわ。ただの食べ過ぎね」
先生「そうですか、よかったです」
男の子「あ、ありがとうございました」
塚原「ふふ、元気よし」
男の子「あ……はい」
女の子「てれてるの?」
男の子「ば、ばか!」
塚原「ふふ」
祈「……」

先生と男の子と女の子が微笑むなか、祈だけがただ一人暗い顔をしている。

先生「それじゃあ、ありがとうございました」
男の子「せんせい、ありがとう」
女の子「ありがとうございました」
塚原「いいのよ。また来てね……っと、ちょっといいかしら」
先生「はい」
塚原「先生と他の二人は帰っていいわ。ただ、ちょっと祈ちゃんだけ残ってくれるかしら?」
祈「ん?」
先生「祈ちゃんだけ?」
塚原「ええ。ちょっと話がしたくて。あ、祈ちゃんのご両親とは知り合いだから迎えはここに呼ぶわ」
先生「わ、わかりました。それじゃ、祈ちゃん。また明日」
男の子「じゃあな、いのりん」
女の子「じゃあね」
祈「……うん」
……
塚原「……それで?あの二人にまた何かあったのね?」
祈「え?」
塚原「わかりやすい。顔に書いてあるわ」
祈「あ……」
塚原「あの二人が親なら娘も娘。本当にわかりやすい親子だわ」
祈「……」
塚原「話してくれない?祈ちゃんの力になってあげる」
祈「う、うん」
……
塚原「クスッ。なるほど。それで夫婦喧嘩になったわけね。あの二人ならありえるわ」
祈「せんせい、わらいごとじゃない」
塚原「ごめん。祈ちゃんは早くご両親に仲直りしてもらいたいのね?」
祈「うん」
塚原「けど、重い空気のなか、言い出せないわけね」
祈「うん。どうしよう」
塚原「仕方ないなぁ……先生に任せて」
祈「え?」


警察署
しゅう「はい、もしもし。こちら警察署……あ、塚原先輩。どうも……えっ!?」
華村「!?」

七咲家
逢「はい、七咲です。あ、塚原先輩……えっ!?そうなんですか?すぐ行きます」


総合病院
しゅう「すみません、遅れました」
逢「祈が遊んでいる最中に熱中症になったって本当ですか?」
塚原「あ、ごめん。嘘」
しゅう「はい??」
逢「嘘……だったんですか?」
塚原「クスッ。おかしいわね。自分から“仮病での来院はお断り”って言ったのにね」
しゅう「はぁ」
逢「……じゃあ、どうして?」
塚原「あなたたち、彼女の話をちゃんと聞いてあげた?」
しゅう「あ……」
塚原「だろうと思った」
祈「……」
塚原「さ、祈ちゃん。先生がついてる。安心してすべてを話してあげなさい」
祈「だいじょうぶ?」
塚原「先生を信じて。お父さんお母さんとは付き合いが長いから」
祈「うん」
……
祈「むーくんが……しんぱいだったから」
祈「むーくん……せんしゅうからびょうきでずっとやすんでる。あえない。でもあいたい」
祈「むーくんにはやくよくなってもらって、またいっしょにあそびたいから……」
祈「……」
祈「おかあさんにはせんせいといっしょにいなさいっていわれたけど、でもあたしはむーくんが……」
祈「むーくんにあいたくて、いっしょにじんじゃにいった。おまいりした」
しゅう「むーくんの……ために……か。それだったらどうして言ってくれなかったんだ?」
逢「そうよ。一緒に行ってあげたのに」
祈「いえないよ……」
塚原「彼女の気持ち、あなたたちならわかるでしょ?子どもが親にも相談出来ないことって」
しゅう「そっか……そうだったのか」
逢「……」
しゅう(つまり、祈の話をまとめると……大好きなむーくんのために危険を冒してまでお参りに行った)
しゅう(好きな人のためについつい無茶をしちゃうところ、本当そっくりだな)
祈「ごめんなさい。やくそく、まもれなかった」
しゅう「ふふ」
逢「何がおかしいんです?」
しゅう「いや、あんまりにも似てるから、つい」
祈「え?」
しゅう「あったんだよ、こういうことが。美也おばさんの幼い時にもね」
逢「美也ちゃんの?」
祈「え?みやおばさんも?」
しゅう「うん。細かいことで喧嘩した両親を仲直りさせるために夜遅く神社にお参りに行ったんだ」
しゅう「“はやくおとうさんとおかあさんがなかなおりしますように”って」
しゅう「おかげで家中が大パニック。両親が捜索願いを出して何とか神社で美也を見つけて……」
しゅう「その時は二人ともすごい剣幕で怒ったけど、後で事情を知って“美也にはすまないことをした”って」
しゅう「好きな人のために無我夢中になれるってとこ、本当に誰に似たんだろうな?」
逢「……誰に似たんでしょうかね?」
塚原「ふっ」
しゅう「その気持ちは褒めてあげる。偉いぞ、祈」
祈「……ありがとう」
しゅう「だけど、祈はまだ小さいんだ」
しゅう「いくら好きな子のためとはいえ、夜遅くに出歩いたことは親として認めるわけにはいかない」
しゅう「祈、もう絶対にこんなことはしないって約束してくれるか?」
祈「やくそくする」
しゅう「よっし。これで解決」
逢「解決じゃありません」
しゅう「え?」
逢「謝らなきゃいけないのは祈だけじゃありません!」
しゅう「は?僕もか??」
逢「一人で助けに行ったりして……」
しゅう「だって、僕は現役の刑事だよ?これが仕事だから」
逢「だとしても、あんな真っ暗な森に刑事さんが一人で乗り込むなんて無謀にも程があります」
しゅう「あ……」
逢「それに、どうして森に入る前に私に連絡してくれなかったんですか?私もこの子の保護者ですよ」
しゅう「で、でも、連絡したら心配して飛んで来るだろ?逢を危険な目に遭わせたくない」
逢「それでも!」
塚原「一度誘拐されたことがあるから心配するのも無理もないんじゃない?」
逢「塚原先輩……」
塚原「だけど、七咲も保護者だから連絡するのは当然ね。祈ちゃんの事が心配なのは七咲も同じだからね」
しゅう「すみませんでした」
塚原「さて、これでいいかしら?」
祈「ありがとう、つかはらせんせい」
塚原「いいのよ」
しゅう「勤務中にすみませんでした」
逢「すみませんでした」
塚原「大丈夫よ。もう勤務は終わってるから。それに私が勝手に呼んだだけだから」
しゅう「ありがとうございました」
逢「ありがとうございました」
塚原「ふふ、まったく、親子揃って世話が焼けるんだから。でも、今後の参考になったわ」
しゅう「今後の?小児科っていう意味で?」
逢「違いますよ。母として……じゃないですか?」
しゅう「ああ、そっちか」
逢「それじゃ、帰るよ、祈」
祈「うん。つかはらせんせい、ばいばい」
塚原「ばいばい」

僕と逢も軽くお辞儀をして総合病院を後にした。

祈「……」
しゅう「よっぽど疲れていたんだな。病院を出た瞬間に爆睡だもんな」
逢「何だか、かわいそうなことをしてしまいましたね」

祈をおんぶしている逢と並んで歩きながら帰路に着く。

しゅう「祈、きっと頭のいい子に育つだろうな」
逢「ええ」
しゅう「僕が来るまであんなに怯えていたのに……」
しゅう「男に“拳銃を捨てろ”って言われて……」
しゅう「まるでそこに逢がいることを知っているかのように拳銃を後ろに放り投げた」
しゅう「あの時の祈は機転が利いていたけど、それ以上にすごいのは逢の方だよな?」
逢「私の?」
しゅう「だって、暗闇の中、あんな遠距離から正確に男の手を狙い撃ち出来るなんて……さすがだよ」
逢「あ、あれは……無我夢中だったので」
しゅう「ありがとう。逢のおかげで助かった」
逢「どう……いたしまして。私こそ先輩を引っ叩いたりしてごめんなさい」
しゅう「いや、仕方ないって。心配かけたから」
逢「……」
しゅう「……あのさ」
逢「はい」
しゅう「祈、せっかく頑張ったんだ。だから、ここは親として娘の初恋を応援してやらないか?」
逢「と言うと?」
しゅう「ほら、あれ!」
逢「ん?神社?」
しゅう「安全祈願のお守りを買ったあの神社。もしかしたら!」
逢「あ、むーくんの病気を治してくれるかも」
しゅう「うん。行こう」
逢「はい」

逢と一緒に健康祈願のお守りを買った。

しゅう「ここのお守りは絶対に効くさ。僕らを守ってくれたように」
逢「でも、明日は平日です。それにむーくんにどうやって届ければ?」
しゅう「頼んだ!」
逢「……なるほど。わかりました」


翌日は七夕。
僕は職場へ、祈は逢に連れられて保育園へ。

先生「え?むーくんの住所ですか?」
逢「はい、お願いします。どうしても届けたいものがあるんです」
先生「……わかりました」

逢はむーくんの自宅へ行き、健康祈願のお守りを届けた。


そして夜。
逢「もしもし……はい、わかりました」
逢「祈、むーくんから」
祈「むーくん!?」
祈「もしもし……うん……うん!よかったぁ。うん、まってるから」
祈「むーくん、あしたからこれるって!びょうき、なおったんだって」
しゅう「よかったぁ。想いが通じたんだ」
祈「ありがとう、おとうさん、おかあさん」
逢「ううん。おとうさんとおかあさんは何もしてない。全部祈のおかげ」
祈「そんなことない!ありがとう」
祈「あんしんしたらねむくなってきちゃった」
逢「じゃあ、本読んであげる」
しゅう「あ、それなら僕が読む。逢はゆっくりしてていいよ」
逢「じゃあ……任せます」
しゅう「よーし、今夜は七夕だ。七夕の本を読んであげる」
祈「やったぁ!」
……
しゅう「……寝ちゃった」
逢「お疲れ様です」
しゅう「むーくん元気になってよかったな。さすが、祈の神社だ」
逢「祈も最初からそっちの神社に行ってくれればよかったのに。そうすればあんな危険な目には」
しゅう「まあな。でも仕方ないって。あの神社のことは祈は知らないから」
逢「いつ話してあげればいいんでしょうね?」
しゅう「小学校に上がって、“名前の由来”を聞かれたら何て答えさせようか?」
逢「小学生じゃ理解出来ない話ですからね」
しゅう「思えば祈の名前の由来だって今回と似たようなことだしなぁ」
しゅう「相手を想うがあまり、危険を冒してしまう……こんなところまで遺伝しちゃうなんて、まったく」
逢「ふふ」
しゅう「でも、それがあったから今こうしていられるんだ。むーくんとうまくいって欲しいな」
逢「いいんですか?認めちゃって?」
しゅう「く、悔しいけど、仕方ないだろ。娘の想うように生きさせてあげたいから」
しゅう「本当は“おとうさんだいすき!あたししょうらいおとうさんとけっこんするんだ”って言って欲しい」
逢「不倫ですか?」
しゅう「まあ……祈となら……ね」
逢「最低です。別れましょう」
しゅう「ちょ、ま……ん……」
逢「ん……」

逢が振り向き様にキスをしてくる。

逢「冗談ですよ、クスッ」
しゅう「じょ、冗談きついな」
逢「すみません。引っ叩いてしまったお詫びです」
しゅう「足りない」
逢「え?」
しゅう「お詫びって言うならこうしなくちゃ」
逢「んん!」
しゅう「んん!」

こうして熱い熱い七夕は終わった。
祈の祈りは無事に届き、翌日からむーくんは無事に保育園に復帰した。
あ、今のギャグじゃないぞ(笑)
祈の初恋の相手、むーくん。
どうか祈を幸せにしてやって欲しい。
僕と逢の七夕にかける願いはただそれだけだ。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、今日は素晴らしい七夕です」
END

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コメント

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Re: タイトルなし

ありがとうございます。
次回作は未定です。
近いうちに更新出来たらいいなと思います。

そろそろ二人目の子が産まれるくらいじゃない?
ここ、毎日見てます。応援してます。

Re: タイトルなし

僕もそれを考えています。
いずれその話を書こうかと思っていますが、
今はちょっとこちらの事情で先延ばししています。
申し訳ありませんが、楽しみにお待ちください。

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