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2010-07-27

第1話「逢ちゃん許すまじ!!」

七咲アフターストーリー第1話~第2話 準拠

4月始め
夕方
橘家
橘「ただいま!!」
美也「お帰り!!」
美也「にぃに顔がデレデレしてるけど、何かいいことあったの?」
橘「うん。まあ。ちょっとな」
美也「ふ~ん。そういえば今日高橋先生と面談だったんだよね?」
橘「ギクッ!!」
美也「どうせ模試の成績悪かったんでしょ~?」
橘「う……」
美也「でも、逢ちゃんに慰められていい気になったんでしょ?」
美也「みゃーにはすべてお見通しなのだ!!」
橘「う、うるさい。シャワー浴びて来る!」
美也「はぁ。逢ちゃん……か」

にぃに、昔はよくみゃーと遊んでくれたのに。
幼馴染のりほちゃんと3人で楽しかったのに。
今ではにぃにとりほちゃんは疎遠で……
にぃにとみゃーも疎遠になりつつある。
これもすべてにぃにが逢ちゃんを好きになったせいだ!!
去年のクリスマス……
にぃにが逢ちゃんとデートに行ったあの日から……
すべてが変わってしまった!!
もう……にぃににとっては逢ちゃんが一番大事で……
みゃーなんてどうでもいいのかもしれない!!
みゃー悔しいよ!!逢ちゃんに負けるなんて!!
みゃーは態度には表せないけど、にぃにのことが大好きなのに!!

でも、まだチャンスはあるはず!!
そうだ、にぃにと逢ちゃんはまだ付き合いたてのカップル……
それに対してにぃにとみゃーはもう16年間一緒だよ?
この一緒にいた年月の差でみゃーの方が勝ってるんだ!!
逆転のチャンスは必ずある!!
みゃーは今ここに宣言する!!
「打倒逢ちゃん!にぃに奪還!!」
これ以上、逢ちゃんに大好きなにぃにを好きにはさせない!!
絶対に奪い返す!!何があっても!!!!
逢ちゃん許すまじ!!!!!!!!!!!


というわけで、この話は橘美也が主人公で……
本編「七咲アフターストーリー」の橘美也視点バージョンです。
「にぃに」こと本編の主人公「橘しゅう」の妹である橘美也が……
「逢ちゃん」こと本編のヒロイン「七咲逢」に敵意を抱き……
毎回毎回何らかの作戦を立てて橘しゅうを奪還しようと企てます(笑)
はたして橘しゅうは七咲逢と別れ、橘美也のものになるのか!?
ちなみに見てわかる通り、本作主人公の橘美也はブラコン設定です(笑)

美也「ブラコンで何が悪い!?」


翌日
休み時間
輝日東高校・図書館
美也「でね!この話面白いんだよ~」
中多「え?そうなの?」
美也「紗江ちん、きっと楽しめると思うよ~」
中多「うん。じゃあ、ぜひ読んでみる!」
美也「にししし」
橘「いてっ!な、何をするんだよ、七咲!?」
美也(ん?七咲?この声はもしかして……)
七咲「何をじゃないです!先輩は今なぜここにいるかわかりますか?」
美也(にぃにと逢ちゃん!!)
橘「そ、それは……受験勉強をするため……だけど」
七咲「そうですね。先輩は、勉強をするためにここにいるんですよね?」
橘「う、うん」
七咲「だったらちゃんと勉強に集中してください」
美也(あの二人、図書館でもイチャイチャしてる!!)
中多「美也ちゃん、どうしたの?」
美也「しーっ」
中多「ん?あれは……先輩と七咲さん?」
美也(逢ちゃん……にぃにとあんなに仲良くして!!)
橘「絢辻さーん!」
絢辻「え?ああ、橘くん」
橘「あ、絢辻さん!ちょうどいいところに!!」
絢辻「私に何か用なの?」
橘「うん。実は勉強を教わりたくて。いい……よね?」
絢辻「ええ。構わないわ」
橘「やった!」
美也(な……絢辻先輩まで!?)
美也(にぃに……絢辻先輩とも仲良くしてるんだ……)
美也(逢ちゃんがいるっていうのに……それだけじゃ足りないの?)
美也(にぃに……みゃーは……)
美也「がっかりしたのだ」
中多「美也ちゃん、そろそろ授業始まるから行こう」
美也「にぃに……」
七咲「さ、先輩。私たちも行きましょう」
橘「うん……あれ?美也!お前こんな所で何を?」
七咲「美也ちゃん、遅れるよ?」
美也「う、うるさい……」
橘「は?」
美也「うるさいのだあああああああああああああああ」
七咲「美也ちゃん?」
美也「こんな所でもイチャイチャしちゃって!!」
美也「逢ちゃん、にぃには……みゃーのものなんだからね!!!!!」
美也「絶対に渡さないのだああああああああ」
美也は走って逃げた。
橘「あいつ……何が言いたかったんだろ?」
七咲「さあ?あ、それより早く行きましょう」
橘「うん」

こうして、みゃーは休み時間の図書館でイチャイチャしているにぃにと逢ちゃんを発見した。
さらにはにぃにが絢辻先輩ともイチャイチャしていることが判明。
にぃに……みゃーは情けないよ。

でも、後で廊下で偶然出逢った絢辻先輩から聞いて分かったけど……
絢辻先輩はただ普通ににぃにに勉強を教えていただけで……
別ににぃにのことは何とも思ってなかったらしい。
絢辻先輩からは「まったく。早とちりなんだから」と苦笑された。
猛省します……。
みゃーは、にぃにのことだからてっきり……
「絢辻さん、エッチな勉強を教えて!!」
とでも言ったのかと思ったよ。にししし。

また、絢辻先輩はにぃにと逢ちゃんが恋人同士だってことは見抜いていたらしい。
さすが、天才の絢辻先輩。
勝負はまだまだ始まったばっかり。
これからみゃーは頑張って逢ちゃんに勝ってみせる!!
そして、にぃにを必ず取り戻してみせるからね!!
次回をお楽しみに。



第2話に続く。

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2010-07-25

エピローグ「先輩、結婚しましょう」

婚約からついに3年半経った。
僕は立派に刑事さんになり、1年目が経過した。
階級はまだ巡査だけどな。早く出世したいな。
大学の同期の松原正義・華村政治と同じ警察署に配属されている。
その理由は他でもない、学生時代からずっと同棲している七咲逢のためだ。
彼女も今年の4月に大学を卒業した。
学生時代はアスリートを目指すべきか、それともコーチを目指すべきかで散々悩んでいたが……
結局アスリートを目指すことに決めた。
アスリートとして存分に活躍した後、コーチになるのも悪くないんじゃないか……
という僕の助言を受けて決心したようだ。
今ではアスリートとして体格がガッシリして、出逢った当初の彼女とは少し違って見える。


そして今日は6月の中旬。
天気は快晴で、外に出ると汗がじんわりと滲み出てくる暑い日。
今日、この日に僕は結婚するんだ。
相手は言うまでもない。
橘しゅう高校2年生の冬……
母校・輝日東高校の校舎裏で偶然出逢った女の子……
彼女とは最悪な出逢い方をした……
出逢って早々、僕は彼女に痴漢に間違われた……
普通あんな出逢い方しないよな。
ある意味彼女との出逢いは運命だったのかもな。
学校生活を通して徐々に彼女との距離が縮まっていき……
ついには恋人同士となった。
やがて二人とも大学に通い出してからは同棲するようになった。
高校時代にもすでにハラハラドキドキな展開があったけど……
同棲するようになってからはもっとハラハラドキドキな展開があったよな。
特に記憶喪失になった時は本当に彼女には色々とお世話になった。
その感謝の意を込めて、僕は彼女と結婚し、一生彼女に恩返ししていきたいと思う。
な?そうだよな、逢。
七咲逢……僕の一生の宝物。ずっと守っていきたい。
6年半越しの想いがやっと叶うんだ!!

松原「おい、そろそろだってよ?」
橘「……」
松原「おーい!聞いてるのか、しゅうちゃん?」
橘「……」
松原「おいってば!!」
橘「あ、ああ!!ご、ごめん。何?」
松原「聞いてなかったな?そろそろ式が始まるぞ」
橘「あ、もうそんな時間か」
松原「俺、先に行ってるから!遅れずに来いよ。一応主役なんだからな?」
橘「うん……一応って……」

ちなみに挙式は人前結婚式で……
今回司婚者を務める塚原響先輩が手配してくれた高級屋外レストランで行われる。
式場は屋外にあり、式の準備は屋内で行う。
わざわざ屋外にしたのは僕の希望だ。
媒酌人を務めるのは梅原正吉と森島はるか先輩だ。
本来媒酌人は仲人(先輩夫婦もしくは僕の上司・恩師)に依頼するものだと聞いているが……
高橋先生が仕事の都合で来られない上、僕と七咲の希望で、僕の上司ではなく……
僕が記憶喪失になった時にお世話になった梅原と森島先輩にお願いすることになった。


結婚式

司婚者の塚原響先輩と参列者たちが最初に入場する。
参列者は述べ50人程度である。
僕の両親と美也。七咲の両親と郁夫。
松原正義と華村政治。僕の上司・同僚数名。
僕の大学の友人・知人数名。七咲の大学の友人・知人数名。
二人の高校時代の友人・知人数名。

参列者の中には、七咲が輝日東高校水泳部部長だった頃に水泳部に入部し……
その後インターハイで活躍し、輝日東高校水泳部部長となり……
今では七咲の大学の後輩となった向井るりさんの姿もあった。
彼女も着々と頭角を現しているようだ。

塚原「ただいまから、橘しゅう君と七咲逢さんの結婚式を挙行いたします」
塚原「新郎新婦入場!」

屋内で準備を済ませた僕と七咲、それに梅原と森島先輩が入場し、所定の位置につく。
ちなみに席順はこんな感じだ。

塚原「では、新郎新婦の紹介をいたします」
塚原「新郎の橘しゅう君は私と同じ輝日東高校出身の後輩です。学年は1つ下です」
塚原「彼はちょっと変わったところがあるおかしな子だけれども……」
塚原「新婦を誰よりも大切に思っているということはこの私でもよくわかります」
塚原「続いて新婦の七咲逢さんも私と同じ輝日東高校出身の後輩です。学年は2つ下です」
塚原「彼女とは水泳部で一緒でした。私がまだ水泳部の部長を務めていた頃……」
塚原「私の引退が先か、それとも私が彼女に追い抜かれるのか先かとよく焦ったものです」
塚原「私は水泳を辞めて医学部に進学することを決めましたが……」
塚原「彼女は体育大学に進学し、今でも水泳を続けています」
塚原「その一生懸命さを、私は見習いたいと思います」
塚原「彼女が水泳を続けることを選んだ理由は新郎・橘しゅう君の助言だったそうです」
塚原「彼が彼女を生涯支え続けることを約束した……だから彼女は水泳を続けることができたんです」
塚原「そしてそんな彼が不慮の事故で記憶喪失になった時……」
塚原「彼女はその身がボロボロになっても一生懸命彼を支え続けました」
塚原「新郎新婦はお互いに支え合い、今こうして結婚という形に至りました」
塚原「……以上、新郎新婦の紹介をいたしました」
会場からは拍手、時々笑い声が湧き上がった。
中には涙を流す人の姿も。

塚原「続きまして、誓約と証人の儀を行います」
塚原「橘しゅうさん……あなたは七咲逢さんを妻とすることを誓いますか?」
橘「はい。誓います」
塚原「……」
塚原「七咲逢さん……あなたは橘しゅうさんを夫とすることを誓いますか?」
七咲「はい。誓います」
塚原「……」
塚原「みなさまには御異議はございませんか?」
参列者「……」
塚原「……」
塚原「では、ご列席のみなさまを証人にお願いしまして、お二人に『婚姻届』にご署名願います」

塚原先輩が僕の前に婚姻届を差し出す。
橘(こ……これが婚姻届か。当たり前だけど、初めて見た!)
橘(これを書けば、僕は……七咲と……)
緊張の余り、思わずペンを持った手が震えてしまった。
不安になって塚原先輩の顔を見上げる。
塚原「……」
塚原先輩がゆっくりと首を縦に振った。書いていいんだよ、という合図だ。
僕は恐る恐る自分の名前を書いた。『橘しゅう』

続いて、塚原先輩が七咲の前に婚姻届を差し出す。
七咲「……」
やはり、彼女も緊張しているようだ。ペンを持った手が震えている。
僕と七咲は前々からどこか似ているような気がしてたけど……
まさかこんなところまでそっくりだったとはな……。
彼女も不安になって塚原先輩の顔を見上げる。
塚原「……」
塚原先輩が同様にゆっくりと首を縦に振った。書いていいんだよ、という合図だ。
彼女も恐る恐る自分の名前を書いた。『七咲逢』

二人が署名し終わると、塚原先輩が婚姻届を回収し……
列席者の方に向けて披露した。

塚原「誓いの……言葉」
塚原「新郎・しゅう君、新婦・逢さん。誓いの言葉を朗読してください」
しゅう(まずい……緊張してきた!!)
ポン。
しゅう(えっ?)
右隣に座っている媒酌人の梅原がそっと僕の肩を叩いた。
しゅう(あ、ああ。頑張るよ!)
しゅう「……」
逢「……」
二人で顔を見合わせ、読み始めるタイミングを確認した。
しゅう・逢「誓いの言葉」
しゅう・逢「本日私たちはご列席の皆様の前で夫婦になることを宣言いたします」
しゅう「私しゅうは逢を妻とし生涯変わることなく愛し、守り、幸せにすることをここに誓います」
逢「私逢はしゅうを夫とし生涯変わることなく愛し、支え、幸せにすることをここに誓います」
しゅう・逢「私たちはこれからふたりで力を合わせてどんな苦難も乗り越えて……」
しゅう・逢「温かく幸せな家庭を築いていくことを誓います」
しゅう・逢「200X年6月○○日」
しゅう「新郎・しゅう」
逢「新婦・逢」
塚原「……」
塚原「では、指輪を交換してください」
しゅう「……」
逢「……」
僕と逢は立ち上がり、お互いの顔を見合わせる……緊張する。
逢がそっと左手を差し出してくる……僕はそれを左手で受け止める。
逢「あ……」
お互いの手が触れた瞬間、逢の顔がちょっと赤くなった。
僕は右手で逢の左手の薬指に指輪を通した……うまくいった、完璧だ。
次に逢が左手を下ろし、代わりに僕が逢にそっと左手を差し出す。
逢がそれを左手で受け止めて同様に右手で僕の左手の薬指に指輪を通した。
そして僕がそっと左手を下ろすと……
梅原「次に……誓いの……キス!!」
塚原「えっ?」
森島「わぉ!」
会場が一瞬ざわつく……当たり前だ!
本来の予定では誓いのキスはないはずなんだ……梅原がここで勝手に付け加えた!!
塚原「ちょっと梅原君!何のつもり?」
梅原「いいじゃないっすか!結婚式といえばキスが定番です!」
塚原「あ、あのねぇ……キリスト教じゃないんだから!」
しゅう(おいおい、梅原!!)
逢「……」
梅原「さあさあ!早く早く!!」
森島「むむむ……二人は一体どうするのかしらねぇ……」
塚原「はるか!」
しゅう(今までだって何度もキスして来たんだ!!)
しゅう(ここでできなきゃ……男じゃない!!)
逢「えっ……」
僕は高校3年生の創設祭……
ベストカップルコンテスト同様……
いきなり逢に迫り、そのまま……
しゅう(僕は……逢のことが大好きなんだ!!)
しゅう「んん……」
逢「んん……」
梅原「あ……あ」
梅原「まさか本当にやるとは!?」
塚原「えっ?冗談のつもりだったの?」
梅原と塚原先輩が小声で話す。
森島「わぉ……オーキードーキー!!」
しゅう「……」
逢「……」
しゅう「あ……いきなり……ごめん」
逢「いえ……いいんです」
塚原「う…うんっ!!」
塚原先輩が軽く咳払いする。
塚原「では、祝杯」
塚原「お二人のご結婚を祝して、乾杯をお願いします」
梅原「よし、きた!!全員、起立!!」
会場の全員が立ち上がる。
梅原「二人ともおめでとう!!」
森島「かんぱーーーーーーーーーーい!!」
参列者「かんぱーーーーーーーーーーい!!」
チャリーン、カチャン。

そして、そのまま披露宴へと突入する。
しゅう「おい、梅原!!さっきはよくも!!」
逢「私びっくりしましたよ。何で突然?」
梅原「悪く思うな。俺からのビッグサプライズだ!!」
塚原「あのねぇ……梅原君。勝手に付け加えないでくれる?」
梅原「反省してます……でも俺は悪くねぇ!!」
塚原「はぁ」
しゅう「それにしても……屋外って意外と暑いんだな」
しゅう「しかもこんな暑い格好だからなおさら……」
逢「先輩はまだマシです。私なんかウエディングドレスなのでもっと暑いです!」
逢「それに参列者の方々も暑い格好してますし」
しゅう「それもそっか」
逢「だいたい、何でわざわざ屋外を選んだんです?」
逢「しかもこんなに暑い日に……」
しゅう「天気は僕のせいじゃないよ」
逢「でも屋外を選んだのは先輩のせいですよね」
しゅう「うっ」
逢「はぁ」
しゅう(逢が少しガッカリしている。ここで何か気を利かせた一言を言わないと!!)
しゅう「……なぁ、逢」
逢「はい、何ですか?」
しゅう「ウェディングドレスってさぁ……白くてきれいだよな」
逢「あ、はい……そうですね」
しゅう「白はとても眩しく光輝く色……」
しゅう「それに白い太陽光が当たればもっときれいに輝いて見えるじゃないか」
逢「……」
しゅう「この快晴の空の下で挙式すれば……」
しゅう「白いウェディングドレスはさらに輝きを増して、着ている人を輝かせてくれる」
しゅう「一生に一度しかない結婚式……だから僕は逢に精一杯輝いてほしい!別嬪さんでいてほしい」
逢「先輩……」
しゅう「輝いてる逢こそ僕の自慢の嫁だからな」
逢「先輩!」
僕に抱きつく逢……
参列者たちの視線を釘付けにするが、そんなことお構いなしだ!!
しゅう「逢……今まで何もしてやれなくてごめんな」
逢「そんなことないです!」
しゅう「大学に入学して早々帰省したあのゴールデンウィーク……」
しゅう「逢の家であの話を聞いた時から何かしてやれないかとずっと思ってた」
しゅう「ずっと、自分の自由を犠牲にし、家族のために懸命に頑張り続けた逢……」
しゅう「そう、輝くことを忘れていた逢に……精一杯輝いてもらいたかったんだ!!」
しゅう「今日、この結婚式という最高の舞台で今までにないくらい最高の輝きを放ってほしかったんだ!!」
しゅう「だからわざわざ屋外を選んだんだよ。暑いとわかっていながら」
しゅう「でも、それはすべて逢のためなんだ」
逢「先輩……クスッ」
逢「私のためにここまでしてくれるしゅう先輩こそ私の自慢のお婿さんです」
しゅう「逢……ありがとう」
逢「いえ、私の方こそありがとうございます」
当然ながら参列者たちはポカーンとしている。
中にはマジ泣きする人も……
しゅう「……」
逢「……」
しゅう「あ、でもよく考えたら……」
逢「はい」
しゅう「日焼けしたら逆に黒くなって輝けないじゃないか。僕としたことが!」
逢「そう……ですね。先輩、ちゃんとよくそこまで考えてください!」
しゅう「……ごめん」
逢「冗談ですよ、クスッ。日焼け止めをすでに塗ってあるので、何も問題ありません」
しゅう「う……逢は相変わらず意地が悪いなぁ。何だかしてやられた気分だ」
逢「先輩?今の……駄洒落ですか?私の名前を使うなんて……」
しゅう「違うよ!真面目な話だって!」
逢「そういうことにしておきますっ」
しゅう「逢の意地悪!!」
美也「でも、日焼けはしないけどさ~」
しゅう「うわあ、美也!お前いつの間に!?聞いてたのか??」
美也「お兄ちゃんこそ、こんな大声で話してるから丸聞こえだよ?」
しゅう「あ……」
僕は周囲を見渡した……みんな聞いてる!?
さっきまで会話に夢中で気付かなかった。
美也「日焼けはしないけどさ、汗で逢ちゃんのメイク、ちょっと崩れてるよ?」
しゅう「あ……」
逢「えっ?」
美也「あ~あ、せっかくの別嬪さんがぁ~」
美也「お兄ちゃん、肝心なところで気が利かないんだから!」
しゅう「う、うるさい!!」
塚原「七咲、メイク直しに行くわよ」
森島「私も手伝う!!」
逢「あ、はい」
しゅう「くそう……どうしてそのことに気付かなかったんだ……」
松原「でも、よく言ったな!普通あんなこと人前じゃ恥ずかしくて言えないって!」
しゅう「まっちゃん……」
華村「お前、やっぱすごいよ」
しゅう「華村……」
梅原「よぉよぉ!この色男さん!!」
しゅう「う、梅原!」
梅原「あの中学時代のクリスマスから確実に進歩したな」
梅原「はぁ、俺も頑張らないとな」
しゅう「うん。梅原もいいお嫁さん見つけろよ」
しゅう「まっちゃんも華村も」
梅原「大将!!」
松原・華村「しゅうちゃん……」

その後、逢はメイク直しを終えて戻って来た。
時間が経つにつれてだんだん暑さが和らぎ……
披露宴は和やかな雰囲気で無事終わった。

続いて二次会が別会場で行われ、それも終え……
僕と逢は新しい家に二人っきりで帰って来た。
学生時代に同棲していたアパートからすでに引越していた。


しゅう「ただいま」
逢「ただいま」
しゅう「ここが……僕たち夫婦にとっての新たな出発点となるのか」
しゅう「何だか緊張するなぁ」
逢「はい。私も緊張します」
逢「でも、よく考えてみれば……私たちはすでに4年間同棲してたわけですよね?」
しゅう「うん」
逢「その延長線上って考えれば、案外緊張しないんじゃ……」
しゅう「いや、延長線上なんかじゃない。やっぱり、これは新たなスタートなんだ」
しゅう「今までは恋人同士という関係で同棲していた」
しゅう「そしてこれからは……夫婦だ!」
逢「はい、そうなりますね」
しゅう「さらに……僕は今までとは違う。だって……僕は……」
しゅう「七咲しゅうなんだから!!」
逢「……はい」
しゅう「僕は今まで通り橘家の人間として生きるよりも……」
しゅう「七咲家の婿養子となり、七咲家を支えていきたい!」
しゅう「だって僕と逢は逢の両親と生き方が似てるしな!」
逢「ええ。本当に何から何まで私たちは似た者同士です。クスッ」
しゅう「七咲しゅう……うん、いい響きだと思う」
しゅう「これから僕は七咲しゅうとして精一杯生きていく……」
しゅう「逢……これからもずっと……一生、よろしくな!」
逢「はい……あ……」

僕はそっと逢にキスをした……誓いのキスを……改めて……ね。
これからもずっと、ずーーーーーっと、大好きだよ、逢!




七咲アフターストーリー
エピローグ「先輩、結婚しましょう」
END

2010-07-25

夫婦編(結婚~第1子誕生)

エピローグ「先輩、結婚しましょう」
エピソード「先輩、しっかりして下さい」(ノベル)
エピローグ「先輩、私を助けてください」
エピソード「先輩、私を好きにして下さい」(ノベル)(※18禁注意)
エピローグ「先輩、子供……ほしいですね」
エピローグ「先輩、花婿修行は厳しいですよ」
エピローグ特別編「先輩、私最高に嬉しいです!! 前編:一緒に過ごした半年間」
エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~」(ノベル)
エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~続編」(ノベル)
エピソード「先輩、一緒にゲームしましょう」
エピローグ特別編「先輩、私最高に嬉しいです!! 中編:前夜に……」
エピローグ特別編「先輩、私最高に嬉しいです!! 後編:二人の死闘、そして……」


※解説
第1~26話が七咲アフターストーリーの本編です。
エピローグは本編のアフターストーリーです。
エピソードは後から追加したサイドストーリーです。
どの時期の話か分かりやすいように本編の間に挿入しています。

このまとめ用記事の日時設定に関しては以下を参照
目次をコンパクトにまとめました

2010-07-23

エピローグ「先輩、私とみんなのその後」

婚約の翌日、月曜日
僕、七咲、松原、華村、塚原先輩、森島先輩の6人は……
また今日から大学の講義があるため、昨日夜遅くに帰って来た。
輝日東で七咲の両親、郁夫、梅原、美也に見送られて帰って来た。
帰りの電車では他の4人が気を遣ってわざと僕と七咲だけにしてくれたが……
お互い、何を話していいのか分からず、結局終始無言だった。
松原、華村たちからはすごく残念がられた……。

そして時刻はすでに9時を回っている……

新居
橘「スコー、スカー……ん?」
僕はふと目を覚ました。
橘「ふあ~あ。よく寝たなぁ」
橘「あれ?今何時?」
僕は慌てて時計を見た!
橘「うわあああ!!もう9時じゃないか!!1限に間に合わないよ!!」
橘「どうして起こしてくれなかったんだよ、七咲!!」
僕が文句を言いに七咲の部屋に行くと……
橘「あ……かわいい」
七咲「ん……先輩……好きです……」
橘「あ……」
橘(き、きっと……寝言……だよな?)
七咲が幸せそうな顔で寝言を言いながら眠っている。
七咲「ん……」
橘(ずっと、このまま……七咲の寝顔を見続けていたい……)
橘(いや、ダメだろ!!二人とも1限に遅刻してるんだから!!)
橘(ここは……起こしてあげるのが本当の優しさだよな?よし!!)
七咲「……」
橘(とは言ったものの……やっぱりかわいいから起こしたくない!!)
橘(どうするんだ!?どうすればいい??)
七咲「先……輩……」
橘(く、唇……もう一度、キスを……)
僕は七咲の唇に吸い込まれ、そのままキスをした。
橘(七咲……好きだ……)
七咲「んん……あ……先輩?」
橘「あ、ごめん。起こしちゃった?もう9時だよ」
七咲「え?あ……本当に……」
橘「おはよう」
七咲「おはよう……ございます」
橘「あ……あはは」
七咲「って!ええっ!?1限遅刻じゃないですか!どうして起こしてくれなかったんです?」
橘「ごめん。僕もついさっき起きたばっかりなんだ」
橘「七咲が起こしてくれなかったから文句言いに来たら……」
七咲「私が寝てたと……え??」
橘「ど、どうした??」
七咲「先輩に……見られちゃったんですね……寝顔」
橘「そ、そういうことになるかな」
七咲「おまけにキスまで。私としたことが……。最低」
橘「ええっ!?」
七咲「と、とにかく、早く学校行きますよ!!」
橘「うん!!」

二人とも慌てて支度をし、コンビニで朝食を買ってそれぞれ大学に向かった。

橘しゅうの大学
1限目残り30分
僕は講師にバレないように後ろの席に座った。
ちょうど華村の隣が空いていて助かった。
橘「間に合った」
華村「間に合ってねぇよ。遅刻だよ、お前」
橘「ああ、わかってる」
華村「珍しいじゃねぇか。七咲がいるのに遅刻するなんて。こりゃ明日雨だな」
橘「うん、そうだな」
橘(考えてみれば、いつもしっかり者の七咲が起こしてくれたおかげで、僕は遅刻せずに済んでいた)
橘(いつもはちゃんと朝早く起きる七咲が今日だけ珍しく寝坊するなんてな……)
橘(無理もないか。昨日あんなことがあったわけだし)
橘(相当嬉しかったんだろうな。思わず寝坊しちゃうくらいに)
華村「おい、何ニタニタ笑ってんだよ?」
橘「うん?僕今笑ってた?」
華村「気持ち悪いくらいに」
橘「あ……あははは」


その夜
新居
七咲「……」
橘「……」
七咲「……」
橘「もしかして……まだ怒ってる?寝坊したこと」
七咲「当たり前です」
橘「……だよね。はぁ」
七咲「……」
橘「でもさ、七咲の寝顔……すごく幸せそうだったよ」
橘「見ていてすごく微笑ましかった」
七咲「……」
橘「ついこの前までは寝顔を見るどころか眠れない日が続いていた」
橘「僕が山からの転落事故で記憶喪失になっていたあの時はね」
橘「でも、そこから無事に記憶を取り戻して、婚約までして……」
橘「やっと二人とも肩の荷が下りて……安心して眠れたからじゃないかな?」
七咲「……」
橘「だから、寝坊は別に悪いことじゃないと思う。むしろ良かった」
七咲「そんなこと……言われなくてもわかってます」
七咲「ただ……自分が寝坊したことが悔しくて悔しくて」
橘「仕方ないよ。誰でも必ず一度は失敗はする。人間だからな」
橘「僕なんて今まで何度失敗したことか」
七咲「……仕方ないですね。今日だけですよ」
七咲「その代わり、明日からはちゃんといつも通りの時間に起きますよ」
七咲「先輩もそのつもりで!」
橘「うん。もちろんだ」
七咲「じゃあ、私は夕飯の後片付けをするので……」
橘「いや、今日は僕がやるよ。先風呂入っていいよ」
七咲「いえ、このくらい私が……」
橘「今日くらい代わるって!いいから先に風呂入って」
七咲「……はい。ではお言葉に甘えて」
橘(そうだ。いつも七咲には負担を掛けっぱなしなんだ)
橘(結婚してからもこんな調子じゃ、七咲の身がもたない)
橘(僕が代われることは僕が率先して代わらないと!)

こうして今日一日が終わった。
結婚まであと3年半……
僕は七咲のために出来る限り努力していこうと思う。


ちなみに、この日から約1年半後の話。
記憶喪失になった僕のために尽くしてくれた仲間たちのその後は……
松原正義と華村政治は無事にすべての単位を取得し、進級が決まった。
橘美也はなんとか大学に補欠合格し、実家から通うことになった。
梅原正吉は無事に父親の跡を継いで東寿司を経営することになった。
森島はるか先輩も無事に進級し、就活に励んでいる。

塚原響先輩は大学4年生で、医療実習で忙しい毎日だ。
医学部は6年制なので、まだ卒業ではない。
そんな忙しい毎日の中にもちょっとは変化があったようだ。
塚原「お待たせ」
男性「ひびき、遅いじゃないか」
塚原「あ、ごめん。レポート書いてた。締切り明後日だから」
男性「そっか。じゃ、行くぞ」
塚原「うん」
どうやら塚原先輩にも春が来たようだ。
初恋の相手の話を聞いてから自信を取り戻し、見事に彼氏ができたらしい。
おめでとう、塚原先輩。

そして僕と七咲も学業に励み、問題なく単位を取得していった。
そんなの当たり前だ。
二人で無事に留年することなく卒業しなければ意味がない。
卒業の先に待っている、結婚という名の人生のゴールのためにね!
これからも結婚に向け、僕と七咲は共に歩んでいく。



七咲アフターストーリー
エピローグ「先輩、私とみんなのその後」
END

2010-07-15

第26話(完結)「先輩、私はずっと先輩のそばにいますから」

自宅を目指して雨の中、傘をさしながら全力疾走する七咲……
七咲(やっぱり私は橘先輩を諦める事なんてできない!!)
七咲(例え、傷ついて死ぬことになっても……)
七咲(私は塚原先輩を死ぬまで愛し続けた立花直生君みたいに……)
七咲(最期の最期まで橘しゅう先輩を愛し続けたい!!)
七咲(せっかく手に入れた温もりをもう二度と失いたくない!!)
七咲は俯いていた顔を上げ、笑顔で……
七咲(クスッ。橘先輩、死ぬ時は……一緒ですからね)


新居
橘しゅうの部屋
橘「はぁ。外は雨か。そして塚原先輩に連れて行かれた七咲は帰って来ないし」
橘「でも、もし帰って来たら、まず最初に何て言えばいいんだ?」
橘「別れようって言っちゃったしな」
橘「七咲……どうしてそんなに僕のことが好きなんだ?」
橘「僕とこれ以上関われば傷つくって分かってるはずなのに」
橘「僕は、僕のせいで誰かが傷つくのなんて見たくないんだ」
橘「くそっ。頭痛い。もう9時だし、ちょっと早いけど寝るか」
僕は電気を消して布団に入った。
橘「それにしても……あのお守り、一体どこ行っちゃったんだろうな?」
橘「そしてあの男はどうして僕のことを覚えていたんだ?」
橘「……わからない。あと一歩ですべてを思い出せそうなのに思い出すのが怖い」
橘「僕は……どうして……」
よほど疲れていたのか、僕は布団に入って数分で眠りに就いた。


悪夢(回想)
第20話「先輩、私を忘れたんですか」
橘(ここは……どこだ?見た感じ、山なのか?)
橘(あ……あれは僕と松原と華村?どうしてここに?)

橘(夢)「はぁはぁはぁ……」
松原「もうちょっとで次の休憩所だ。頑張れ」
華村「きっついなぁ、しかし」

橘(夢)「はぁ。どうする?何だか雨足強くなってきてないか?」
松原「確かにな。家出た時は小雨だったのに、本当に山の天気は変わりやすいんだな」
華村「もうちょっと先まで行こうぜ」
橘(夢)「う、うん。ちょっとくらいなら大丈夫か」
松原「よし、出発だ」
橘(登山してるのか。それにしてもひどい雨だな。大丈夫なのか?)



橘(夢)「なぁ、もうやばくないか?この雨、相当強いぞ!」
松原「確かにな。こりゃ山頂までは無理だな」
華村「ええっ。だってまだ20mしか登ってないぜ」
橘(夢)「でも無理だよ、この雨じゃ。視界悪いし」
松原「だな。引き返そうか」
華村「しゃーない」
松原「じゃあ、しゅうちゃん先頭で」
橘(夢)「わかった!」
橘(夢)「……えっ?」
橘(どうしたんだ?何で僕は下りるのを躊躇っているんだ?)
松原「ん?どうした?早く行けよ」
華村「俺らも下りられないじゃないか!」
橘(夢)「わ、わかってるって!」
夢の中の僕は目線を上に送って足場を見ずに発進した。
松原「おーい、大丈夫か?」
華村「おい、バカ!止まれ、そこは崖だぞ!!」
橘(夢)「何も見えない……何も聞こえない!!」
橘(危ない!!落ちるぞ!!引き返せ!!)
夢の中の僕は足場を見ず、彼らの言葉もシャットダウンしていた……

それが命取りとなった!!
ツルッ。
橘(夢)「えっ?何だか身体が軽くなったみたいだ……」
橘(夢)「回転して宙に浮いて……えっ?そんな……」
気づいたら夢の中の僕は崖から足を踏み外していた!!
松原・華村が上の方に見える!!
僕は……どこに行くんだ……どこに行ってしまったんだ!?

松原「しゅうちゃん……しゅうちゃん!!」
華村「あ、あのバカ!!そっちは崖だって言っただろ!!」
松原「しゅうちゃああああああああああん!!!!!!!!」


落下中……
僕はどんどん下に落ちていく……奈落の底へと。
この高さから落ちたらまず助からない。
僕は死ぬのだろうか?
僕はこのまま大切な人を残して死んでしまうのだろうか?
……そんなの嫌だ!!
絶対にその人を幸せにしてみせるって、あの時、その人の両親の前で誓ったじゃないか!
僕はその約束をこんなくだらない事故で破ってしまうのか!?
大切な人を……悲しませてしまっていいのか!?よくない!!
……でも、僕にとって大切な人って誰なんだ?
それに……あの時っていつだったっけ?
いや、今はそんなこと考えている場合じゃない!!とにかく……

僕は……僕は……死にたくない!!生きたい!!
怖い……怖いよ……助けて……七咲!!
……え?僕今、何て思った?誰の名前を呼んだ?
僕は落下中涙を流しながら、自分の胸にそう言い聞かせた。
すると……願いが通じたのか……
僕の懐から安全祈願のお守りが飛び出してきた。
大切な人が今朝持たせてくれた、大事な大事なお守りだ。
僕は咄嗟にお守りを右手で掴み、強く握りしめた!!
その瞬間、お守りが残り3m地点の木の小枝に引っかかって落下が止まった。
と、同時に落下の恐怖から僕の意識も飛んだ……
な……な……さ……き……。


一方、その頃
現実
悪夢にうなされている僕
橘「僕は……僕は……死にたくない!!生きたい!!」
橘「怖い……怖いよ……助けて……七咲!!」
橘「な……な……さ……き……」
七咲「先輩!!」
パシッ。
七咲が僕のベッドに飛び乗り、僕の右手に安全祈願のお守りを握らせ……
僕の右手を両手で包み込むようにして握った!!
七咲「せんぱーい!!」
七咲は僕に必死に呼び掛ける!!


悪夢
一瞬、意識が飛びかけた……
しかし、遠くから僕を呼ぶ声がする……
「先輩!!」
「せんぱーい!!」

夢の中の僕は恐怖から目を強く閉じていたが……
その声に、ふと目を開けると……
何と……安全祈願のお守りが引っ掛かっていた木の小枝が……
誰かの手のように見えた!!
その手は冷たくて、弱々しくて……でも柔らかくて温もりがあった。
え?これは……一体……誰の手なんだ!?
僕を……僕の手を……こんなにも優しく……愛情を込めて握ってくれている。
「先輩っ!」
はっ!?僕がその伸びている手の先を見上げると……
そこにはよく知っている人の顔があった。
橘(夢・現)「七咲?七咲なのか?」
七咲(夢・現)「先輩!先輩!」
そうか。やっぱりこの手は七咲の手だったのか。
七咲逢……僕がこの世界で一番愛している人。僕にとってすごく大切な人。
やっと……思い出せた。そうだよ……キミだよ……七咲。
僕は一生キミを守り、幸せにするってキミの両親の前で誓ったじゃないか!!
こんなくだらない事故で死んでたまるか!?
僕は……七咲のために生きるんだ!!
それが僕の……生きる目的なんだから!!

七咲(夢・現)「先輩、私と一緒に生きましょう!!」
橘(夢・現)「ああ。もちろんだ」
七咲(夢・現)「それじゃあ、早く上がりますよ!!」
橘(夢・現)「ああ。思いっきり引っ張り上げてくれ!!」
七咲(夢・現)「はい。よいしょ……よいしょ……」
現実で七咲が僕の手を全力で引いてこの悪夢から僕を引き上げようと頑張っている。
夢でも七咲が僕の手を全力で引いて暗ーい奈落の底に落ちかかっていた僕を……
明るく安全な場所まで引き上げようと頑張っている。
もう二度とあんな暗ーい奈落の底には落ちたくない。七咲を忘れてたまるか!!


そして、ある程度引き上げられたところで僕は目を覚ました。
すると……

現実
七咲「ん……」
橘(あ……)
気づいたら……僕は七咲とキスをしていた。
七咲は右手で僕の右手を掴んで、左腕を僕の肩に回していた。
七咲「んん……」
橘(七咲……)
僕はしばらくの間、七咲とキスをしていた。
橘「七咲……」
七咲「先輩……」
橘「……」
僕が七咲に何と話しかけたらいいのか分からず、黙っていると……
七咲「すべてを……思い出したんですね?」
橘「……うん」
七咲「よかった。本当に……よかった」
ホッとしたのか七咲は僕から手を離し、そのまま脱力した。
橘「な、七咲!?大丈夫か!?」
今度は僕が七咲を支えた。
七咲「はい。大丈夫です」
その目には……さっきまで必死にこらえていた涙が……溢れていた。
橘「そっか。よかった」
七咲「先輩……」
橘「でもさ、どうして……分かったんだ?」
七咲「ああ、それは……簡単な推理ですよ」
七咲「先輩にはいくつか不自然な点があった……」
七咲「20mの高さから転落したのに、全身軽度の打撲で済んでいること……」
七咲「その原因がどこかに掴まって助かったからだと仮定したら、当然あるはずのものがない」
七咲「そう。手の平にあるはずの過擦り傷です」
橘「……」
七咲「これらの不自然な点はこの安全祈願のお守りですべて説明がつきます」
橘「と言うと?」
七咲「先輩の手の平に過擦り傷がなかったのは当然なんです」
七咲「何故なら、その時先輩が掴んでいたのは木の小枝ではなく……」
七咲「この安全祈願のお守りだったからです!」
橘「お守りを……?」
七咲「さっき私がやって見せたように、先輩は右手でお守りを掴みました」
七咲「そしてそのお守りが偶然木の小枝に引っ掛かって落下を止めました」
橘「なるほど」
橘「でもさ、それが軽傷の原因だったとしても記憶喪失とは一体どういう関係なんだ?」
七咲「直接は関係しません。記憶喪失の原因は他にあるからです」
橘「え?」
七咲「山から転落したことによるショック……そう、高所恐怖症です」
橘「あ!!」
七咲「先輩は確か20mの高さから転落したんですよね?」
橘「うん」
七咲「だったら相当ショックは強かったはず」
七咲「運良くお守りのおかげで助かったとしても高所恐怖症で記憶が飛んだ」
橘「当たり……だな。でも、どうして僕が高所恐怖症だってわかったんだ?」
七咲「さっき塚原先輩からお聞きしました」
七咲「事故発生当時の先輩の様子について松原さんたちがこう言ってたそうです」

回想
第20話「先輩、私を忘れたんですか」
塚原「ねぇ」
松原「はい」
塚原「彼が転落する前、妙な動きしてなかった?」
松原「妙な動き?そうですね……あ!」
松原「そういえば、しゅうちゃん、登りも下りもずっと上を向いてました」
塚原「上を?」
華村「あと、下山の時、俺が『そっちは崖だ!!』って注意したにも関わらず……」
華村「聞こえていなかったみたいで、そのまま崖から転落しました」
塚原「……」

七咲「高所恐怖症の人は怖いから下を見ようとしない」
七咲「怖さから焦って自分の世界に入り込み、周りの声が聞こえなくなる」
七咲「……ですよね、橘先輩?」
橘「す、すごい……全部当たってる!」
七咲「以上が今回の事故と、それによる先輩の軽傷及び記憶喪失の真相です」
橘「……」
僕は驚きの余り、声が出なかった。
七咲「先輩?どうしました?」
橘「あ……ごめん。ちょっと、びっくりしちゃってさ」
七咲「そうですか。クスッ」
橘「あ……えっと……その……七咲」
七咲「はい」
橘「さっきは……ごめんな。助けてくれて……ありがとう」
七咲「さっき……?」
橘「ほら、『別れよう』って言って、七咲を無理やり突き放そうとした……」
七咲「あ……」
橘「でも、あれは本当に七咲のために……」
七咲「もう……いいですよ。気にしてませんから!」
橘「え?」
七咲「現に私はここにいる。それは許したっていう証拠ですよ」
橘「七咲?」
七咲「だって……私は死ぬまで先輩と一緒にいるって決めたので」
橘「……」
七咲「さっきの先輩のおかげでその決心がつきました」
七咲「例え、傷ついて死ぬことになっても……」
七咲「最期の最期まで橘しゅう先輩を愛し続けたい!!」
七咲「こうしてせっかく手に入れた温もりをもう二度と失いたくない!!」
七咲は俯いて涙で濡れたその顔を上げ、笑顔で……
七咲「先輩、私はずっと先輩のそばにいますから!!」
七咲「いつまでも……そばにいますから!!」
橘「七咲……」
橘(あ……七咲の身体、冷えてるじゃないか!)
橘(僕のためにわざわざ傘をさして戻って来てくれたのか!)
橘(何ていう無茶を!!)
橘「ふっ。僕は……つくづくダメな彼氏だな」
七咲「え?」
橘「守るって約束した彼女に迷惑をかけ、逆に守られている」
橘「最低だよ……」
七咲「先輩、そんなこと……」
橘「でもさ」
七咲「はい」
橘「こんなダメな彼氏でもよければ、ずっと一緒にいてほしい」
橘「こんなダメな僕にはやっぱり、しっかり者の彼女が必要みたいだな」
七咲「先輩……」
橘「全く……身体冷えてるじゃないか。無茶ばっかりして」
七咲「いえ、別に寒くないですよ」
七咲「このくらい、水泳で慣れてますし」
橘「よくないよ」
七咲「え?」
橘「ほら、こっちおいで。さっきまで僕が温めていた布団がある」
橘「一緒に入ろう」
七咲「……はい!」
橘「違うって。こうだよ」
七咲「え?」
僕はまず、七咲をベッドの向かって左側に仰向けに寝かせ……
七咲と向きあうようにその隣、ベッドの向かって右側に正座した。
自分の背中に掛け布団をかぶせ、そのままうつ伏せになった。
七咲「先輩?一体何を?」
橘「……」
七咲「え?」
僕は寝ている七咲の肩に手を回し、自分の上体を七咲の上体に乗せ……
橘「好きだよ、逢」
七咲の唇にキスをした。
七咲(先輩……私もです!!)
七咲「ん……」
橘「ん……」
七咲「んん……」
橘「んん……」
僕たちはもはや欲望を抑えきれなくなっていた。
記憶喪失の時にもキスをしたこともあったけど……
あの時の僕は、僕であって僕じゃなかった。
本当の僕は……約一週間ぶりに大好きな人に再会したんだ。
もう二度と……離れたくない。
ずっと、このままでいたい!!
橘(逢……逢……)
七咲(先輩……先輩……)
僕たちはお互いに夢中で気が付かなかったけど……
外は台風の影響で嵐となっていた。
僕たちも外の嵐に負けないくらいに……何度も何度も……
そう、まるで嵐のように……キスを繰り返した。
お互いの存在を証明するかのように……
ただただ、深くて熱いキスを数分間続けた。
橘「もう……寒くないよな?」
七咲「はい。とても……温かいです」
橘「そっか。よかった」
七咲「先輩、ありがとうございました」
橘「いや。感謝するのは僕の方だよ」
橘「逢が、一生僕を愛し続けたいって言ってくれて、本当に嬉しかった」
七咲「先輩」
橘「おかげで、僕もついさっき決心がついたよ」
七咲「決心……?」
橘「逢……聞いてくれるか?僕の……一生のお願いを!」
七咲「はい。喜んで」



一週間後の日曜日
輝日東・七咲家
橘「懐かしいなぁ。去年のゴールデンウィーク以来か」
七咲「私はつい最近帰ったばっかりなのでそんなに懐かしくはないですね」
橘「……」
七咲「どうしたんですか、先輩。早く入りましょう」
橘「その……何て言うか……入るのが怖い」
橘「ご両親にも心配かけたわけだし」
七咲「ああ、それでしたら大丈夫ですよ」
七咲「私の両親なら、事情を話せばわかってくれるはずなので」
橘「そ、そういえば、そうだったな」
七咲「じゃあ、入りましょう」
七咲「ただいま」
橘「お、お邪魔します」
梅原「ようっす!大将!よく来たな!」
橘「う……梅原!?どうしてここにいるんだよ?」
七咲「梅原先輩」
梅原「おお!その様子だと俺のこと思い出してくれたんだな?」
橘「……さあな。お前、誰だっけ?」
梅原「お、おい!!それはねぇよ!!」
橘「人ん家に勝手に入るような奴を僕は友達に持った覚えはないぞ」
七咲「そうですね。通報しましょうか」
梅原「おい、待て待て!!誰のためにここにいると思ってんだ?」
梅原「お前の記憶が戻ったって聞いて、わざわざ先回りして……」
梅原「東寿司から無料でお寿司を届けてやったんじゃねぇか!」
橘「え!?」
七咲「本当ですか!?」
梅原「嘘だと思うならお寿司は持って帰る」
橘「あー!!今やっと思い出したわ!!そういえば、そんな友達が僕にはいたなぁ」
橘「小学校から一緒の梅原正吉君!スポーツが得意で高校時代の所属は剣道部!」
橘「幽霊部員気味の困った一面が!」
橘「高校時代はクラスも一緒で、家も近い!寿司屋の次男坊で僕の親友じゃないか!」
梅原「……驚きの変わり身っぷりだな」
橘「……すまん」
梅原「へへっ、いいってことよ。むしろその食いつきを待ってたぜ」
七咲「ありがとうございます、梅原先輩」
梅原「いいってことよ。さあ、上がって食えよ。みんな待ってるぜ」
橘「みんな?」

七咲家・居間
橘「あ……」
七咲「美也ちゃんに塚原先輩、森島先輩。それに……松原さんや華村さんも!」
美也「にぃに、逢ちゃん、おかえり!!」
塚原「あ、ごめんなさいね。私まで御厄介になって」
森島「私たちも呼んでくれてありがとう」
橘「い、いえ。呼んだのは僕たちじゃないですけど」
七咲「もしかして梅原先輩?」
梅原「そういうこった」
橘「なるほど」
松原「俺、輝日東に来たの初めてだ。何か凄く場違いな気がする……」
華村「お、おい。ウメちゃん。本当にいいのか?」
梅原「七咲のご両親が許可してくれたんだ。素直に喜べよ」
松原「あ、ああ。そういうことなら」
華村「ありがとうございます」
父「今日はゆっくりして行きなさい」
母「皆さんのおかげで橘君の記憶が元に戻ったのだから」
梅原「それじゃ、全員揃ったところで、寿司を食べようぜ!!」
美也「そだね。みゃーお腹空いたよ」
梅原「ほら、大将。挨拶しろよ」
橘「ああ。えっと、皆さん」
橘「今日は僕のためにこのような食事会を開いていただき、本当にありがとうございます」
橘「僕が元に戻れたのは本当に皆さんのおかげなんです」
橘「その感謝の気持ちを込めて……いただきます!!」
皆「いただきます!!」
みんなが笑顔でお寿司を頬張る。
本当にみんな、幸せそうだ。
七咲「塚原先輩、森島先輩、本当にありがとうございました」
塚原「ううん。私は何もしてない。お礼なら、妹さんに言ってくれる?」
七咲「え?美也ちゃんですか?」
森島「そう。すべて美也ちゃんのおかげよ」
塚原「あなたたちが輝日東を去る日の早朝、妹さんが電話をくれてね」
塚原「『このままだとお兄ちゃんも逢ちゃんも、ボロボロになっちゃう』」
塚原「『でも、美也にはどうしようもできないんです』」
塚原「『どうか、美也の代わりに二人を助けてあげてください』」
塚原「……と泣きながらお願いしてきてね……」
森島「ひびきちゃんからその話を聞いて、私も協力しようと思ったの」
橘「美也が……」
七咲「美也ちゃん……」
森島「もう、美也ちゃんったら!な~んていい子なのかしら!大好き!!」
橘「そっか。美也がな……」
七咲「私たちはいい妹といい親友を持ちましたね」
橘「うん!」
松原「親友って、俺のことか?」
橘「まっちゃん!」
松原「おお!初めてそのあだ名で呼んでくれたな!ありがとう」
華村「しゅうちゃん、ありがとうな。おかげで法学の小テストは3人揃って合格だ!!」
橘「ううん。ほんのお礼の気持ちだよ」
橘「法学の小テストのことを教えてくれたお礼に法学の勉強を教えてあげたんだ」
七咲「ええ。ゴリラ先生が怒りますからね」
華村「あああ……」
橘「全く。どうして口が滑ったのかな?」
松原「それはそうと。しゅうちゃんに渡すものがあるんだ」
橘「僕に?」
華村「これ、見覚えあるだろ?」
橘「あ……これは!?」
七咲「先輩が無くしたお守り!?」
橘「どうしてこれを?」
松原「これを見ろよ。事故現場から3mくらい上の木の小枝に引っ掛かっていたんだ」
松原が見せてくれた事故現場の写真には確かに木の小枝に引っ掛かっているお守りが写っていた。
華村「塚原さんに電話で頼まれて二人で取りに行ったんだぜ」
橘「本当ですか?」
塚原「ええ。確かにそうよ」
塚原「七咲が私のアパートから橘君の元に向かった直後、二人にお願いしたの」
塚原「はるかのヒントで七咲も私もピーンと閃いてね」
塚原「橘君の傷の度合いからして落下地点から3mくらいだと踏んで……」
塚原「ちょうど松原君と華村君が肩車をすれば届く高さだと思ってね」
松原「塚原さん、すげぇんだぜ!本当にその通りだった!!」
華村「俺がまっちゃんの上に乗って思いっきり手を伸ばしたら何とか取れた」
松原「ほらよ。こんな大事なもの、もう二度と無くすんじゃねぇぞ」
橘「ありがとう。塚原先輩、松原、華村……ありがとう!!」
七咲「よかったですね、先輩。無くしたお守り、ちゃんと帰って来ましたよ」
橘「このお守り……僕と七咲、二人の絆が僕の生命を救ってくれたんだな……」
橘「ありがとう。大切にする!」
僕はもう二度と失いたくないと思い、お守りを強く握りしめた。
そして自分の懐に大事にしまった。
七咲「先輩、これでやっと証明できましたね」
七咲「お守りは、信じればきっと、その人の役に立ってくれます!」
橘「うん。どんな願いでも信じれば必ず叶うんだな」
梅原「……っと!俺はそろそろ次の配達に戻らないといけないんで、失礼しまっす!」
橘「おい、梅原!もう行っちゃうのか?寂しいなぁ」
梅原「なーに。また逢えるぜ。お互い生きていればな」
塚原(お互い生きていればまた逢える……そうだよね、直生君)
塚原「すみません。私もちょっと急用が。ほら、はるか。あなたもでしょ?」
森島「そ、そうね。……あの!」
母「はい」
森島「私、この子気に入ったので、一緒に遊んで来てもいいですか?」
郁夫「……」
郁夫はいつになく満面の笑み。
母「ええ。どうぞ」
森島「やったね!いこ、郁夫君。お姉ちゃんと一緒に遊ぼうね」
郁夫「……」
郁夫は嬉しそう!!
七咲「もう、郁夫ったら。森島先輩相手だと何であんなに嬉しそうなの?」
七咲はちょっと森島先輩に嫉妬してるようだ。無理もない。
美也「本当だよね!にぃにも森島先輩の前じゃデレデレしちゃって!!」
橘「こら!美也!何てこと言うんだ!?」
美也「あ!お兄ちゃんタンマタンマ!トイレ行って来る~」
橘「あいつ、逃げたな」
松原「えっと、そうだ。俺らもそろそろおいとまを」
華村「じゃ、しゅうちゃん、また逢おうな!」
橘「おい、お前らまで……」
七咲「……」
その場に残ったのは僕と七咲と七咲の両親の4人だ。
もしかして、みんなして僕たちに気を遣ってくれたのか?
僕はとりあえず、七咲のご両親の前で正座した。
七咲も僕の左隣に正座した。
橘「……」
七咲「……」
父「……」
母「……」
橘「この度は……本当に、ご心配おかけしました」
橘「去年のゴールデンウィークに初めてここを訪れ……」
橘「娘さんを幸せにすると誓ったばかりなのに、逆に迷惑をかけてしまい……」
橘「本当に申し訳ございませんでした!!」
橘「でも、彼女はこんな頼りない僕でも一生そばにいてほしいと言ってくれました」
橘「正直言って、僕にはそんな権利、ないと思います」
橘「現にこうして彼女を守るどころか、逆に彼女に守られました」
七咲「……」
父「……」
母「……」
橘「それでも僕は、彼女と一生一緒にいたいです!!」
橘「僕は、心の底から逢のことが好きなんです!!」
七咲「……」
橘「その気持ちは去年のゴールデンウィークの時と全く変わっていません」
橘「……」
橘「彼女を……逢を……僕にください」
橘「今現在、彼女に迷惑をかけた分、一生努力し、必ず彼女を幸せにすると誓います!!」
橘「去年も同じこと言ったのに約束を破って……信用していただけないのも無理はないと思います」
橘「ですが、一生その罪を償っていきたいと思います」
橘「今度こそ、約束を果たせるように頑張ります!!」
橘「なので、どうか!どうかよろしくお願いします」
僕は深々と頭を下げた。
七咲も無言のまま深々と頭を下げた。


回想
橘「逢……聞いてくれるか?僕の……一生のお願いを!」
七咲「はい。喜んで」
橘「……」
七咲「……」
橘「結婚しよう」
七咲「……はい」
橘「本当に?」
七咲「本当に決まってるじゃないですか」
七咲「こんなこと、嘘なんかじゃ言えませんよ」
橘「そっか」
七咲「あ、でも」
橘「ん?」
七咲「今はまだ駄目ですよ。まだお互い学生なので色々不安です」
七咲「大学を出て、立派に就職できたら……その時はよろしくお願いします、先輩」
橘「うん。もちろんだよ。じゃなきゃ何のための学業成就のお守りだ?」
七咲「そうですね。クスッ」

橘「……」
七咲「……」
父「二人とも、頭を上げなさい」
僕と七咲は言われた通りに頭を上げる。
父「橘君」
橘「はい」
父「逢を……よろしく頼んだよ」
橘「え?あ……はい。こちらこそ」
七咲「お父さん?いいの?」
父「いいに決まってるじゃないか。おかしなこと聞くんじゃない」
橘「でも、僕は迷惑を……」
母「橘君、ありがとう。ちゃんと無事に戻って来てくれてありがとう」
母「確かに逢を始め、みんなに迷惑をかけたことは事実」
母「それは一生許されることじゃない」
母「だけどね、あなたはこうして無事な姿をみんなに見せてくれた」
母「ちゃんと、生きていてくれた」
橘「……」
母「生きてさえいれば、いくらだって罪を償うことはできる!」
母「例え何年かかっても、何回失敗してもいずれ必ず逢を幸せにすることはできる」
母「橘君、あなたになら必ずできると信じているわ」
橘「……」
母「私はあなたが逢に迷惑をかけたことなんて全然気にしてない」
母「あなたが無事だったことが何よりも嬉しい」
橘「……」
僕は七咲のお母さんの言葉に一瞬うるっときたが、何とか涙をこらえた。
父「それにな、君を助けようとあんなに必死だった逢の顔を見たら……」
父「逢がどれほど君のことを愛していたかがわかったよ」
父「最初から二人のことは認めていた。というよりも最初から反対はしていなかった」
橘「え?どういうことです?」
母「去年のゴールデンウィーク……橘君と初めて逢った時から……」
母「逢のお婿さんは橘君しかいないなって思ってた」
橘「え……」
僕は何と返事をしたらいいのか分からず、一瞬戸惑った。
七咲「お母さん……ありがとう」
母「いいのよ、逢」
橘「ありがとうございます。僕、一生逢を幸せにします!!約束します!!」
梅原「せいの!!」
皆「婚約おめでとう!!」
橘「み、みんな……聞いてたのか!?」
塚原「ええ……、悪いとは思ったんだけど聞いてたの……ごめんね」
森島「オーキードーキー!!」
パーン!!
橘「うわああ……びっくりした!!クラッカーを耳元で鳴らさないでくださいよ」
橘「心臓止まるかと思った」
美也「そしてまた記憶喪失に逆戻りなのだ~にししし」
七咲「美也ちゃん!!変な冗談はよして」
松原「はいはい。冗談はそのくらいにして。ほら、ケーキの差し入れだ」
華村「俺とまっちゃんで注文したんだ」
松原「二人は知ってるだろ?大学の近くにある銘菓専門店のケーキだ」
華村「ついさっき届いたばっかりだ」
橘「あれ?でも呼び鈴鳴らなかったぞ?」
松原「当たり前だ。外に出て待ち伏せしてたからな」
華村「せっかくの大事なプロポーズだってのに、呼び鈴に邪魔されちゃかわいそうだしな」
橘「……」
七咲「……」
梅原「二人とも赤くなってらー!!さあさ、さっさと食べようぜ」
橘「ふっ」
七咲「クスッ」

こうして僕と七咲は七咲のご両親、それに周りのみんなに認められて晴れて婚約した。
と言ってもあと3年半も待たないといけない。長いなぁ……。
だけど、僕と七咲なら3年半なんて期間、あっという間な気がする。
どれだけ待とうと関係ない。その先に確かな幸せがあるならば。
僕は3年半後まで、そしてそれから先もずっと……
逢を守り幸せにすると誓おう!!今度こそは絶対だからな。

だから、これからもよろしくな。僕の愛しの逢。
僕の未来の妻であり、一生のパートナーでもある七咲逢。




           七咲逢スキエピローグBEST
アフターストーリー「私はずっと先輩のそばにいますから」
               完

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