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2010-06-29

第19話「先輩、海に行きましょう」

七咲との同棲を始めてから約4ヶ月経った。季節は夏。
ちなみにゴールデンウィークはちゃんと帰省して……
高橋先生及び七咲のご両親に近況報告をした。
今年の夏休みは僕も七咲も色々予定があって帰れそうもなかったので……
ゴールデンウィークでしっかりと近況報告をしておいた。
で、話を戻すと……
天気予報によると、今週の日曜日は真夏日になるという。
そんな蒸し暑い日が続く8月のある日……

新居
橘「ただいまー。あー暑かった。アイス買って来たよ」
七咲「おかえりなさい。ご苦労様です」
橘「帰りに溶けるといけないから氷をたくさん入れて来たよ」
七咲「……大丈夫みたいですね。今のところ溶けていません」
橘「うん……?」
七咲「どうかしました?私の顔に……何かついてますか?」
橘「ぶっ……」
七咲「せ、先輩!?大丈夫ですか?い、今ティッシュ持って来ます!!」
橘(七咲……何ていう格好をしてるんだ??)
橘(暑いからって水色のノースリーブでしかも鎖骨が見える薄着か!?)
橘(かがめばかなり際どい所まで見えるぞ!?)
橘(そりゃ……鼻血だって出るよな。出ない方が無理だし)
七咲「先輩、どうぞ」
橘「ありがとう」
橘(よし、ここは一つ作戦だ)
橘「うっ、口に血が流れてる!何か吐き出せるものを持って来て!」
七咲「わかりました」

七咲「スーパーの袋でよければ!」
橘「ありがとう。ついでに両手がふさがってるから、袋を固定してて」
七咲「はい」
橘「ああ、違う。もっと下」
七咲「こうですか?」
橘「惜しい!もっと下だよ」
七咲「ここですか?」
橘(くそう!七咲の胸元、見えそうで見えない)
橘「もっと下!!」
七咲「はい。……ん?」
橘「どうした?」
七咲「先輩、さっきからどうして上向いているんです?」
橘「え?」
七咲「普通、口の中の血の塊を吐き出したいなら下を向きますよね」
七咲「なのに先輩は前かがみになりながらずっと上を向いていた」
七咲「どういうつもりです?まさかとは思いますけど?」
橘「い、いや。別にそんなことはないよ」
七咲「……」
橘「嫌だなぁ。僕としたことが向きを間違えるなんて」
橘「この馬鹿みたいな暑さで頭がおかしくなったんだな。ははは」
七咲「まったく。本当にえっちな先輩ですね」
七咲「罰として今日の先輩のお昼ご飯は抜きです」
橘「そんなぁ……僕は何も悪いことをしていない」
七咲「いいえ。お昼、ご飯は抜きです。そうめんなので」
橘「そんなぁ……え?そうめん??やった!!」
七咲「じゃあ、先輩の鼻血も止まったみたいなので、早速茹でますね」
橘「うん。よろしく。あ……アイス仕舞っておかないと。溶けちゃう」



ズルズル……
ズルズル……
橘「ああ……。生き返る!!やっぱ夏は冷たいそうめんに限るよな」
七咲「はい。特にこの部屋みたいにエアコンがない環境だと余計にありがたみを感じます」
橘「エアコンって高いからな。節約のために扇風機を使うしかないんだ」
橘「僕がもっと頑張って大金持ちになれば話は別だけど」
七咲「いえ。私はこれで十分ですよ。暑いのも寒いのも部活で慣れてますし」
七咲「それに先輩が無理して怪我でもしたら洒落になりません」
橘「もうその話はいいって!もっと明るい話しよう」
橘「そうだな……例えば……」
TV「天気予報です。今週は全国的に晴れの陽気となるでしょう」
TV「特に日曜日は高気圧が日本の上空に位置するため、真夏日となるでしょう」
TV「お洗濯物がよく乾き、海沿いの地域では海水浴がおすすめです」
TV「以上。天気予報でした」
橘「海水浴……これだ!!」
橘「なぁ、今週の日曜日に何か予定ある?」
七咲「いえ。特には」
橘「じゃあ、海水浴にでも行かない?」
七咲「海水浴ですか!?……別にいいですけど」
橘「やったぁ!!」
七咲「まさか……先輩、やましいことは何もないですよね?」
橘「や、やましいこと!?何それ?」
橘(やましいこと……例えば七咲の水着姿とか?いや、もう何度も見てるし別に)
橘(待てよ。そういえば七咲の競泳以外の水着姿って一度も見たことないぞ)
橘(別にいいって言ってたけど、まさか海で競泳水着を着て泳いだりしないだろうか?)
橘「不安だ……実に不安だ」
七咲「何が不安なんですか?」
橘「え?あ、いや。海に行くのはいいけど、僕が泳げるかなぁって不安で」
七咲「それでしたら私に任せてください。先輩に泳ぎ方の指南をしますので」
橘「そ、それは頼もしい。是非ともご指南いただこう!」
七咲「言っておきますけど、私の指南は厳しいですからね!」
七咲「しっかりと付いてきてくださいね。返事は?」
橘「はい。七咲先生!」
橘(ふぅ。何とか誤魔化せたはいいものの、はたして……)



海水浴の日
海水浴場
橘(さすがに真夏日だけあって今日は海水浴客で混んでるな)
橘(うるさい場所が苦手な七咲を連れ出しちゃったけど、本当によかったのかな?)
橘(そして何よりも不安なのは七咲の水着だ)
橘(まさかの競泳水着だったらどうしよう。その時は僕、帰ろうかな)
橘(神様、お願いします!どうか、七咲に……七咲に……)
七咲「先輩、お待たせしました!」
橘「な、七咲……おおっ……」
七咲「どうですか?似合いますか?」
橘「ぶっ……また鼻血が……」
七咲「だ、大丈夫ですか!?」
橘「う、うん。何とか」
橘(予想だにしなかった!まさかの黒のビキニ!?)
橘(部活で鍛えられた七咲のきれいなボディラインが……)
橘(よりいっそうきれいに見える。黒のビキニが引き立てている!)
七咲「やっぱり私には似合いませんよね。他のをレンタル……」
橘「待って!すごく似合うと思う!!」
七咲「えっ?本当ですか??」
橘「うん」
橘「その水着のおかげで、部活で鍛えられた七咲のきれいなボディラインが……」
橘「よりいっそうきれいに引き立って見えるよ!」
七咲「あ……ありがとう……ございます」
橘「それと……ごめん。僕が悪かった」
七咲「え?」
橘「てっきり七咲はいつも通りの競泳水着で来ると踏んでいたんだ」
橘「そしたらまさかこんなにかわいい水着で来るとは思わなかった」
橘「本当にびっくりしたよ。おかげでまた鼻血が」
七咲「そうですか。やっぱり美也ちゃんに聞いて正解でした!」
橘「え?美也に?」
七咲「はい。この前先輩の部屋を掃除してたら、イケナイ本を見つけてしまって……」
橘「な……何!?」
七咲「美也ちゃんに電話してちょっと愚痴をこぼしました」
橘「美也に……だと?」
橘(あいつ、余計なことしゃべってないだろうな?)
七咲「そしたら『お兄ちゃんはああいう水着が好みなんだよ。』」
七咲「『逢ちゃんが着たらきっと鼻血を出して喜ぶかもね。にししし。』」
七咲「と言われました」
橘「う……」
橘(あいつ余計なことを……)
橘(でも、そのおかげで今日は七咲の黒ビキニを見れたわけだし……)
橘(美也、上出来だぜ!さすがは僕の妹)
七咲「それで、講義終了後、先輩に内緒で水着を買いました」
橘「ああ。体育大学だし、学内にスポーツ用品店あるもんな」
橘「それで……ちなみにさ」
七咲「はい」
橘「そのイケナイ本は……どうなったの?」
七咲「そうですね……翌日のゴミ出しはいつもよりゴミが多くて大変でした」
橘「そ……そっか。ご苦労様でした」
七咲「クスッ」
橘(じゃあ、まさか僕のお気に入りの『ローアングル探偵団』がなくなった原因って!)
橘(七咲には内緒で買ってたから、なくなったとき、どこいったか聞けないでいたんだ)
橘(僕の……夢が……儚く……散った。あ~~~~~)
七咲「そんなことより。先輩、早く海に入りましょう」
七咲「一応日焼け対策はしましたが、ここ暑くて日焼けしそうです」
橘(うう……僕のお気に入りを『そんなこと』……だと?)
橘(まぁ、いい。黒ビキニで許してやろう)
橘「うん。じゃあ、入ろうか」


ザッバーーン
橘「くはぁ……気持ちいい!生き返る!」
七咲「潮の香りが何とも言えませんね!」
橘「この辺は人多いからもっと沖に行かないか?」
七咲「そうですね。あっちはどうでしょう?」
橘「うん。よさそうだね!」
七咲「じゃあ、あっちまで競走しましょうか?」
橘「臨むところだ。現役の水泳部に負けないからな!」
七咲「へぇ。先輩は確か泳げないとか言ってませんでしたっけ?」
橘「う、うるさい!ま、負けないからな!」
七咲「は~」
ザブーーン。
橘「あっ!ずるいぞ!待て!は~」
ザブーーン。

橘(は、速い!追いつけない!!さすが現役の水泳部!!)

七咲「はぁ~。先輩、こっちですよ~!」
橘(ま、待て。やばい、息が苦しい。あともう少し)

七咲「ふふっ。やっぱり私の勝ちでしたね」
橘「はい。負けを認めます。さすがは水泳部様」
七咲「先輩が私に勝とうなんて100年早いですよ」
橘「それは言い過ぎだ。ひどい」
バチャッ。
橘「つ、冷たい!!よくも僕の顔に水をかけたな!しかえしだ!」
バチャッ。
七咲「ふふっ。どこを狙ってるんです?」
橘「外したか」
七咲「では今度は私の番。は~」
ザブーーン。
橘「ど、どこ行った!?」
僕は周りをグルグル見渡す。
七咲「ここです……よっ!」
ザバーーン!
橘「ぐお!」
僕の背後の水面下から、潜水した七咲が飛び出して来て……
僕の背中の上に七咲が負ぶさった。
そして七咲は右手で僕の後頭部を押さえて、そのまま僕の顔を水に漬けた。
橘(く、苦しい……けど、背中にあたる2つの出っ張りの感触は!?)
七咲「どうです?降参しますか?するなら両手をバタバタさせてください」
橘(くそう。息が苦しいから降参したいけど、背中の感触をもっと味わっていたい)
橘(どうする!?どうすればいいんだ、僕は)
橘(だけど、このまま、七咲に乗っかられたまま死ぬのも……)
橘(これはこれでアリなんじゃないのか?むしろ幸せかも)
橘(いや、ダメだろ。ここで死んだら僕は……)
ザバァ……
橘「えっ?」
七咲「まったく。先輩は諦めが悪いのでちっとも降参しませんね」
七咲「しかたないので、私が折れることにします」
七咲「下手したら窒息しかねない場面だったので」
橘「ごめん。つい調子に乗ってしまった。おかげで死なずに済んだよ」
七咲「それはそうと、泳ぎ方の指南はいいんですか?」
橘「うーん。それはまた今度にしようか。もっと遊びたい気もするし」
七咲「では、そうしましょうか」
橘「うん」
グ~~。
橘「あ……」
七咲「クスッ。そういえば、もうそんな時間なんですね」
橘「いったん上がって海の家で昼飯にしよっか」
七咲「そうですね」



七咲と海の家で昼食を取って、また海に戻った。
ちなみに、僕はソース焼きそばを、七咲はカレーを注文した。
おいしかったな。
橘「さてと、また元気よく泳ぐか!」
七咲「はい!」



七咲「先輩、そろそろ引き上げますか?」
橘「ええっと……あの時計だともう4時か。早いなぁ」
橘「今日はもう満足に泳げたし、また今度来よう」
七咲「はい。では私は更衣室に……」
橘「ん?あれ……何だ?」
七咲「先輩?どうかしたんですか?」
橘「ほら、あの沖の方に何か見えるんだけど……僕、視力イマイチだからな」
七咲「えっ?ええっ?あ、あれは!!」
橘「どうしたの、慌てて?」
七咲「先輩、大変です。小さな男の子が沖に流されています!!」
橘「えっ?何だって!?それはやばいじゃないか!?どうするんだ!?」
七咲「私が泳いで行って来ます!先輩はここに待機しててください」
七咲「は~」
ザッブーーン。
橘「お……おーい!七咲!……行っちゃった。にしても速いなぁ」
橘「あ……もう辿り着いた。よし、そのまま連れて来るんだ」

橘「どうした、七咲。あそこから帰って来ないぞ。何かあったんじゃないか?」
橘「うん。そうに違いない。よし、僕も行く!は~」
ザッブーーン。


七咲「んしょ!よいしょ!……ダメだ。ちっとも動かない」
男の子「……」
七咲「まずい。この子、唇が紫色になってる。チアノーゼが出てるんだ」
七咲「このままじゃこの子は死んじゃう!お願い、動いて!」
橘「七咲!どうしたんだ!?」
七咲「あ、先輩。いい所に。この子の足がそこの岩の隙間に挟まって取れないんです」
橘「何だって!?あ……確かに」
七咲「おまけにこの子、呼吸してなくて唇が紫色に」
七咲「早く陸に運んで応急処置しないと生命の保障が!」
橘「わかった。なぁ、七咲」
七咲「はい」
橘「何分くらい潜水できる?」
七咲「1分以上は余裕です」
橘「じゃあ、そっちは任せた。僕がこの子を全力で引き上げる」
橘「だから七咲には足の方を任せた!」
七咲「はい!」
橘「よし。じゃあ、いくぞ!」
七咲「は~」
ザッブーーン。
僕は男の子の顔が上向きになるように、後頭部を僕の胸に乗せて……
両手で男の子の両脇をしっかり押さえて……
そのまま全力で男の子の身体を後ろかつ上に引いた。
一方、七咲は……
七咲(足先が外側を向いている。道理で引っ張っても取れないわけか)
七咲(足先をこう、まっすぐにすれば……)
橘「おっ。やった!抜けたぞ!!」
ザバーーン。
七咲「早く陸へ」


橘「ど、どう?」
七咲「脈は……ある。でも、呼吸がない。こうなったら人工呼吸!」
七咲「でも、その前に。先輩!」
橘「何?」
七咲「この子の保護者を探して来てください」
七咲「きっと近くにいるはずです」
橘「わかった」
七咲「この前の救急救命学の講義が役に立つかどうか、やってみるしかない!」
七咲「まずは、脈と呼吸の確認。よし!」
七咲「次に、自分だけで何とかしようとせずに、人を呼んでもらうこと。よし!」
七咲「人工呼吸、いきます!」
七咲(先輩、そっちは頼みます!)
橘「皆さん、聞いてください!!たった今、沖で男の子が溺れているのが発見されました」
橘「年齢は7歳くらい。身長は120cmくらい」
橘「黒のスクール水着を着ています」
橘「お子さんをお連れの方で、心当たりのある方は……」
女性「ねぇ、ちょっと。お兄さん」
橘「はい」
女性「その男の子、今どこにいるの?」
橘「あちらで彼女が応急処置を施しています」
女性「あ!たっちゃん!!」
橘「もしかしてあなたの?」
女性「ええ。私の大事な一人息子です」
女性「たっちゃん!たっちゃん!しっかりして!!」
七咲「は~~~ふ~~~~~~」
ピュ~~~~~。
七咲「うっ。冷たい」
男の子「こ、ここは、どこ?」
七咲「よかった。意識を取り戻した」
女性「たっちゃん!」
男の子「ままぁ!ままぁ!」
女性「たっちゃん!!大丈夫だった?」
男の子「怖かったよ、ままぁ」
橘「あ、その子の足に傷が」
七咲「ごめんなさい。沖にあった岩の隙間に足が挟まっていたので……」
七咲「無理を承知で全力で引き抜きました」
橘「ごめんなさい、大切なお子さんにお怪我を」
女性「いえ。いいんです。溺れ死ぬよりはマシです」
女性「お二人とも、本当にありがとうございました」
女性「ほら、たっちゃんもこの方たちにお礼言って」
男の子「お兄ちゃん、お姉ちゃん。ありがとう」
橘「どういたしまして」
七咲「もう溺れないように気を付けてね」
男の子「うん。じゃあね!」
女性「失礼します」

橘「あはは……感謝されちゃった。いいもんだな」
七咲「ぐすっ。ぐすっ。よかった。本当によかった」
橘「七咲」
七咲「この前の救急救命学の講義が役に立ちました」
橘「そっか。あーでも。何か……何か悔しいんだよな」
七咲「何がです?」
橘「人工呼吸!あの子、さっき七咲に人工呼吸してもらっただろ」
橘「あんな小さいのに七咲の唇を……」
七咲「何言ってるんですか?先輩とはいつもキスしてるじゃないですか」
橘「でも、何か悔しい。なぁ、もし僕がさっきの男の子の立場だったら……」
橘「七咲は迷わず僕に人工呼吸してくれるか?」
七咲「え……嫌です」
橘「即答か!悲しいな」
七咲「だって、先輩にそんな危ない場面が訪れるなんて思いたくないので」
橘「あ……そっか。なら納得」
七咲「じゃあ、帰りましょうか」
橘「うん」
橘(七咲の……あの唇が……一人の幼い男の子の生命を救った)
橘(あの紫色の唇がね……って!紫色?)

回想
七咲「おまけにこの子、呼吸してなくて唇が紫色に」
七咲「早く陸に運んで応急処置しないと生命の保障が!」

橘「待った!」
七咲「え?」
橘「ちょっと海の家で休んでいこう」
七咲「いきなりどうしたんです?」
橘「七咲。鏡見てみろよ。唇が紫色になってる」
七咲「え?本当ですか?」
橘「たぶんだけど……」
橘「さっき沖まで全力で泳いで行って、潜水して、その後人工呼吸してたから……」
橘「七咲も酸欠になってるんじゃないか?」
七咲「そう、言われてみれば……少し身体がフラつきます」
橘「それに、その右手の甲の傷。さっき岩で思いっきり擦ったんじゃないか?」
七咲「はい。救命に夢中で気づきませんでした」
橘「それの手当てもあるし……海の家でゆっくり休んでから帰ろう」
橘「どっちにしても今夜は夕飯作れるだけの体力が残ってないから外食になるだろうし」
七咲「はい。そうします」
橘「よーし、そうと決まったら!僕はチャーハンでも注文しようかな!」
七咲「じゃあ、私もそれにします!」
二人で海の家まで競走した!


橘「そういえばさ、チアノーゼって何なの?」
橘「さっき七咲が、男の子の唇が紫色だとか言ってたけど」
七咲「簡単に言えば呼吸困難になって、血液中の酸素が減って……」
七咲「二酸化炭素が増えることです」
橘「うんうん。でもそれでどうして唇の色が変わるの?」
七咲「じゃあ、先輩に問題です。唇の赤い色素は何だと思います?」
橘「唇の赤い色素……身体で赤い部分って言ったら血液しかないよな」
七咲「次の問題です。動脈と静脈の違いは?」
橘「動脈は酸素が多くて赤いのに対して、静脈は二酸化炭素が多くてドス黒……」
橘「わかったぞ!そういうことか!」
七咲「つまり?」
橘「唇は血管が集中しててしかも浅いところを通っているから赤く見える」
橘「でも、血液中に二酸化炭素が増えたら紫色に見える!」
橘「それがチアノーゼっていう現象なのか!把握」
七咲「そういうことです!」
橘「詳しいなぁ」
七咲「いえ。医療系や体育系では知ってて当たり前ですよ」
橘「そっか。そうなのか」
橘「……おっ、七咲の唇、元の赤に戻ってきた。よかった」
七咲「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
橘「あ、待て。口元にラーメンのスープが跳ねてる!」
七咲「え?」
橘「……」
七咲「ん……」
橘「これでよし。あんな小さな子には負けてられない!」
七咲「もう……先輩!いきなりキスをしてまたチアノーゼになったらどうするんです?」
橘「その時はまたキスをすればいい。人工呼吸をね!」
七咲「あ……その手がありましたか……」
橘「さてと。すっかり暗くなったな。帰ろうか」
七咲「はい」

こうして七咲とハラハラドキドキな1日を過ごした。
この夏、一番の思い出となった。
小さな男の子の生命を救えたし、来てよかったな。



第20話に続く。

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2010-06-29

第18話「先輩、ちゃんと自力で起きてください」

4月上旬
七咲の入学式の日
新居
橘「七咲、おはよう」
七咲「先輩、おはようございます」
橘「今日は七咲の入学式か。楽しみだな」
七咲「そうですか?入学式なんて退屈だと思いますよ」
橘「うん。まあ、式自体は退屈だけどさ、何かすごく新鮮な感じがしてそれが楽しいんだよね」
七咲「例えばスーツ姿ですか?」
橘「そう!七咲のスーツ姿を見てみたいんだよね」
七咲「別に見ても感動しないと思いますよ?」
橘「そうかな?まぁ、とりあえず朝ご飯を食べよう」
橘「いただきます」
七咲「いただきます」



七咲「どうですか?」
橘「あ……似合う!すごく似合う!かっこいいよ!!」
七咲「そう……ですか?」
橘「うん」
七咲「ありがとうございます」
橘「じゃあ、行こうか」
七咲「あ、先輩」
橘「ん?」
七咲「ネクタイ……曲がってますよ」
橘「え?あ、本当だ」
七咲「ちょっと動かないでください。今直しますから」
橘「うん」

七咲「これでよし……と」
七咲「スーツ姿の先輩、こうして間近で見るとさらにかっこよく見えます」
橘「え?本当に?」
七咲「はい。本当ですよ」
橘「あ、ありがとう」
七咲「じゃあ、行きましょうか」
橘「うん」


七咲の大学
(イメージソング=ゆかな「ほほえみをあげたい」
スーツに着替えた僕と七咲が並んで行く。
桜の舞い散るキャンパス、ここがこれから七咲の通う道となる。いつもの道となるんだ。
出逢った当初は、この道を二人でスーツ姿で並んで歩くことになるとは思わなかった。
つくづく、七咲と出逢えてよかったと思う。
橘「……」
七咲「……」
輝日東高校での七咲との幾つもの思い出を胸に抱きしめてこの道を歩く。
忘れないよ、輝日東高校での日常はな!
季節が流れてもいつまでも輝いたあの瞳のまま……
お世話になった輝日東高校に「さよなら」ではなく……
ほほえみながら「ありがとう」と言いたい。
僕たちの明日のためにな!!
七咲「着きましたね」
橘「……」
七咲「先輩?」
橘「……」
七咲「先輩!」
橘「ん?あ、ああ」
七咲「今、ボーッとしてましたね。何を考えていたんです?」
橘「うん、ちょっとな」
橘「高校生活を思い出しながら、スーツ姿の僕らと満開の桜を見てたら……」
橘「何だか感傷的な気分に浸っていたんだよ」
七咲「なるほど。実は私もちょっと違和感を感じていました」
七咲「ついこの前まで制服を着た高校生だったのに、今ではスーツを着た大学生です」
七咲「初めてなので何だか変な感じがしますね」
橘「うん。去年の僕も同じ感想だった。でも、慣れればそうでもなくなるんだよね」
橘「不思議だな」
七咲「ええ。そうですね」
橘「じゃあ、僕は保護者席だからここからは別行動になるかな」
七咲「はい。では、またお逢いしましょう」
橘「うん。じゃあな」


こうして七咲の大学の入学式に参加した。
僕も七咲もかなり緊張した。
それは当然のことかもしれない。
七咲の大学は毎年数々のトップアスリートを輩出しているので……
僕の大学よりも規模が断然大きい。
スピーチした来賓の中には僕の知ってる選手もいてびっくりした。
それから毎回思うが、来賓の方々のありがたいお話が長くて……
ついつい居眠りしそうになった。
何とかならないものかな……。


入学式が終わり、いよいよ始業となる。
七咲も初めて大学の長い講義を体験することとなる。
輝日東高校では1限が50分だったのに対し、大学ではその倍近い90分だ。
七咲には内緒にしているが、僕は初めての講義でその長さに耐えきれず居眠りしてしまった。
他の学生はみな緊張して起きていたが、僕だけは居眠りしてしまった。
なので、僕はそのことで大学内で有名となってしまった。
だが、それはほんの一刻のことだったので今ではもう松原・華村くらいしか覚えていない。


始業の日の夜
新居
橘「いただきます」
七咲「いただきます」
橘「どうだった?初めての講義は」
七咲「意外と面白かったですよ。何だかあっという間でした」
橘「え?うそ……」
七咲「いえ。本当ですが」
橘「だってさ、時間が前よりも40分伸びたんだぞ。疲れなかったか?」
七咲「私はもともと水泳で培った体力があるので、別に疲れませんでした」
橘「へぇ。僕なんかさ、終了時間を勘違いして50分で片付けを始めようとしちゃったんだ」
橘「でも、先生と周りの学生は微動だにしなくて……」
橘「それを見て……あ、そっか。まだあと40分あったのかぁって気づいた」
橘「あの時は焦ったよ」
七咲「それはないですね!先輩、高校の時の癖が残っていたんですね」
橘「ないとか言わないでくれ。僕が傷つく」
七咲「いいえ。絶対に先輩だけですよ。そんなだらしない学生は。クスッ」
橘(まぁ、実際はそれだけじゃなくて、その残り40分間に耐えきれずに居眠りしたんだ)
橘(このことは、お説教されそうだから七咲には絶対に内緒にしておこう)
橘「ところで、友達はできた?」
七咲「はい。インターハイで競った子と友達になりました」
橘「おっ、早速ライバルを友達にしたのか」
七咲「はい。その子、2年前の輝日南でのインターハイにも出場していたらしく……」
七咲「橘先輩のこと覚えていましたよ」
橘「えっ?何て言ってた?」
七咲「七咲さんはいいわね。あんなに一生懸命応援してくれる彼氏がいて」
七咲「あの人、恥じらいを捨てて応援していたのね」
七咲「私もあんな彼氏がほしいなぁ……だそうです。ちょっと嫌味っぽく聞こえました」
橘「うわ……恥ずかしい」
七咲「私の方が何百倍も恥ずかしいです」
七咲「能天気な橘先輩はこれっぽっちも恥ずかしいと思っていないでしょうが」
橘「そ、そんなことない!!僕だって恥ずかしかったよ」
七咲「それはどうでしょうね」
橘「うう……信じてくれ」
七咲「クスッ」



七咲「先輩、明日は何限始まりですか?」
橘「僕は2限からだよ。だからぐっすり寝ていられる」
七咲「そうですか。でも、そうはさせませんよ」
橘「え?」
七咲「私はまた1限始まりなんです。だから明日の朝食は8時です」
七咲「一緒の時間に起きて、一緒に食べてもらいますからね」
橘「え?そんな……僕の貴重な睡眠時間が……」
七咲「先輩は私が起こしてあげないと寝坊しそうですからね」
橘「そんなことないって!朝ご飯作り置きしておいてもらえれば自分で食べて行くから」
七咲「いいえ。一緒に食べましょう。別々よりも一緒に食べた方がおいしいので」
七咲「それに料理は作り置きよりも出来立てが一番おいしいんです」
七咲「だから、先輩にはそれを味わっていただきたいのですが……ダメですか?」
橘「……」
七咲「私は先輩と一緒がいいんです。もし逆に先輩が1限で私が2限の時も……」
七咲「私が朝ご飯を作って先輩と一緒に食べます」
橘「わかった。そこまで言うなら、僕頑張って起きるよ」
橘「七咲のおいしい朝ご飯を食べるために頑張って起きるから!」
橘「七咲も頑張っておいしい朝ご飯を頼むよ」
七咲「はい!先輩……ありがとうございます」
橘「よし、じゃあ明日に備えて寝よう。おやすみ!」
七咲「おやすみなさい」

こうして僕は七咲と、早起きして一緒に朝ご飯を食べる約束をした。
たぶんつらいけど……七咲のために頑張ろうと思う!


翌朝
橘「スコー、スカー」
七咲「先輩!先輩!」
橘「スコー、スカー」
七咲「先輩、起きてください!!」
橘「スコー…」
七咲「……すぅ!」
七咲「おはようございます!!」
橘「うわあ!!び、びっくりしたぁ!!」
七咲「先輩、おはようございます」
橘「七咲……僕の耳元で大声を出すなんてひどいよぉ」
七咲「でしたらちゃんと自力で起きてください。昨日約束しましたよね?」
橘「う、うん。わかったよ。おはよう、七咲」
七咲「はい。先輩、おはようございます」
七咲「早く顔を洗ってご飯を一緒に食べましょう」
橘「うん。そうだな」

橘「いただきます」
七咲「いただきます」
橘「はぁ。もっと甘い起こされ方がよかったよ。例えばキスとか」
七咲「嫌です」
橘「えっ!?」
七咲「そんな甘い起こし方じゃ先輩は絶対に起きないので」
橘「起きてみせるさ!」
七咲「どうでしょうね」
橘「よし、次こそ頑張ってみせる!!」
七咲「期待してます」

七咲「それじゃ、私は学校に行きます。先輩、くれぐれも二度寝はしないように」
七咲「私許しませんので。そのつもりで」
橘「わ、わかったよ。ちゃんと時間通りに行くから」
七咲「じゃ、行って来ます」
橘「行ってらっしゃい」


橘「さてと、七咲がああ言ってることだし。僕も行くか」

こうして七咲に起こされて一緒に朝ご飯を食べて学校に遅刻せずに行った。
何かいつもの僕らしくなくて変な感じがしたけど……
これでよかったんだよな。


橘しゅうの大学
1限終了
華村「はぁ。まったく。焦ったぜ。起きたら9時半だったんだ」
華村「おかげで1限遅刻しちまったよ」
松原「おいおい!お前もしゅうちゃんを見習えよ」
松原「30分早く学校来てたみたいだぜ」
華村「見習うったって……しゅうちゃんは反則だからな」
橘「反則って何だよ!?」
華村「だって俺らが自力で起きるのに対し……」
華村「しゅうちゃんは七咲に起こしてもらったんだもんな」
松原「そっかぁ。いいよなぁ……」
橘「いや、ちっともよくないぞ」
松原「たぶん、キスとかで起こされたんだろ?うわ……」

妄想
七咲「せん……ぱいっ♪お・き・て♪」
チュッ。
橘「お、おお。今起きたぞ、僕の愛しの逢……」
橘「その……唇に……僕、乾……杯」

橘「って!あのなぁ!!悪いけど、こんな甘い展開じゃないし!」
橘「耳元でいきなり大声出されたんだ!びっくりしたよ」
松原「ほわ……」
華村「ふぅ……」
橘「お前ら……聞いてないな。先行くぞ。遅刻するなよ」
松原「ほわ……」
華村「ふぅ……」
橘(ダメだ、こいつら)


翌朝
橘「スコー、スカー」
七咲「……」
七咲「……すぅ!」
七咲「おはようございます!!」
橘「うわあ!!び、びっくりしたぁ!!」
七咲「先輩、おはようございます」
橘「またか。これじゃあ、生命いくつあっても足りないよ」
七咲「先輩の嘘つき。昨日自力で起きるって約束しましたよね?」
橘「あ……やっちゃった」
七咲「もういいです。早く食べてください」
橘「うわ……」
橘(心なしか、七咲が冷たくなってる!!)
橘(そりゃそうか。これで2度目だもんな。明日こそ頑張ろう!)


翌朝
橘「スコー、スカー」
七咲「……」
七咲「……すぅ!」
橘「隙あり!」
七咲「うぐっ」
僕は起こしに来るであろう七咲を驚かせるためにタヌキ寝入りをしていた。
七咲が大声を出そうと思いっきり口から息を吸い込んで……
頬を膨らませたのを見計らって……
口封じに上体を起こしてキスをお見舞いしてやった!
橘(これでどうだ!?)
七咲「んん……」
橘「……」
七咲「んー……んー!!」
ボコッ。
橘「うお……」
ガクッ。
七咲「はぁはぁ。苦しかった」
橘「い、痛い。お腹を殴るなんて反則だ」
七咲「先輩こそキスをするなんて反則ですよ」
七咲「しかも、思いっきり息を吸い込んだ状態だと苦しいに決まってるじゃないですか!」
七咲「なのに、ちっとも離してくれなかった……」
七咲「こうするしか……なかったんです」
橘「ご、ごめん。つい調子に乗った。今のは完璧な正当防衛だな」
橘「でも、僕今日こそはちゃんと自力で起きたぞ。三度目の正直だ」
七咲「偉い……とでも言ってほしいんですか」
橘「うん」
七咲「先輩は当たり前のことをしたまでです。別に偉くありませんよ」
橘「え?せっかく頑張ったのにひどい」
七咲「早く朝ご飯食べてください」
橘「う……軽く涙目」

こうして三度目の正直で僕はようやく自力で起きた。
でも、やり方を間違えてまたしても七咲を不機嫌にしてしまった。
明日からは普通に起きよう。
うん。その方が身のためだ!


4月中旬
夕食時
新居
TV「ニュースです」
TV「今朝8時頃、○○で道を歩いていた会社員の女性が……」
TV「後ろから来た若い男にいきなり刃物で斬りつけられるという事件が発生しました」
TV「女性は右肩を斬られ、生命に別状はなく、全治1週間の軽い怪我を負いました」
TV「警察では犯人の行方を捜査しており……」
七咲「いきなり後ろからですか?怖いですね!」
橘「うん。やり方が汚いよ……じゃなくって!絶対に許せない!!」
七咲「私も前に街でナンパされそうになったことがあるので、怖いです」
七咲「街を歩く時は注意しないと」
橘「大丈夫だよ。その時はまた僕が駆け付けるから!」
七咲「でも相手が凶器を所持していたらどうするんです?」
七咲「いくら頼れる先輩でもこれでは太刀打ちできませんよ」
橘「そうだな……困ったな」
七咲「……」
橘(って!ニュースつけてるせいで暗くなったじゃないか!)
橘(ここは明るい話題に変えるべきだ)
橘「そ、そうだ。七咲」
七咲「はい」
橘「今度のゴールデンウィーク、いつ帰ろうか」
七咲「そうですね……先輩はいつがいいです?」
橘「僕は……基本的にいつでも。けど、帰るなら二人一緒がいい」
橘「一緒になるべく早く帰るんだ。夏休みはバイトが入っていつ帰れるかわからないし」
橘「ひょっとしたら帰れないなんてことも大いにあるからな」
七咲「でしたら……29日にします?私も特に予定はないので」
橘「うん。じゃあ、29日の午前中にこっちを出よう」
七咲「はい」
橘「楽しみだなぁ。高橋先生や七咲の両親にまた逢える」
七咲「……先輩。一人忘れてますよ」
橘「ああ。梅原か」
七咲「いえ。梅原先輩はどうでもよ……くないですけど」
橘「うわ……今七咲、さり気なくひどいこと言いかけたぞ」
橘「後で梅原に報告しておこう」
七咲「それはいいとして!先輩、美也ちゃんを忘れていませんか?」
橘「あ……すっかり忘れてた。あいつ今頃何してんだろ?」
七咲「今の、後で美也ちゃんに言いつけておきます!」
橘「やめてくれ!それだけは勘弁!」
七咲「でしたら先輩も梅原先輩には内緒にしてください」
橘「わかったよ!絶対にしゃべらない」
七咲「はい。では、そういうことで」

こうして七咲と今月29日に帰省することになった。
楽しみだなぁ。久々の輝日東。
それにしても交換条件でお互いに内緒……か。
はたしてこれでよかったのだろうか?



第19話に続く。

2010-06-26

第17話「先輩、これからもよろしくお願いします」

4月上旬
某神社
チャリンチャリン
カランカラン
パン、パン。
橘「……」
七咲「……」
橘「よし……と。さあ、次どこ行こうか?」
七咲「そうですね、お守り買いませんか?」
橘「お守り?うん、いいね。買おうか」
七咲「はい」


七咲は3月3日に輝日東高校を卒業した。
それから約1ヶ月間、引っ越しの準備を忙しなくしていた。
僕の住んでいたアパートは二人で暮らすにはちょっと狭かったので……
塚原先輩、森島先輩たちと一緒に不動産屋を回って……
これから同棲するアパートを決めた。
七咲と一緒に暮らすには個人の部屋が二つあることと……
トイレとお風呂が別であることが条件だ。
最初は困難かと思われたが、意外にも条件に一致するアパートが見つかった。
前のアパート同様、駅からも大学からも近い。
そしてようやくすべてが落ち着いた今……
こうして二人でアパートの近くの神社にやって来て……
二人の門出が無事であるように祈願した。

橘「うわ、色々あるね!」
橘「えっと、健康長寿、安全祈願、安産祈願……」
橘「金運上昇、学業成就、商売繁盛……どれにしよう?」
七咲「とりあえず学生なので、学業成就がいいんじゃないですか?」
橘「あ、そうか」
七咲「はい。お互い留年しないように」
橘「ははは……つまり、余計な出費は抑えろと」
七咲「はい!」
橘「でも、そう考えると病気でもしたら余計な出費になるよなぁ?」
橘「健康長寿とか?いや、いらないか」
橘「あ、だったら!アルバイトしてるし、商売繁盛とかは?」
橘「うーん、そう考えると全部ほしいなぁ……」
七咲「先輩。多くても2つまでにしましょう」
橘「え?どうして?」
七咲「こういうのは欲張らない方がいいんです」
七咲「願い事は少ない方が当たる確率も少なくなりますが……」
七咲「それだけ一つ一つが貴重になるんです」
橘「ああ、そっか。欲張るといいことないもんな」
橘「二頭追う者一頭も得ず……か」
七咲「はい、そういうことです」
橘(欲張らない方がいい。七咲らしい考え方だ)
橘(そうやって今まで自分の自由を犠牲にして……)
橘(家族のために頑張って来たんだもんな)
橘(だったら、僕が七咲を自由にしてあげないと!)
橘(七咲が今まで犠牲にしてきた分、僕が取り戻してあげないと!)
七咲「でしたら、先輩。安全祈願なんてどうですか?」
橘「安全祈願?」
七咲「はい。私たちはお互いに無茶をして危なっかしいので」
橘「なるほど。じゃあ、それにしようか!」
七咲「はい」
橘「学業成就と安全祈願か。果たして本当に効くのだろうか」
橘「あんまりお守りの力って実感したことないんだよな」
七咲「お守りが実際に効くかどうかなんて、誰にもわかりませんよ」
七咲「ただ、効くと信じていれば効くと思いますよ」
橘「結局は買い手の信仰がすべてってことか。宗教らしいな」
七咲「私は必ず効いてくれると信じています」
橘「じゃあ、僕も信じることにする」
橘「せっかくこうして二人で買いに来たお守りなんだから……」
橘「しかも片方は七咲が選んでくれたから必ず効くと信じたい」
七咲「先輩……」
橘「あ、あっちに縁結びの絵馬がある!絵馬書いてみない?」
七咲「はい。書きましょう」


橘(ちなみに出発の1時間前……)

七咲家・玄関
梅原「ちわーーっす!東寿司の出前でーす!」
橘「おおお!梅原!!その大量の寿司いったいどうしたんだ!?」
橘「頼んだ覚えないぞ!金払えるかな……」
梅原「サービスだぜ、大将。親父が持ってけってさ!」
橘「え?じゃあタダなのか!?ありがとう」
梅原「いいってことよ!俺とお前の仲だろ?」
橘「梅原!」
梅原「橘!」
七咲「何してるんですか?お二人とも、気持ち悪いです」
二人「な……!!」
七咲「梅原先輩、ありがとうございます」
凹んでいる二人を無視して七咲はさっさと居間へ寿司を運ぶ。
橘「あ、それはそうと。梅原。この前はありがとうな。これ、この前のお代だ」
梅原「おう!お役に立てて嬉しいぜ、大将」
橘「お前も一緒に食ってったらどうだ?」
梅原「おう!最初からそのつもりだったぜ。邪魔するぜぃ!」
ピンポーン!
橘「あ?またお客さん?誰だ?」
ガチャ。
美也「にししし」
パタン!
美也「ああああああ!どうして閉めるの!?バカにぃに!!」
橘「にぃにって呼ぶな!だいたい何でお前が来るんだよ?」
橘「僕は呼んだ覚えないぞ!」
美也「お兄ちゃん!開けてよ!!」
七咲「あ、美也ちゃん。どうぞ」
七咲がドアを開ける。
美也「逢ちゃんありがとう」
美也「やーっぱりどっかの誰かさんとは違って逢ちゃんは優しいなぁ」
橘「誰のことだよ?」
美也「べぇーだ!」
橘「くそ!七咲が呼んだってことか。また余計なことを」

居間
七咲のお父さん、お母さん、七咲、郁夫、梅原、美也、そして僕……。
計7名で食卓を囲む。
父「梅原くん、わざわざすまないね。そちらも商売なのに」
梅原「ああ、いえ。どうってことないですよ!」
梅原「橘は俺の親友なので、これくらいは余裕です」
母「本当は4人で食べるところを私たちや郁夫まで誘って下さって……」
橘「当然ですよ。だって、一番苦労なさっているのは親御さんですから」
梅原「そうそう。ごちそうしないと罰が当たります」
美也「それに……はむはむ。みんにゃで食べたほうがおいひいひね。はむはむ」
橘「おい、美也。お前、ちょっとは自重しろよ。人様ん家だぞ?」
美也「いいんだもーん」
橘「おいおい……」
母「じゃあ、ありがたく、いただきます」
梅原「どうぞどうぞ」
梅原「……っておい!郁夫!お前……何さり気なく俺のイクラ取ってんだよ!?」
郁夫「……」
郁夫はいつも通り満面の笑みだ。
梅原「しかもウニが置いてある……とほほ。俺ウニ食えねぇんだ……」
郁夫「へしん!!」
梅原「……」
父「じゃあ、私のイクラと交換するかい?私はウニ好きなんだ」
梅原「いいんすか!?ありがたく、いただきます」
美也「あ、逢ちゃん食べないの?もらうね!」
パクッ。
七咲「あ……最後まで取っておこうと思ったのに」
橘「……」
七咲が箸を置いた瞬間に咄嗟に七咲の箸を取って……
七咲が美也に取られたネタを僕の皿から七咲の皿に移す。
七咲「え?」
橘「こら、美也!よくも僕のを取ったな!」
美也「ふぇ?お兄ちゃんのなんて取ってないよ?」
橘「とぼけても無駄だ!今日という今日は絶対に許さない!!」
橘「卒業式後のホームルームでの恨み、まだ覚えているからな!」
美也「ふぇぇ……スケベ星人に襲われる!!逢ちゃん助けて!」
橘「誰がスケベ星人だ!?」
七咲「知ーらない。美也ちゃんなんて知らない。クスッ」
美也「そんなぁ!!」



橘(……なーんてことがあったなぁ。まったく、美也の奴!!)
七咲「書けました。先輩、どうぞ」
橘「うん」

彼氏:彼女を必ず守り幸せにしてみせます! 橘しゅう
彼女:彼氏をずっとそばで支えてみせます! 七咲逢


橘「できた!」
七咲「……」
橘「……」
七咲「必ず……結ばれますよね、私たち」
橘「僕たちが信じていれば、必ずね!」
七咲「私は信じます!」
橘「僕だって!七咲には負けないぞ」
七咲「それはどうでしょうね。クスッ」
橘「あっちにおみくじがあるよ!引いてみない?」
七咲「あ、いいですね!引きましょう!」

橘「やった!大吉!!」
七咲「あ、私もです!!珍しいですね、二人同じって」
橘「そう?えっと、恋愛は『今の人が最上迷うな』……だって」
七咲「え?私もです!!本当に珍しいですね」
橘「じゃあ、僕たちってこの神社公認のカップルってことか!?」
七咲「そういうことになりますね」
橘「そっかぁ。よかったなぁ!」
七咲「はい。私も嬉しいです」
橘「さて、次はどこに行く?」
七咲「そうですね……向こうの通りなんてどうですか?」
七咲「ちょうど桜が満開なので」
橘「そっか。花見って手があったな!行こう」



通り
七咲「きれいですね……」
橘「うん。何か、前に輝日東神社で見た二期桜を思い出すよ」
七咲「ああ、あの時の。私が二期桜に似てるって先輩が言ってくれました」
橘「うん。そういえばそうだった」
橘「……あっ」
七咲「どうしました?」
橘「あれ」
七咲「お団子屋さんですか?」
橘「うん。お団子食べたくなってきた……」
七咲「花より団子とはこのことですね」
橘「あ、ごめん。空気読めなくて」
七咲「いえ。いいですよ。私も何だかお腹が空いてきました」
七咲「それに先輩は私にお寿司を譲って下さったので」
橘「ああ。ごめんな。あんな卑しん坊な妹で」
橘「本当に美也の奴、まだまだガキだからな……」
七咲「私から言わせれば似たもの同士だと思いますよ」
七咲「先輩も美也ちゃんも」
橘「そんな……あいつと一緒にしないでくれ」
橘「んじゃ、買って来るからここで待ってて」
七咲「行ってらっしゃい」

橘「お待た……えっ?」
男「よぉ、姉ちゃん。俺の女にならないか?」
七咲「あの、どちら様ですか?」
男「別に俺が誰だろうと関係ねぇだろ」
男「一緒に遊ばねぇか?」
橘(これって……正真正銘、ナンパ……だよな?)
七咲「お断りします。私にはもう、心から決めた相手がいるので」
男「またまた~。魂胆見え見えだぜ」
男「女はみんなそういう嘘をつくんだよ~!」
七咲「嘘じゃないです。よろしければ彼の元までお連れしましょうか?」
男「いいから黙って来いや!」
ナンパ男は七咲の腕を掴んだ!
七咲「!!」
七咲「離して下さい!!通報しますよ」
男「ふん。片手でどうやって通報する気だ!?」
男「頭、大丈夫かぃ?はははは……」
七咲「!!」
七咲(先輩、早く……来て)
橘(あんにゃろう!!汚ねぇ手で七咲にベタベタ触りやがって!)
僕はその場に買ったばっかのお団子を置いて咄嗟に七咲の元に駆け寄る!
そしてナンパ男と七咲の間に割って入る!
橘「そのきったない手で僕の彼女に触るな!」
僕は力一杯ナンパ男の手を七咲の腕から引き離した!
七咲「先輩!」
男「くっそ!この姉ちゃん本当に男がいたのか!?ちっ。ずらかるぜ」
男は逃げて行った。
七咲「先輩!!」
泣きながら抱きついて来る七咲を、僕はそっと受け止めた。
橘「七咲!!……ごめんな。僕が油断したせいであんな怖い思いをさせて」
七咲「いえ。先輩は何も悪くありません」
橘「それにしても何て乱暴な奴なんだ……。許せないよ」
橘「僕が刑事さんになったら、安心で安全な街作りをしたいな」
橘「そう、誰も傷つくことがない平和な世の中にしたい」
七咲「なりますよ……」
橘「え?」
七咲「先輩が刑事さんになったら、きっと平和な世の中になりますよ」
橘「そ、そう、かな?」
七咲「はい。私は信じています。先輩のこと」
橘「あ、ありが、とう。あ、そうだ。お団子!」

橘「おいしいね」
七咲「はい。あ、先輩。ちょっと動かないでください」
橘「え?あ…」
七咲が僕の口の周りに付いている団子の餡をなめて取ってくれた。
七咲「おいしいですね」
橘「うん。甘くておいしくて恋の味がする……」
七咲「本当ですね。クスッ」

僕と七咲……
桜の花が舞い散るこの通りで……
二人でお団子を食べながら……
ゆっくりと流れる、充実した時を過ごす。
いつまでもこの幸せが続きますように。


七咲「先輩。今夜は何が食べたいですか?」
橘「うーん、そうだな……。カレーにしよっか」
七咲「カレーですか。わかりました」
橘「できたら僕も調理を手伝いたいんだけど」
橘「ほら、受験前夜に肉野菜チャーハンを作ろうとしたら……」
橘「全然調理法がなってなかっただろ?」
七咲「なるほど。私に教えてほしいというわけですね」
橘「うん」
七咲「わかりました。じゃあ、近くのスーパーに買い物に行きましょうか」
橘「うん」


17時
スーパー
橘「じゃあ、僕は肉の方を見て来るよ」
橘(さすがにスーパーの中でナンパする男はいないだろ?)
七咲「はい。お願いします」

橘(うーん、やっぱり国産が一番だよな……)
橘(ちょっと高そうだけどな)
松原「あれ?しゅうちゃん?」
橘「え?あ……松原」
華村「あれれ?しゅうちゃんもいたんだ……」
橘「華村まで……。どうしてここに?」
松原「どうしてって、俺ら自炊してるし」
華村「俺らもアパート暮らしなんだよ」
橘「へぇ……」
松原「あ、そういえば!七咲ってどうしてる?」
橘「は?何でいきなりその話題なんだ!?」
華村「聞いたぜ。インターハイでまーた優勝してスポーツ推薦合格したらしいじゃん」
松原「んで、まーたご丁寧に俺らの出身高校を打ち負かしてくれたな」
橘「ああ、何だ。知ってたのか?」
松原「で。彼女は今どうしてんだよ?」
橘「……」
華村「この近辺の大学に通うってことは……も・し・か・し・て!?」
橘(やべ!)
七咲「も・し・か・し・て!?……何ですか?」
橘(うわあ……七咲、来るな!)
松原「え?」
華村「は?」
七咲「お二人とも……橘先輩の大学のお友達ですか?私に用があるんですよね?」
松原「私に?え?まさか……お前が?」
華村「な、な、な、七咲さんですか!?」
七咲「はい。私がな、な、な、七咲逢ですが、何か?」
橘(あっちゃあ……)
松原「本物か!!これが本物の七咲逢!!」
華村「どうやらそのようだぜ」
橘「本物のってな……おいおい」
七咲「ああ、もしかして。この方たちが私と塚原先輩のことをバケモノ呼ばわりしたんですか?」
橘「ご明察」
松原「ご、ごめんなさい!!二度と申しません!!」
華村「僕たちが悪かったんです!!」
橘「ん?何頭下げてんだ、お前ら?変な奴ら」
七咲「ここでお逢いしたのも何かの縁です。うちに来てカレーを一緒に食べませんか?」
松原「い、いい……のか?」
華村「だって俺たちひどいこと言ったし」
七咲「いえ。別に気にしてませんから」
松原「あ、あざーっす!」
華村「ごちそうになります!」
橘「おいおい……本当にいいのか?」
七咲「ええ。みんなで食べた方がおいしいですから」


新居
橘「上がれよ」
松原「お邪魔します。うお、広いなぁ」
華村「前のアパートよりも広くてしかもちゃんと片付いてるじゃんか!」
七咲「ええ。私が片付けました。先輩、放っておくとすぐ散らかすので」
松原「まるで子供だな」
橘「う、うるさい!そういうお前らのアパートだって……」
華村「しゅうちゃん子供~ひゅーひゅー!」
橘(こいつら聞いてねぇ)
七咲「じゃあ、早速調理にかかります」
橘「あ、僕も手伝うよ!」
七咲「いえ。私一人で十分です」
橘「そんなぁ……約束したじゃないか!」
七咲「先輩、今は状況が状況なので……」
橘「つまりあいつらを見張っておけと?」
七咲「そういうことです」
橘「なるほど」
松原「おい、そこ何ボソボソしゃべってんだ?」
華村「恋人同士の秘密の会話ってやつか?」
華村「くそう、俺らの前でイチャイチャしやがって!」
橘「気に食わなかったら別に出て行ってもいいぞ?」
橘「ここ、僕と七咲の家だし」
七咲「あれ?お二人とももうお帰りですか?」
七咲「せっかくごちそうしようと……」
松原「いえ。何でもありません。どうぞ、ごゆっくりと」
華村「そうですよね!別に羨ましくなんてないんだから!」
松原・華村「くそ~」
橘「ふっ」
七咲「クスッ」



松原・華村「いただきます。……うめぇぇぇ!!」
松原「このカレーうまくね?」
華村「いいなぁ、料理上手な彼女は」
橘「羨ましかったらお前らも頑張ってみたら?」
七咲「そうですね」
松原「ちくしょう!」
華村「勝ち組だからって上から目線かよ~」
七咲「ところで、まだお二人のお名前を聞いていませんでしたね」
松原「ああ。俺はしゅうちゃんと同じ学科・学年の松原正義だ」
七咲「え?……梅原正吉?」
松原「違う!!ま・つ・は・ら・ま・さ・よ・し!!」
七咲「ああ。松原さんですか。ちなみに、まさよしってどういう漢字ですか?」
松原「せいぎって書いて正義だ」
七咲「せいぎ……『まさきち』と『せいぎ』」
七咲「何だか紛らわしいですね」
七咲がボソッと呟く。
松原「紛らわしくて悪かったな!」
七咲「あ、いえ。すみません。別にそういう意味では」
華村「んで同じく、華村政治だ」
七咲「花園誠治……えっハナヂ王子!?」
華村「違う!!何でしゅうちゃんと同じ間違いするんだよ!!」
華村「『はな村』の『はな』は中華の華で、政治は政治!」
華村「まったく、どこまで似たものカップルなんだ!?」
橘「そりゃ間違えるのも無理はないよな」
橘「だって、僕らは同じ輝日東高校で、似たような名前の奴を知ってるから」
七咲「ちなみに梅原正吉は先輩の元クラスメイトで……」
七咲「花園誠治、通称ハナヂ王子は先輩と同じ学年でした」
橘「正しい吉と書いて正吉、誠治の『せい』は誠だ」
松原「なるほど。梅原正吉と花園誠治って奴がいたんだな」
華村「自分と似た奴がこの世界に3人はいるって言うけど……」
華村「まさか本当にいたとはな」
松原「ちなみにさ、その『ハナヂ王子』っていうダッサイあだ名はどっから付いたんだ?」
橘「ああ。僕も聞いた話なんだけど……苗字のハナと名前のジを取って……」
橘「ハナヂ王子って呼ばれているみたいだ」
橘「1年生の時の体育でサッカーボールが直撃して派手に鼻血を出したこともあるみたいだ」
松原「へぇ」
華村「俺とそいつが一緒ってわけね……はぁ」
橘「まぁ、間違えるのも無理はないってことさ」
七咲「そのハナヂ王子って人、私のクラスメイトの女子はかっこいいとか言っていましたが……」
七咲「私はどこがかっこいいのかわかりませんね」
橘「ただのキザな奴だよ。別にかっこよくなんかない」
松原「先輩の方が……かっこいいですよ。クスッ」
華村「そうか。やっぱりそう思うか、七咲」
七咲「はい?」
橘「え?」
松原「とぼけても無駄だ!」
華村「お前ら今、絶対にそう思ったはずだ!!」
七咲「さてと。夕食の後片付けをしないと」
橘「もう20時だし、お前らそろそろ帰れよ」
松原「ははーん。あくまで白を切るつもりか」
華村「しゃーねーな。じゃあな。ごちそうさま」
松原「美味かったぜ。ごちそうさま」
二人は帰って行く。
橘「……やれやれ。ごめん、あんなうるさい連中で」
七咲「いえ。賑やかで面白いお友達でしたね」
橘「そうか?」
七咲「はい」

こうして、松原と華村を家に招いて4人で夕食を食べた。
ついでに七咲に二人を紹介した。
これからもあの二人がうちに遊びに来るかと思うと何だか大変だな。
まあ、その時はその時で頑張るか。

この後は普段通りに過ごした。
引っ越しの準備などで数日前から二人でここで暮らしているので……
初日こそ色々な意味で大変だったが、さすがにもう同棲には慣れてきた。

そして明日は待ちに待った七咲の入学式だ。
土曜日なので、僕も見に行くことができる。
初めて七咲のスーツ姿を拝むことができそうだ。
すごく楽しみだな。
早く明日にならないかなー。


第18話に続く。

2010-06-26

同棲編

エピソード「先輩、いよいよ同棲が始まりますね」(ノベル)
第17話「先輩、これからもよろしくお願いします」
第18話「先輩、ちゃんと自力で起きてください」
第19話「先輩、海に行きましょう」
第20話「先輩、私を忘れたんですか」
第21話「先輩、これから一緒に頑張りましょう」
第22話「先輩、一緒に輝日東に帰りましょう」
第23話「先輩、輝日東って温かいですね」
第24話「先輩、大学に戻りましょう」
第25話「先輩、私を思い出してください」
第26話(完結)「先輩、私はずっと先輩のそばにいますから」
エピローグ「先輩、私とみんなのその後」
エピソード「先輩、お誕生日おめでとうございます」(ノベル)
エピソード「先輩、今日は試験前夜です」(ノベル)


※解説
第1~26話が七咲アフターストーリーの本編です。
エピローグは本編のアフターストーリーです。
エピソードは後から追加したサイドストーリーです。
どの時期の話か分かりやすいように本編の間に挿入しています。

このまとめ用記事の日時設定に関しては以下を参照
目次をコンパクトにまとめました

2010-06-24

第16話「先輩、私卒業します」

10月上旬
橘しゅうのアパート
七咲と電話している
橘「……」
七咲「……」
橘(七咲の奴……妙に焦らすなぁ。早く聞きたいのに)
七咲「……あのですね。えっと……」
橘「……うん」
橘(ごくり)
七咲「えっとですね……」
橘「う……うん」
橘(どうしたんだ!?……まさか!?)
七咲「……」
橘「そっか。そりゃ残念だったな」
七咲「えっ?」
橘「大丈夫。推薦は落ちてもまだ一般があるって!」
橘「次も応援してるから」
七咲「あの……先輩?」
橘「ぼ、僕はべ、別にか、悲しくなんか……ないんだからな!!」
七咲「先輩?さっきから……何を言ってるんです?」
橘「うん。大丈夫だ。落ち着け、橘しゅう」
七咲「もしもーし?せんぱーい??」
橘「うん。というわけだ。七咲も頑張れよ」
七咲「あの……言ってる意味がよくわかりません」
橘「だから!つまりは……ダメだったってことだろ?」
七咲「はい??」
橘「つまり!推薦入試は不合格だったってことなんだろ?」
七咲「誰もそんなこと言ってません。勝手に決め付けないでください」
橘「え?じゃあ、まさか?」
七咲「はい。合格でした!」
橘「ご、合格……だと??」
橘(マ、マジ……かよ……)
橘「おめでとう、七咲!!」
七咲「はい。ありがとうございます!!」
橘「でも、合格ならわざわざ焦らす必要なかったんじゃないか?」
橘「おかげで変な先入観を持ってしまった」
七咲「すみません。合格の文字を見た時、嬉しさの余り、一瞬言葉が……」
橘「出なかったのか」
七咲「はい」
橘「そ、そっか。そうだよな。とにかく、おめでとう!!」
橘「そうだ!せっかくだから塚原先輩にも報告しろよ」
七咲「はい。そうします」
橘「もう親御さんには報告したのか?」
七咲「いえ。先輩に一番最初に報告したくて……」
七咲「玄関で郵便屋さんを待ち伏せて、私が真っ先に合格通知を受け取りました」
橘「そりゃどうも。僕はもういいから、早く親御さんに報告してやれよ」
七咲「はい。そうします」
橘「じゃあ、一旦電話切るよ」
七咲「はい。失礼しました」

橘「そっかぁ。合格かぁ。いいいよっしゃああああああああああああああああ!!」
僕は近所迷惑を考えずにとにかくはしゃぎまくった。
案の定、後で隣人から苦情が殺到した。

その数分後……
今度は塚原先輩と電話している。
塚原「橘くん、おめでとう。七咲から聞いたわよ」
橘「塚原先輩。ありがとうございます」
塚原「七咲は羨ましいなぁ。こんなにも応援してくれる彼氏がいて」
橘「何をおっしゃるんです?塚原先輩にもきっとそんな彼氏がいずれ見つかりますって!」
塚原「あらあら。お世辞をどうも」
橘「お世辞じゃないですから!」
森島「ひびきちゃんにも彼氏ができるのかね~」
塚原「はるか!?」
橘「えっ!?そこに森島先輩もいらっしゃるんです?」
森島「受話器貸して。もしもし、橘くん?お手!」
橘「え?ワン!」
森島「グー!ベリーグーよ!」
塚原「はるか……」
森島「私よくひびきん家に遊びに来るのよ」
森島「そしたらさ~、逢ちゃんから電話がかかってきてびっくりしちゃった」
橘「ああ、例の合格報告ですね!七咲は本当によく頑張りましたよ」
森島「いやあ、それほどでも。照れるなぁ」
橘「って!」
塚原「何ではるかが照れてるのよ……」
森島「それでさ、今度また4人で集まらない?こっちに」
橘「え?4人って、僕と七咲と塚原先輩と森島先輩ですよね」
森島「そうそう」
橘「え?お二人は僕のアパートから近いんですか?」
森島「うん。だって同じ都道府県だから」
橘「へぇ。それで先輩方はいつなら都合がよろしいんですか?」
森島「そうでさぁねぇ……私はいつでも。ひびきは?」
塚原「今度の日曜日なら空いてるわ」
森島「……だそうよ」
橘「わかりました。で、集まって何するんですか?」
森島「えーわかんないの?」
橘「はい」
塚原「はるか、貸しなさい。七咲の合格祝賀パーティよ」
橘「合格祝賀パーティ……いいですね!やりましょう!!」
塚原「七咲は私が誘っておいたわ。来るって言ってた」
塚原「はるかが手配した切符は明日七咲家に届くから……」
塚原「七咲の旅費の心配はいらないわ」
橘「え!?そこまでして下さるんですか?」
塚原「ええ。だって私のかわいい後輩であり……」
塚原「教え子でもある七咲の合格祝賀パーティだもの」
塚原「このくらいしてあげないとね」
橘(そっか。水泳部で塚原先輩の指導を受けた七咲は……)
橘(塚原先輩の教え子ってことになるのか)
橘「あの…何から何までありがとうございました!!」
塚原「お礼はいいから。じゃあ、今度の日曜日ね。また逢いましょう」
橘「はい」


日曜日
12時
集合場所
七咲「塚原先輩、お久しぶりです」
七咲「今日はこのようなパーティを開いていただき、ありがとうございます」
塚原「七咲、お久しぶり。合格おめでとう。スポーツ推薦に受かるなんてやるじゃない!」
七咲「いえ。それほどでも」
塚原「彼ともうまくいってるみたいで、安心したわ」
橘「え?ああ。当然ですよ!僕しか七咲の相手はいませんから!」
七咲「えっ?」
七咲は少し照れている。
橘「だって……他の男じゃ……」
七咲「……!!」
橘「七咲の意地悪に付いていけませんから!!」
七咲「……!?」
塚原「……」
塚原先輩はちょっと微笑んでいる。
七咲「……はい?それ、どういう意味ですか?」
甘い展開を密かに期待していた七咲は、期待外れな展開に少しがっかりしているようだ。
橘「え?いや、そのまんまの意味だよ」
橘「他の男じゃ七咲にしてやられっぱなしで……」
七咲「……橘先輩のバカ!!」
橘「うおお……待て待て!!誤解するな!!落ち着け!!」
七咲「いいえ。今日という今日は絶対に許しません」
塚原「クスッ。喧嘩するほどなんちゃらってやつね」
塚原「それにしてもはるか、遅いわね。何してるのかしら」
橘「寝てるんじゃないでしょうか。まだお昼ですし」
七咲「森島先輩なら考えられますね」
森島「ごめーん。着替えに手間取った!」
塚原「噂をすれば影」
橘「遅いですよー!何してたんですか?」
森島「だから言ったじゃない。着替えに手間取ったって」
七咲「森島先輩。遅刻です!」
森島「あ、逢ちゃん!合格おめでとう!!」
七咲「ありがとうございます」
塚原「じゃあ、全員揃ったから行きましょう」
塚原「はるかと2人で予約した日本料理のお店にね」
森島「あ、今日は私たちの奢りだから、お金の心配はしなくていいよ」
橘「はい!楽しみです。ありがとうございます」
七咲「私もです!ありがとうございます」
森島「グー!いいお返事ね」


12時半
日本料理のお店
塚原「それじゃ。七咲の合格祝賀パーティを始めるわ。はるか」
森島「うん。じゃあ、みんな。乾杯!!」
橘「乾杯!!」
七咲「乾杯!!」
塚原「乾杯!!」
全員ジュースで乾杯する。
ちなみに森島先輩は先月誕生日を迎えて一人だけ20歳だが……
塚原先輩に止められてジュースで我慢している。
橘「そういえば、先月の22日って森島先輩の20歳の誕生日でしたね」
七咲「あ!森島先輩。20歳のお誕生日、おめでとうございます!!」
橘「おめでとうございます」
森島「ありがとう。2人とも」
塚原「そう。だからはるかに乾杯をやらせたの」
塚原「このパーティは七咲の合格祝賀パーティであるのと同時に……」
塚原「はるかの成人祝賀パーティでもあるからね」
橘「そうだったんですか」
森島「だったら、お酒呑んでもいいじゃない!ひびきのいけず!!」
塚原「バカね。はるか以外は全員未成年なのよ」
塚原「私だって来月やっと成人になるんだし」
塚原「それに高校生が1人いるから悪いお手本は見せられないわ」
七咲「さすが、塚原先輩。森島先輩も少しは塚原先輩を見習ってください」
森島「逢ちゃんにまで言われるとは……世知辛い世の中じゃのぅ」
森島先輩は独りで落ち込んでいる。
塚原「ねぇ。それはそうと、よく同棲を七咲の親御さんが許可したわね?」
橘「……」
七咲「……」
塚原「もし、差し支えなければ、私に説明してくれない?」
橘「……」
七咲「……」
僕と七咲はお互い無言で顔を見合わせる。
そして
「塚原先輩なら話してもいいだろう?」
「そうですね!」
と心の中で会話し、お互いこくりと頷いた後……
橘「わかりました。すべてお話します」
僕がそう言って、七咲家の25年間の出来事について塚原先輩に説明した。
塚原先輩は言葉を発することなく、親身になって話を聞いてくれた。
森島先輩はその横でボロボロ涙を流していた。
僕は食事の席でこんな重い話をしていいのだろうかと迷いつつも話を進めた。
七咲も塚原先輩同様、静かに話を聞いていた。
橘「だから……僕は……こんなに重い過去を背負っている七咲を……」
橘「絶対に幸せにするって、七咲の親御さんに誓ったんです」
橘「口で言うのは簡単ですが、それでも僕は覚悟を決めて……」
橘「七咲を信じて……この修羅の道を突き進むことにしました」
橘「例え……この先……何があっても」
橘「七咲がそばにいてくれれば、僕はすべてを乗り越えられる気がします!」
橘「いえ、絶対に乗り越えてみせます!!決して諦めません」
橘「こんな僕を好きになってくれた七咲を……絶対に、絶対に守ってみせます!!」
七咲「……」
塚原「……」
森島「だでぃばなぐーん、ぎみえらいよぉ。がっごいいよ」
森島先輩はもはや何を言ってるのかわからない泣き崩れている。
塚原「決めた」
七咲「えっ?」
塚原「私も、二人に協力させてもらうことにした。いいわよね、はるか?」
森島「うん……もぢろんよ」
橘「え?本当ですか?」
塚原「ええ。だって二人は私の大事な後輩たちだからね」
塚原「それに七咲に対してこんなにも必死になっている橘くんを初めて見たから」
塚原「余計なお世話かもしれないけど、よろしくね」
七咲「いえ。とんでもないです。余計だなんて思っていません」
七咲「こちらこそよろしくお願いします」
塚原「ほーら、はるか。いつまでも泣き崩れているんじゃないの!」
塚原「何か言ったらどう?」
森島「うん」
森島先輩は自慢のダッくんタオルで涙を拭いた。ちょっとだけ場違いな気もするが……。
森島「二人とも、よろしくね」
橘「よろしくお願いします」
七咲「よろしくお願いします」
塚原「私たちも七咲の両親を助けた輝日東の人たちみたいになれたらいいわね」
塚原「頑張りましょう」
森島「それにしても……」
森島先輩が突然僕の目の前にやって来る。
橘「えっ?」
森島「キミも隅に置けないな!このこの!!」
橘「うおおお……森島先輩、勘弁してください」
僕は座ったまま森島先輩に後ろに押し倒されて、ほっぺたをつつかれている。
森島「いいなぁ!いいなぁ!逢ちゃんにはこんな素敵な彼氏がいて!!」
森島「羨ましいぞぉ!!」
七咲「え?森島先輩って彼氏いらっしゃらないんですか?」
七咲「大学でもモテると思ったのに意外」
塚原「100人」
七咲「え?」
塚原「大学入学から今までに、はるかに告白して振られた男子の数」
橘「え?ひゃ、100人!?うわ…100人の男が呆気無く散った……」
塚原「教員延べ30人、男子学生延べ60人。その他、街頭の男10人」
七咲「街頭の男!?え……それって……」
塚原「ナンパね」
橘「うわ……何てこった。ナンパまでされたのか……」
塚原「しかも、私がそばにいたのに、無視してはるかにだけ話しかけるんだもの」
塚原「まったく、失礼しちゃうわ」
塚原先輩がボソッと呟いた。
森島「え?今何か言った?はるかがどうとかって……」
塚原「何でもない。それより、もう彼を離してあげたら?」
森島「嫌よ!!……ねぇ、橘くん」
橘「え?は、はい。何でしょう?」
森島「私と……付き合わない?」
橘「……はい?」
七咲「え?」
塚原「何でそうなるの?」
森島「だって!さっきの壮大な告白を聞いちゃったらねぇ……」
森島「ねぇ、いいでしょう?」
橘「え……そう言われましても……無理……」
森島「ねぇ、いいでしょう?ねぇってば!」
塚原「あーあ。聞く耳持たず。三角関係の修羅場か」
七咲「や、やめてください。そんなの!!」
橘「だから、無理だと……」
森島「い・い・で・しょ?」
橘「う……」
橘(この体勢じゃ逃げられない……助けて!!)
塚原「はるか。もう許してあげなさい。彼困ってるじゃない」
森島「仕方ないわね。わかった。ごめんね、意地悪して」
森島先輩が僕から離れる。
橘「ふぅ。一時はどうなるかと」
森島「ああ、今のは冗談だから気にしないで」
塚原「いや、私には100%本気に見えたけど」
七咲「ええ。私もです。終いには怒り出すところでした」
森島「ええ!?か、勘弁してください、お代官様!!」
橘「誰がお代官様ですか!?」
塚原「時代劇の見過ぎね。じゃあ、気を取り直して」
七咲「そうですね」

こうして僕、七咲、塚原先輩、森島先輩の4人で……
森島先輩の成人祝賀パーティ兼、七咲の合格祝賀パーティを行った。
この後は普通に食事して、4人それぞれの世間話をした。
それにしても、塚原先輩、森島先輩は本当にいい人たちだと思った。
助けてくれるって言ってくれた時、僕はすごく心強い味方を手に入れたと思った。
来年は七咲もこっちで暮らすことになるので、またこうして4人でいつでも逢えるだろう。
先輩方、いつまでも僕たちをよろしくお願いしますね。



そしてついにその時が来た……
3月3日
輝日東高校卒業式
1週間ほど前に七咲の両親から直々に電話があって……
卒業式の日はどうしても仕事で来られないということで……
急遽僕が七咲の保護者として卒業式に参加することになった。
果たしてこれでよかったのだろうか?
まあ、僕は本来美也の保護者でもあるので、別にいっか。
僕はこの日だけ美也と七咲、二人の保護者を務めることになった。
とりあえず、式直前に七咲から渡されたビデオカメラで……
卒業式の一部始終を撮影した。
「にししし」とか笑いながらいつもの如くガキっぽい美也に対して……
背筋を伸ばして凛としてすごく大人っぽい七咲。
まったく、同じ卒業生でも何でこんなに差があるんだろうか。
僕は兄として凄く恥ずかしい……。

式が終わり……
3年B組
女子1「あ。あれ、例の逢ちゃんの彼氏じゃない?」
女子2「一昨年の創設祭。ベストカップルコンテストの伝説の二人」
橘(ま、まだ覚えていたのか!?しかも伝説って何だ!?)
男子1「なぁ、あれ橘のお兄さんだろ?」
美也「え?誰が?」
男子2「ほら、あれだよ。あの校内にエロ本隠してそうな顔してる奴」
美也「ああ!そう言われてみれば!」
橘(おい!美也……お前そこはちゃんと否定しろよ)
美也「知らないよ。あの人誰?」
男子1「え?あいつお前のお兄さんじゃないのか?」
美也「あんな恥ずかしい人がお兄ちゃんなわけないよ」
男子2「それもそっか!」
橘(おい!僕から言わせれば、いつまでもガキっぽい美也の方がよっぽど恥ずかしいよ!)
女子1「ねぇ、逢ちゃん!あの人……」
七咲「違うよ」
女子2「え?」
七咲「だって、あんな恥ずかしい人が私の彼氏なわけないじゃない。クスッ」
橘(ガクッ。おい!二人してその態度か!?……がっかりだ)
橘(僕は……もう……帰らせていただきます)
僕が教室を出ようとするとタイミング良く七咲たちの担任の先生がやって来た。
橘(くそ……逃げ遅れた)
その後……僕は……七咲たちのクラスメイトからの熱烈な視線を浴びながら……
担任の先生の話を聞いていた。
美也の奴……後で覚えておけ!ちなみに七咲は無条件で無罪放免とする!

ホームルームが終わり、3年B組の生徒たちは次々と教室を出て行く。
美也は僕を無視してさっさと教室を出て行ってしまった。
あんにゃろう!つくっづくっ憎ったらしい妹だな……。
一方七咲は、涙を流しながらクラスメイトに別れを告げた後……
校舎裏で待っている水泳部一同の元へ向った。
僕も付いて行くことにしたが、一緒には行かず……
七咲が行った後でこっそりと陰から様子を伺うことにした。

12時
校舎裏
水泳部新部長「七咲前部長、卒業おめでとうございます」
水泳部一同「おめでとうございます」
七咲「ありがとう。みんな」
向井「ぐすっ、ぐすっ。七咲しぇんぱい。私……私……」
七咲「向井さん。泣かないで!」
向井「でも、私悲しくなんかないのに、変ですね。涙が……止まらない」
1年男子「おい、向井。泣くなよ!!別れが辛くなるだろうが!!」
向井「だって。七咲先輩は私の憧れの先輩だったから!!」
向井「余計別れるのが辛い」
七咲「……」
橘(そうだよな。彼女が一番七咲に世話になった部員だったしな)
橘(そりゃ涙が止まらないのは当然だよ)
橘(2年前の七咲も塚原先輩に対してあんな感じだったし)

回想(2年前)
水泳部新部長「塚原前部長、卒業おめでとうございます」
水泳部一同「おめでとうございます」
塚原「ありがとう。みんな」
七咲「ぐすっ、ぐすっ。塚原先輩」
塚原「七咲。泣かないの!」
七咲「でも!私塚原先輩には人一倍お世話になったので」
1年男子「おい、七咲。泣くんじゃねぇよ!!別れが辛くなるだろうが!!」
七咲「そんなこと言われたって!塚原先輩は私の憧れの先輩だったから!!」
七咲「余計別れるのが辛い」
塚原「……」

橘(さて、2年前の塚原先輩の立場になった七咲はどうするのかな?)
七咲「いいよ。思いっきり泣いて」
向井「え?いいんですか?」
七咲「確かに私も目の前で泣かれたら別れが辛くなる」
七咲「でもね。泣きたい時に泣かないと損をすると思う」
七咲「それに自然に出る涙は……凄く輝いているから!凄く綺麗だから!」
七咲「泣いたらみっともないなんてことはない!」
七咲「涙の数だけ、その人の人生が輝いて見える!」
七咲「そう思わない?」
向井「はい!七咲先輩!!ぐすっ、ぐすっ」
1年男子「お、俺は絶対に泣かないからな!男の子だし!!」
1年男子「べ、別に汚い人生になったって構わないさ!なぁ、お前ら!」
1年男子「そ、そう、だな」
と、言いつつも男子の目からも隠しきれなくなった涙が溢れ出てきた。
七咲「クスッ」
橘(結局、2年前の塚原先輩と同じこと言ったな?)
橘(でも、とてもいい言葉だと思う。塚原先輩らしい)

こうして、七咲は約1時間もの間、水泳部員たちと涙のお別れをした。
最後に水泳部員たちの感謝の気持ちのこもった色紙と花束が七咲に贈呈された。
これでもう輝日東高校に思い残すことはない。


13時
輝日東高校正門
七咲「橘先輩、お待たせしました」
橘「もういいのか?」
七咲「はい。もう何も思い残すことはありません」
橘「そっか」
七咲「私も……塚原先輩みたいな優秀な部長になれたでしょうか?」
橘「ああ。なれたよ。最後のセリフとかそのまんまだったしな」
七咲「え?先輩、どうして塚原先輩のセリフをご存知なんですか?」
橘「え?いや……その……何でだろう?」
橘(しまった!)
七咲「まさかまた覗きですか?」
七咲「塚原先輩との別れが惜しくて泣き崩れていた私を見てしまったんですね?」
橘「えっと……とりあえず、腹減ったな。何か食いに行こうか?」
七咲「ああ!やっぱり見てしまったんですね!?よくも私の恥ずかしい所を……」
橘「あー腹減った。走るかー!!」
七咲「誤魔化しても無駄です!!待ってください、橘先輩!!」

満面の笑みで追いかけっこをする僕と七咲。
これから二人は夢のキャンパスライフ……
そして夢の同棲ライフへと全力で走っていく。
待ち伏せている幾多のハードルを力を合わせて跳び越えて……
二人は明るい未来へと全力で向かっていく。
果たして、この二人に幸せは訪れるのだろうか?


第10~16話「橘しゅう大学生活編」…完!


そして第17話~「同棲編」に続く。

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