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2010-05-30

第7話「先輩、兄弟っていいですね」

17時
輝日東駅
七咲「……」
どうしよう…七咲まだ起きないよ。
とりあえずバスからお姫様抱っこで下ろしたけど…
七咲の分の運賃も僕が代わりに払っておいたけど…
七咲「……」
問題はこの後どうするかだ。
実を言うと僕は七咲の住所も電話番号も知らない。
誰かに聞くのも難だしな…このお姫様抱っこの状態じゃ。
…となれば、しかたがない。
タクシーで僕の家に連れて帰ろう。
歩きで行けない距離でもないけど…ついでに七咲は軽いけど…
炎天下を全力疾走した僕にはそんな体力は残ってない。
よし、そういうわけだからタクシーを呼ぶ。

橘家
美也の部屋
入ると向かって右の隅に美也のベッドがある。
ベッドは縦向きで、部屋のドアとは反対方向に頭を向けて寝る。
そのベッドに七咲を寝かせた。
七咲「……」
これでよし…と。
制服のまま美也のベッドに寝かせるのは気が引けるけど…
脱がすわけにもいかないしな。そんなことしたら変態だ。
七咲「……」
ん?七咲の奴、よく見ると額に汗をかいているじゃないか!
そりゃそうだな。今日は真夏日だったし。
しかもこんな制服を着ていれば暑いに決まってる。
それになんだかこの部屋も少し暑いなぁ。
よし、水枕とタオルでも持って来よう。
……
水枕をセットした。次はこのタオルで汗を拭いてあげよう。
七咲の額の汗を拭き取る…少し視線をずらすと首筋も汗をかいている。
首筋も…拭いた方が…いいよ…な?でも、襟をめくると…結構際どいぞ…
学校のプールで何度も見ている…そして今日の大会でも見た、七咲の首筋。
でも、これから襟をめくって見るのとでは訳が違う…
なんだか…こっちの方が…すごく…エッチだ。
下手すれば…下手してめくり過ぎたら…下着まで…見えてしまう…
いいのか、本当にいいのか、橘しゅう?
相手はまだ16歳の少女だぞ??本当にこんなことしていいのか??
うう…心臓がバコバコ言っている…
今日の爆走以上に心臓の鼓動が早い気がする…
うう…どうしよう…と、とりあえず…落ち着け、落ち着くんだ、橘しゅう!!
お前は何も悪くない!!
ただ…彼女のためを思って汗を拭いてあげようとしているだけじゃないか!
そうだ、何も悪くなんかない!!むしろいいことじゃないか!!
よし、覚悟を決めたぞ!!
僕は悩みに悩んだ末、実行することに決めた!
タオルを持った右手と、襟をめくる左手を恐る恐る七咲の首筋に近づけていく。
そうっと、そうっと、起こさないように襟をめくる。
汗で光っている七咲の首筋。なんだかすごく眩しくて、すごく興奮する。
それに…ちょっといい匂いだ。
その首筋にタオルを優しく当てがい、汗を拭きとっていく。
七咲「……」
よし、気持ち良さそうに眠っているぞ。今のうちだ。
僕はその作業に次第に慣れていき、どんどん汗を拭き取っていく。
次、ここ(鎖骨の辺り)を拭いたら終わりだ…そう思って油断した途端!
ぺらっ。
ん?………水色。
………水色?
あ、しまった!!ついうっかりしてめくり過ぎた!!
迂闊にも七咲の下着を見てしまったのだった!!そうか…七咲は…水色だったのか。
いやいやいや、そうじゃない!!!!僕のバカ、何やってんだよ!!
これはやらない約束だっただろ?誰との?そんなの…僕とだ。僕しかいないじゃないか。
もういい、汗を拭いてあげる作業は終わりだ。

あ、忘れてた!七咲の家に連絡しておかないと!
親御さんが心配するはずだ。
でも、連絡先がわからないな…どうすればいいんだ!?
うーん…何かメモとかなかったか…?
あ!そういえば前に一度七咲に聞いたことがあったっけ。
確か、僕の部屋の引き出しに!!

あった!
まったく、僕って奴は。七咲の連絡先くらい覚えておけよ…
よし、電話しよう。
でも、七咲の両親は共働きだからこの時間はいないはず。
郁夫はいそうだけど、あいつは無口だから電話に出てもな…
ま、いいや!だめもとで電話してみよう!
……呼び出し中
う…誰も出んわ…なんちゃって。
………ガチャ。
お!?出たぞ!
橘「もしもし、七咲…」
アナウンス「只今、留守にしております」
なんだ、留守番電話かよ…誰もいないのか。
電話を切った。
くそう、なんでこんな時に誰もいないんだよ!
これじゃ七咲を家に送り届けても意味がないぞ。
ん?待てよ…留守番電話!その手があった!!
……………
アナウンス「只今、留守にしております。発信音に続いてご用件をお話しください」
ピー
橘「もしもし、七咲さんのお宅でしょうか?」
橘「僕は…」
彼氏…じゃまずいよな。
橘「逢さんの知り合いで、輝日東高校3年A組の橘しゅうと申します」
橘「…………というわけで今逢さんは僕の家にいます」
橘「まだ起きそうにないので、もしかしたら帰るのは明日になるかもしれません」
橘「あの…変なことは決してしません!約束します!!」
橘(もう…しちゃったけどな。七咲の親御さん、僕は嘘をつきました)
橘(大切な娘さんに……本当にすみませんでした!!)
橘「それで、あの、お手数ですが、迎えに来ていただけるとありがたいです」
橘「僕の住所は………」
よし、電話はした。これでひと安心だな。

えっと…他に何かすることはあったかな?
とりあえず、七咲が起きたらお腹が空いているはずだ。
ちょっと冷蔵庫を見て来よう。
………
なんでこんな時に限って何もないんだよ!?
七咲を独りにして買いに行くわけにもいかないしな。
あ、カップラーメンはあったかな?
……
お!あるある!食材はなんとかあるみたいだ。よかった。
とりあえず、七咲が起きるまでそばにいてあげよう。
………
再び美也の部屋に行き、勉強机の椅子をベッドサイドへと運び、それに座る。
そしてしばらくの間、眠っている七咲をじっと見つめる。
七咲「……」
それにしても…かわいい…寝顔だよな。寝息もかわいい。
あのクールな七咲とは思えないくらいにかわいい。
時刻は今19時を回っている。
大会が終わってから約3時間の間、七咲は眠り続けている。
こんなにかわいい七咲を見ていたら…なんだか…僕まで眠くなってきたよ。
僕だって炎天下を爆走したんだからな。そりゃ疲れてて当然だ。
でも、僕は寝ないぞ!七咲が起きるまで起きていないと。

でも…こんなにかわいい七咲を見ているとあまーい気分になってきた。
いや、だめだ!寝ちゃいけない!!起きろ、僕!!
………
橘(………)
七咲「……」


翌日
0時
橘(………)
七咲「……ん?」
橘(………)
七咲「んん?あれ?身体が…重い。どうして……ええっ??」
橘(………)
七咲「先輩の変態!!」
ドタン!
僕を床に突き飛ばした!
橘「いてえええええええええええええええええええ!!」
橘「あれ?僕は…どうして床で寝てるんだろ?」
七咲「この変態!」
ドカッ!
橘「いてて!やめろ、蹴るな、七咲!」
橘「僕は何も悪いことしていないぞ!」
七咲「はい??先輩、自分が何したかまだわからないんですか?」
橘「何って…何をだよ?」
七咲「先輩はさっき私のお腹の上に顔を埋めて寝ていたんですよ?」
橘「…ん?あれ?そう…だったっけ?」
七咲「そうです!」
橘「うーん、よく覚えてないな」
七咲「もう…いいですよ」
橘「え?」
七咲「先輩、今までありがとうございました。これから警察に行きましょう」
橘「は?ええっ?何がいったいどうなって??」
七咲「先輩はバスの中で私が眠ったのをいいことに…」
七咲「家に連れ帰ってエッチなことをしたんです!この変態」
橘「え?ち、違う!そんなんじゃない!!」
七咲「別れましょう。そして先輩は刑務所で反省してください」

そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!

七咲アフターストーリーBAD・END
第7話「先輩、別れましょう」



……
………
いや、そんなの絶対に嫌だ!!!!
ここはどうにか引き留めて事情を説明しないと!!

橘「待ってよ、七咲!!僕の話を聞いてくれ!!」
七咲「……」
橘「お願い、聞くだけでもいいから!別れるかどうかはそれを聞いてからにしてくれ!」
七咲「…わかりました。聞くだけですよ」
橘「ありがとう」
僕は七咲にこれまでの経緯をすべて話した。
もちろん、汗を拭いたことは内緒だ。
七咲「そう…だったんですか」
橘「七咲が起きるまで僕も起きていようと思ったんだけど、」
橘「僕も疲れていたからいつの間にか眠っていたんだな」
橘「本当にごめん!」
七咲「いえ…先輩は悪く…ないですよ。悪いのは事情も知らずに大騒ぎした私の方ですから」
七咲「それより…怪我…してないですか?」
橘「あ、うん。なんとか」
七咲「本当に…すみませんでした!!」
七咲「美也ちゃんのベッドや水枕まで用意してくださった先輩にあんなひどいことを」
七咲が涙ぐみながら謝っている。
橘「いや、七咲だって悪くないよ」
七咲「え?」
橘「そりゃびっくりするよな。起きたら違う場所にいて、」
橘「しかも誰かが自分のお腹に顔を埋めて寝ているんだからな!」
橘「七咲じゃなくても相手を蹴り飛ばしたくなるって!」
七咲「先輩…」
橘「だからさ、結局誰も悪くはないんだよ」
七咲「先輩!!」
七咲が抱きついてくる。
橘「逢…よく…眠れた?」
七咲「はい、おかげさまで」
橘「そっか。ならよかった」
七咲「先輩…大好きです」
橘「僕もだ、逢」
約5分間ぎゅっと抱きしめ合う二人。
橘「あ、そうだ」
七咲「はい?何です?」
橘「七咲はずっと寝てたけど、お腹空いてない?」
七咲「そう…言われてみれば。でも、こんな夜中ですし…」
橘「さっき調べたらカップラーメンがあったよ。それでいいかな?」
七咲「あ、はい。構いませんよ」
橘「じゃ、居間に行こうか」
七咲「はい」

橘家・居間
橘「じゃあ、僕はトンコツで」
七咲「じゃあ、私はクスッ、このしょうゆラーメンにします」
七咲「先月先輩と一緒に行った遊園地のファラオを思い出しました」
橘「ああ!そういえば、七咲がしょうゆラーメンになったなぁ!」
七咲「はい。先輩が私を食べようとした、あのファラオです」
橘「う…まだ恨んでいたのか」
七咲「はい、当然です」
橘「それじゃお湯入れようか」
七咲「はい」
お湯をカップラーメンに注ぐ間…
橘(でもな、せっかく二人っきりになれたのにカップラーメンってのはな…)
橘(なんか、こう、とびっきりの出来事は起きないかなぁ…)
橘(例えば急に停電になって七咲に抱きつかれたりとか…ん?停電??)
橘(そうか、わかったぞ!!)
注ぎ終わった。
橘「七咲、ちょっと待ってて!いいものがあるんだ」
七咲「え…あ、はい」
橘(確かこの引き出しにしまってあったはずだ!…あった!)
七咲「先輩、カップラーメンできましたよ」
橘「じゃあ、ちょっとそこの電気を消してくれないか?」
七咲「え?どうしてです?」
橘「消せばわかるって」
七咲「はい」
電気を消す
七咲「でも、これじゃ真っ暗で何も見えませんよ」
橘「そう思うだろ?でも…!」
シュッ。
七咲「それは…マッチ?…あ!」
アロマキャンドルに火が灯る!
辺りがかすかに明るく、アロマな感じになる!
橘「アロマキャンドルさ。普通に食べるんじゃいまいち盛り上がりに欠けるからね」
七咲「それ…どうしたんです?」
橘「去年のクリスマス前、美也が商店街で見つけて興味半分に買って来たんだ」
七咲「美也ちゃんが?」
橘「うん。あいつには似合わないだろ?」
七咲「先輩、今の発言、美也ちゃんに言いつけますよ?」
橘「ああ、ごめんごめん」
七咲「きれい…ですね」
橘「なんだか…不思議な感じがするよ」
七咲「じゃあ、いただきます」
橘「いただきます」
ズルズルズル…
橘「うまいなぁ!腹ペコだったんだよな」
七咲「先輩。もっと静かにゆっくり食べてください」
七咲「これじゃせっかくの雰囲気が台無しですよ」
橘「あ、ああ、ごめん。そうだよな」
七咲「はい、気をつけてください。クスッ」
橘「……」
七咲「……」
しばらくの間、無言でアロマキャンドルを見つめながらカップラーメンをすする二人。
橘「……」
七咲「先輩」
橘「ん?」
七咲「こうしているとなんだかあの時を思い出しませんか?」
橘「あの時?」
七咲「私の、今年の誕生日です」
橘「ああ!」
七咲「先輩が私を学校で待ち伏せて、一緒に帰る約束をして…」
七咲「私が先輩と一緒に下校している間に、美也ちゃんが商店街でケーキを買って…」
橘「この家で3人で七咲の誕生日パーティをやったんだよな」
七咲「ええ」
橘「美也の奴、僕の金だからと言ってわざと大きいケーキを買って来て…」
橘「しかも、協力した見返りだとか言って一番大きなケーキを食べたんだよな」
七咲「え?あのケーキって先輩のおごりだったんですか?」
橘「そうだよ。登校前に美也に相談を持ちかけて、僕の財布を渡しておいたんだ」
橘「いや、違う。正確には僕の財布を奪われた…だな」
橘「本当は美也に二人で出し合って買おうって言ったのに、あいつときたら…」

回想
美也「ええ!?みゃーは貧乏だもん。そんなお金ないよー」
橘「頼む!そこをなんとか!七咲のためなんだ!それに七咲はお前の友達だろ?」
美也「そんなこと言われたってみゃーにそんなお金はないんだからね!」
橘「ほぉ」
美也「な、何よ?」
橘「まんま肉まんに、棒アイスに、タネウマクンタオルに…」
美也「う…」
橘「昨日はポロッキーを買ってたかなぁ。僕はすべて知ってるんだぞ!」
橘「美也…」
美也「う…な、何、にぃに?」
橘「僕にはすべてお見通しだ!美也、お前は…嘘つきだ!!」
美也「うう!…知ってたんだ、にぃに」
橘「ああ。すべてな。だから、美也はケーキを買えるお金を持っているはずだ」
橘「さあ、出してもらおうか」
美也「うう…こうなったら…」
橘「ん?何をする気だ?」
美也「はぁ。にぃに…みゃーはあきれたよ」
橘「え?」
美也「にぃには逢ちゃんの彼氏なんでしょ?」
橘「あ…ああ」
美也「だったら、自分でケーキを丸ごと一個買ってカッコイイとこ見せればいいのに!」
橘「う…」
美也「何でみゃーに頼るの?情けないよ」
橘「それも…そうだな」
橘(美也にしては珍しくまともなことを言っている…けど…)
橘(そうだよな、僕が馬鹿だったよ)
橘「美也、ごめんな。お前のおかげで目が覚めたよ」
美也「にぃに…」
橘「ケーキ代、全額渡すから…放課後に買ってきてくれ」
僕が財布を取り出した途端!
美也「にしし…隙アリ!!」
バッ!
橘「え?お、おい!!何をするんだ!?」
美也「にぃにの財布はみゃーが預かったのだ!」
橘「おい、返せ!どろぼう!」
美也「いやだもーん。えっと、どれどれ?うっわ!たっくさん入ってるー!!」
橘「こら!見るな!」
美也「2000円もあるー。これなら特大のケーキを買えるね!」
橘「やめろ!そんなデカいの買って来るな!僕の残金が!」
美也「にぃにが一日にお金を使うのって、自動販売機のジュースくらいでしょ?」
橘「何!?」
美也「朝飯、夕飯は家だし、お昼休みは校舎裏で逢ちゃんの手料理を食べているんでしょ?」
橘「!!なぜ、それを!?」
美也「ふふふ…みゃーにはすべてお見通しだよ」
美也「あ、いいこと思いついた。飲み水を学校の水道水にして…」
美也「雑誌とか無駄使いしなければ、お金を使わなくて済むね」
橘「く…」
美也「それに逢ちゃんへの誕生日プレゼントはもう買ってあるから大丈夫だしね」
美也「だから…にぃにはケーキを買えるお金を持っているはずだよ」
橘「僕のセリフをそのまま返したな…くそう」
橘(お宝本を買おうと思ってためた金をよくも…!)
美也「じゃあ、みゃーは学校行って来るのだー。にぃにも遅刻しないでよ」
橘「くそう…。まんまとやられた」


橘「…なーんてことが」
七咲「え?でも美也ちゃん、私の前ではお金を出し合ったって…」
橘「それはだな、足りない120円を払っただけだよ」
橘「後でお金足りなかったって文句言われたよ」
橘「まったく…困った奴だよ」
七咲「そういえば、あのケーキあれからどうなったんですか?」
七咲「3人とも食べ切れなくなって最後残りましたよね?」
橘「ああ、あれなら美也が無理して残り全部食べて、お腹壊したよ」
七咲「え?大丈夫だったんですか?美也ちゃん…」
橘「1時間トイレに籠りっきりだったな。あれが天罰ってやつか」
橘「あの時の美也はかなり調子に乗ってたからな。いい気味だ」
七咲「クスッ、兄弟っていいですね」
橘「よくないよ。特に美也みたいな奴は」
七咲「先輩。いくら恨んでいる相手だからと言って…」
七咲「人の不幸を喜ぶのはいけないことですよ」
橘「え?あ、うん」
七咲「…」
七咲が無言で僕に近づいて来る。
橘「え?」
七咲「そんないけない先輩にも天罰が必要ですね。えい」
橘「うお…」
七咲が…天罰と称して…僕の唇に…キスをしてきた!
七咲「ん!」
橘(七咲!?一体どういうつもりなんだ?)
七咲「んん!!」
橘(七咲が…柔らかい唇を思いっきり押し付けてくる…)
橘(しかも、七咲は両膝立ち、僕はあぐらの姿勢…)
橘(七咲に前から押されて…今にも後ろに倒れそうないきお…)
ドタッ
七咲「んんん!!!」
橘(言ってる傍から後ろに倒れてしまった!)
橘(七咲が上、僕が下っていう感じで寝転がってそのままキスをする…)
七咲「んんんん!!!!」
橘(まずい…息が…苦しい!!七咲、離してくれ!このままだと萌え死にしそうだ!!)
七咲「ん……はぁはぁはぁ…」
橘「はぁはぁはぁ…苦しかった…」
七咲「私もです。ふふっ」
橘「七咲、何でいきなりキスを?しかも今までより長くて強かった」
七咲「だから…これが先輩への天罰ですよ」
橘「天罰?」
七咲「先輩、さっき美也ちゃんのこと悪く言っていましたよね?」
橘「だって、あれは美也が勝手に…」
七咲「それは違うと思いますよ」
橘「え?違うって…何が?」
七咲「私、美也ちゃんの本心がわかりました」
七咲「実は私あの店のケーキ、郁夫の誕生日によく買っていたんです」
七咲「でも、うちは貧乏なのでいつも安いケーキしか買えませんでした」
橘「…」
七咲「そして、美也ちゃんが買って来てくれた高いケーキを食べた時」
七咲「すごくおいしくて感動しました」
橘「…」
七咲「それで…さっきの先輩の話を聞いていて、私思ったんです」
七咲「美也ちゃんは、私がまだ食べたことのない高いケーキを買って」
七咲「私に食べさせようとしていた」
七咲「そしてそれを先輩のカッコイイところにしようとしていたんじゃないかって」
橘「え?つまり…」
七咲「はい。先輩の財布を奪って、全額払ってでもあのケーキを買う必要があったんですよ」
七咲「先輩から私への最高の誕生日プレゼントにするために」
橘「そう…だったのか。あいつ…余計な気を遣って…」
橘「それならそうと、言ってくれればよかったのに。喧嘩せずに済んだのに」
七咲「仕方ないですよ。美也ちゃんも先輩に似て恥ずかしがり屋なので」
七咲「正直に、そのことを言えなかったんだと思います」
橘「そっか」
七咲「だから、そう考えると美也ちゃんが大きいケーキを食べたのは…」
橘「正真正銘、協力した見返りだったんだな」
七咲「はい」
橘「僕、今日美也が旅行から帰って来たらそのことを謝るよ」
七咲「私もそれがいいかと思います」
橘「それにしても僕って最低な兄貴で最低な彼氏だな」
橘「美也の思いやりに気付かず、勝手に美也のことを恨んで…」
橘「果ては七咲に言われるまで気づかないなんてな。はぁ」
七咲「はい、先輩は本当に最低なお兄ちゃんで本当に最低な彼氏ですよ」
橘「うう…傷つくなぁ」
七咲「でも、私はそれでいいと思います」
橘「え?」
七咲「先輩には最低な方がお似合いです。クスッ」
橘「七咲ー」
七咲「だって…そうでないと…さっきの天罰を与えることができませんでした」
橘「え?」
七咲「私はしっかり者の先輩よりも、馬鹿で最低な先輩の方が好きですよ」
橘「逢…」
七咲「先輩…あの時のケーキ、ごちそうさまでした。ありがとうございました」
再びキスをする。
橘(逢…逢…)
七咲(先輩)

こうして真夜中に七咲と誕生日の思い出について語り合った。
アロマキャンドルが成す最高のムードの中で…
僕と七咲は横になったまま、しばらくの間キスをし続けた。
お金は失ったけど…代わりにお金じゃ買えない大切な何かを手に入れた。
美也、すべてはお前のおかげだ。
僕の妹にしてはすごくいい奴だ。
今日旅行から帰って来たら、真っ先にお礼を言って謝ろう。



あれから何時間眠り続けただろうか…
気づいたら朝になっていた。
アロマキャンドルもすでに溶けてなくなっていた。
七咲とほぼ同時に目覚め、お互いの寝ぼけた顔を見て、笑い合った。
今日は美也が2泊3日の旅行から帰って来る日だ。
そして七咲は午後から水泳部の反省会で学校に行くらしく、
起きて早々、七咲を見送った。
結局七咲の親御さんは迎えに来なかった。
帰宅直後に電話してきた七咲によると、
親御さんは仕事が長引いて帰りが夜遅かったらしい。
それに疲れていたからすぐに寝てしまったそうだ。
郁夫もなんとか残り物のおかずを食べたそうだ。
七咲が親御さんに事情を説明し、今回の件は無事何事もなく終わった。
僕の努力(留守電)はいったい何だったんだよ…もう。
僕はまだ頭がボケている。
昨日はいったい何があったんだろう?
あれは夢だったのか?
よくわからない。
さて、朝飯を買いに行かなくちゃな。


七咲との夢のような3日間は終わった。
今年の夏休み一番の思い出となった。
まだ8月上旬だけどね。
七咲からパワーをもらって、受験勉強を乗り越えられそうな気がした!
まさにこれからが本番だ。よし、頑張ろう!

第8話に続く。

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2010-05-28

紗江ちゃん、今までごめんなさい

今回は中多紗江ちゃんに物申す!
まず、最初に……僕は今の今までアンチ中多紗江でした。
その理由は七咲スキルートのポンプ小屋キスを
ナカヨシルートの紗江ちゃんに目撃されるイベントを
見てしまったからです。
初めてアレを見た時は正直イラッときました!
ポンプ小屋キスは僕にとって、その直前に発生する
放課後プールイベントの次くらいに好きなイベントです。
なので、あの大好きなイベントを最後台無しにしちゃった
紗江ちゃんにはちょっと頭に来ちゃいました…………。
それまで紗江ちゃんは僕にとってのベスト3に
ランクインしていたのに一気にランクが落ちてしまいました。


ところで話は変わりますが、
先週の土曜日に、ある一人のアマガミストさんと
直接お逢いして食事と喫茶をしました。
その方は絢辻詞さんのファンでいらっしゃいます。
年齢が僕よりも1世代上のオイさんアマガミストでした。
(以後、オイさんと表記します)
オイさんとアマガミについて語り合いました。
僕が書(描)いている「七咲アフターストーリー」や絵のこと、
僕がオイさんと逢う前にお逢いした別のアマガミストさんのこと、
それからアマガミに関するお互いの思考について話し合いました。
(このオフ会についての詳細はその方のブログをご参照ください)
そのなかで、僕はオイさんに上記のアンチ中多紗江の理由を語りました。

すると、オイさんからその理由は違うんじゃないかと言われました。
なぜなら、紗江ちゃんを自分でナカヨシに上げておいて、
目撃されたからといって一方的に嫌いになるのはおかしい……と。
なるほど。確かにそうだな。言われてみれば悪いのは自分だなと実感しました。

森島先輩曰く「好きだったら思わず覗いちゃうもんじゃないの?」
ですよね。
紗江ちゃんはルートはナカヨシだけど、主人公のことが好きなわけだ。
自分の好きな人が別の女の子、しかもクラスメイトをどこかへ
連れて行くのを目撃してしまった!
何をやっているのか気になって思わず覗きに行ってしまう……。
すると、二人はキスをしているではないか!?
自分の好きな人が別の女の子、しかもクラスメイトとキスをしている。
「先輩は私のこと、本当はどう思っているんだろう……」
そう思って紗江ちゃんは勇気を出して主人公に聞いてみた。

で!そんな紗江ちゃんを僕は嫌いになってしまったわけです!!
おかしな話ですよね?当時の僕はどうしてそのことに気付かなかったのか。
七咲が好きだ!という一方的な思考に偏ってしまっていて、
それ以外の考え方ができなかったんだと思います。
紗江ちゃんは悪くないんだ!悪いのは僕の方だ!
オイさんの意見を聞いてやっとそのことに気が付きました。
1年前の自分の過ちをようやく正すことができました。
(アマガミを全クリしたのは去年の7月始めです)
中多紗江ちゃん、それにファンの方々、本当に申し訳ありません!!
それと、オイさんには大変感謝しております。


でも、紗江ちゃんが好きになれなかった理由はそれだけじゃない気がします。
今さっきツイッターで会話しててそれに気づきました。
たぶんアマガミをやる以前の僕が紗江ちゃんにそっくりだったからだと思います。

僕は昔からずっと人見知りで、人と逢って話すのに苦手意識を持っていました。
大学に入学したての頃、現在の友達にデス・マス調で話しかけて、
「タメでいいよ」って言われたことがありました。
大学の講義が終わったら、友達と話すわけでもなくサークルに参加するわけでもなく、
すぐに帰宅していました。(一部参加していたサークルは活動の少ないものばかり)
テスト前も友達とではなく、独りで勉強していました。
僕はそのくらいの人見知りだったんです、実は。

それが、アマガミと出逢って橘スキルを習得してからは徐々に
人見知りが治っていきました(笑)
今では初対面の人でも気軽に話せるようになっています。
だからオフ会に積極的に参加できています。

最近実況動画で紗江ちゃんスキ・ナカヨシルート配信を何回か見かけました。
それを見ていたら、紗江ちゃんが昔の自分によく似ていて、
なんか自分を見ているみたいで、すごくもどかしくなりました。
僕は人見知りしていた頃の自分が嫌いだったんです!
だから僕に似ている紗江ちゃんがちょっと見苦しく感じられて、
それで好きになれなかったのかなと思います。
でも、紗江ちゃんが頑張って人見知りを克服していく様子を見て、
なんだか僕自身がすごく元気づけられた気がしました。
自分に似た子が一生懸命頑張っていたので、
自分も負けていられないなと思ったわけです。
だから、もうアンチ中多紗江だなんて言えなくなりました。
むしろ、目撃イベントを見る前と同じくらい好きですね。

まあ、そうは言っても僕が一番好きなのは七咲逢です!
これは絶対に変わることはありません。断言します。

というわけで、アンチ中多紗江の理由がなくなったので、
僕はアンチ中多紗江を辞めることにしました。
むしろ紗江ちゃんのことを今まで以上に好きになりたいなと思います。

紗江ちゃん、今までごめんね!そして好きだよ!
以上。

2010-05-25

第6話「先輩、夏休みですね」

5月の模試で成績が上がった僕は、その後も毎日七咲と一緒に勉強し、
6、7月の模試でも成績が上がった。
今ではクラスで10番以内、学年でも30番以内の成績をキープしている。
4月とは大違いだ。本当に絢辻さんや七咲のおかげだ。
1学期の期末テストも良い成績で終え、現在は夏休みの真っ只中だ。


8月中旬
夕方
橘家・居間
七咲「すみません。先輩、遅くなりました」
橘「いいって。部活だったんだろ?しょうがない」
七咲「はい。何せ、明日はインターハイなので」
橘「インターハイ?何それ?」
七咲「え?先輩、インターハイをご存知ないんですか?」
橘「うん。初めて聞いた」
七咲「インターハイっていうのは全国高等学校総合体育大会のことです」
七咲「高校総体って言ったりもします」
七咲「確か、インター・ハイスクール・チャンピオンシップスの略です」
橘「へぇ、詳しいなぁ。つまり、全国大会ってことか」
七咲「はい」
橘「そうかぁ。それは楽しみだ」
七咲「何が楽しみなんです?」
橘「だって、全国大会だろ?楽しみに決まってるよ」
七咲「え……」
橘「しかもその前の大会は模試とか色々あって行けなかったし」
橘「というか、いつ行われたのかすらわからなかった」
七咲「……」
橘「全国大会ってことはその前に県大会とかあったんだろ?」
七咲「はい。ありましたね」
橘「どうやったら全国大会に行けるの?」
七咲「はい。まずは、県予選で県大会の標準記録を突破し……」
七咲「次に、県大会で地区大会の標準記録を突破し……」
七咲「最後に地区大会でインターハイの標準記録を突破する必要があります」
橘「ああ。わかった。次に出る大会の目安となるタイムがあって……」
橘「そのタイムをクリアすると次に進めるわけか」
七咲「そういうことです」
橘「へぇ。大変だな」
橘「でも、七咲はそれらをクリアして来たんだろ?すごいなぁ」
七咲「いえ、それほどでも」
橘「あれ?」
七咲「はい?どうかしました?」
橘「確か七咲は去年のクリスマス前に大会選考に落ちたとか言ってなかった?」
橘「それってインターハイに関係のある大会だったの?」
七咲「ああ、えっと。インターハイには関係ありませんね」
七咲「シーズンオフに行われるちょっとした大会でした」
七咲「でも、出られなくてすごく悔しかったです」
橘「ああ、あの時は色々あったもんな。しょうがないって!」
七咲「……はい」
橘「じゃあ、インターハイまでの一連の大会は毎年春から行われるのか」
七咲「ええ」
橘「そっかぁ。僕、必ず応援に行くよ!!」
七咲「……」
ややうつむき、急に黙り込む七咲。
橘「場所はどこなの?輝日東?」
七咲「…」
橘「ん?七咲?どうした??」
七咲「あの…明日は私一人で行きます」
橘「え?どうして?僕応援に行くのに」
七咲「この夏休みは、先輩の受験にとって大切な休みですよね」
七咲「この夏休みでどれだけ頑張ったかで勝敗が別れてしまいます」
七咲「だから、先輩には勉強に集中してもらいたいんです」
橘「七咲…」
七咲「私は、先輩の邪魔をしたくないんです」
橘「邪魔なんて…とんでもない!」
橘「明日の大会は七咲にとって大事な大会じゃないのか?」
橘「だから、僕は応援しに行きたい。場所を…」
七咲「教えませんよっ!」
橘「う…」
七咲「それに、橘先輩がいたところで結果は変わりませんから!クスッ」
橘「さりげなくきつい一言だな。そんなことないのに」
七咲「じゃあ、私は麦茶を作りますので、先輩は勉強を始めていてください」
橘「う…うん」

七咲が勢い良く立ち上がって台所に向かう。
しかし、その横顔はなんだか少し寂しそうだ。
本当は応援に来てほしいのかもしれないな。
でも、勉強しろって言われたんだ。
明日は大人しく勉強するかな。

橘「この問題は…うーん…こう…かな。よし、解けた!」
七咲「先輩、麦茶できましたよ」
橘「ああ、サンキュー」
七咲「それ…確率の問題ですか?」
橘「うん。そうだよ」
七咲「あー…私…いまいちよくわからないんです、確率って」
橘「じゃあ、教えてあげるよ」
七咲「本当ですか!?お願いします」
橘「まず、このPっていうのはね………」
七咲「………」

約30分間、七咲に数学ⅠAの確率の講義をする。

橘「というわけなんだ。意外と簡単だろ?」
七咲「なるほど。そう言われてみれば確かに」
七咲「先輩、ありがとうございます」
橘「どういたしまして」
グーー。
橘「あ…」
七咲「ふふ。先輩、何もお腹を鳴らしてまで返事をしなくても…」
橘「ち、違うって。これはだな…」
七咲「わかってます。今ご飯の支度をしますから」
橘「うう…七咲は相変わらず意地悪だ…」
七咲「クスッ」

ちなみに、美也は両親と一緒に今日から2泊3日の旅行に行っている。
おかげで七咲と二人っきりでいられる。
と言っても七咲は日中は部活なので、
一緒にいられるのは夕方から夜にかけてだ。
しかし残念だな。
明日はインターハイだから七咲は来られないらしい。
明後日も疲れていて勉強どころじゃないだろう。
実質、この3日間で一緒に家にいられるのは今日だけだろうな。
ああ、明日は応援に行きたいなぁ…。
行きたい、行きたい、行きたい!勉強さえなければ行けるのに!!
くそう…。

七咲「先輩、手が止まっていますよ」
橘「え?ああ、ごめん…」
七咲「また考えごとですか?勉強に集中してください!」
橘「ごめん…」
橘(はぁ…七咲に叱られちゃった…)
橘「あれ?この独特なにおいは………うなぎか??」
七咲「ええ。今日はうなぎの特売日でしたので」
七咲「それに、先輩も私もスタミナを付けなきゃいけないので、今晩はうなぎです」
橘「やったあ!よし、勉強を頑張るか」
七咲「はい、そうしてください」
七咲「もうちょっとでできるので待っていてください」
橘「うん。楽しみだよ」

それから10分ほど経過する。

橘「よし、これで終わりだ」
七咲「お疲れ様です。ご飯ができたので、テーブルを片付けてください」
橘「うん。僕も手伝うよ」

食卓にはご飯、うなぎ、味噌汁の他にトマトサラダやメロンも並ぶ。

橘「メロン!?」
七咲「はい。メロンも安かったので買いました。先輩が喜ぶかと思って」
橘「ありがとう!最近暑かったし、メロンでも食べたいなって思ってたんだ」
橘「その思いが七咲に以心伝心したのかな」
七咲「きっとそうですね。だって、先輩と私は似たもの同士ですし」
橘「そういえばそうだったな。いただきます」
七咲「いただきます」
橘「うまい!このうなぎ、今まで食べたなかで一番うまいかも」
七咲「そうですか?それならよかったです」
橘「きっと七咲が愛情を込めて選んでくれたからなんだろうな」
七咲「え…?い、いえ、そんなこと……ないですよ」
橘「え?愛情込めてないの?」
七咲「あ、いえ、愛情………込…め…ま…」
橘「え?よく聞こえないよ」
七咲「もう!先輩、意地悪です…」
橘「ははは…ごめん、ごめん」
橘(照れる七咲もかわいいんだよな)
橘(これだから七咲に対する意地悪はやめられない…ははは)
橘「ところで、明日の大会は大丈夫そう?」
七咲「はい。タイムも安定しているので問題ありません」
橘「そっか。それならよかった」
七咲「心配してくださってありがとうございます」
橘「ううん。いいんだ。僕はここで勉強しながら応援してるから」
七咲「はい、そうしていただけるとありがたいです」
橘(でも、本当は行きたいんだけどな)
橘「あ、ちなみにさ……去年はインターハイどうだったの?」
七咲「去年ですか?去年は地区大会止まりでした」
七咲「塚原先輩と3年生だけがインターハイに行きました」
橘「そうか。それは残念だ。じゃあ、今年こそは頑張らなくちゃな」
七咲「はい!」
橘(塚原先輩、さすがだなぁ)
七咲「あ、先輩。うなぎだけではなく、トマトサラダもちゃんと食べてくださいね」
橘「う…わ、わかったよ。しかたないなぁ」
七咲「しかたない?私がせっかく愛情込めて作ったトマトサラダを、しかたないって…」
七咲「ぐすっ。ぐすっ」
橘「わーい、トマトサラダはおいしいなぁ!!!」
パクパクムシャムシャ…
七咲「ならよかったです!クスッ」
橘(くそぅ、七咲のやつ、嘘泣きまでするなんて…反則だぁ。結局僕の負けか)

夕食が終わり、七咲は食器を片付けた。
もう時刻はすでに20時を回っていた。
夏と言えど、さすがにこの時間はもう真っ暗だ。

玄関
七咲「それじゃ、先輩。私はもう帰りますね」
橘「明日はインターハイだからな。帰ってゆっくり休むんだぞ」
七咲「はい」
橘「それと…明日は頑張れよ。応援してるから」
七咲「はい、ありがとうございます」
七咲「それじゃ、失礼しますね」
橘「暗いから気をつけて帰るんだぞ」
七咲「わかりました。失礼します」

こうしてインターハイの前日を七咲と楽しく過ごした。
それにしても、明日は本当に応援に行かなくても大丈夫なんだろうか。
本人の希望だから行かないことにするけど…
でも、あの少し寂しそうな表情を見ていると…
なんだか不安になってくる。



翌日(インターハイ当日)
輝日南第一競技場
部長「いい?みんな今日は100%実力を出し切って頑張るのよ」
部員「はい!!」
七咲「…」
部長「七咲」
七咲「はい」
部長「今大会はあなたにかかっているのよ」
七咲「…」
部長「悔しいけど、塚原先輩なき今、うちの学校で最有力候補は七咲なんだから」
七咲「…はい」
部長「そんなに緊張しないで!もっとリラックスして」
七咲「はい!」
部長「みんなもリラックスして頑張りなさい」
部員「はい!」

一方その頃
橘家・居間
風鈴の美しい音色が部屋中に響く。
今日は一人ぼっちだからなおさら響く。
橘「七咲は今頃大会か。僕も行けばよかったな」
橘「でも、行ったら七咲に怒られるんだろうな」

妄想
七咲「先輩、勉強をほっぽらかして何しに来たんですか?」
橘「何って…その…」
七咲「女の子の水着目当てですか?」
橘「ああ、それも悪くは…って違うって!」
七咲「変態。もう…帰ってください」
橘「そ、そんな…僕は変態じゃないのに」
七咲「先輩がいなくても私は勝てますから。お帰りください」
橘「ま…待ってよ、七咲…」
七咲「近寄らないでください、変態」

橘「うわああああああああ!!こんなの嫌だああああああああ!!」
橘「ハッ!何をしてるんだ、僕は。勉強に集中しないと」
橘「集中、集中、集中っと」

その時、突然電話が鳴り出した!

橘「こんな時に誰だよ!?せっかく勉強に集中しようとしたのに」
橘「はいはい。もしもし?」
梅原「もしもしじゃねぇよ…」
橘「ああ、梅原か。何の用だ?」
梅原「お前…なんで電話に出てんだ?」
橘「は?何でって…僕しか出る人間いないし」
梅原「んなこた知ってる。それより、どうしてお前が家にいるか聞きたいんだ」
橘「どうしてって言われてもな…」
梅原「お前…今日何の日か知ってるか?」
橘「え?今日は………ああ、インターハイの日だな」
梅原「なんだ、知ってるんじゃねぇか。だったらどうしてお前が家にいるんだ?」
梅原「彼女の応援をしに行ってやらないのか?」
橘「ああ、それはいいんだ。だって行かずに勉強をするのが七咲との約束だしな」
梅原「あきれたよ。お前、本当にそれでいいと思っているのか?」
橘「だって、僕は行きたいって言ったのに七咲が止めたんだから」
橘「しかたなかったんだよ」
梅原「それ…あいつの本望だと思っているのか?」
橘「え?」
梅原「あいつの性格を考えてみろよ」
梅原「自分のことで他人に迷惑をかけたくない…」
梅原「自分の問題は自分だけで抱え込もうとするタイプだな」
梅原「だからいつも無理をして空回りする。違うか?」
橘「そう…だな」

梅原の言ったことに間違いは何一つなかった。
今までの七咲を思い出すと、いくつか思い当たる節がある。
去年のクリスマス前…まだ僕と七咲が恋人同士になる前…
七咲は僕に好意を寄せるあまり、部活に集中できなくなった。
しかもその異変に気づいた塚原先輩にさえ、悩みを打ち明けられなかった。
面倒見のいい塚原先輩に迷惑をかけられなかったんだろう。
増してや僕に相談するのは恥ずかしくてできやしない。
僕に対する好意は次第に膨張していき、七咲にオーバートレーニングをさせ、
彼女の心と身体はますます疲れはてていった…
あの時の七咲は正直見苦しかった。すごくかわいそうだった。
もうあんな想いは二度とさせたくない!!
もう…あんな七咲は二度と見たくないんだ!!
そう思った瞬間、独りでに身体が動き出した。

橘「ありがとう、梅原。おかげで目が覚めたよ」
梅原「いいってことよ。頑張れよ」
橘「ああ」
橘「…ところで梅原。お前、何で僕が家にいるってわかったんだ?」
梅原「ああ、そのことか」
梅原「実はな、俺親父に頼まれて買い物に出掛けていたんだ」
梅原「そしたら偶然駅前のバス停にいた七咲を見かけたんだよ」
橘「七咲を?」
梅原「ああ。あいつ、なんだかすごく真剣そうな顔をしててな」
橘「そりゃ勝負前なんだから当たり前だろ?」
梅原「いや、あれは…自信なさそうっていう感じの顔に見えた」
橘「不安…なのか」
梅原「ああ。だからひょっとしたらって思ってお前んちに電話をかけたってわけよ」
梅原「さっきまでは親父の手伝いで忙しくて今やっと暇になったからな」
梅原「間に合ってよかったぜ」
橘「梅原…ありがとな。僕、行って来る!」
梅原「ああ、行って来い!後悔だけはすんなよ!」

僕は電話を切り、直ちに支度を済ませ、七咲の元へ向かう。
梅原によると、場所は輝日南第一競技場…ここからバスで30分の距離にある。
七咲の出る女子100m自由形、女子400mリレーは13時からだそうだ。
まだ12時過ぎなのでなんとかギリギリ間に合うはずだ。
どうか、間に合ってほしい!
着水してからではこちらの応援が届かない!

それにしても、今日はとても暑い!!
天気予報によると今日は真夏日なんだそうだ。
この炎天下のなかを僕は懸命に走る!
ちょっと走っただけでも滝のような汗が出る暑さ…
だけど…それでも…僕は走る!!
この想いを七咲に早く届けたくてひた走る!!

橘「はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ。喉渇いたぁ…」
橘「もっと…熱く…なれよ…!!はぁ、はぁ」

なんとかバスに飛び乗り、輝日南第一競技場へと向かう。



12時55分
輝日南第一競技場
アナウンス「それでは、まもなく女子100m自由形の予選を行います」
アナウンス「選手のみなさんは速やかに位置についてください」
橘(はぁ、はぁ。ギリギリ、間に合ったか。七咲は…どこだ!?)
七咲「………」
橘(いた!1コースだ!!)
七咲「………」
橘(ん?様子が変だ…まさか、緊張しているのか?)
七咲「………」
橘(表情が固い…それにわずかに手足が震えている)
橘(あんなに緊張していたら実力を発揮できるわけがない!)
橘(昨日は問題ないって言ってたのにな。あれはやっぱり強がりだったのか!)
橘(そうとわかれば、僕がとるべき行動はただ一つ!)

13時
アナウンス「それではこれより、女子100m自由形の予選を始めます」
観客「りょーちゃん頑張れー!!かなちゃん頑張れー!!」
観客「輝日南高校ガンバーーーーーー!!」
橘(この声援に……この僕が……負けるもんかあああああああああああああ!!)
橘(炎天下を爆走して喉がカラカラだけど…そんなの関係ない!)
橘「すぅ・・・・・・・・・・・・」

ななさきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
がんばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!


観客「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
アナウンス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
七咲「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?ええっ??」
部長「……」
部員「あーあ」

僕は魂の叫びってやつを思いっきり七咲にぶつけてみた。
観客や七咲を始めとした会場の全員がドン引きしたみたいだ…
ちょっと、まずかったのかな…?

七咲「もう、先輩、恥ずかしいですよ…。だから来てほしくなかったのに。クスッ」
橘(七咲が…笑っている…これは成功だったのか…??)
アナウンス「ごっほん!!では、みなさん、位置についてください」
アナウンス「よーい!」
七咲「!!」
橘(七咲の目、燃えている!!これならいけるかもしれない!!)
アナウンス「どん!!」

そのレースは驚くべき展開だった。
25mのターンからクロールの七咲が独走した。
そのまま抜かれることなく、無事100mを泳ぎ切った。
タイムは…なんと、大会新記録をマーク。
100%なんて生易しいものじゃない。
七咲は120%の実力を出し切ってレースをぶっちぎった!!

橘「やったああああああああああああああああああああ!!」

部長「ふっ、あの塚原先輩に一目置かれていただけあるわね」
部長「七咲も…彼も」

女子100m自由形決勝には輝日東高校からは部長、七咲と2名の3年生の部員が残り、
結果は七咲が大会新記録で優勝、部長は惜しくも4位、部員は入賞できなかった。

続く、女子400mリレーは七咲の活躍もあり、準優勝だった。
ちなみに去年の大会では3位だったらしい。

輝日東高校は今年もインターハイで大金星を挙げた!
ちなみに去年は自由形で塚原先輩が優勝し、3年生の部員1人が5位入賞したらしい。
リレーは4位入賞だったらしい。


16時半(大会終了)
帰りのバス
橘「七咲、優勝と準優勝おめでとう!!」
七咲「ありがとう…ございます」
橘「やっぱり来てよかったよ」
七咲「私は…そうは思いませんでした」
橘「え?」
七咲「勉強してくださいってあれほど言ったのに」
七咲「それに、先輩が来ると私が恥ずかしいんです」
七咲「あんな大声を出すなんて…先輩の頭はおかしいですよ!」
橘「…ごめん。でも、七咲のことを考えていたら勉強に集中できなくなって」
橘「僕はただ…そばで応援したかったんだ」
七咲「…」
橘「でも、ほら。僕ってバカだからさ、あんな方法しか思いつかなくて」
橘「周りにすごくドン引きされてたよな…ははは」
七咲「先輩…」
橘「それに…もう二度と七咲の苦しむ姿を見たくなかったんだ」
七咲「え?」
橘「去年のクリスマス前、七咲は独りで抱え込んで…」
橘「心と身体がぼろぼろになっていた…」
橘「今日もそうだった。本当は僕に来て欲しかったはずなんだ」
橘「だけど、僕に迷惑をかけまいとして、つい本音を言えなかった…」
橘「本番前の七咲はきっとそのことを後悔していたんだ」
橘「緊張のあまり、表情が固くて、手足がわずかに震えていた」
橘「そんな状態では実力を出し切れるわけがない!」
橘「だから!僕は…そんな七咲を見かねた僕は…」
橘「無性に応援したくなったんだよ!!」
七咲「先輩…!」
喜びのあまり、今にも泣き出しそうな七咲。
橘「カッコ悪くてもいい!!恥をかいてもいい!!」
橘「この思いが七咲に伝わるなら方法は何だってよかったんだ」
橘「七咲を元気づけてあげられるなら…それだけでよかった」
七咲「先輩!私、嬉しいです!!」
七咲の目からは隠しきれなくなった涙が滲み出ている…
橘「逢…。僕もだよ」
抱き合う二人…すると…
乗客「………」
橘(うお…乗客がこっちを睨んでいるよ!!まずい!!)
橘「七咲、離れろ」
七咲「………」
橘「ちょ!みんな見てるから離れてくれよ、七咲」
七咲「………」
橘「七咲ってば!…ん?この感触…寝てるのか?」
七咲「………」
橘「そっか。バテちゃったんだな。しかたないか」
橘(いや、待てよ!七咲、熟睡してる!このまま起きなかったらどうしよう?)
橘(まあ、輝日東に着く頃には起きるだろ。そのまま寝させてあげよう)


17時
輝日東駅前
七咲「………」
橘(ついに…起きなかった。僕はいったい、どうすればいいんだ!?)


インターハイで120%の実力を出し切ってバテた七咲…
大会が無事に終わって安心したのか、僕の左肩に寄り添って熟睡している…
しかも、バスは終点の輝日東駅に到着してしまった。
僕は…僕は…いったいどうすればいいんだ!?
眠ったままのこの少女を…いったいどうしろと……
これはチャンスなのか!?それとも僕に課せられた試練なのか!?

第7話に続く。

2010-05-23

第5話「先輩、よく頑張りました」

翌日・放課後
橘家・玄関
ピンポーン
美也「はーい。…あ、ウメちゃん!」
梅原「おぅ、美也ちゃんか。あと、ウメちゃんはやめろよな…」
美也「お見舞いに来てくれたんだね」
梅原「まぁ、そんなとこだ。ほれ、これ、絢辻さんのノートだ」
美也「絢辻先輩って…あの頭が良くて美人な人だよね?」
梅原「そうそう。美也ちゃんわかってんじゃねぇか!」
梅原「橘のために頼んでやったぜ」

回想
梅原「なぁ、絢辻さん、ちょっといいか?」
絢辻「うん。どうしたの?梅原くん」
梅原「お願いがあるんだ。休んでる橘のために絢辻さんのノートをコピーさせてほしいんだ」
絢辻「コピー?いいわよ」
梅原「んじゃ、ちょっとノート借りてくぜ。ありがとうよ!」
絢辻「うん」

梅原「てなわけだよ」
美也「ウメちゃんナイスー!」
梅原「あいつのためならこのくらい訳ないって!」
梅原「だって、俺とあいつは…友情を越えた仲だもんな!」
美也「…なんか」
梅原「どうした?うらやましいか、美也ちゃん?」
美也「すっごく気持ち悪い!!」
梅原「うう…」
グサリ!
梅原「美也ちゃんには…ボーイズラブは…まだ難しいか…」
美也「とにかく…ありがとね、ウメちゃん。じゃね!にししし」
バタン!
梅原「う…玉…砕」

橘家
美也「にぃにー起きてるー?ウメちゃんが絢辻先輩のノート届けてくれたよー」
橘「おお、サンキュー」
美也「風邪、大丈夫なの?」
橘「ああ、なんとかな。熱は下がったみたいだ。それより…七咲は?」
美也「今日は部活で忙しいって」
橘「そっか。そう毎日は来てくれないよな」
美也「逢ちゃん安心したから今日は来ないって」
橘「そうだよな。…じゃ、僕は勉強して来る」

一方、その頃
輝日東高校・プール
七咲「…」
七咲は笑顔で元気よく泳いでいる。
部長「今日はどうした、七咲。いつもより元気そうじゃないか。それにタイムもいい」
七咲「え?そうですか?」
部員A「なんか…昨日いいことあったみたいね、七咲さん」
七咲「え?」
部員B「そういえば昨日部活終わった後、風邪引いた彼氏の看病に行ったそうじゃない」
部員C「彼氏、元気だったんだーよかったね」
七咲「え?え?あ、あの、私、もう1往復泳いで来ます!」
ザッブーーーン。
部員たち「あらあら、照れちゃって。ははは…」
部長「こらこら、あなたたち、彼女を寄ってたかってイジメないの!」
部員たち「すみません」
部長「まったく」

今日みたいな日があと2、3日続いた、その翌日…
僕の風邪はすっかり良くなって、僕は久々に登校した。


通学路
橘「七咲ぃ!」
七咲「あ、橘先輩。おはようございます」
橘「おはよう」
七咲「風邪、すっかり治ったみたいですね」
橘「うん。みんなのおかげでね」
七咲「それはよかったです。あ、今日も、休み時間に…」
橘「うん、勉強しよっか」
七咲「はい!」

3年A組教室
橘「梅原ぁ、おはよう!」
梅原「いよっす、大将!元気になってくれて何よりだぜ」
橘「梅原もありがとうな」
梅原「いいってことよ。俺とお前の仲じゃないか」
梅原「それより、絢辻さんにお礼を言って来いよ」
橘「ああ、もちろんだ」

橘「絢辻さーん」
絢辻「あら、橘くん。風邪治ったみたいね。よかった」
橘「うん。おかげ様で。絢辻さん、ノート、ありがとね」
絢辻「ううん、別にいいわ。お役に立てれば何よりだもの」
橘「絢辻さんのおかげで助かったよ。本当に感謝してる」
絢辻「お礼なんていいわ。当然なことをしたまでだもの」
橘「…そっか。とにかくありがとね。…あ、そうだ!絢辻さん…」
絢辻「うん?」
橘「今日の休み時間も図書館で勉強教わっていいかな?」
橘「迷惑ついでで難だけど…」
絢辻「いいわよ。別に迷惑でもないし。むしろ光栄だわ」
橘「ありがとう!じゃあ、お願いします」
絢辻「ええ。わかったわ」


ホームルーム
3年A組教室
高橋「…それから、来月にまた模擬試験を実施するわ」
教室中がざわめく。
梅原「マジかよーうんざりだなぁ」
橘(またやるのか!?今度こそ上位にいきたい…)
高橋「静かに。各自勉強をしておくように。以上」

ホームルーム直後
梅原「どうする、どうする、大将!」
橘「どうするって言われてもな…」
橘「梅原は受験しないから関係ないんじゃないのか?」
梅原「そうだけどよ…なんか…恥ずかしいじゃないか」
梅原「俺はいっつも下の方だからなぁ…」
橘「じゃあ、勉強すればいい」
梅原「おいおい、ずいぶんと簡単に言ってくれるじゃねぇか!」
梅原「俺はお前みたいに精神面でサポートしてくれる彼女と…」
梅原「学力面でサポートしてくれる友達がいるわけじゃない」
橘「勉強なら絢辻さんに教わればいい」
橘「彼女なら…努力しろ!」
梅原「あああ!またそんなこと言う…」
梅原「俺たちは友情を越えた仲だろ?な?」
橘「さて、次の授業は…」
梅原「おい…大将…俺を見捨てないでくれーーーーーーーー」


こうして、またいつも通りの1日がやってきた。


お昼休み
校舎裏
橘「そういえば最近、晴れの日が続いているよな」
七咲「ええ、確か今朝の天気予報でも晴れるって言ってましたよね?」
橘「うん。なんだか春らしい天気だよ」
七咲「こんな日は勉強しやすいですよね、先輩」
橘「う…うん。でも、来月の模試、不安だなぁ」
七咲「大丈夫ですよ。先輩、自信を持ってください」
七咲「今朝も絢辻先輩に教わっていたじゃないですか」
橘「うん、おかげで大分勉強がはかどったよ」
七咲「それに、先輩の頑張る姿は私もしっかり見届けています」
橘「七咲……。あ、そうだ。今日は一緒に帰れる?」
七咲「今日ですか?あ…残念ながら部活があります」
橘「そっか…。残念だな」
橘「せっかくいい天気だから一緒に二期桜を見に行こうと思っていたのにな」
七咲「仕方がありませんよ、部活なので」
橘「じゃあ、また今度行こうか」
七咲「はい」

しかし、夕方から次第に天気は崩れ、雨が降り始めた。

放課後
下駄箱
橘(どうしよう。今朝、傘持って来てないしな)
橘(梅原は先に帰っちゃったし。どっかに傘はないかな?)
橘(ん?あの傘…僕のと同じ柄だな。無地で藍色の傘…)
橘(まさか僕のなんてことは…ははは、さすがにないか)
でも、一応傘を調べてみると、柄の部分によく見慣れたシールがある。
橘(このダックスフントのダックンのシール…)
橘(前に美也がいたずらしてくっつけたやつだ!)
橘(てことは…これは僕の傘か?どうしてここに…?)
………
橘(は!思い出したぞ!)
そう、この傘は3日前、僕が置き忘れて帰った傘だ。
その日は午前中だけ雨が降っていたんだ。
それから今日の夕方までずっと晴れだった。
橘(やったぞ!これで帰れる!さすが、僕だ!よし、帰ろうっと)

傘を広げて雨の中へいざ出陣。

桜坂
橘(それにしても天気予報って外れることもあるんだな)

回想
七咲「ええ、確か今朝の天気予報でも晴れるって言ってましたよね?」

橘(あ……そういえば七咲はどうするんだろ?)
橘(僕は偶然傘を置き忘れてたからよかったけど、七咲は………)
橘(いや、あいつはしっかり者だから傘くらい持ってるだろ)
橘(心配しなくたって大丈夫。ははは…)
………
橘(でも…万が一ってこともあるぞ。河童の川流れっていうことわざがあるくらいだし…)
橘(七咲だって川流れすることもあるだろ)
橘(それにもし傘を持っていたとしても、一緒に帰れてむしろいいことじゃないか!)
橘(待ってる間、図書館で勉強しよう!よし!)

僕は下りかけた桜坂を途中で引き返し、学校へと戻った。


部活が終わった頃
校舎裏
橘(そろそろ七咲が出てくる頃だな)
七咲「ありがとうございました!」
橘(あ、部活が終わったんだな。よし)
橘「おーい、七咲!」
七咲「あ…橘先輩。どうしてここに?先に帰ったはずじゃ…」
橘「そのつもりだったんだけどさ…この雨じゃな…」
七咲「あ…もしかして先輩も傘を忘れたんですか?」
橘「僕…も?てことは……」
七咲「はい、私もです。まさか雨になるとは思いませんでした」
橘「当たった…」
七咲「はい??」
橘「七咲の…川流れ…か」
七咲「あの…先輩?さっきから何を…?」
橘「あ、いや、何でもないんだ!ははは…」
七咲「ん…?」
橘「実はさっき偶然、学校に傘を置き忘れていたことを思い出したんだ」
橘「ほら、3日前、午前中だけ雨が降っていただろ?」
七咲「ええ、そうでしたね。私はあの日、ちゃんと傘を持って帰りました」
橘「でも、僕は置き忘れたまま帰った。で、さっきそれを思い出したんだ」
橘「傘を置き忘れたおかげで帰れるって思ったとき、ふと七咲のことを思い出したんだ」
七咲「私の…?」
橘「うん。もしかしたら傘を持っていないんじゃないかって思って」
七咲「それで…わざわざ引き返して待っていてくださったんですか?」
橘「そう。図書館で勉強しながら待っていたんだ」
七咲「…先輩。ありがとうございます」
七咲は少し照れて、今にも泣き出しそうな表情をしている。
橘「いや、礼はいいって。それに七咲に風邪を引かせるわけにはいかないって」
橘「風邪を引くのは僕だけで十分だよ」
七咲「…え、ええっと、じゃあ…お言葉に甘えて。一緒に帰りましょうか」
橘「うん」

桜坂
こうして七咲と初めての相合傘で帰ることとなった。
橘「…」
七咲「…」
橘(勧めてみたはものの、初めての相合傘だからな。緊張するなぁ)
七咲「…」
橘(う…こういう時、何しゃべったらいいかわからないよ)
橘(しかし、こうやって近づいてみると七咲って結構いい匂いがするんだよな…)
くんかくんか…
橘(うーん、相合傘、最高!)
七咲「あの…先輩?さっきから何してるんです?」
橘「え?な…何って…言われてもな」
七咲「私に言えないようなことですか?」
橘「え…いや、別にははは…」
七咲「…」
橘(うう…七咲の視線が痛いぞ…)
橘(確かに…言えないよな。言ったら変態扱いされるし)
橘「今日は…雨降って、むしろよかったよな」
七咲「よかった?何がです?」
橘「雨降って、しかも七咲が傘を忘れたから、こうして相合傘をさすことができる」
橘「雨のおかげで僕らはこんなに近くにいることができるんだ」
七咲「そう言われてみれば」
橘「これがもし、天気予報通り晴れだったら、二人は別々に帰っていた」
橘「そう考えると雨でよかったなってな」
七咲「先輩…。私も嬉しいです。先輩がこんなに近くに」
橘「七咲…」
七咲「先輩…」

二人ともいい雰囲気のまま桜坂を下り、住宅街へとさしかかった時だった。

七咲「あ…雨…止んだみたいですね」
橘「あ、本当だ。じゃあ、傘を閉じるか」
傘を閉じようとしたその時だった。
七咲「あ!先輩、上を見てください!」
橘「上?…あ!虹だ!!」
七咲「きれいですね」
橘「うん」
二人の頭上には大きくてきれいな虹がかかっていた。
橘「まるで…大きな相合傘みたいだな。しかもカラフルな」
七咲「…」
橘「ん?七咲?どうした?」
七咲「…あ、すみません。つい見入ってしまいました」
橘「かわいいなぁ」
七咲「え??」
橘「虹を見入っている七咲は、すごく女の子っぽくてかわいいなぁって…」
七咲「え、ええっ…もう、先輩。まるで私が女の子じゃないみたいな言い方をして…」
七咲は赤面し、すごく照れくさそうにしている…もっとかわいく見える。
橘「ごめんごめん」
七咲「…でも、嬉しかったです。ありがとうございます」
橘「え?」
七咲「じゃあ、私はここをまっすぐ行くので、ここでお別れですね」
橘「ああ。気をつけて帰るんだぞ。また明日な」
七咲「はい、また明日。それでは先輩、失礼します」

こうして、七咲と充実した時間を過ごした。すべてこの雨のおかげだ。
雨の日も悪くないな、そう思えるひと時であった。


それから一ヶ月後、ゴールデンウィーク明けの模試で…
僕はなんと、クラスで10番、学年で40番という成績だった。

休み時間
3年生廊下
梅原「おい、橘。おまえすげぇじゃねぇか!!」
橘「ああ、よかったよ」
梅原「お前が羨ましいぜ」
橘「梅原も頑張れよ」
梅原「くぅ、またそんなこと言う…。まるで俺が負け犬みたいじゃないか!」
高橋「梅原くんも頑張りなさい」
橘「あ、高橋先生!」
梅原「うお…高橋先生!」
高橋「橘くん、よく頑張ったわね。あなた、すごいと思うわ」
橘「い、いえ、僕なんか…」
橘(やったぞ!高橋先生に…誉められた!!うう…なんだか照れる)
高橋「次もこの調子で頑張りなさい。私も応援してるから」
橘(高橋先生が…僕を…応援してる…なんてこった!!すごく名誉じゃないか!!)
梅原「橘はいいよな、高橋先生に応援してもらえて…」
高橋「だったらあなたも頑張ることね、梅原くん」
梅原「は、はい…」
??「そうですよ、梅原先輩」
梅原「その通りで…え?」
橘「七咲」
高橋「あら、七咲さん。こんにちは」
七咲「高橋先生、こんにちは」
七咲「橘先輩、おめでとうございます」
橘「あ、ありがとう」
高橋「七咲さん、私からもお礼を言うわ」
高橋「彼をサポートしてくれてありがとう」
七咲「いえ、私は何も…」
照れる七咲。
橘「彼って?」
高橋「さて、そろそろ授業が始まるわね」
高橋「それじゃ、あなたたちも遅れないようにね」
梅原「はーい。はぁ」
七咲「はいっ」
橘「なぁ、七咲、彼って誰のこと?」
七咲「教えませんよ。クスッ」
橘「気になるなぁ。ま、いっか」

こうして休み時間に僕はみんなから祝福を受けた。
ここまで成績がよくなったのも七咲のおかげだ。
平日や土曜日の休み時間はもちろん、日曜日やゴールデンウィーク中も
部活が終わり次第、僕の勉強に付き合ってくれた。
本当に感謝しなくちゃいけないな。
あ、七咲だけじゃなく、勉強を教えてくれた絢辻さんにも感謝しなくちゃな。
…それにしても、高橋先生は七咲と何を話したんだろ?
やっぱり気になるなぁ。

あと2ヶ月で夏休みだ。もっともっと勉強していかなくちゃな。

第6話に続く。

2010-05-18

コーヒー恋愛論(アマガミver.)

コーヒーを恋愛に例えてみた。
アマガミの各ルート・エピローグをコーヒーの味別に分類してみた。


まず、女の子と出逢うことを前提とする。
そこから何もしなければ女の子との関係はそのまま、
つまりコーヒーで例えるならば、何も手を加えないブラックのままとなる。
これがアマガミで言うソエンルートである。


そこにミルクを加え、コーヒー牛乳に変化させたのが
全員のナカヨシ及び中多のスキルートであると考えられる。
なぜ中多のスキルートかというと、
このルートは言わば「お試しカップル」であり、
主人公は中多のことを恋愛対象として意識していなかったからである。
試しにミルクを少量加えて飲んでみるという程度だと考えられる。


コーヒー牛乳に砂糖を加えてカフェオレに変化させたのが
中多以外のスキルートと美也ルートであると考えられる。
ミルクを加えてやや甘くした上に、もっと甘くしたいという意志から
砂糖を加える。これはスキルートに相当すると考えられる。

そしてここからが分岐となる。

③-a1
カフェオレに少量のミルクと砂糖を加えて甘いカフェオレに変化させたのが
全員のスキGOOD及び桜井・棚町のスキBAD及び隠しキャラのGOODであると考えられる。

③-a2
カフェオレにやや多量のミルクと砂糖を加えてあまーいカフェオレに変化させたのが
全員のスキBESTであると考えられる。

③-b1
また逆にカフェオレに少量のブラックを加えて少し苦いカフェオレに変化させたのが
七咲スキBADであると考えられる。

③-b2
カフェオレに多量のブラックを加えてかなりにがーいカフェオレに変化させたのが
絢辻・中多・森島スキBAD及び全員のテキタイ及び隠しキャラのBADであると考えられる。
せっかく甘くなったのに主人公の失態のせいで逆に苦い関係に変えてしまう。

桜井・棚町・七咲のスキBADはいずれも明るいエピローグとなるが、
桜井・棚町が満面の笑みで主人公の過ちを許したのに対し、
七咲は悩みに悩んだ末に仕方なく主人公の過ちを許したという感じなので、
満面の笑みとはいかず、どこか悲しい表情をしている。
故に、桜井・棚町と七咲のスキBADは決して同じではないと考えられる。


文章だけでは分かりづらいと思うので以下にまとめてみた。


ブラック
=ソエン


コーヒー牛乳(ブラック+ミルク)
=全員ナカヨシ 中多スキ


カフェオレ(ブラック+ミルク+砂糖)
=絢辻・桜井・棚町・七咲・森島スキ 美也

③-a1
甘いカフェオレ(ブラック+ミルク+砂糖+少量のミルク&砂糖)
=全員スキGOOD 梨穂子・薫スキBAD 隠しキャラGOOD

③-a2
あまーいカフェオレ(ブラック+ミルク+砂糖+多量のミルク&砂糖)
=全員スキBEST

③-b1
苦いカフェオレ(ブラック+ミルク+砂糖+少量のブラック)
=七咲スキBAD

③-b2
かなりにがーいカフェオレ(ブラック+ミルク+砂糖+多量のブラック)
=絢辻・中多・森島スキBAD 全員テキタイ 隠しキャラBAD


以上が僕の考えたコーヒー恋愛論(アマガミver.)である。
恋愛はコーヒーのように、何も手を加えなければ苦い関係で終わり、
逆に手を加え過ぎても苦い関係で終わるもの。
要するに加減が大事ということですね。
女の子の気持ちを常に考えながら少しずつ甘味を加えていき、
最高の味の恋愛を作り上げていきましょう!!

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