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2011-12-15

出演

メインキャスト

七咲しゅう
本作の主人公。旧姓:橘。職業:刑事

七咲逢
しゅうの1つ後輩。本編のスキBESTを経て、しゅうと結婚し、娘を出産。職業:競泳選手

棚町薫
しゅうの元クラスメート。本編のソエンルートを経て、世界的画家になった。

田中恵子
しゅうの元クラスメートで薫の親友。高校時代はしゅうに片想いしていた。イケメンには目がない。

塚原響
しゅうの1つ先輩。森島先輩の保護者。七咲夫婦の仲を取り持つ重要人物。
国立大学医学部卒で、総合病院の小児科長。

絢辻詞
しゅうの元クラスメート。本編のソエンルートを経て、国立大学の法学部を卒業し、優秀な弁護士になった。

桜井梨穂子
しゅうの幼馴染みで同期。本編のソエンルートを経て、アイドルグループKBT108の一員となった。

伊藤香苗
しゅうの同期で梨穂子の親友。メカが得意だと聞いているが、推理ものもよく読むらしい。

中多紗江
しゅうの1つ後輩。本編のソエンルートを経て、グラビアアイドルとなった。

森島はるか
しゅうの1つ先輩。本編のソエンルートを経て、今はどこかの会社の開発部長。
七咲夫婦の仲を取り持つ重要人物。七咲家によく遊びに来る。彼氏は別の話に登場

夕月瑠璃子
しゅうの1つ先輩。梨穂子の茶道部の先輩。明るく元気だけど、ちょっと乱暴かも……。

飛羽愛歌
しゅうの1つ先輩。梨穂子の茶道部の先輩。短い決め台詞を言わせると誰よりもかっこいい。

高橋麻耶
しゅうの元担任。三十路を過ぎているのに相手が見つからないらしい。恋人募集中。

橘美也
しゅうの妹。一応大卒?よく分からないが、とにかく頑張っているらしい。

(七咲祈)
しゅうと逢の娘。本作では声の出演はなかったが、一応出演はした。

(梅原正吉)
しゅうの小学校時代からの親友でクラスメート。名前だけ登場。

マサ、ケン、ユウジ
しゅうのクラスメート。高校時代はよく一緒につるんでいた。ユウジは本作から初出演。

多野先生
輝日東高校の職員で、本編でも謎多き人物。本作から初出演。

プー
輝日東高校に住んでいる野良猫。逢と仲良しで、逢が命名した。頭のいい野良猫らしい。



特別出演

夢幻探(むげんさぐる)
元ネタは作者のTwitterのフォロワー、夢幻探求くん(むーたん)
本作のキーワード、推理小説「頭文字(イニシャル)K」の名探偵役で初出演。

カズ
元ネタは作者のTwitterのフォロワー、カズさん
本作のキーワード、推理小説「頭文字(イニシャル)K」の怪盗役で初出演。

犬好忠生(いぬよしただお)
元ネタは作者のTwitterのフォロワー、onedayさん
エピソード特別編「oneday two love stories」に出演している。

斗部翠子(とべみどりこ)
元ネタは作者のTwitterのフォロワー、ワルサ(十部翠)さん
エピソード特別編「夢を諦めないで!七咲、決死の闘い」に出演している。

天殿麻衣(あめどのまい)
元ネタは作者のTwitterのフォロワー、e-maのど飴さん
エピソード特別編「夢を諦めないで!七咲、決死の闘い」に出演している。



ご覧の豪華キャストでお送りいたしました。
冒頭にも書きましたが、1年4ヶ月くらいかけて書いてきた作品です。
その間に当ブログに出演されたフォロワーさんもいます。
今回、スペシャル企画ということで、フォロワーさん感謝祭?をやってみました。
本編の登場人物のほとんどが出演し、フォロワーさんも多く出演しています。
楽しんでいただけたら幸いです。

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2011-12-15

フィナーレ「みんな集まれ!華の同窓会」

2年A組の教室

高橋「……ええ。だいたい合ってるわ。さすが現職の刑事ね」
しゅう「ありがとうございます」
伊藤「しかし驚きました」
伊藤「案内状に書いてある優秀な3人。うち二人は共犯者だったなんて」
逢「ええ。まるでたった一人の人物に対する挑戦状ですね」
高橋「最初からそのつもりだったわ。現職の刑事の腕前を見たかった」
しゅう「え?僕は最初から試されていたんですか」
高橋「期待通りで嬉しかった」
しゅう「そうですか……」
高橋「私も鼻が高いわ。教え子がここまで優秀になってて」
棚町「高橋先生。だいたい合ってるってどういう意味?」
森島「そうよね。何か間違ってるのかな?」
高橋「間違ってても無理はないと思う」
棚町「というと?」
高橋「さっきあなたたちが言ってた共犯者」
高橋「このメンバーの中にいない人もいるし、ひょっとしたら知らない人かもしれない」
しゅう「誰なんですか?」
高橋「塚原さん、絢辻さん、お務めご苦労。もう話してもいいわ」
塚原「高橋先生もお疲れ様でした」
絢辻「お役に立てて何よりです」
塚原「今回の一連の事件。これは確かに高橋先生が最初に考えたことよ」
塚原「動機もさっきので合ってる」
絢辻「高橋先生が考えて、一人じゃうまくいかないということで……」
絢辻「私と塚原先輩が電話で相談を受けたの」
田中「だよね。二人とも学年トップだもんね」
塚原「高橋先生、絢辻さんと話し合って、今回の企画に必要な人材を集めた」
絢辻「桜井さんと中多さんを誘うためにマネージャーさんと打ち合わせをしたの」
桜井「私の?」
中多「マネージャーさんですか?」
絢辻「ええ。私は弁護士で、前に一度相談に乗ったことがあって、それでね」
桜井「そうだったんだ」
塚原「棚町さんの場合は、棚町さんと偶然知り合いになったって職員がいるの」
棚町「そうなんですか」
塚原「ええ。彼、海外での勤務経験があって、その時に棚町さんのケガの治療をしたらしいわ」
棚町「ああ!あの人ですか!」
塚原「悪いとは思ったんだけど、棚町さんの住所を聞いた」
棚町「あ、そっか。住所変更を知らせてなかった」
森島「わぉ!棚町さんって海外に住んでるの?」
棚町「ええ。画家をやってます」
森島「すごいねぇ」
しゅう「意外ですよね」
棚町「うっさいわね、あんた」
高橋「で、他の人たちは普通に誘ったの。一部の人は内緒で直接届けたわ」
塚原「このメンバーの中で唯一結婚しているしゅう君と七咲」
塚原「今回の在校生というヒントにうまく使わせてもらったわ」
逢「ええ、それが大きなヒントになりましたね」
田中「みんな未婚のままだったら分からなかったね」
夕月「高橋先生も早く結婚した方がいいんじゃないですか?」
飛羽「相手がいない」
高橋「こら!あなたたち、余計なお世話よ」
塚原「じゃ、話を戻して事件の真相を話すわ」
塚原「私の犯行ははるかを眠らせただけ」
塚原「来校の途中で買った自販機の飲み物に遅効性の睡眠薬を仕込んでおいたの」
森島「やっぱりひびきじゃない!ひどい!」
塚原「それと、しゅう君と七咲と棚町さんを物置に閉じ込めるよう指示しておいた」
逢「ひどいです。出るのに苦労したんですから」
塚原「でも結局出たじゃない。さすがね」
しゅう「僕の手柄ですけどね。ははは」
絢辻「それはどうでもいいとして……」
しゅう「ひどい……」
絢辻「私の犯行は桜井さん、伊藤さん、中多さん、棚町さんの事件」
絢辻「さっきの推理通りよ」
桜井「じゃあ残りの人は?」
しゅう「僕を眠らせたのはどうせ梅原だろう」
しゅう(後でお宝本を奪ってやる!)
逢「塚原先輩の犯行じゃないとしたら、私は誰に?」
田中「私は電話の男の人と高橋先生に?」
夕月「あたしらはどうなるんだよ?」
飛羽「早く知りたい」
高橋「待ってて。今呼ぶから」
高橋「もしもし。いいわよ」
中多「電話?」
伊藤「共犯者何人いるの?」
高橋「どうやら来たようね。さあ、入って」

共犯者たちが入って来る。
その中に……というよりも全員知っている!

男子生徒「やあ!」
女子生徒「元気だった?」
女子生徒「久しぶり!」

しゅう「……あ!な、何だと!?」
逢「犬好先輩、斗部先輩、天殿先輩じゃないですか!!」
高橋「知り合い?」
しゅう「犬好は絢辻さんと美也の件で、斗部さんと天殿さんは水泳部の件で」
絢辻「え?私と犬好君のこと知ってるの?」
しゅう「知ってるも何も、大変だったんですから」
しゅう「美也が犬好に恋をして、犬好が僕に絢辻さんと仲良くなりたいと相談を」
犬好「わあああああ、それ言うな!」
絢辻「相談?へぇ、そうだったんだぁ」

絢辻さんが犬好を睨んだ。

犬好「わ、ちょ、べ、別に怪しい相談なんか……」
絢辻「ま、いいわ。話は後で署で聞くから」
犬好「署って……やめてくれよぉ」
逢「斗部先輩、天殿先輩、お久しぶりです。元気そうで何よりです」
斗部「七咲こそ、元気そうで何よりだよ。あの時はごめんね」
逢「いいんですよ。先輩、水泳はどうなりました?」
斗部「七咲のおかげで立ち直って、現役のスイマーだよ。絶好調なんだから!」
逢「よかったです」
天殿「塚原先輩、翠子のことで七咲さんがお世話になったそうで……」
天殿「ありがとうございました」
塚原「ううん。私は何もしてない。七咲が頑張っただけ」
斗部「塚原先輩、すみませんでした!私何も分かっていませんでした!!」
塚原「斗部。七咲に感謝しなさい」
斗部「はい!!」
犬好「おお、よく見れば桜井さんに伊藤さんじゃないか!」
桜井「犬好君!」
伊藤「また、たくましくなったね」
犬好「転校早々友達になってくれてありがとう」
桜井「え~?お礼なんていいよ」
伊藤「そうそう。あたしらクラスメートなんだから」
犬好「そうかい?ありがとうな」
田中「わぁ、犬好君、イケメン……でも絢辻さんのもの。ぐぬぬ~」
棚町「諦めなって」
田中「どういう意味?」
犬好「あ、キミは美也の友達の!」
中多「えっと、あの、その……」
逢「中多紗江ちゃんです」
犬好「紗江ちゃんかぁ。かわいいね」
中多「え??」

中多さんは一気に赤面する。

絢辻「犬好。浮気?」
犬好「ち、違うよ。紗江ちゃんを褒めただけだ」
絢辻「……」
犬好「僕は絢辻さんのことが……」
絢辻「あっそ」
犬好「聞いてくれないのか……」

一方、他の人たちが感動の再会を喜んでいる最中、事情を知らず固まっている人たちがいた。

夕月「……」
飛羽「……」
森島「……」
しゅう「先輩たち、どうしたんですか?」
夕月「あのなぁ。感動の再会を喜ぶのは勝手だ」
森島「でも、私たち、知らないからどう反応していいか分からないの」
飛羽「これが当然の反応だ」
しゅう「そういえばそうだった」
高橋「じゃあみんな、自己紹介」
犬好「僕は桜井さん、伊藤さんと3ヶ月間だけ同じクラスだった、犬好忠生です」
犬好「うちの事情で4月から7月までしかこの学校にいかなったけど、一応OBかな?」
犬好「絢辻さんから今回の件を聞いて、みんなに逢いたくて参加しました」
夕月「りほっちと同じクラスだって?」
飛羽「知らなかった」
犬好「無理もないですよ。3年生の時に転校しましたから」
夕月「なるほどな」
飛羽「納得」
斗部「私は七咲君と同期で、C組だった斗部翠子です」
斗部「高校時代は水泳部でした。塚原先輩や七咲のお世話になりました」
桜井「えっと~?七咲君がしゅうで、七咲が逢ちゃんね」
伊藤「その解説、要らない。たぶん分かる」
桜井「香苗ちゃ~ん……」
天殿「同じく、天殿麻衣です。翠子の友達です」
天殿「高校時代は帰宅部で、よく部活が終わった翠子と帰宅していました」
夕月「なるほどな。そういう繋がりだったのか」
飛羽「いい話だ」
しゅう「で、この3人と事件の繋がりは?」
犬好「まず僕は田中さんを離脱させた役と、しゅう君を眠らせて運んだ役」
田中「え?あの電話の人?」
犬好「そうだよ。知らなかった?」
田中「え?あなただったの!?」
棚町「あれ?恵子、電話の相手は知ってる男の人って」
田中「か、勘違いだったみたい……」
棚町「じゃあ、あんたまさか知ってるつもりで知らない人と?うわっ」
田中「そう、なる、かな?」
棚町「あんた大丈夫?危ないよ」
田中「う~」
犬好「僕でよかったなぁ」
絢辻「ん?」
犬好「いえ、あの、何でもないです」
しゅう(ははは、尻に敷かれてらー)
しゅう「梅原じゃなかったのか」
高橋「残念ね。梅原君、今日は実家の寿司屋が忙しくて来れないの」
犬好「そこで僕がピンチヒッターだ」
しゅう「そうなのか……」
しゅう(くそ、お宝本を奪い損ねた)
斗部「次に私は夕月先輩と七咲を」
天殿「私は飛羽先輩と田中さんを眠らせて運んだ役」
しゅう「よく運べたな。特に夕月先輩と飛羽先輩」
夕月「ああ?てめぇ殺されてぇのか!?」
飛羽「発言には気をつけろ」
しゅう「そうじゃなくて、正門から屋上まで距離あるのにすごいなって」
斗部「ああ、私は現役のスイマーだし、麻衣も元々体力あるし」
天殿「こういうミッションは私たちに任せて!」
逢「なるほど。斗部先輩なら物置のことも分かりますね」
斗部「同じ元水泳部だもんね」
塚原「頼りになったわ」
高橋「はい、以上です。これがあなたたちの推理の間違ってた部分」
しゅう「納得しました」
棚町「謎はすべて解けた!」
森島「ばっちゃんの名にかけて!」
伊藤「……えっ?」
中多「あ……」
塚原「はるか。じっちゃんの名にかけて、でしょ?」
森島「そっか!」
伊藤「しかもそれ、事件解決前に言う台詞ですよ」
森島「あちゃー」
中多「ふふ」
高橋「さてと、もう夕方ね。みんな、そろそろ本当の会場に行くわよ」
田中「制服のままでですか?」
高橋「そう。制服のままでお酒飲むの。たまにはいいでしょ?」
しゅう「新鮮だなぁ。いいかも」
中多「私、お酒飲めない……」
高橋「もちろん、ジュースもOKよ」
中多「あ、はい」
高橋「塚原さん。会場は大丈夫?」
塚原「ええ。準備は整っているそうです」
夕月「会場って広いんですか?」
高橋「ええ。これだけの人数での同窓会だもの。広くなくっちゃ」
高橋「それに、本当の同窓会から参加する人もいるからね」
しゅう「まだいるんですか?」
飛羽「大所帯」
高橋「みんなには無理してこの企画に参加してもらったからね」
高橋「せめてものお詫び。私と共犯者たちの奢りよ」
犬好「うえ!?ぼ、僕も出すんですか?聞いてないです!!」
絢辻「出せるわね?まさかそんなことも知らなくて参加したわけ?」
犬好「は、はい、承知しました」
斗部「塚原先輩ひどい!」
天殿「何で私まで?」
逢「これだけの人数分をたったの6人で割り勘ですか?それはできません」
高橋「七咲さん」
逢「先輩、出せますよね?」
しゅう「もちろんだ」
棚町「さすがにお金はかわいそうね。他のことでお詫びしてもらいたい」
高橋「棚町さん」
伊藤「そうだ!!一発芸とかどう?」
森島「ぬるいわ!普段はできない恥ずかしい芸とかは?」
塚原「はるか……」
田中「それいい!!」
塚原「田中さんまで……」
しゅう「そうです。塚原先輩がまったく違う一面を見せれば中多さんともっと仲良くなれます!」
逢「これを機に強面を克服してみてはいかがですか?」
塚原「七咲……余計なことを」
夕月「いやぁ、楽しくなってきたね!お、あんたら二人は夫婦漫才とかどうだい?」
絢辻「はい!?」
犬好「ぜひやらせぐぼ……」
絢辻「い、嫌です」
飛羽「すでにやっている」
夕月「そうそう!そんな調子でいいからさ!今みたいな感じで頼むよ」
飛羽「似合ってるぞ」
絢辻「なんだ……。これでいいのなら喜んで」
犬好「もうやめたげて!犬好のHPは0よ!!」
絢辻「ぜひやらせてくださいってさっき言わなかった?」
犬好「誰かさんに遮られました。断じて言っておりません」
絢辻「旦那が喜んでやりたいと言っているので、やります」
犬好「違う……」
夕月「おお、そうか。期待しとくよ」
飛羽「計画通り」
犬好「うぉのれぇ!」
斗部「恥ずかしい芸かぁ。ないなぁ、ネタ」
天殿「うそぉ?ほら、あれやってあげたら?あの時の」
斗部「ええっ??い、嫌だよ。ていうか何で覚えてるの?」
天殿「へへ~ん、親友だからね!」
逢「え?何ですか?気になります」
斗部「聞かなかったことにしなさい!」
逢「え……」
塚原「斗部!部長命令よ。やりなさい!じゃないと退部扱いよ」
斗部「つ、塚原先輩!はい、やります!」
逢「頼もしい部長ですね」
塚原「ええ。私もこれから火傷するんだから、お互い様よ」
逢「ふふっ」
天殿「じゃあ、私は水泳部じゃないから関係ないね。やらなくてよし」
しゅう「誰がやらなくていいと言った!?」
天殿「だって、私帰宅部だから」
しゅう「そうか。ならば、帰宅部の部長であるこの僕が命ずる!!やれ!!」
天殿「はい??帰宅部に部長なんていないわ」
高橋「そう?じゃあ、嫌なら天殿さんがしゅう君の分を全額……」
天殿「わぁ、やりたいなぁ!私恥ずかしい芸大好き!」
しゅう「ナイスアシストです」
高橋「こちらこそありがとう」
しゅう「礼なら妻に言って下さい」
高橋「そうね」

こうして、事前の約束が成立し、一行は同窓会の会場に向かった。


会場

会場はすごく豪華だった!

しゅう「す、すごい……」

みんなが会場の豪華さに見とれていると……

美也「お兄ちゃん!逢ちゃん!みんな!」
しゅう「美也!それに祈」
美也「退屈だったから来ちゃったのだ」

美也がベビーカーを押して会場入りしていた。

桜井「美也ちゃん!久しぶり!」
美也「りほちゃん!久しぶり!」
森島「わぉ!祈ちゃんかわいい!ね、抱っこしていい?」
逢「どうぞ」
森島「わぁ、ふわふわしててかわいい」
田中「森島先輩。次私に」
棚町「何言ってんの?あたしが先!」
夕月「あたしらもいいだろ?」
飛羽「私はパス」

祈を見るなり、みんな祈をかわいがってくれた。
みんな順番に抱っこしていた。

犬好「いいなぁ。ねぇ、僕たちも……」
絢辻「こうでもない!ああでもない!」
犬好「なぁ、詞?」
絢辻「うるさい!今ネタ考えてるの!」
犬好「シュン……」
しゅう「それはそうと、美也!お前もグルだったか!」
美也「ふえ?何のこと?」
中多「美也ちゃん、ひどい」
逢「中多さんが読書好きだってことを高橋先生たちに密告したでしょ?」
しゅう「それが中多さんを陥れるトリックに使われた」
美也「ち、違うよ、美也じゃない。美也犯人じゃない」
逢「あ、ボロ出た」
しゅう「お?美也、お前、かかったな」
美也「う!」
しゅう「トリックって言っただけで事件とは言っていない」
逢「なのにどうして犯人じゃないと?事件のことを知っているの?」
中多「美也ちゃん……」
美也「バレちゃった……」
しゅう「美也!」
美也「うう……紗江ちゃん、ごめん!!」
中多「美也ちゃん……いいよ」
美也「許してくれる?」
中多「うん」
美也「やった!」
中多「その代わり……」
しゅう「恥ずかしい芸をやるんだ!」
美也「何それ?」
逢「共犯者全員に課せられた義務。お詫びに恥ずかしい芸をやるの」
しゅう「ちなみに違反しようものなら罰金あるからな」
美也「う……」
塚原「橘さん。お願いだから、従って」
犬好「ぼ、僕からも頼むよ。一緒に火傷しよう?」
美也「塚原先輩……それに犬好先輩も」
美也「分かりました」
しゅう「やったね、中多さん!」
中多「はい!」

中多さん、満面の笑み!
計画通り(キリッ

こうして美也も加わって、主催者と共犯者の恥ずかしい芸大会が行われた。
みんな火傷し、心に傷を負った。
だが中には火傷し、心に傷を負うどころか、逆に元気になった強者もいた!

犬好「もっと僕を蹴って、マイハニー!」
絢辻「しつこい!」

ドガッ!

犬好「ああ、何という幸福感!さすがだよ、マイハニー!」
しゅう(相変わらずドMだなぁ。いや、以前よりもドMか)
美也「はぁ。一緒に火傷しよう?って言ったのは誰なの……」
しゅう「美也……言ってやるなよ。あいつはああいう性格なんだ、きっと」

主催者と共犯者の恥ずかしい芸大会の後はパーティとなった。

マサ「いよぉ、しゅう!久しぶり」
ケン「元気だったか?体も、ア・ソ・コも」
ユウジ「おいおい、まだ早いぞ」
ケン「な~に、まだ慌てる時間じゃないぜ」
しゅう「マサ、ケン、ユウジ!懐かしいなぁ」

僕は僕で懐かしい友人と酒を飲み……

逢「え?こ、これ?」
美也「そうなのら~!逢ちゃん、一気一気!ひっく」
中多「美也ちゃん、酔ってる酔ってる」
美也「酔っれらいよ~うい~」
逢「の、飲めない」
美也「な~にぃ。お主わしの酒が飲めんと申すか?」
中多「誰?」
逢「の、飲みます!」

逢は瞬時に酒とノンアルコールドリンクを入れ換えた。

逢「んぐ、んぐ、んぐ、はぁ。飲めましら?ひっく」
中多「七咲さん?これノんん……」
逢「言っちゃダメ。酔ったフリをするの」
中多「あ、うん」
美也「よう飲んら。ささ、お主も飲め飲め」
中多「んぐ、んぐ、んぐ、はぁ」
中多「うい~」

逢と中多さんもそれなりに頑張り……

夕月「りほっち~酒持って来~い!」
桜井「先輩。人使い荒いですぅ」
飛羽「私のテンションTHE有頂天!」
伊藤「うぅわ、飛羽先輩、人が変わった……」
塚原「はぁるか。そぉれしか飲んでないのぉ?ちっ、もっと飲みなさいいいい」
森島「ひぃびきちゃんこそ。飲んれ飲んれ」
絢辻「ほら!もっときびきび動きなさい!あんたあたしの飼い犬でしょ?」
犬好「ご主人様すまないワン……」
犬好「でも、すごく快感!酔ったご主人様にコキ使われて、僕って何て幸せな犬!」
絢辻「う~~るさい!」
犬好「痛い!でも、快感だぁ!ビクンビクン」
棚町「うっわ、みんな盛り上がってるわね」
田中「そうられ~」
高橋「みんなあたしのおかげでしょ?あたしえらいえらい」
高橋「なのにどうして誰もあたしを嫁にもらってくれないのぉ?」
田中「分かります!!その気持ち、痛いほどよく分かります!!」
高橋「れしょう?」
田中「ふぁい~」
棚町「ちょっと、二人とも!」
高橋「ああん。あたしってみじめな女。ねえ、棚町さぁん。結婚してぇ」
棚町「え?」
田中「かおるぅ~結婚しれよ~おれがいいいいいいいい」
棚町「うっわ、ないわー」
斗部「さて、みんなが酔ってる最中、あたしたちはジュースで乾杯」
天殿「そうだね」
斗部「麻衣」
天殿「ん?」
斗部「参加してよかったね」
天殿「うん」
斗部「あたしたち、この先もずっと友達だよね?」
天殿「ううん」
斗部「え?」
天殿「親友、の間違いでしょ?」
斗部「あ……う、うん!親友だね」
天殿「そうよ!そうこなくっちゃ」

他の人たちもそれぞれで盛り上がり……
無事に同窓会は幕を閉じた。
久々に逢った共犯者の3人がみんな元気そうで何よりだった。
特に犬好がな。
犬好は絢辻さんと結ばれている。
赤い糸で結ばれた恋人?
違う。
赤くて極太のリードで結ばれた主従関係!!
今後もこういう楽しい同窓会をぜひ企画してほしいな。


そして同窓会もいい感じでお開きになった。
みんな帰って行った。

美也「それじゃあ、みゃーは今晩、紗江ちゃんの家に泊まるのだ」
美也「久しぶりだなぁ、紗江ちゃんの家」
中多「そうだね」
しゅう「悪いな中多さん」
中多「いえ、いいんです」
しゅう「ありがとう」
美也「祈ちゃんはお兄ちゃんたちが連れて帰るんだよ?」
しゅう「当たり前だ!誰が置いて行くものか」
美也「じゃあね~」
中多「先輩、七咲さん、また今度」
しゅう「うん」
逢「中多さん、また逢おうね」

こうして僕と逢は祈を連れ、歩いて帰ることになった。

しゅう「すっかり暗くなったな」
逢「ええ。物置に閉じ込められた時よりも暗いですね」
しゅう「脱出できてよかった」
逢「そうですか?」
しゅう「え?逢は脱出したくなかった?」
逢「私は、しゅう先輩と一緒なら別にあのままでもよかったですよ」
しゅう「でも、薫がいたからな」
逢「そうですね。棚町先輩には悪いですが、そう思います」
しゅう「……」
逢「ずっとあのままならもっと触っていられた」
しゅう「えっ?」
逢「先輩の気持ちを代弁しました」
しゅう「ま、まだ、許してくれないのか」
逢「はい」
しゅう「うう……」
逢「クスッ」
しゅう「い、祈はやっぱりみんなの人気者だったな」
逢「そうですね。みんな祈を抱っこして笑顔でした」
しゅう「微笑ましい光景だったよな」

逢と他愛ない会話をしているうちに僕の実家に着いた。

しゅう「ただいま」
逢「お邪魔します」

両親も美也もいない。
僕と逢と祈だけの空間。
ここから3人だけの、いや、正確には2人だけの大人の三次会が始まるのだが……
それはご想像にお任せしよう。
おうちに帰るまでが同窓会。
おうちに帰ってからも同窓会。
僕と逢の、2人だけのあま~い、あま~い夜が過ぎていったとさ。



七咲アフターストーリー スペシャル
「輝日東高校同窓会ミステリー」

2011-12-15

第5章「打て終止符!事件解決へ」

一方、その頃……

2年A組教室

絢辻さんは電話を終えて戻っていた。
僕と逢と薫が教室を出て行ってから結構時間が経っていた。

塚原「長かったわね」
絢辻「ええ。仕事絡みで」
桜井「お仕事、大変だね」
伊藤「あんたもアイドルなんだから、大変でしょ?」
桜井「そうだった……えへへ」
中多「桜井先輩って、アイドルなんですか?」
桜井「うん。KBT108のメンバーなの」
中多「そうなんですか。すごいです」
田中「え?中多さん、知らなかったんだ。時々雑誌に桜井さん載ってるよ」
中多「そうなんですか!」
森島「あ、そうか!忘れてた。確か紗江ちゃん、グラビアか何かやってたっけ?」
中多「はい」
森島「どこかで見た顔だと思った」
塚原「呆れた。同じ学校にいたのに学校で逢ったことないの?」
森島「う~ん。分からない」
塚原「これだよ……はるかの物忘れ」
絢辻「そういえばあの3人はどこに行ったのかしら?」
塚原「そうね。遅いわね」
森島「私がちょっと探してこよっか?」
塚原「いや、はるかはここにいなさい」
森島「え?どうして?」
塚原「理由は簡単。危ないから」
森島「どうしてよ~?私全然平気だから」
絢辻「森島先輩は被害者なので危険です。また狙われる恐れがあります」
森島「そっか」
塚原「仕方ないわね。絢辻さん。私たちで捜しに行きましょ」
絢辻「そうですね」
塚原「みんなはここで大人しくしててね」
桜井「はーい。ポリポリむしゃむしゃ」
中多「おいしい……」

こんな状況だと言うのに梨穂子と中多さんはまたポロッキーを食べている。

塚原先輩と絢辻さんが教室を出て行こうとしたその時……

ガラガラ

しゅう「すみません。夫婦喧嘩の後、ちょっとお腹を壊してトイレに篭っていました」
塚原・絢辻「!?」
塚原「ぶ、無事で良かった」
絢辻「七咲さんもトイレに?」
逢「ええ、まあ」
森島「しゅう君に逢ちゃん!……んもう、人騒がせなんだから」
しゅう「すみません。でも、おかげでスッキリしました」
田中「あれ?薫は一緒じゃなかったの?」
しゅう「ああ。あいつはよっぽどひどい物食ったらしくてまだ……」
棚町「あたしがどうしたって?」
しゅう「!?か、薫!?」
棚町「ほら、連れて来てやったわよ」
夕月「つ、塚原!それにりほっちじゃねぇか!」
飛羽「飛羽愛歌……参上」
桜井「るっこ先輩!飛羽先輩!」
夕月「りほっち、久しぶりだなぁ!……ん、太った?」
桜井「そ~んなわけないじゃないですかぁ」
飛羽「りほっち、かわいい」
桜井「て、照れちゃいます」
塚原「あら?あなたたちも参加してたのね」
絢辻「遅いわよ」
伊藤「二人とも制服が埃まみれ。どこにいたの?」
夕月「何か、わけのわからん薄汚い部屋だ」
飛羽「物を隠すにはちょうどいい」
しゅう(ゲッ!)
棚町「この2人は屋根裏部屋にいたのよ」
田中「屋根裏部屋?」
中多「そんな部屋あるんですか?」
棚町「あたしも知らなかったんだけど、こいつが教えてくれたの。屋上から行けたわよ」
絢辻「どうしてそんな部屋を知ってるの?」
しゅう「え?あ、ああ、た、たまたまだよ。誰だったかは忘れたけど先生から聞いたんだ」
棚町「ふ~ん」

そう、あの時していた会話……。

棚町「はい、これあんたの手錠」
しゅう「ああ、ありがとう」
棚町「で?この後どうするの?」
しゅう「僕と逢は教室に戻ろう。薫には行ってほしい場所がある」
棚町「どこ?」

僕は薫に耳打ちした。

しゅう「屋上に行くとそこに扉があるんだ。その扉を開けると入れる屋根裏部屋がある」
しゅう「たぶんそこにまだ被害者がいるはずなんだ。行って来てくれないか?」
棚町「な~るほどね」
しゅう「そう」
棚町「ねぇ、あんたもしかしてさ……」

薫が僕に耳打ちした。

棚町「在校生時代、そこにHな本、隠していたんじゃないの?」
しゅう「ええっ!?そ、そんなこと断じてないよ」
棚町「本当?」
しゅう「う、うん」
逢「あの……2人してさっきから何を?」
しゅう「い、いや、ちょっとした作戦会議」
棚町「わかった!行って来る!」

しゅう(屋根裏部屋って聞いた瞬間にすぐそんなこと聞くからびっくりした)
しゅう(本当、女の子って勘が鋭いんだな)
桜井「3人とも、お腹空いてるでしょ?お菓子食べる?」
しゅう「いいや。遠慮しとく。お腹壊したし。お菓子よりもおかしい話があるんだ」
桜井「……え?」
逢「……」
しゅう「な、なんでみんな黙るんだ!?」
塚原「……はぁ」
夕月「何を言い出すかと思えば」
飛羽「くだらない」
しゅう「おかしい話があるっていうのは本当のことだよ」
しゅう「さっきトイレに篭って何もかもスッキリしたよ……事件のこともね」
絢辻「分かったの?犯人」
しゅう「うん。何もかも。ちょうど全員揃ったところで、謎解きをしようか」
飛羽「THE、全員集合」
夕月「誰なんだい、私たちをひどい目に遭わせた犯人は!?」
しゅう「その前に、僕と逢と薫がトイレに篭っていたという話。それは嘘です」
しゅう「本当は犯人によって、ある場所に閉じ込められていたんです」
桜井「ある場所?トイレじゃなくて?」
伊藤「何でそうなる?」
桜井「あれ?違った?」
森島「ありゃ、トイレじゃなかったのね」
伊藤「あなたもですか!?」
しゅう「実は犯人が分かったから、逢と薫と一芝居打って教室を飛び出したんだ」
田中「あれ、芝居だったの!?本物の夫婦喧嘩に見えた!」
棚町「あたしもびっくりしたわ。いきなりこんなメモ渡されるんだもん」
逢「犯人の狙いが私たちだと分かったので、わざと犯人に狙われてある場所に監禁されました」
中多「ある場所?」
逢「皆さんご存知ないと思いますが、プールのそばに物置があるんです」
逢「水泳に必要な道具が置いてあります」
森島「物置?え?だって水泳に必要な道具はプールにも置いてあったじゃない」
棚町「プールに置ける量が限られているから、余った物は物置に保管しているってことね」
逢「はい」
塚原「……」

塚原先輩の表情がやや曇る。

中多「物置……知りませんでした」
逢「知らなくて当然のはずです。だって、あの物置は……水泳部員しか知らないはずですから!」
伊藤「ええっ……あ、そっか。そうなるんだ」
夕月「てことはまさか!」
逢「ええ。もうお分かりですね?このメンバーで元水泳部員の人が犯人です」
桜井「分かったーーー!」
しゅう「分かったか、桜井?」
桜井「うん!犯人は……逢ちゃん!あなたね!」
逢「……はい??ん、んん」

逢は軽く咳払いをする。

逢「犯人はそう……塚原先輩!あなたしかいませんよね?」

みんなが塚原先輩を見る。

夕月「塚原!てめぇ!よくも」
塚原「ま、当然そうなるわね。だけど、このメンバーだったらっていう仮定でしょ?」
伊藤「ちょっと待って!それだったらおかしくない?塚原先輩は七咲さんを眠らせた犯人じゃないよ」
森島「うん。ひびきちゃん、ずっと教室にいた」
しゅう「ええ。だからこれはあくまで仮定です」
しゅう「塚原先輩が実行犯じゃないとしても、他の犯人に入れ知恵した可能性もある」
逢「他の生徒とか教員の中に犯人がいるかもしれませんね」
棚町「絢辻さん、ちょっといい?」
絢辻「え?な、何?」

薫は絢辻さんの前にしゃがみ込んでスカートに鼻を当てた。

棚町「クンクン……」
田中「な、何してるの、薫」
森島「ワンチャンの真似ね」
棚町「間違いない。ねぇ、絢辻さん。あたしの香水スプレーはどうしたの?」
絢辻「香水スプレー?何のこと?」
棚町「とぼけても無駄よ。あたしを閉じ込めた犯人が絢辻さんだってこと、ちゃんと知ってるんだから」
中多「え?絢辻先輩も?」
桜井「本当に?」

みんなが絢辻さんを見る。

絢辻「証拠は?」
棚町「あたしを背後から狙っている人の気配を感じてこっそり手鏡で顔を確認した」
棚町「さらに、その人に襲われて抵抗している時、どさくさに紛れて香水スプレーをかけてやった」
棚町「そう。ちょうど今あたしが匂いを嗅いでいた辺りにね」
棚町「そしてあたしから没収した手鏡と香水スプレーはたぶん……」

薫は絢辻さんの荷物を物色し始める。

絢辻「ちょ!やめなさい。人の荷物を勝手に」
棚町「いいじゃない。同じレディの荷物なんだから」
棚町「ここにあるはずよ。絢辻さんが犯人だっていう証拠の……あった!」

薫はゆっくりと証拠品を取り出した。

棚町「あたしの手鏡と香水スプレーがね!」
絢辻「う……」
中多「絢辻……先輩」
桜井「ふええええええ」
伊藤「どうして持ってたの?」
棚町「捨てるに捨てられなかったでしょうね。人様の大事な物だから」
逢「棚町先輩、すごいです」
棚町「なーに。大したことないわよ。刑事ドラマか何かで見たやつを見よう見真似でやっただけ」
しゅう「でも、すごいな」
棚町「さあ、塚原先輩の方は証拠がないけど、絢辻さんの方はバッチリ証拠が出てきたわ」
桜井「でも、おかしいよ?絢辻さんも教室に……」
伊藤「あれは電話するフリして教室を飛び出したんでしょ。着信履歴見ればすぐに分かる」
森島「そっか!あれは電話が来たと装うために着信音を鳴らしただけなのね!」
伊藤「そういうことですよ、きっと」
絢辻「ふふふ。ふははは」
森島「絢辻さん?」
絢辻「見事ね、棚町さん。じゃあ、塚原先輩と私がこの同窓会の主催者って言いたいのね?」
棚町「残念。塚原先輩と絢辻さんはただの共犯者。主催者は他にいるのよ」
田中「ほ、他にいる?」
伊藤「マジで?」
しゅう「そう。塚原先輩と絢辻さんはただの共犯者だ」
しゅう「そして主催者の謎を解くためのヒントは今まで起きた6つの事件に隠されている」
桜井「え?6つ?そんなにあったっけ?」
伊藤「えっと、確か、あたしと桜井が食堂で眠らされた事件」
中多「わ、私が図書館で眠らされた事件」
森島「私が保健室で眠らされた事件」
田中「私が家庭科室で眠らされた事件」
逢「しゅう先輩、棚町先輩、私が物置に閉じ込められた事件」
夕月「私と愛歌が屋根裏部屋で眠らされた事件……ってとこか」
飛羽「6つ、揃ってる」
塚原「で?これのどこにヒントが?」
しゅう「まずは中多さんが読もうとした本“頭文字(イニシャル)K”
中多「え?あ、あれは」
絢辻「あれが何を示すか分かったの?」
しゅう「うん。頭文字(イニシャル)Kが示すヒントはずばり、場所の頭文字(イニシャル)だ」
逢「場所?事件の現場のことですか?」
伊藤「それさっきうちらで話し合ったけど、分からなかったじゃん」
桜井「そうだよ~」
しゅう「新たな場所が加わったし、もう一回思い出してみよう」
伊藤「思い出す?えっと、あの本の通りに当てはめると……食堂はS
中多「図書館はTですね」
森島「保健室はエッチね!」
塚原「だから……そこで何でエッチを強調するの?」
森島「いけないの?」
塚原「……」
田中「家庭科室はK
棚町「物置はMね」
飛羽「最後はY
逢「STHKMY?何のことです?」
しゅう「第2のヒント。それは……学年
絢辻「学年?」
しゅう「おかしいと思わない?あの案内状の文章」

背景
暑さが本格的になって参りました。
皆様、熱中症などにはくれぐれもお気を付け下さい。
さて、下記の日程で輝日東高校の同窓会を開催予定です。
なるべく多くの方に参加していただきたいので
学年などは関係なくこの案内状をお配りしております。

後は集合日時と集合場所の他に、制服着用と書かれている。

しゅう「学年などは関係なく……これは当たっている。しかし、ここには3学年しかいない」
桜井「3学年?ええっと、塚原先輩、森島先輩、るっこ先輩、飛羽先輩」
伊藤「後輩は七咲さんと中多さんだけ。そして同学年のあたしたち。確かに」
しゅう「僕と逢宛に届いた案内状が何故か“橘しゅう”と“七咲逢”に分かれていること……」
しゅう「それに会場が輝日東高校で、昼下がりで、制服着用を指定したこと……」
しゅう「これらはすべて、第2のヒント、学年を示している」
棚町「あそっか。在学中は未婚だったわね」
塚原「確かに学年はヒントっぽいけど、それが?」
しゅう「まず、桜井と香苗さんは二人とも2年生。2+2で4!」
田中「よ、4?何で?」
しゅう「実はこの学年の足し算がヒントなんだ」
田中「あ~、なるほど」
逢「そうなると、中多さんは1年生だから1」
棚町「森島先輩は3年生だから3で、同様に恵子は2ってわけね」
絢辻「七咲さん、しゅう君、棚町さんは1+2+2で5になるってわけね」
夕月「あたしと愛歌は3+3で6か」
しゅう「そうしたら、2つのヒントを組み合わせるんだ。場所の頭文字(イニシャル)と学年を」
中多「組み合わせる?」
棚町「学年の順番に場所の頭文字(イニシャル)を並べ替えろってことね」
しゅう「うん」
中多「1番は私で、T
田中「2番は私で、K
森島「3番は私で、H
桜井「4番は私と香苗ちゃんで、S
逢「5番はしゅう先輩、棚町先輩、私で、M
夕月「6番は私と愛歌で、Yだね」

出来上がった頭文字(イニシャル)の文字列は……
T K H S M Y

それを僕が板書した。

塚原「TKHSMY?これ主催者の人名?」
しゅう「そうです」
逢「……あの、これだけでどう解くんですか?」
しゅう「これらの文字がすべて子供の音と書いて子音だってことは分かるよな?」
逢「はい」
しゅう「森島先輩のさり気ない一言を聞いて分かったんだ」
森島「え?私?」
しゅう「はい。僕に娘はどうした?って聞きましたよね?」
森島「うん。でも、それが?」
しゅう「これらの文字は逆に全部子供で、親がいない。だから、母親を連れて来るんだ」
塚原「つまり、母音を足せと?」
しゅう「はい」
伊藤「でも、どの母音を足すか……」
しゅう「簡単だよ。答えは僕たちのよーく知っているあの人だよ」
しゅう「僕と薫と田中さんと絢辻さんはほぼ毎日お世話になっていたな」
しゅう「逢だって学校帰りに商店街でよく逢っていたはずだ」
棚町「ほぼ毎日?……ああ、な~るほどね」
逢「商店街って言ったら……まさか!」
しゅう「そう。この文字列にこうやって母音を付け加えるんだ」

T K H S M Y
   ↓
Ta Ka Ha Si Ma Ya

さらに板書した。

田中「た、たかはしまや??」
しゅう「この同窓会の主催者は……高橋麻耶先生だ」
桜井「ええっ!?そんな、びっくりだよ~」
絢辻「確かにその推理は素晴らしいわ。だけど証拠がないわ」
伊藤「うん。高橋先生、今日欠勤のはずだよ」
しゅう「いいや。主催者本人がいなくても犯行は可能なはずだよ」
森島「共犯者がいるからね」
伊藤「そっかぁ。主催者が共犯者と予め打ち合わせしておけば本人がいなくても実行出来るんだ」
棚町「でもちょっと待って!恵子の時はどうなるのよ?」
棚町「恵子はおそらく一人で電話している時に狙われたはず」
棚町「その時、塚原先輩も絢辻さんもあたしたちと一緒に行動していて犯行は不可能よ」
しゅう「たぶん、田中さんは高橋先生本人もしくは他の共犯者に狙われた」
棚町「えっ?」
しゅう「あんなにタイミングよく男の人から電話が来ておかしいと思わないか?」
田中「う、うん。知ってる人だったけど……おかしい」
しゅう「たぶん、田中さんを狙った人物は少なくても二人はいるはず」
田中「だよね」
しゅう「それに考えてみろよ。そもそもこの同窓会、実行するには校内の至る場所が必要になる」
しゅう「もし、被害者を眠らせて運ぶところを他の先生や生徒に見られでもしたら……」
桜井「う!」
中多「大問題ですね」
しゅう「そう。だから、予め他の先生や生徒の協力を得ておく必要がある」
田中「じゃあ、まさかあの欠勤というのは嘘だったの?」
棚町「多野先生もグルだったか……」
しゅう「そうなるね」
逢「つまり、予めこの同窓会を企画することを他の先生や生徒に伝えておいた……」
逢「主催者の候補から外れようと思ってわざと不在を装い、今も校内に潜伏……」
逢「犯行は本人が直接手を下さなくても予め打ち合わせしておいた共犯者が実行してくれる……」
逢「また、私たち被害者が眠らされて運ばれても誰も不審に思わない……」
逢「ということですね」
しゅう「うん。ただ、田中さんの場合は塚原先輩、絢辻さんという共犯者が動けないため……」
しゅう「校内に潜伏している高橋先生本人もしくは他の共犯者が実行した」
絢辻「他の共犯者って誰なの?ここには私たち以外誰もいないはずよ」
絢辻「まったく被害者になっていないのは私と塚原先輩だけど……」
塚原「すでに被害者になった人の中に共犯者がいるの?」
しゅう「たぶんそれはないでしょう」
しゅう「他の共犯者……例えば……中多さん」
中多「は、はい!」
森島「えっ?紗江ちゃん??」
しゅう「いや、そうじゃなくて」
しゅう「中多さんが読書好きで、頭文字(イニシャル)Kという本が好きだということ……」
しゅう「それを知っている人物に心当たりはある?」
中多「心当たり……ですか?」
中多「……」

中多さんは黙ってしまった。

田中「図書委員さんとかは?」
田中「ほら、中多さんが読書好きでよく図書館に通っていたなら……」
伊藤「そっか、顔と名前を覚えているはず。好きな本も知っているはず」
逢「確かに可能性は高いですね」
しゅう「いや。もっと身近な人だよ」
中多「身近な?」
しゅう「そう。例えば……同じクラスとか」
中多「同じ……」
森島「逢ちゃん?」
逢「え?私じゃないですよ」
中多「先輩……まさか」
逢「私よりも可能性が高いのは……」

中多さんも逢も僕を見る。

しゅう「……美也以外には考えられないだろう」
田中「でも、妹さんは今日欠席じゃ……」
しゅう「うん。僕らの代わりに子守をしてくれているよ」
田中「じゃあ無理なんじゃ……」
逢「知恵を授けるだけなら……。美也ちゃんの考えそうな事」
塚原「共犯者の中の実行犯ではないってことね」
しゅう「だいたいあの美也がすんなりと子守を引き受けたんだ。おかしいと思ったよ」
塚原「あら?あんなにいい妹さんなのに疑うの?」
しゅう「まあ、都合のいい奴ですから」
中多「そんな……美也ちゃん」
桜井「紗江ちゃん。落ち込まないで。お菓子食べる?」
中多「はい」
森島「私を眠らせたのは間違いなくひびきね!許さないんだから!」
塚原「もうちょっと寝かせてとか言っていたのは誰だっけ?」
森島「う……」
棚町「あたしを眠らせたのは絢辻さん、七咲さんを眠らせたのは分からないけど……」
棚町「しゅうを眠らせたのはたぶん梅原君ね!彼もきっと潜伏してるわ」
しゅう「だろうな」
夕月「あたしちょっと頭こんがらがって来た。まとめてくれよ」
飛羽「簡潔に、頼む」


つまり一連の事件の流れはこうだ。

本来の集合時間の1時間前。
案内状通りに制服姿の梨穂子と香苗さん、中多さんが来校した。
梨穂子と香苗さんは食堂に向かい、テーブルに置いてあった睡眠薬入りのケーキと飲み物を口にした。
中多さんはテーブルに置いてあった好きな本「頭文字(イニシャル)K」を読もうと本を開いた瞬間……
睡眠薬を嗅いでしまった。
3人が眠ったタイミングを見計らい、共犯者の絢辻さんが案内状をすり替えた。

本来の集合時間の30分前。
案内状通りに制服姿の塚原先輩と森島先輩が来校した。
共犯者の塚原先輩は来校の途中で買った自販機の飲み物に遅効性の睡眠薬を仕込んでおいた。
それを飲んだ森島先輩は学校に着くやいなや眠ってしまった。
塚原先輩は森島先輩を保健室に運び、何食わぬ顔で本来の集合場所に向かった。

また、田中さんは想定通り、薫と一緒に来校した。

僕、逢、薫、田中さん、絢辻さん、塚原先輩という予定通りのメンバーが揃う。
ここで、メンバーに、食堂にいる被害者二人を発見させるために塚原先輩が仕掛ける。
お土産に持って来た煎餅は少し濃い味で、メンバーの喉を渇かせて食堂に行く理由をごく自然に作った。
計画通り、食堂で被害者二人が発見され、案内状すり替えの疑いが浮上した。
案内状すり替えの謎を解くため職員室に向かうことになるが、実は職員室に向かった理由は他にもあった。
職員室に入り、高橋先生が欠勤していることを分からせ、彼女が主催者の候補から外れるように仕向けた。
田中さんの携帯電話によく男性から電話がかかってくることを知っていた高橋先生もしくは他の共犯者は……
それを利用して自分の携帯電話から田中さんの携帯電話に電話をかけ、田中さんをメンバーから離した。
田中さんの隙を見て背後から襲い、眠らせて家庭科室に運んだ。
やがて、中多さんが発見され、案内状の裏に残したメッセージで他の二人も発見させた。

しゅう「そして僕と逢と薫に関しては先ほどの推理通りってわけ」
逢「ちなみに先輩方はどうやって屋根裏部屋に?」
夕月「それがよく覚えてないんだよ」
飛羽「来校したのは覚えてる」
桜井「案内状は?」
夕月「ああ、これか」

二人の案内状を見た。

桜井「集合時間の30分後、場所は輝日東高校正門」
田中「うまく鉢合わせしないようにできてる……」
伊藤「共犯者が他に二人以上いるね」
夕月「くっそ!あたしらを監禁した奴誰なんだよ?」
飛羽「許さない」
桜井「まぁまぁ、先輩方落ち着いて。お茶でもしましょうよ~」
夕月「りほっち、のんきだね~」
飛羽「マイペース」
伊藤「でも、その推理を聞いてもまだ解せないなぁ」
伊藤「絢辻さんと塚原先輩が共犯者だと仮定した場合、第四の犯行までは完璧だった」
伊藤「なのにどうして物置での犯行はそんなに証拠を残したの?」
田中「確かに。二人なら完璧な犯行を行えたはず」
森島「ひびきったら、わざと分かりやすい場所を選ぶなんて、逢ちゃんに優しいよね」
塚原「それは……」
しゅう「当然ですよ」
塚原「えっ?」
森島「むむ?」
しゅう「だって犯人は……早く解いてほしかったから。時間がなくて焦っていたんだ」
森島「焦った?どういうこと?」
しゅう「たぶんこの後、別の会場で本当の同窓会が始まるんですよ」
中多「本当の同窓会?」
しゅう「普通同窓会は母校ではやらずに、飲食店などでやるはず」
しゅう「つまり、これら一連の事件は本当の同窓会を盛り上げるための企画だったんだ」
逢「そうなんですか?」
しゅう「うん。だって、普通に同窓会をやったんじゃ、気の合う仲間としか話さないじゃないか」
しゅう「久々に逢っても交流しないで別れちゃう人が出て来る」
棚町「なるほど。高橋先生も考えたわね」
しゅう「確かにやり方は少々荒療治だったけど……」
しゅう「この企画がなかったら久々に逢った僕らがこうして再び交流することもなかった」
桜井「うん!塚原先輩と紗江ちゃんもすっかり仲良くなったもんね!」
塚原「あ……うん」
中多「……は、い」

塚原先輩も中多さんも照れている。

田中「みんなを交流させるための企画か……高橋先生すご~い!見直しちゃった」
伊藤「あたしも」
逢「……では、これから始まる本当の同窓会に私たちが間に合わなくなるのを防ぐために……」
森島「わざとポカをやらかしたわけね」
しゅう「逢を物置に閉じ込めるというのは塚原先輩が最初から考えていた手段」
しゅう「本来は4つの事件と頭文字(イニシャル)Kがあれば残りの2つの事件がなくても解けていた」
しゅう「でも、万が一ってこともある」
しゅう「その時のために、物置の事件を用意し、僕と逢と薫が単独行動をするのを狙っていたんだ」
夕月「ちょっと待て。もし、単独行動をしなかったら?」
しゅう「たぶん、時間になったら塚原先輩と絢辻さんが真相を語っていたと思う」
中多「そう言えば塚原先輩、すでに事件が解けていたようです」
森島「そうそう!ひびきったら教えてくれなくて」
桜井「あそっか!物置の事件があってもなくても謎が解けていたってことは……」
夕月「……ったく、それならうちらが被害者になった意味がないじゃないか!」
飛羽「とんだ無駄足」
桜井「まぁまぁ、私は逢えて嬉しいですよ」
夕月「りほっち、泣かせるぜ」
飛羽「りほっち最高」
棚町「しゅう」
しゅう「ん?」
棚町「……」
しゅう「……分かった」

薫が僕に耳打ちした。

しゅう「さて、すべての謎が解けたところで、本人にご登場願うとするか」
伊藤「いるの?」
棚町「さっきから廊下で聞き耳立ててる。偶然見えちゃった」
逢「高橋先生。ほら、入って下さい」

高橋先生がゆっくりと教室に入って来る。

高橋「あははは、参ったわ。あなたたち、意外とやるわね」
しゅう「さっきの推理、どこか間違ってますか?高橋先生」
高橋「ふふっ」
しゅう「……」

次章、同窓会の主催者、高橋先生によってさらに驚きの真相が明かされる!
そして同窓会もフィナーレへ!!



フィナーレへ続く

2011-12-15

第4章「脱出!力を合わせて」

暗く狭い場所

しゅう「……ん?ここは?」
逢「……」
棚町「……」
しゅう「逢?……それに薫?やはり、一緒に捕まったか」
しゅう「僕の推理通り、犯人はおそらく……」
しゅう「逢!薫!起きろ!!こんな所で寝てる場合じゃない!!起きろ!!」

僕は二人の身体を揺さぶる。

逢「ん……?先輩?」
棚町「ちょっと……どこ触ってんの?変態……むにゃむにゃ……あれ??しゅう??」
しゅう「おはよう」
逢「あ……おはようございます。……って!ええっ!?ここどこですか??」
しゅう「知ってたら苦労しないよ……」
棚町「とりあえず……この暗さと狭さから言って……どこかの倉庫?」
しゅう「ここ、電気あるかな?ちょっと点けてみよう」

僕は暗い中、手探りで壁のスイッチを捜した。

しゅう「あった、これだ」

カチッ。

しゅう「あれ?変だな、点かないみたいだ」

カチッ。カチッ。

しゅう「おかしいなぁ」
逢「あ……先輩。あれを見てください」

逢が天井の電気を指差す。

逢「うっすらとですが……電球が抜き取られているのがわかります」
しゅう「えっ!?」
棚町「あ、本当だ。道理で点かないわけね」
しゅう「あれ?でもここ、わずかに明るいよ」
逢「それはたぶん、この壁の穴のせいかと。ここから外の光が射してます」
しゅう「外に何が見える?」
逢「ここからだと……プールです」
棚町「プール……って、うちの学校の?」
逢「はい」
しゅう「そっか。じゃあ、一応ここは校内なんだな」
逢「あれ?ということは……ここは……」

逢が考え込む。

棚町「どうしたの?七咲さん」
逢「外にプールが見える。壁に猫一匹通れそうな穴が空いている」
逢「そしてこの部屋の雰囲気から察すると……ここは間違いなく物置です」
逢「ここには水泳に必要な道具が置いてあります。しかも水泳部の部員しか知らない場所」
しゅう「何だって!?そ、それじゃあ犯人は!?」
逢「ええ、間違いありません。塚原先輩以外には考えられません」
しゅう「そうだよな。参加者の中で水泳部に所属していたのは逢と塚原先輩だけだ」
しゅう「逢を誘拐してここに連れて来たのは消去法で塚原先輩だけになるからな」
棚町「だとしたら変ね。どうしてわざわざ自分の犯行を証明するような真似をしたのかしら?」
棚町「しかもあの頭のいい塚原先輩が……でしょ?考えられない」
逢「……私もそう思います。どうして……」
しゅう「わざと……だとしたら?」
逢「え?」
しゅう「僕らにヒントを与えるために逢をここに連れて来たとしたら?」
棚町「なるほどね。あの人の性格から言って考えられるわね」
逢「でも、どうしてわざとそんなことをするんです?せっかくの犯行が台無しじゃないですか」
しゅう「……この犯行が同窓会の企画だとしたら?」
逢「あ……」
棚町「ふむふむ……やっぱりそうだったのね」
しゅう「やっぱりって?」
棚町「おかしいと思ったのよ」
棚町「同じ場所に3人も、しかも手足が自由な状態で監禁したことがどうも引っ掛かっていたのよ」
棚町「だって、普通そんなことしたら3人で協力して逃げられちゃうじゃない」
逢「確かに……棚町先輩の言う通りです」
しゅう「まあな」
棚町「あと、私を誘拐した犯人、間違いなく絢辻さんよ」
逢「え?」
しゅう「本当か?」
棚町「だって、背後から襲われた時、人の気配を感じてこっそり手鏡で顔を確認したから」
棚町「それに後で言い逃れが出来ないように、どさくさに紛れて香水スプレーをかけてやった」
しゅう「ほ、本当か!?」
棚町「うん。あたしをどこぞの間抜けな刑事さんと一緒にしてくれちゃあ困る」
棚町「念のため事前に用意してたの。この通り、2つとも没収されたけどね」
逢「棚町先輩、さすがです!」
棚町「まあねぇ」
しゅう「となると……塚原先輩だけでなく、絢辻さんもか」
逢「ところで、しゅう先輩はどうしてここに?」
棚町「そうよ。あんたを連れて来たのは誰なの?」
しゅう「う~んと……それが……よく覚えてないんだ」
逢「え?」
棚町「は?」
しゅう「推理に夢中になっててな。あははは……」
逢「もう!先輩!笑い事じゃないです!!しっかりしてください」
しゅう「ごめん」
棚町「あ~あ。さっきの芝居通りね。こんな抜けた旦那を持った奥さんは大変よね~」
しゅう「おい、かお……」
逢「はい。まったくです!」
しゅう「逢まで……」
棚町「ふふっ」
逢「クスッ」
しゅう「う……」
しゅう(二人して僕のことを……)
しゅう「でも、こうしてわざと捕まったおかげで推理に確証が持てたよ」
棚町「本当に?」
しゅう「うん。すべて分かった!!」
しゅう「なぜあのメンバーが集められたか。犯人の使ったトリック……」
しゅう「そして塚原先輩、絢辻さん以外の犯人がいるってこともな!」
棚町「うそ?マジ?他にも犯人いるの!?」
しゅう「ああ。正確に言うと……塚原先輩と絢辻さんは主催者の指令で動いているだけなんだ」
逢「つまり、二人は共犯者……」
しゅう「そう。そして彼女たちみたいな共犯者が他にも数人いるんだ」
逢「数人……厄介ですね」
棚町「で、主催者は誰なの?もったいぶらずにさっさと言っちゃいなさいよ」
しゅう「まあ、そう焦るなって。後でみんなの前で話すから!」
しゅう「それよりも……早くここから出よう!!日没の影響でさっきよりも暗くなっている」
棚町「あ、本当だ!……会話に夢中で気付かなかった」
逢「じゃあ、まず手探りで扉を捜しましょう。確かこっちだったはずです!」
しゅう「そっちか」
棚町「了解!」
逢「……ありました!」
しゅう「どうだ?開きそうか?」

物置の扉は、“ケースハンドル錠”が付いていて、左側にスライドするタイプだ。

逢「……だめですね。鍵は開いてますが扉はびくともしません」
棚町「ちょっと代わって」
逢「はい」
しゅう「おっ!?出るか!?薫のバカ力!!」
棚町「うっさい!!バカは余計よ……んしょ……んしょ……」
棚町「はぁ~ダメね。きっと外からつっかえ棒で固定されてるんだわ」
しゅう「じゃあ、3人で力を合わせようか!」
しゅう「3人縦に並んで先頭の人は取っ手を、残りの人は前の人を引っ張るんだ」
棚町「じゃあ、しゅうが先頭で決まりね!!」
しゅう「どうして?」
棚町「だって、あんた絶対あたしや七咲さんを引っ張るふりをして……変なとこ触りそうだし」
しゅう「はっ!?そ、そんなことしないよ」
棚町「どうかな?脇腹を触って引っ張るはずが胸とか触りそうだし」
しゅう「だ、断じてしない!!そんなこと」
逢「私もそう思います!」
しゅう「逢……そうだよな、僕はそんなことする男じゃ……」
逢「しゅう先輩は変態ですので、棚町先輩の言う通りかもしれません」
しゅう「な、何!?逢までそんなことを言うか」
棚町「奥さんにも信用されてない旦那……ああ、本当にしゅうは哀れね」
しゅう「おい……」
棚町「ひょっとしてさ……毎日……されてるの?」

薫が逢に耳打ちする。

逢「えっ!?あ……毎日ってわけでは……」
棚町「へぇ~、一応されてるんだ……」
逢「あ……いえ……そういうわけでは……」
棚町「七咲さ~ん、顔赤いよ~」
逢「う……」
しゅう「おい、二人して何をヒソヒソと?」
棚町「近寄らないで、この変態!!」

バシッ。

しゅう「いてっ!な、殴ることないだろ!?それに変態って」
棚町「あきれた……あんたには本当にあきれた」
しゅう「おーい。だんだん話が横道に逸れてるぞ。戻そう!」
しゅう「要するに……僕が先頭ならいいんだな?」
棚町「うん」
しゅう「う……やっぱり先頭は嫌だな」
棚町「どうして?」
しゅう「だって考えてみろ?先頭ってことは薫のバカ力に引っ張られるんだろ?」
しゅう「肋骨を骨折しそうだから却下!!」
棚町「な~によ。この意気地なし!」
しゅう「意気地なしで結構!薫に殺されるくらいならずっとここにいた方が……」

バシッ。

しゅう「いてっ!また殴ったな」
棚町「つべこべ言わずにさっさと出るわよ!!」
しゅう「うう……」
逢「……ロープ」
棚町「え?」
逢「確かこの物置にロープがあったはずです!」
逢「それを取っ手に結びつけて、3人でロープを引っ張れば!」
しゅう「なるほど。それは名案だ」
しゅう(それなら僕も変態扱いされたり、薫に殺されずに済むぞ!!)
逢「ですが……この暗さじゃどこにあるのか見当もつきません」
棚町「せめて光があればね。日没のせいで辺りは真っ暗」
棚町「おまけに携帯電話は犯人に没収されてるしね」
しゅう「どうすればいいんだ!?このまま朝まで待つのか!?」
逢「……」

物置内は次第に暗さを増していく。
さっきまでははっきりと見えていたお互いの顔も次第に見えなくなっていく。
しばらく3人とも沈黙し、考え込んでいたその時だった。

逢「きゃっ!」
しゅう「ん?どうした?逢」
プー「みや~お」
逢「あ……プーか。びっくりした~」
棚町「ん?プーって?」
逢「うちの学校に昔からいた野良猫です。私がプーと名付けました」
棚町「野良猫?そこに猫がいるの?」
逢「はい。黒猫なので見えづらいですが」
しゅう「それにさっき鳴き声がしただろ?」
棚町「ああ。あれ、猫の鳴き声だったの?てっきり、しゅうかと思った」
しゅう「何で僕が!?」
棚町「場を盛り上げるため?」
しゅう「盛り上げてどうする!?」
棚町「やーね!冗談よ」
しゅう「う……」
逢「もう、プーったら。暗い中いきなり頬ずりしてきたらびっくりするでしょ?」
プー「みや~お?」
しゅう(頬ずり!?逢に頬ずり!?僕もプーになりたい……)
逢「でも、よく私が分かったね。もう卒業してから5年経つのに」
しゅう「きっと、それだけプーに愛されていたんだよ」
しゅう「逢がこの学校の中で誰よりもプーと仲良かったから」
逢「……だといいですけど」
プー「……」

逢に抱っこされて嬉しそうなプー。
その瞳はきらきらと輝いて……

しゅう(ん?輝いて??そうか!!分かったぞ)
棚町「それよりもどうするのよ?プーと遊んでる場合じゃないんじゃない?」
逢「そうですね。一刻も早くここを出なくては」
逢「じゃあね、プー」
プー「みや~お?」
逢がプーを下ろそうとするが……
しゅう「待った!!そのままプーを抱いてて!!」
逢「え?あ、はい」

再び逢がプーを抱き上げる。

棚町「どうしたのよ?今は猫と……」
しゅう「分かったんだよ。ロープの在処を見つける方法がね」
棚町「え?そなの?」
逢「本当ですか?」
しゅう「うん。ずばり……プーを使えばいいんだ!!」
逢「プーを!?」
棚町「え?は?」
しゅう「猫の特性、暗い中でもはっきりと周囲を見渡せる……」
しゅう「暗い中できらきらと輝く瞳……それらを利用するんだ!!」
逢「あ……その手がありましたね」
棚町「なるほどね。でも、どうやって利用するの?」
しゅう「簡単さ。プーをロープの在処まで行かせ、プーの瞳を目印に手探りで捜す」
しゅう「それが出来るのはプーと一番仲がいい逢だけ。出来るか?」
逢「自信はありませんが、たぶん出来ると思います」
逢「プーとここで遊んだこともあるので、プーも物の配置を覚えていると思います」
棚町「とにかくやってみて。七咲さん」
逢「はい!」
逢「プー。ロープの在処分かる?行ってみて」
プー「みや~ん?」

逢がプーを下ろすと、プーはまっすぐにロープの在処まで向かった。
途中で何度か段差を登り、辿り着いた。
そしてまっすぐと逢の方を見つめた。

しゅう「そこか!!」

ちょっと高い場所にあったので、僕が手探りで捜した。

しゅう「この箱か?」

僕はロープが入っていると思われる箱を下ろした。
箱を開けてみると……

しゅう「あった!!ロープがあったぞ!!これで脱出出来る!!」
逢「先輩……やりましたね!!プー、ありがとう」
プー「みや~お」

プーは自分で段差を降りて、入って来た穴から外へ出てそのまま姿を消した。

棚町「にしても、頭のいい猫ね!まるで七咲さんと心が繋がっているみたい」
逢「プーは昔から頭がいいんです」
棚町「どっかの誰かさんとは大違いね」
しゅう「はあ?僕のことか?失礼な!」
しゅう「僕だって頭が良くて逢と心が繋がってるぞ!!なあ、逢?」

逢はすでに取っ手にロープを通しに行っていた。

しゅう「……あれ!?いない!?さては逃げたな……」
棚町「別にあんたのことを言ったつもりじゃなかったけど?」
しゅう「いいや、さっきのは僕のことだったに決まって……」
逢「ダメみたいです。ロープが太くて取っ手に通りません」
しゅう「そんな……あ!ロープのこの太さなら、これを使ったらどうだ!?」

僕は胸ポケットから手錠を取り出す。手錠は無事だったみたいだ。

逢「手錠……なるほど。やってみます」
棚町「あ、ロープは私が結ぶ」

手錠の片方を取っ手に通し、もう片方にロープを結んだ。

棚町「これでよし……と。準備できたわよ」
しゅう「じゃあ、綱引きの順番はどうする?」
逢「一番力がありそうな棚町先輩が一番前の方がいいんじゃないでしょうか?」
しゅう「僕もそれがいいと思う」
しゅう「テコの原理から言って、中心部分に近ければ近いほど力が要るだろうし」
棚町「え?まあ、綱引きなら触られないか……」
しゅう「触らないって!じゃあ、僕が真ん中かな」
棚町「オッケー!思いっきり引くわよ!!」
棚町「コケないでよ。特にそこの頼りなさそうな男!」
しゅう「は?何で?」
棚町「私と七咲さんは平気だけど、あんたは危なっかしいから」
しゅう「おいおい、何でだよ……」
逢「クスッ。確かに危なっかしいですね」
しゅう「逢、そこは否定してくれよ……」
逢「すみません……」
しゅう(もう、二人して僕をバカにして……見てろよ!!)
棚町「行くわよ!!せいのっ!!……んしょ!!んしょ!!」
逢「んしょ!!んしょ!!」
しゅう(僕が頑張らなきゃ!!男らしいところ見せるぞ)

こうして3人で綱引きをすることに。
しかし、3人が力を合わせても扉はビクともしなかった。

逢「う……」
しゅう(僕はそろそろ限界だ……逢は大丈夫だろうか)
棚町「どうしてなのよ……どうして……ちっとも……」

3人が諦めかけ、引くのを辞めようとした瞬間……

カラン。

外のつっかえ棒が外れる音がした。
さらにそのまま勢い良くロープを引っ張ると……

ビシャン!!

棚町「うわっ」
逢「きゃっ」
しゅう「うお」

扉は勢い良く全開し、3人は勢い良く尻餅をついた。

棚町「あ、開いた……」
逢「よかった……」
しゅう「一時はどうなるかと思った……」

薫が立ち上がり、外の様子を見に行く。

棚町「どうやらつっかえ棒が外れたみたいね」

僕が立ち上がろうと思って床に手を付こうとした時……

むにゅ。

逢「ひゃう!」

しゅう(あれ?何だ……この右手に触れる柔らかい感触は……しかも今の声!)

僕は右手を少し動かした。

むにゅむにゅ。

逢「や、やめ……!」
しゅう(そ、そうか!これは逢の胸だったんだ!)
しゅう(薫なら即座にパンチが飛んで来そうだけど逢なら!この順番にして正解だった)
しゅう(もう少し触っていたい。この暗さじゃバレ……)
逢「もう!先輩の変態!」
しゅう「え?」
逢「バレないとでも思ったんですか?バレバレですっ!」
しゅう「い、いや、これは不可抗力……」
逢「……」
しゅう(う……逢の冷たい視線を感じる)

その時、周囲の暗さで僕と逢の状況が見えていない薫が間に割って入った。

棚町「はい、これあんたの手錠」
しゅう「ああ、ありがとう」
棚町「で?この後どうするの?」
しゅう「僕と逢は教室に戻ろう。薫には行ってほしい場所がある」
棚町「どこ?」

僕は薫に耳打ちした。

しゅう「……って、……だ。……だ。……か?」
棚町「な~るほどね」
しゅう「そう」
棚町「ねぇ、あんたもしかしてさ……」

薫が僕に耳打ちした。

棚町「……、……、……の?」
しゅう「ええっ!?そ、そんなこと断じてないよ」
棚町「本当?」
しゅう「う、うん」
逢「あの……二人してさっきから何を?」
しゅう「い、いや、ちょっとした作戦会議」
棚町「わかった!行って来る!」

薫が勢い良く物置から飛び出して行った。

しゅう「さあ、行こう。この事件にケリを着けに行くんだ!」
逢「はい!」

いよいよクライマックス!!
次章、事件解決!!



第5章へ続く

2011-12-15

第3章「いざ真相へ!消える3人」

2年A組教室

森島先輩と田中さんを発見し、お互い連絡を取り合った後……
全員で2年A組の教室に集合した。

塚原「全員無事でよかった」
絢辻「でも、案内状によると、まだ事件は終わってないようですね」
しゅう「ここらで一段落して、事件をおさらいしてみようか?」
棚町「そうね。何かバタバタしてて全然推理できなかった」
伊藤「まずはうちらが眠らされた事件だね」
伊藤「みんなの集合時間よりも1時間早くて、集合場所は食堂」
桜井「ケーキと飲み物をごちそうになって眠っちゃったんだよね」
逢「犯人がすり替えたと思われる案内状の裏には……」

事件は始まった
これから起こる数々の難事件を解決し
我が正体を当ててみせよ
有能な刑事
有能な弁護士
有能な小児科医
おまえたちにこの謎が解けるかな
期待して待っているぞ
   当同窓会の主催者Xより


逢「……でしたね」
中多「次に私が眠らされた事件」
中多「同じく1時間早く、図書館でした」
塚原「中多さんが好きな本であり、ヒントでもある頭文字(イニシャル)Kが使われた」
塚原「本に睡眠薬を仕込み、めくった途端に眠るというトリック」
しゅう「案内状の裏には……」

大切な仲間は預かった
返して欲しければ
校内をくまなく探せ
   当同窓会の主催者Xより


棚町「そうそう。職員室から図書館に行くまでの間に恵子がいなくなったわね」
田中「ごめん。男の人からの電話だった」
棚町「心配かけないでよ、恵子。それと森島先輩も」
森島「え?私?眠ってただけだよ?」
しゅう「犯人の手口が睡眠薬で眠らせるという方法なら……」
逢「森島先輩もどこかで睡眠薬を仕込まれたはずです」
森島「そっか」
絢辻「学校来たら急に眠くなったって言ってませんでした?塚原先輩も何かご存知では?」
塚原「分からない。ずっと一緒にいたけど、来校中は普通だったよ」
しゅう「じゃあ、学校のどこかで待ち伏せて、隙を見て仕掛けたか……」
逢「あるいは塚原先輩の犯行ということも」
塚原「な、七咲!?」
棚町「そうね。別に今回の犯人はあたしたちに危害を加えたわけじゃない」
絢辻「眠らせるだけなら、この中の誰にだって犯行は可能よ」
森島「むむむ、ひびきちゃんの謀反……」
塚原「はるか……」
田中「えっと、話を戻すと……私と森島先輩が眠らされた事件」
森島「二人とも案内状の表には特に異常はなく、来校してから隙を見て狙われた」
しゅう「田中さんは何故か家庭科室で、森島先輩は保健室」
絢辻「どうして家庭科室なのかしら?」
桜井「きっとお腹が空いていたんだよ。ポリポリむしゃむしゃ」
伊藤「あんたじゃあるまいし……って!何食べてんの?」
桜井「ポロッキー。新作が出たんだー」
伊藤「さっきあんな罠に引っ掛かったのに、よくそんなもの食べられるわね……」
桜井「ふふふ」
伊藤「呆れた」
桜井「あ、よかったら、これ食べる?」
中多「え?い、いいんですか?」
桜井「うん。どうぞ」
中多「い、いただきます」
森島「私もいい?」
桜井「どうぞ」
森島「ありがとう」
しゅう(こんな状況だというのに、のんきだな……)
森島「あ、紗江ちゃん」
中多「はい」
森島「さっきはごめんね。寝ぼけてたから」
中多「い、いえ」
森島「私は森島はるか。ひびきちゃんと同じクラスよ。よろしく」
中多「よろしくお願いします」
森島「わぉ!いいお返事」
しゅう「で、また話を戻すと、二人の案内状の裏には……」

事件はまだ終わってない
これからだ
   当同窓会の主催者Xより


そろそろ気付いたかな?
我が正体を当ててみせよ
   当同窓会の主催者Xより


しゅう「……だったな」
逢「前者は森島先輩の、後者は田中先輩の案内状の裏に書いてありましたね」
しゅう「ヒントになりそうなのは今のところ頭文字(イニシャル)Kくらいだな」
しゅう「中多さん」
中多「あ、はい。何ですか?」
しゅう「頭文字(イニシャル)Kってどんな話なんだ?」
中多「え……」
伊藤「あれ?知らないの?有名な話だよ」
しゅう「よ、読んだことないんだよ!」
棚町「刑事のくせに?」
しゅう「関係あるのか?」
棚町「大有りよ!」
中多「頭文字(イニシャル)Kは推理小説なんです」
中多「最初の舞台はイギリス。主人公は夢幻探(むげんさぐる)という日本の名探偵」
中多「世界中の人々に知られている名探偵で、夢幻探求とか夢幻探偵とか呼ばれています」
中多「また、彼が時折見せる愛らしい姿から“むーたん”と呼ぶ人もいます」
しゅう「むーたん……か」
中多「ある日、彼が雑誌の取材でたまたま訪問中だったイギリスで窃盗事件が発生します」
中多「現場に残された犯人の手掛かりはアルファベット一文字」
中多「夢幻探偵はその手掛かりから一生懸命推理します」
中多「すると、それが何かの頭文字(イニシャル)であることに気付きました」
中多「人や物、場所などの頭文字(イニシャル)を辿って行き、とうとう犯人を追い詰めました」
中多「実は犯人は日本の怪盗カズだったんです」
中多「彼は最初の舞台、イギリスを始めとして世界中を飛び回って夢幻探偵と勝負します」
中多「頭文字(イニシャル)Kとは怪盗カズのことで……」
中多「毎回の事件で彼が残した頭文字(イニシャル)を辿って夢幻探偵が盗まれた財宝を探す物語です」
しゅう「なるほどな」
逢「もしかしてこの事件も頭文字(イニシャル)を辿れということでしょうか?」
しゅう「うーん……頭文字(イニシャル)か」
伊藤「ただちょっとややこしいことに……」
伊藤「この物語で言ってる頭文字(イニシャル)はちょっと本来の使い方と異なっているんだよね」
しゅう「異なる?」
伊藤「頭文字(イニシャル)の本来の意味って、英語表記における単語の頭文字でしょ?」
伊藤「でも、日本での事件の時に怪盗カズが残した文字はGだったんだ」
伊藤「当然、夢幻探偵は頭文字(イニシャル)がGである英単語を探すでしょ?」
伊藤「ところが、どこを探っても手掛かりがない。何故だと思う?」
しゅう「え?Gを探してもない……ってことは何かが違う?」
伊藤「正解は、頭文字(イニシャル)Gは学校とか玩具売場とかだったから」
逢「……え?」
絢辻「なるほど。学校とか玩具売場をローマ字表記にすると頭文字(イニシャル)Gってわけね」
伊藤「そういうこと!」
棚町「あ、それあったわ!覚えてるわ!夢幻探偵が苦戦してたの覚えてる」
塚原「つまりは、対決する国の言語に合わせて、読み方をローマ字表記にしたときの頭文字(イニシャル)ね」
桜井「じゃあ、ゲームセンターやガソリンスタンドなら日本でも英語圏でも大丈夫だね」
田中「ううん。ゲームセンターやガソリンスタンドは和製英語だから違うよ」
桜井「え?ゲームセンターやガソリンスタンドって英語じゃないの?」
森島「そう。ガソリンスタンドはアメリカではガスステーション、イギリスではペットロールステーション」
桜井「ペットロールステーション?」
森島「綴りは、petrol station」
絢辻「ゲームセンターは、ゲームアーケイド、ビデオアーケード、アミューズメントアーケード」
桜井「そ、そうなんだ……英語って難しいね~」
棚町「あ、よく見れば、案内状に“当同窓会の主催者Xより”って書いてあるじゃない」
田中「ていうことは、頭文字(イニシャル)X!!」
しゅう「それっぽい名前だなぁ」
絢辻「でも、日本人で頭文字(イニシャル)Xの人なんてまずいないわ」
逢「ただのカッコつけですね」
伊藤「とりあえず、今までの事件から頭文字(イニシャル)を辿ってみればいいんだね?」
棚町「まずは、人名から。えっと、桜井梨穂子さんと伊藤香苗さんで、S.RとI.K」
森島「逆じゃない?R.SとK.I」
塚原「最近はどっちでもいいはずよ。日本人だからファミリーネームが先ね」
森島「そうなんだ……」
中多「えっと、中多紗江だから、N.S」
森島「森島はるかだからM.H」
田中「田中恵子だからT.K」
棚町「棚町薫、田中恵子……あ、頭文字(イニシャル)が同じね」
田中「そうだね!」
絢辻「並べると、SI・N・M・TまたはRK・S・H・K」
塚原「……読めないわね」
しゅう「並べて英単語にならないんだ……」
塚原「人名じゃないんじゃない?人名なら世界共通のはずだから」
逢「眠らされた場所とか?」
絢辻「なるほど。やってみましょう」
桜井「食堂だからSだよね」
中多「図書館だからT」
森島「保健室だから……エッチ!」
塚原「何でエッチを強調するの?」
森島「う~ん……保健室ってエッチな場所じゃない?」
塚原「はぁ」
森島「ありゃ、違ったか」
しゅう(確かにエッチな場所だけどさ……)
田中「家庭科室だからK」
棚町「STHK?」
中多「どういう意味でしょうか?」
桜井「分かった!放送局だよ~」
伊藤「お~!残念。◯HKって言いたいんでしょ?」
桜井「違うんだね」
しゅう「それも違うのか」
逢「さっきと似たような感じですね」
しゅう「じゃあ他に何の頭文字(イニシャル)があるっていうんだ?」
森島「この事件の特徴ってそれぞれの参加者が別々の場所で眠らされたってことでしょ?」
森島「だったら、人名と場所しか思い付かないなぁ」
塚原「うーん……はるかの言う通りね」
棚町「しゅう、あんた現職の刑事なんでしょ?だったら刑事ドラマみたいにこう、パパ~っと」
しゅう「それが出来たら苦労しないよ」
森島「あれ?そう言えば祈ちゃんはどうしたの?」
しゅう「今日は美也が面倒を見てくれています。珍しいこともあるもので」
森島「残念だなぁ。かわいい祈ちゃんに逢いたかったのに」
塚原「同窓会に子供を連れて来れるわけないでしょ」
絢辻「ええ。もしかしたら子供が被害者になっていたかもしれません」
森島「そうよね。事件現場に子供がいない方が安心だったね」
逢「森島先輩、また今度うちに遊びに来て下さい」
森島「うん。そうする」
しゅう(それにしても……何かがひっかかるんだよな。何だろう?)
しゅう(ヒントって本当に頭文字(イニシャル)だけなのかな?)

僕は胸ポケットから手帳とペンを取り出した。

しゅう(とりあえず、頭の中で考えていても分かりそうにない)
しゅう(こういう時は気になったことを書き出そう)
しゅう(えっと……)

まずは案内状から見返す。
やっぱり何かが変だ。

なるべく多くの方に参加していただきたい
→なのに参加者はたったの10人だ。

学年などは関係なく
→なのに塚原先輩から逢までわずか3学年しかいない。

集合場所と集合時間
→何故輝日東高校で、しかも昼下がりなんだ?
 普通同窓会、もといクラス会って飲食店で夜行われるはず。
 母さんがよくクラス会行ってたから分かる。

制服着用
→何故?これが一番引っ掛かる。
 在校生でもないのに、来校するのに何故制服が必要なんだ?
 僕らは卒業生だぞ。
 制服着用ってことは、在校生に戻った気分になれと?

しゅう(……)
しゅう(……そうか!分かったぞ!)
しゅう(この案内状だけを読み解くと……学年がヒントなのかもしれない!)
しゅう(集まった人の学年は関係なくて、輝日東高校で、昼で、制服着用)
しゅう(となったらもう、在校生気分しかないじゃないか!)
しゅう(時間が昼下がりなのも頷ける。夜は学校入れないからな)
しゅう(と、すれば、なるべく多くの方に参加していただきたい……)
しゅう(梨穂子、香苗さん、中多さん、森島先輩、田中さん……)
しゅう(彼女たちは主催者が企てた、この主催者宛てゲームに必要な人材だった!)
しゅう(一人でも欠けたらゲームは成立しない。全員が確実に集まれる日を選んだのか)
しゅう(……待てよ。もしそうだとすると、このゲーム、まだ終わっていない!)
しゅう(次のターゲットはおそらく……)
逢「あの、先輩」

僕はさっきの、場所の頭文字(イニシャル)の文字列を思った通りに並べ換えてみた。

しゅう(これだけでどうやって解くんだ?)
逢「先輩」
しゅう(う~ん)
逢「先輩!無視しないで下さい」
しゅう「ん?ああ、ごめん。考え事してた」
逢「さっきの文字列のことですか?」
しゅう「それもあるけど、色々不審な点を書き出してた」
逢「不審な点?」
しゅう「しー。有能な弁護士と有能な小児科医には負けたくないから内緒で頼む」

逢に手帳を見せた。

逢「なるほど。先輩、案外負けず嫌いなんですね」
しゅう「僕を疑う目で見てたのは誰だよ?名誉挽回してやるからな」
逢「ふふ……期待してます」
しゅう「ところで何の用だ?」
逢「塚原先輩も絢辻先輩も推理に夢中で、他の皆さんは……」
桜井「へぇ、紗江ちゃん物知りだね」
中多「いえ、ただ読書が好きなだけです」
桜井「いいよねぇ。私なんか読書始めたらすぐに寝ちゃうんだよ」
中多「分かります。私もたまにうっとりと……」
桜井「え?紗江ちゃんもなの?意外!」
森島「あ、私は動物図鑑とか動物の本とか好きだよ!み~んなかわいいんだ~」
伊藤「あの、それ読書って言いませんから」
田中「私、少女漫画時々読むよ!思わず泣いちゃう」
棚町「それも読書じゃない!!」
逢「あんな感じで打ち解けちゃってます」
しゅう「推理する気ないんだな……」
逢「で、そういう先輩は何か分かったんですか?」
しゅう「声に出すなよ」

僕は手帳に書いて、逢に伝えた。

逢「なるほど」
しゅう「案内状には“まだ事件は終わってない”ってある」
しゅう「僕らが被害者になる可能性もあるんだ」
逢「十分気を付けます」
しゅう「いや、そうじゃなくて……ここはむしろ……」

逢への指令を手帳に書いた。

しゅう「これでいこう」
逢「なるほど。やってみます」
しゅう「あーイライラするなぁ。事件が全然解けない」
逢「先輩、本当に刑事ですか?しっかりして下さい」
しゅう「うるさいよ!人事だと思って」
逢「う、うるさい?」
しゅう「そうだ。僕に期待し過ぎなんだよ!逢はいつもそうだ」
逢「いつもっていつですか?私はただ刑事の妻として……」
しゅう「……」

僕は無言で教室を出て行こうとする。

逢「どこに行くんです?」
しゅう「ちょっと外の空気を吸ってリフレッシュして来るんだ」
しゅう「逢と一緒じゃ集中出来ない!」
逢「う……もう勝手にして下さい!!」

僕は教室を出て行った。

逢「……」

逢は怒っている。
放っておけないのか、薫が立ち上がって逢に近寄った。

棚町「八つ当たりなんて……最低ね」
逢「棚町先輩……」
棚町「七咲さん、あいつのせいで色々苦労してるのね」
逢「棚町先輩!」

逢が薫に抱き付いた。

森島「わぉ!」
棚町「おうおう、よしよし」
逢「私、やっぱりしゅう先輩を探して来ます」
棚町「そうね。あいつが間違っているんだからビシッと……ん?」

逢は出て行った。

棚町「……」
田中「薫?どうしたの?」
棚町「トイレ行って来る」
田中「えっ?」
棚町「今食べたポロッキーが原因かしら?お腹が痛い」
桜井「ええっ?そんなぁ……」
棚町「すぐ戻る!」

薫も教室を飛び出した。

伊藤「ひょっとして、さっきのポロッキー、賞味期限切れてたんじゃない?」
中多「ええっ??」
桜井「そ~んなはずないよ~~~。ほら」
伊藤「来月か」
中多「よ、よかった……」
森島「3人とも出てっちゃったよ?ひびき」
塚原「放っておきなさい。棚町さんはともかく、あの二人はね」
田中「夫婦喧嘩かぁ。いいなぁ」
絢辻「……」

ピリリリリリ……

伊藤「着信音?」
田中「誰の?」
絢辻「……あ。あたしの」

絢辻さんが携帯電話の画面を見た。

絢辻「あらやだ、電話だわ。ちょっとごめん」

絢辻さんが教室を出て行った。

森島「ねぇ、ひびき。そろそろ犯人分かったりしない?」
塚原「だいたい見当はついてるわ」
伊藤「本当ですか!?で、誰が?」
塚原「待って。まだ推理中の人がいるから」
森島「気になる!ね、私にだけ教えて」
塚原「だーめ」
森島「ケチ」
塚原「何とでも言いなさい。教えないからね」
森島「う~」


一方、その頃……

教室を飛び出して行った僕は歩きながら推理していた。

しゅう(逢と薫はうまくやってくれたかな?)

回想
逢(犯人の次のターゲットはおそらく僕と逢と薫だ)
逢(そこで、わざと単独行動をとって犯人に捕まってくれ)
逢(薫には抱き付くフリをしてさり気なくこのメモを渡して)
逢(……分かりました)
……
棚町(僕と逢で芝居をした。単独行動をとるためにわざとだ)
棚町(というのも犯人の次のターゲットはおそらく僕と逢と薫だ)
棚町(トイレに行くフリでもして適当にその辺をぶらついてくれ)
棚町(そして犯人に捕まってくれ)
棚町(オッケー!)

しゅう(あのメモだけで二人がうまくやってくれたらいい)
しゅう(犯人の見当はなんとなくついた。でも、確証がほしい)
しゅう(この推理が当たりならば、おそらく……)

その時!背後から忍び寄る影!!

しゅう「ん?うお!」

睡眠薬を嗅がされた!

しゅう(け、計、画、通、り……キリッ)

僕はそのまま気絶した。

逢(とは言われたものの、これからどうすれば)
逢「誰!?ん……」

逢も睡眠薬を嗅がされ、気絶した。

棚町(いよいよ犯人とのバトルね!面白くなってきたわ!)
棚町(あたしは準備万端よ!さあ、どっからでもかかって来なさい!)

何やら自信満々の薫。

棚町(来た!)

背後から犯人に襲われる!

棚町「嫌!離して!!ちょ!!……んぐ」

しかし睡眠薬を嗅がされ、気絶した。
薫だけは携帯電話の他に手鏡と香水も何故か犯人に没収された。

ついに、とうとう5件目の被害者となった僕と逢と薫。
ここから事件は大きく動き出す!!



第4章へ続く

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