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2010-12-06

エピソード「先輩、しっかりして下さい」(ノベル)

「その女のこと……殺してやりたいほど憎かったんだよ」
「どうして?あなたと被害者は夫婦じゃないですか。しかも中学の時から熱愛していた仲なのに」
「ふん。女なんて所詮そんなもんなんだ。あの時は大好きだったけど、最近性格変わっちまってな」
「性格が?」
「最近、無性に俺から金をせびりやがって!どうやら奴は不倫してるらしい!!!」
「不倫相手に貢ぐお金をあなたから?」
「そうさ。奴を問い質したら、俺と離婚してそいつと結婚するとかほざきやがった」
「それでついカッとなって?」
「ああ、そういうことだ。わかったか、刑事さんよぉ?悪いのは俺じゃない、その女さ。天罰だよ、これは」
「う……」


――ち、違う!!そんなの人を殺していい理由なんかじゃない!!
それに……どうして奥さんとよく話し合おうとしなかったの?
熱愛していた仲だったなら……どうして?
……それにしても先輩遅い。もう仕事終わってるはずなのに。
……
まさか!?
……
いや、あの先輩に限ってそんなことは!!

しゅう先輩と結婚してから数日経ったある日のこと。
現在、午後7時頃。
早く仕事から帰った私は夕飯の支度を終えて先輩が帰って来るのを待っていた。
二人で一緒に食べようと思い、何も食べずに待っていた。
暇だったので、今先輩がハマっているという刑事ドラマの録画を見ていた。
今回の話は中学時代から熱愛していた妻が不倫したため、カッとなった夫が妻を刺殺するという痛ましい事件。
先輩と私も高校時代から熱愛し、ついに、ついこの前夫婦になったばかり。
夫婦になる前に同棲していた時期があったけど、やっぱり先輩の帰りが遅いと不安になってしまう。

「先輩遅いなぁ。早く帰って来て下さい。じゃないとせっかくのご飯が冷めちゃいます」

――って……妻ってこんな感じでいいのかな?
私のお母さんも結婚したての頃ってこんな感じだったのかな?
同棲していた時期があったとしても、結婚の前後じゃ状況が違って、色々不安になる。
私は七咲しゅうの妻としてこの先ずっとやっていけるのだろうか。

そんなことを考えていたら玄関のドアが開く音がした。

「先輩、帰って来たのかな?」

私は先輩を出迎えるため、玄関に行った。

「先輩、お帰りなさい」
「あ、逢……た、ただいま」

ドサッ。

「えっ?」
「……」

先輩はいきなり玄関で倒れた。

「せ、先輩!どうしたんですか?しっかりして下さい!!」

私は先輩に駆け寄って先輩の前にしゃがみ込んで、先輩の両肩を両手で支えた。

「逢」
「はい」
「僕はもう……駄目かもしれない」
「えっ?はい??今何て?」
「今まで……本当に……ありがとう」
「せ、先輩!!何を……」
「……」
「と、とにかく中に入りましょう。着替えてご飯食べて下さい」
「わ、悪いな、いつも」
「いいから、早く」
「ああ」

先輩はこの世の終わりを見たようなすごく切ない顔をしていた。
全身疲れ切って弱々しい感じだった。
いったい先輩に何があったの?

……

「いただきます」
「いただきます」
「もぐもぐもぐもぐ……ごっくん。はぁ」
「もぐもぐもぐ……それで?」
「え?」
「そんなに疲れ切った顔をして……いったい今日は何があったんです?」
「あ、ああ。もぐもぐもぐ……ごっくん」
「……」
「じ、実は」
「はい」
「殺人事件の捜査に行ってたんだ」
「殺人事件ですか?」
「うん。中学時代から熱愛していた妻が不倫したため、カッとなった夫が妻を刺殺するという痛ましい事件」
「……」
「……」
「……ああ、何だ。ドラマの話ですか」
「ち、違うよ!現実現実!僕が行ったの!」
「……で?それのどこが辛かったんです?」
「事件現場で状況証拠を直接見てきたんだけど……夫の殺し方が残虐で!見てられなかったんだ」
「本物の死体を見て精神的に辛くなったってことですか?」
「うん」
「あれ?でも、先輩は刑事になってからもう1年経ってますよね?今更ですか?」
「いや、今までは警察署内の仕事が多かったんだ。殺人事件の捜査に行ったのは今回が初めてなんだ」
「そうなんですか」
「だから、初めて刺殺体を見て辛くなったんだ。しかも僕たちみたいに熱愛していた夫婦だったから尚更ね」
「同じ立場だから余計そう思ったってことですか?」
「うん」
「……」
「……」
「とりあえず」
「ん?」
「とりあえず安心して下さい」
「え?何を?」
「私は絶対に不倫しませんから!」
「は?」
「先輩の手を私の血で染めさせたりはしませんから」
「あ、逢」
「はい。何です?」
「み、見かけによらず、恐ろしいこと言うんだな?」
「……はい」
「は、ははは」
「私も信じてますから。しゅう先輩のことを」
「大丈夫さ!僕には逢しかいない。絶対に不倫なんてしないよ」
「先輩」
「ん?」

私は突然立ち上がって先輩の背後に移動した。
そして背後から先輩を包み込むように抱きしめた。

「お仕事頑張って下さい。私はここにいます。いつでも先輩の味方ですから」
「うん。分かった。どんな辛いことがあっても家に帰って来れば逢がいてくれる。それだけで僕は頑張れそうだ」
「ふふっ。応援してますよ、先輩」

毎日の仕事で疲れて帰って来る先輩を癒してあげることが妻である私の仕事。
少なくともこの時の私はそう思っていた。
でも、この考え方はちょっと甘かったのかもしれない。

先輩は次の日も同じように疲れ切った顔をして帰って来て、突然私に抱きついた。

「逢」
「せ、先輩?」
「ごめん、しばらくこうしていたい。逢の温もりを感じていたい」
「……」
「……」
「……もう、本当に甘えん坊なんですから」
「ごめん」
「別にいいですよ。また昨日の事件の捜査ですか?」
「うん」

先輩は昨日のことをまだ引きずっていた。
何だか精神的に辛そう。
こうして私が包み込んであげても先輩は次の日にはまた疲れ切ってまた私に抱きついてくる。
さすがの私も心配になった。

そして次の日。

ジュージュージュー。

「先輩今日も遅くなるのかなぁ。今日は先輩の大好物であるハンバーグを作ってるけど……」

……
先輩……またあの事件の捜査なのかな?今日もまた辛い目に遭って……。
……
私は……妻として先輩に何がしてあげられるんだろう?今日一日考えてたけど、やっぱり答えは出ない。
……
こういう時……やっぱり誰かに相談すべきなんじゃ?一人で抱え込むのが一番よくないことは分かってる。
……
でも、こういう時、誰に相談したらいいんだろう?
……
一番身近なのは私の両親。それに郁夫や美也ちゃん。
……
いや、それは駄目!結婚したんだから、やっぱりこういう問題は私と先輩の二人で解決しないと。
じゃなきゃ、この先ずっと家族に頼ってたんじゃ何のために結婚したのやら……。
夫婦の問題は夫婦で解決しないと意味がない!家族には迷惑をかけられない!
うん、大丈夫!あの記憶喪失を何とか乗り越えられた私と先輩ならきっと!
……
でも、あれだってみんなの力を借りたから何とか乗り越えられた。
先輩の大学のお友達、美也ちゃん、梅原先輩、森島先輩、そして……。
あ!そうだ!塚原先輩だ!塚原先輩ならきっといい知恵を貸して下さるはず!
塚原先輩ならこういう時、どうするんだろう?
……
いや、やっぱり塚原先輩にも相談できない!あの時、散々迷惑をかけた。
夫婦になってまで迷惑をかけたくない!
やっぱり私と先輩だけで解決しないと!!

そんなことを考えていたら、気持ちを察してくれたのか電話がかかってきた。

「はい、もしもし。七咲です」
「あ、七咲。私よ。塚原響」
「えっ?塚原先輩!?」
「どう?最近うまくいってる?」
「えっ?あ、はい」
「そ。ならよかった」
「あの、どうしてお電話を?」
「ん?ちょっと久しぶりに七咲の声が聞きたくなってね。迷惑だった?」
「い、いえ!そんなことは!!」
「ふふっ、冗談」
「あ、あ、はい」
「今七咲一人だけ?」
「はい。先輩はまだ仕事から帰っていません」
「そう。彼も大変なのね」
「はい……そうみたいです」
「七咲?」
「あ、はい」
「もしかして……また何か悩んでるの?」
「えっ?」
「声のトーンがいつもより低めだから。何だか元気なさそう」
「……」

やっぱり塚原先輩はすごい!
私の声を聞いただけで私が何かに悩んでることを突き止めた!
塚原先輩には敵わない。

「……」
「やっぱり……分かっちゃいますか?塚原先輩にはすべて」
「当然よ。何年七咲と一緒にいたと思ってる?」
「そう……ですね」
「その様子じゃ、誰かに相談したいけど相談できなくて困ってるといった感じかしら?」
「当たりです」
「まったく……。毎度のことながら世話が焼ける夫婦ね」
「すみません」
「いいわ。私でよければ相談に乗る。支障がなければ話してくれる?」
「はい。実は……」

私は今悩んでることを塚原先輩にすべて話した。

「なるほどね」
「どうしたらいいですか?」
「甘すぎる」
「えっ?」
「七咲は甘すぎるのよ!彼にはもっときつくすべきだわ」
「えっ?そんな……」
「かわいそう……って言いたいの?」
「はい」
「その考えが甘すぎるわ」
「えっ?でも……」
「七咲」
「はい」
「『飴と鞭』って言葉知ってるわよね?」
「はい」
「七咲は彼に飴しか与えてない。だから彼は成長しない。時には鞭も必要なのよ」
「そんな……」
「いい?」
「はい」

――彼は毎日の仕事が辛いと言って帰宅するなり七咲に抱きつく。すぐ甘えたがる。
彼の期待に応えるべく、七咲は彼を甘やかす。
そして次の日もまた次の日も彼は同じように七咲に甘える。その繰り返しよ。
やがては彼は七咲に依存し、七咲なしじゃ生きていけなくなる。
不謹慎な言い方かもしれないけど、七咲を失ったら彼は生きていけなくなる。
これが飴ばっかりを与えた結果よ。

「う……じゃ、じゃあ鞭も与えろと言いたいんですか?」
「ええ。そういうことよ」
「私がですか?」
「当然。だってあなたにしかできないから」
「う……そ、そんなの……私が辛いです」
「でも、辛いからと言ってこのままにしておいたら彼はどんどん駄目になるわよ」
「う……でも私には先輩に鞭を与える勇気なんて……」
「勇気?」
「はい」
「違うわ」
「えっ?」
「これは勇気なんかじゃない!彼に鞭を与えることは彼自身のためなんだから!むしろ、愛情だと思う」
「愛情?」

――そう。愛情よ。
彼は刑事になる前、少なからず辛い目に遭う覚悟があったはず。だから刑事を目指した。
そんな彼を七咲は全力でバックアップした。
そして彼は念願の刑事になった。勤務開始から1年経ってやっと殺人事件の捜査に参加することができた。
しかし彼は事件現場を見て辛い気持ちになった。その気持ちを癒すため七咲に甘えた。
殺人事件の捜査に参加し始めてからまだ間もないっていうのにもう弱音を吐き始めている。
ひどい言い方だけど……私に言わせれば、彼はだらしないわ。
刑事になる前の、辛い目に遭う覚悟はいったいどこに消えたの?
刑事になりたいという夢を全力でバックアップした七咲に申し訳ないと思わないのかしら?

「塚原先輩……」

――そこで、七咲……あなたの出番よ。
今度彼があなたに甘えてきたら、思いっきり突き放してやりなさい!

「えっ?」

――さっきも言ったけど、これは勇気なんかじゃない!愛情なのよ!
あなたが「甘えてんじゃない!覚悟はどうした!?」って思いっきり厳しく叱ってやるのよ!
そうすれば彼は目が覚めるはず!
これはあなたにしかできない。

「で、でも……そんなことをしても平気なんですか?」
「……というと?」
「その……離婚とか?」
「ふふっ」
「えっ?塚原先輩」
「大丈夫。それはないから。彼はあなたの言うことだったら大人しく聞くと思う。むしろ感謝するんじゃないかしら」
「感謝?」
「私は今まで彼と七咲のことを散々見て来たから分かる。自信を持って言える」
「で、でも……先輩を信じないわけじゃないですが……万が一、離婚なんてことになったら?」
「そしたらすぐに別れなさい」
「えっ?」
「彼が所詮それだけのだらしない男だったってことですぐに別れるべきだわ」
「……はい」
「七咲」
「はい」
「何度も言うけど、飴を与えるだけが愛情じゃないわ。時には鞭を与えて間違いを正してあげる、それも愛情だわ」
「はい」
「彼に、見せてあげなさい!あなたの『愛の鞭』って奴を。七咲逢だけに『逢の鞭』って奴をね!」
「『愛の鞭』……『逢の鞭』……分かりました!」
「やるなら、思いっきりね!ぶっ倒れるくらい激しくやってもいいわ!中途半端は絶対に駄目!」
「はい!頑張ります!」
「彼に覚悟を持たせるなら、あなたも覚悟しなさいよ。七咲」
「はい!ありがとうございます」
「ううん。礼はいいから。とにかく頑張ってね。私はあなたたち夫婦をいつまでも応援してるから」
「はい!塚原先輩、どうもありがとうございました」
「じゃ、そろそろ彼も帰って来ると思うし、私も忙しいから。それじゃあね」
「お疲れ様です。おやすみなさい」
「おやすみ、七咲」

『飴と鞭』……
私は今まで先輩に飴しか与えてこなかった。
だから今度は鞭を与えてあげなきゃ!
これは先輩のためなんだから、頑張らないと!
先輩が一人前の刑事さんになるために、私が全力でバックアップする!!
そのためにも頑張って先輩に鞭を与える!!

「逢、ただいま」

来た!先輩が帰って来た!やるなら今しかない!

「先輩、お帰りなさい。今日も遅かったですね」
「逢……」
「今夜は先輩の大好物のハンバーグですよ。早く着替えて……」
「逢!」

予想通り、先輩は私に抱きついた。

「もう……またですか?本当に甘えん坊ですね」
「ごめん。でも、しばらくこうしていたい」
「だったら、まずは着替えてご飯を食べて下さい。冷めちゃいます」

私はわざと先輩を離し、居間に向かった。

「う、うん」

――ま、ご飯食べてからでいっか。逢はどこへも行かない。

「いただきます」
「いただきます」
「もぐもぐもぐもぐ……ごっくん。はぁ」
「もぐもぐもぐ……それで?また同じ事件ですか?」
「うん」
「……」
「本当に……嫌になっちゃうよ」
「……」
「毎日精神的に辛いんだ。逢がいてくれるから毎日何とか頑張れるけど……」
「……私がいるから?」
「うん」
「そうですか」

やっぱり塚原先輩が言った通りだ。
先輩は私に依存しつつある。

その後、ご飯を食べ終わって後片付けも済んだ。
二人ともお風呂に入り終えた。
就寝前になって……

「はぁ。明日も仕事か。またあの事件の捜査ね」
「大変ですが、頑張って下さい」
「もう……毎日辛くて仕方がないんだ、逢」
「先輩」
「逢……」

先輩は泣きそうな表情で私に抱きついてきた。
やるなら今しかない!
中途半端は駄目!思いっきりやる!!
先輩に『逢の鞭』を打ち込む!!

「先輩」
「逢」

先輩が私を放した、そのタイミングを見計らって!

「ふふっ。せーんぱいっ」
「逢?」

パーーーーーーーーーン!

「うぐっ!」

私は右手で先輩の左の頬を思いっきり平手打ちした!容赦なく!!
先輩はあまりにも痛かったのか、両手で左の頬を押さえた。

「逢……」
「しっかりして下さい!!」
「う……」

――それでもあなたは七咲しゅうなんですか!?
私の愛してる七咲しゅうはこんな人じゃない!!
七咲家に婿養子となって七咲家のすべてをその背中に背負う覚悟があったはず!
刑事になってどんな辛い目に遭っても乗り越えられる覚悟があったはずです!
あの時、記憶喪失を乗り越えられたあなたにならそれができたはずなんです!
なのに……どうしてそんなに弱気になるんです?
覚悟はどうしたんですか?
あなたの夢を全力でバックアップした私に恥をかかせないで下さい。
お願いですから……もっと強くなって下さい。
う……う……

「逢……」

どうしよう?先輩を思いっきり、引っ叩いてしまった!
強気なことを言ってしまった!
その罪悪感から来る恐怖で全身が震える!
両手の握りこぶしに力が入る!
顔は俯いて、歯を食いしばって、今にも涙が出そう。

――ごめんなさい。痛かったですよね。
でも、私は先輩に強くなってもらいたいんです。
弱気になって私にどんどん依存していく先輩を見ていて辛くなりました。
このままじゃ私がいなくなったら先輩は生きていけなくなる……そう思ったので。

「逢……」

――確かに私は先輩に頼りにされて嬉しいですよ。
でも、頼りにされすぎると私まで駄目になってしまいそうです。
先輩のことが心配で、大好きな水泳にまで影響が出てしまいそうで怖いんです。
またあの記憶喪失の時と同じようなことが繰り返されるって思うと……私……。

「……」
「……」

先輩はさっきからずっと固まったままだ……。
私のこと……嫌いになっちゃったのかな?
私は今まで先輩にこんなに厳しいお説教をしたことがない。
私のこと、ひどい妻だとか思ってるのかな?
それならそれでいい!私は先輩のためにやれるだけのことはやった!
もう……後はどうなっても……。

「逢!」
「えっ?はい」
「……」
「……」
「ありがとう」
「えっ?あ……」

先輩は私のことを強く抱きしめた!

「ありがとう。う……う……迷惑かけてごめんな」
「先輩……」

先輩は涙を我慢していた。

――本当は自分でも気付いていたんだ。強くならなきゃいけないって。
でもな……逢を見ているとどうしても甘えたくなる。僕の意志が弱いからなんだ。
そんな僕を逢はいつも包み込んでくれた。
だから、このままでいいんだって余計甘えてしまった。
でも、今逢に思いっきり引っ叩かれて、厳しく叱られて、やっと目が覚めたよ。
僕の刑事になりたいって夢は僕だけの夢じゃなかった。
それを全力でバックアップしてくれた逢の夢でもあるんだ。
なのに、僕はそのことを忘れて自己中心的になっていた。
逢のことまで考えてやれてなかった。
本当に駄目だよな、僕って奴は。

「先輩……。先輩は駄目なんかじゃないです!」
「えっ?」

――確かに今までの先輩は駄目でした。
でも、今こうして今までの間違いに気付けました。
だったら、ここから変わればいいんです!
人は、どれだけ時間がかかろうと、努力すれば……変わろうと思えば変われるんです!

「逢……」

――先輩が私の夢を全力でバックアップしてくれたように、私も先輩の夢を全力でバックアップします!!
ですから、精一杯変わる努力をして下さい!!
私は先輩のことを信じています!
私の愛してる七咲しゅうはここから再び立ち上がるんです!

「逢……分かった!僕、頑張るから!!」
「はい!」

――僕は必ず変わってみせる!
また何度も同じ間違いをするかもしれない!
逢にも迷惑をかけるかもしれない!
でも、必ず変わってみせるから!!
ずっと、僕のことをそばで見続けていてほしい。
逢にはずっとそばにいてほしい。

「先輩!」
「逢!」

私も先輩も我慢していた涙を流した。
私は先輩に抱きしめられたまま、先輩の胸を借りて号泣した。
もうホッとして全身の震えは止まった。

「な、泣くなよ」
「だ、だって……怖かったんですから」
「怖い?何が?」
「先輩に嫌われてしまうんじゃないかと思って」
「僕に?」
「はい……」
「ふっ」
「えっ?」
「馬鹿だなぁ。逢は馬鹿だよ。僕がそんな人間だと思ったか?」
「う……」
「僕は殴られようが引っ叩かれようが蹴り飛ばされようが踏み潰されようが逢のことが好きだよ」
「先輩」
「それが僕を想っての行動なら絶対に逢のことを嫌いになんかならないよ」
「先輩」
「むしろ、もっともっと逢のことが大好きになる!」
「先輩!」
「ほらほら、泣くなって!」

先輩は右手で私の頭を撫でた。

「う……う……そ、そういう先輩こそ目から涙が出てますよ」
「う……こ、これは……涙なんかじゃない!!そう、心の汗だ!!」
「……」
「ん?どうした?」
「う」
「う?」
「うまいことを言ったつもりですか?」
「う、うん」
「全然うまくありません……よ!」
「あ……んん」

私は突然顔を上げて先輩にキスをした。
お互い涙を流してるから口の中がしょっぱくなった。
今日のキスは……涙の味。
先輩が新たな決意をしたその証!

「逢……」
「先輩」
「逢……う……」
「先輩?先輩?」

先輩が私を抱きしめる力がどんどん弱くなっていく。
まるで先輩から力が抜けていくみたいに。
どんどん力が抜けていく先輩を今度は私が支えた。
そのまま二人ともその場にしゃがみ込んだ。

「……」
「先輩?だ、大丈夫ですか?」
「……」
「……寝て……る?」
「……」

どうやらちょっと強く叩きすぎたらしい。
先輩は気絶してそのまま寝てしまった。

「先輩……やっぱり痛かったんですね。本当にごめんなさい」
「……」
「いつまでも、愛してますからね!先輩」

私は先輩の左の頬を労るようにそっとキスをした。
ちょっと『逢の鞭』は強すぎたのかな?
鞭を与えた後はご褒美に飴を与えてあげてもいいよね?

「おやすみなさい、先輩」

先輩を寝室に運び、ベッドに寝かしつけ、私も寝ることにした。

最初は不安で怖かったけど……どうやら『逢の鞭』は痛いくらいよく効いたらしい。
先輩は次の日から変わった!
強くなって、もう私に甘えすぎなくなった。
先輩曰く……

――僕は逢のことが好きになったその日から逢を一生守るって決めたんだ!!
逢を守るためには僕自身も強くなきゃいけない!!
僕自身が強くならなきゃ逢を守れっこない!!
だから僕は強くなる!!もっともっと強くなってみせるさ!!
すべては僕自身と逢のためにな!!


先輩は本当にたくましくなった。
それでも先輩はたまに私に甘えてくるけどね。
そんな時は私が全力で先輩のことを包み込んであげる。
頑張ってるご褒美に食べる飴は格段においしいはず!
だから、たまには先輩においしい思いをさせてあげたい。
大好きな先輩だからこそ、余計に。

こうして私と先輩の愛情はさらに深まった。
刑事ドラマや先輩が捜査している殺人事件みたいに、なかには分かり合えない夫婦もいる。
長年熱愛しててもその関係がほつれてしまう夫婦もいる。
でも、私と先輩は違う!!絶対に違う!!胸を張って自信を持って言える!!
私と先輩の絆はこの先何十年経っても絶対に切れることはない!!
二人がお互いを愛し合ってる限り、絶対に!!
そう思えたのもすべて塚原先輩のおかげなんです。
塚原先輩のアドバイスがあったからこそなんです!
もちろんしゅう先輩には塚原先輩のことは内緒にしてある。
後でこっそり塚原先輩にお礼を言おうと思う。

本当にありがとうございました!!



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、しっかりして下さい」(ノベル)
END

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2010-12-03

エピソード「先輩、私を好きにして下さい」(ノベル)(※18禁注意)

結婚から2ヶ月ほど経った8月中旬。
逢が誘拐された事件から3日経ったある日の出来事。
僕も逢も朝から仕事に行っていた。

「おはようございます」
「お!七咲選手、おはよう」

そうそう、逢がやっている仕事は競泳の選手なんだ。
この前の大会で日本新記録をマークした凄腕の選手なんだ。
高校時代、進路を悩んでいた逢に僕がアドバイスしてあげた。
一流の体育大学に行って競泳の選手になったらどうかと。
そしたら逢は見事に才能を開花させた。
やっぱり僕が見込んだだけのことはある!
逢は僕の最高の奥さんだ。

この日は朝9時から練習があるらしい。
早速練習するため、逢は更衣室へと向かった。

「今日はクロールの練習かな」

逢がボソッと呟きながら着替えていると……

「あら、七咲さん。早いのね」
「あ、先輩。おはようございます」

まあ、誰も勘違いしないと思うけど、一応説明しておこう。
『先輩』というのはここでは僕のことではなく、逢の競泳の先輩らしい。

「……」
「……どうしたの?ボーッとして?」
「えっ?いえ、別に」
「ははーん。さては私の胸に見惚れていたのね」
「なっ!?何を……そんなわけないじゃないですか!」
「今うらやましそうな顔してたわよ」
「……」
「はぁ……先輩はいいですね。そんなに胸が大きくて。私も分けてもらいたいですぅ」
「ち、違います!!」
「いいこと教えてあげる!」
「な、何ですか?」
「胸ってね……愛情込めて優しく揉んであげると大きくなるんだってよー」
「う……」
「あ、そうだ!七咲さんって確か旦那さんいたわよね?」
「……はい。一応います」
「うらやましいわね!私より胸小さいのに旦那さんがいるなんて」
「う……一言余計です」
「七咲さんの方が人生の勝ち組よね~」
「そ、そんな訳……」
「そこでね!」
「先輩、人の話聞いて下さい」
「いいから!七咲さん、ちょっと耳貸して。大きな声じゃ言えないのよ」
「もう先輩!」
「あのね……」
「はい」
「旦那さんに揉んでもらったら?」
「えっ??今何て??」
「だーかーらー旦那さんに胸を揉んでもらったら?大きくなるわよ」
「……はい??い、嫌ですよ、そんなの」

――しゅう先輩に胸を揉んでもらうなんて……絶対に嫌!!
あのエッチな先輩のことだからきっと喜ぶに決まってる!!
冗談じゃない。

「あ、そ。ならいいわ。そのままでいなさい」
「そうさせてもらいます」
「……」
「……」
「それにしても七咲刑事って、かっこいいわよね~」
「はい??いきなり何の話ですか?」
「だって、あなたのために拳銃一つ持って単身で犯人のアジトに乗り込んだんでしょ?」
「それが何か?」
「奥さんのために生命を張れるかっこいい旦那!彼ならきっとあなたの相談に乗ってくれるわよ」
「い、嫌ですよ……あんな人」
「あらあら、愛する旦那をそんなひどい言い方するなんて、あなたってひどいわね」
「ひどくて結構です。それでは、私は着替え終わったので失礼します」

逢が更衣室を出て行く。

「ふふふ。あんなに照れちゃって。七咲さんったらかわいいんだから」
「七咲刑事、頑張りなさいよ。あなたの腕にかかってるんだから」


一方その頃、警察署では……

「七咲、次は商店街のパトロールだぞ」
「わ、わかりま……はっくしょん」
「どうした?風邪か?」
「い、いえ、別に。はっくしょん。はっくしょん」
「き、気を付けろよ」
(誰かが僕の噂をしているな。さっきから妙な悪寒がする……)


バシャバシャバシャ……ピッ。

「うん、前回よりもいいタイムだ。この調子でいけば次の大会は勝てるな」
「はい。コーチ、ありがとうございます」
「よし、ちょっと休憩だ。5分したらまた練習だ」
「はい」

クロールのタイムを測り終えた逢はタオルで身体を拭いている。

「う……」

逢は胸を拭こうとして手を止めた。
どうやらさっきの先輩の言ったことを気にかけているようだ。

――別に、このままでもいい気がする。
だって、先輩は本当は胸の大きい子が好きなはずなのに、私を選んでくれた。
先輩は胸ではなく、中身を見て私を選んでくれた。
だから、ちょっとくらい小さくたって別に問題はないはず。

逢は胸を拭いてベンチに腰掛けた。

――でも、先輩は胸が大きい方が嬉しいのかな?
いや、違う!だって先輩はあの時!

『……決して大きいとは言えなくても、毎日の部活で鍛えられた胸筋に内側から押し上げられ……外側からは抵抗をなくす為に開発された競泳水着によって圧迫されている胸』
『僕は、その火薬の様に爆発しそうな程のエネルギーを蓄えた感じが見たくて、ついつい覗きに来てしまったんです!本当にすみませんでした!!』


そう言ってくれた。正直、嬉しかった。
でも、あれが私を気遣って言ったセリフで、本心は違っていたら……。
……
駄目、そんなこと考えちゃ!もっと先輩のことを信じてあげないと。
でも、でも……。

「七咲、そろそろ休憩終わりだ」
「あ、はい。分かりました」

――先輩……私はどうしたらいいんですか?


一方その頃、商店街では……

「うーん、どうしたらいいんだろうねぇ?」
「しゅうちゃん、どうかしたの?」
「ああ、まっちゃんか。何かさっきから妙な悪寒がしてくしゃみが止まらないんだ」

まっちゃんとは、大学の同期で同僚でもある松原正義のことだ。
以前、僕が記憶喪失になった時にも大変世話になった。
今の逢との関係を築いてくれた恩人のうちの一人でもある。

「ひょっとして……あいつが噂してんじゃねぇの?」
「は?あいつって?」
「とぼけんなよ~このリア充が!!」
「いてっ!リ、リア充ってあのなぁ……」
「ああ、ちなみに今のセリフはな、この話を読んでる人たちの気持ちを俺が代弁してやったんだ」
「誰だよ?それ」
「愛する旦那の噂をしちゃうなんて……は……ははは」
「愛する旦那って……僕のことか?ってことは逢しかいないよなぁ」
「そうに決まってるだろ?」
「逢は今日必死で練習してるはずだぞ?余計なこと考えてる暇なんてないはずだ」
「またまた~」
「う……何だよ?」
「聞いてみれば?何か悩みがあるのかもよ?」
「ないだろ、そんなもん。うちの逢に限って」
「みんな、聞いた?うちの逢だって!は……うらやましくなんかないやい!」
「だから誰に話してんだよ?」


そして夕方

「ただいま」
「あ、逢。おかえり」
「う……」

逢は僕を見るなり恥ずかしがってそっぽを向いた。

「ん?どうした?僕の顔に何か付いてる?」
「い、いえ、何も」
「そっか。ならいいんだ」
「……」

逢は無言で部屋に向かう。

――やっぱり嫌だ。私には絶対に無理。
先輩に胸を揉まれるだなんて……触られるのも嫌なのに。
それに私は今まで何度か先輩に胸を触られたり揉まれたりして……その度に先輩に対して本気で怒ってきた。
今更、やっぱり触っていいだなんて言えるはずがない。
一度言ったことをそう簡単には否定できない。
でも……どうすれば?私はいったいどうすればいいの?

――うーん……何か、逢の様子がさっきからおかしいな。
どうして僕を見るなり照れたんだ。
別に僕は何もしてないのに。どうしてなんだ?
やっぱり、まっちゃんが言ってた通り、何か悩みがあるんじゃ?
僕で解決できるような悩みなら協力してあげたい気もするけど……。
よし、こうなったら後で逢から直接聞こう。

僕と逢はお互いに何も会話せず夕飯を食べた。
お互いに何も会話せず……というよりはお互いに何を話したらいいか分からないといった感じだ。
もし逢から聞き出すなら……寝る前にしよう。

……

「……先輩、おやすみなさい」
「あ、ああ……おやすみ、逢」
「……」

部屋に戻ろうとする逢。

「待って」
「え?」
「逢……もしかして何か僕に隠し事してる?」
「えっ??いえ、別に、何も」
「本当?」
「はい、本当です」
「じゃあ、何で帰って来てからあんなに様子がおかしかったの?」
「そ、それは……」
「それは?」
「ちょっと……疲れていたからです。今日は全力でタイムを測ったので」
「でも、それじゃあ僕を見ても照れたりはしないはずだ」
「……」
「照れるってことは……きっと僕には言えないことでもあるんじゃないのか?」
「……」
「もしかして……何か悩み事?」
「い、いえ……」
「もし何か悩んでいるのなら僕が力になる!だから一緒に解決しよう。一人で抱え込まずに」
「いえ、何も悩んでないです」
「逢……悩み事でも何でもいいから僕に相談してくれ!逢が苦しんでいるのを僕は見たくない」
「……」
「……」
「や……やっぱり……先輩には言えません。言いたくないんです」
「逢」
「お願いします」
「う……わ、分かったよ。逢がそこまで言うのなら大丈夫だな」
「おやすみなさい」
「うん。おやすみ」

――ごめんなさい、先輩。せっかくアドバイスいただいたのに、結局言えませんでした。
言いたくないんです。恥ずかしくて。

――逢……いったいどうしてしまったんだ?
僕に言えないこと?まさか……エッチなこととか?胸のことだったりして?
いや、あはは……まさかな。あの逢に限ってそんなことはない。
だって今まで僕は逢の胸を触ったり揉んだりして何度も本気で怒られてきた。
危うく結婚できないところだった。
だから逢が胸の相談をするなんてまずないな。
それに、僕はそんなこと気にしないし。
逢は逢だ。例え胸が小さくたって、逢のことが世界一好きだってことはこの先ずっと変わらないからな。
だとしたら……逢はいったい何に悩んでいるんだろう?

僕は気になって寝付けなかったので、悪いとは思ったが逢の部屋をこっそり覗いてみた。
逢はすでに寝ている……と思いきや、まだ部屋の電気はついていて、しかも……着替え中だった!!

――うっ!やばい……逢はまだ着替え中だったのか!!
下着を見てしまった。み、見なかったことにしよう。
しかし……何か様子が変だ。どうして胸を見つめたまま固まっているんだ?
まさか……僕の予感が本当に当たったんじゃ……?

もっとドアを開けて部屋の中の様子を見ようとしたその時だった。

ギィ……

「あ……!」
「ん……?」
「あ、逢……ごめん、もう寝てると思ってた」
「先輩……」
「えっ??逢?」

逢はあの時と同じ、涙ぐんだ顔をして、弱々しい声で僕を呼んだ。
あの時っていうのは例の僕と逢が付き合い出す前の放課後でのプールのことだ。
逢が僕を見るなり涙ぐんでプールに落ちたあの時と今の逢がそっくりだ。

「逢……どうしたんだ?泣いてるじゃないか」
「はっ!な、泣いてなんかいません」

逢は必死に涙を隠そうとするが、僕にはもうバレバレだ。
逢は急いでパジャマを着た。

「先輩……いったい何のつもりですか?私の部屋を覗いたりして」
「何のって……逢が心配だからに決まってるだろ!」
「ですが、私はさっき先輩には言いたくないと言ったはずです!なのに、どうして詮索するんです?」
「そんなの……逢を放っておけないからに決まってるだろ!」
「……」
「どうしたんだ?まさか……いじめられたのか?」
「違います」
「胸が小さいとか馬鹿にされたのか?」
「う……そ、そんなこと……」
「そうなのか!?」
「ち、違います……」
「逢!」
「えっ??あ……」

僕は逢の両肩に両手を載せて、逢を勢い良く後退させてそのままベッドに押し倒した。

「逢」
「先輩」
「そんなこと気にしなくていいんだよ!!誰に何と言われようと僕は今の逢が好きなんだ!大好きなんだ!」
「……」
「胸のことなんて……気にする必要ないんだよ。僕は……好きだから。逢も逢の胸も」
「ち、違います!!そんなんじゃありません。まったく、先輩はどうしていつもエッチな方向でしか物事を……」
「じゃあ、さっき何で胸を見つめたまま固まっていたの?」
「えっ??それは……」
「逢……僕たちは夫婦だろ?なのに隠し事なんて……嫌だよ」
「……」
「気になるじゃないか!気になって仕方ないよ!だって、逢のことが心配だから!!」
「先輩……」
「お願い……言いたくないって気持ちは分かる。だけど、どうか僕に話してほしい」
「……」
「僕が力になれるようなことだったら、僕は何でもする!逢のためなら何だってできるよ!だから!」
「う……」
「……」
「……じゃ、じゃあ……笑わないで聞いてくれますか?」
「うん」
「実は今日……」

……

「何だ、そんなことか。やっぱりな」
「そ、そんなことって何ですか?恥ずかしいんですよ」

僕に胸を揉んでほしい……それは逢らしからぬ発言だった。
だから言いたくなかったんだな。聞かなきゃよかった。
でも、これはチャンスなんじゃないか?
今まで胸を触られるのを本気で嫌がっていた逢がとうとう胸を触らせてくれるんだ!!
僕は一歩前進した気がする。
いや、一歩どころじゃないよ!!もっとだ!!
夫として、男としてこの上ない目覚しい前進をした!!
……でも、ここで調子に乗っちゃいけない。
ここは丁重に断るべきだな。

「せっかくの嬉しいお誘いだけど……僕には無理だ」
「……そうですよね」
「うん。だって、逢は今のままで十分だと思う」
「先輩……」
「その先輩が言ったことは気にしなくていいよ。だって僕が気にしてないから」
「先輩……ありがとうございます」
「逢……本当は言いたくなかったはずなのに、無理に言わせたりしてごめんな」
「いえ……」
「でも、相談してくれてありがとう。おかげで僕も安心した」
「私こそ、すみませんでした。先輩に心配をかけてしまいました」
「いいんだよ、これくらい」
「はい」
「……」
「ん……んん……」

僕は逢にキスをした。色々な意味を込めて。

「はぁ……あはは」
「クスッ」
「じゃ、邪魔して悪かったな。おやすみ、逢」
「おやすみなさい、先輩」

僕が部屋を出ようとすると……

「あ、やっぱり待って下さい」
「えっ??ど、どうした?まだ何か?」
「私……安心しました。ですから……そのお礼に……いいですよ」
「えっ??」

逢はパジャマを脱ぎ始めた。

「えっ??あ、逢……いったい何を?」
「ふふっ」

逢はさらに下着も脱いで上半身裸になった。
こ、これはまさか!!
僕の望んだ展開が来るのか!?来ちゃうのか!?

「えっ??み、見ちゃ駄目だ……見ちゃ駄目なんだ」

僕は両手で一生懸命目を塞いだ。

「別に……見てもいいですよ」
「えっ??」
「私、もう何とも思いません」
「で、でも……」
「今決心がついたんです。先輩のおかげで」
「ぼ、僕の?何が?」
「先輩になら……別に構いませんよ。私を……好きにして下さい」
「ええっ??あ、逢!?」
「あの……寒いので早くして下さい」
「さ、寒いって……そ、そんな格好をすれば当たり前だろ。早く服を着た方が……」
「先輩。何を躊躇っているんですか?見てもいいんですよ?」
「う……うう……」

み、見てもいいのか?本当にいいのか?
こ、これは予想通りの結果だけど……僕が望んでいた展開だけど……はたしていいのかな?

「ほーら、先輩。こっち来て下さい」

逢が僕の手首を掴んでベッドへと僕を引っ張った。
その途中で目を覆っていた手が外れて逢の裸が見えてしまった!

「う、うわ……」
「クスッ」

そのままベッドへと引きずり込まれた。
僕の手首を掴んだまま後退し、ベッドに仰向けで倒れる逢。
逢に引っ張られ、ベッド上で逢の上にうつ伏せで乗っかる僕。

「え?あ、逢?こ、これは……?」
「お願いします」
「は??」
「ほら、早く……その……胸を……」
「え??揉めと?」
「はい」
「ちょ、ちょっと待て……こ、こ、こ、心の準備が……まだ……」

僕は緊張してその場から一生懸命逃げようとする。

「逃がしません!」

逢が僕の首の後ろに両手を回し、さらに僕の両脚を両脚で固定した。

「う……」
「署長!容疑者1名、確保しました!これより取り調べを行います」
「え?よ、容疑者って??」
「そうか。煮るなり焼くなりエッチなことをするなり好きにしたまえ、七咲刑事」
「エ、エッチなこと??そ、そんなの駄目だぞ?」
「わかりました。じゃあ、まずはエッチなことから始めます」
「お、おい……逢!」
「ほら、大人しくするんだ!七咲しゅう容疑者!!」
「え??ぼ、僕が!?」
「おまえしかいないだろう?」

逢は刑事ごっこをしてすっかり楽しんでいる。

「う……」
「バカだねぇ君も。私から逃げられると思っているのかい?」
「逢……う……」
「じゃあ、まずはこうして……」
「え??」

逢は右手を僕の首の後ろから離して僕の左手を掴み、胸の上に乗せた。

「あ……」
「ええっ」

僕の左手が……今……逢の右胸を触っている!?
しかも服の上からではなく……生乳だ!!


「うわああああ!!」
「はう!!」

僕はびっくりしていきなり左手を引っ込めた。
その際に強く逢の右胸を擦ったのか逢も喘ぎ声を上げた。

「もう……い、いきなり何するんですか?」
「何って……そう言う逢こそいきなり何するんだよ!!びっくりしたじゃないか」
「そ、それは……」
「さっきまであんなに嫌がっていたのに、どうして急に?」
「だから……さっきも言ったじゃないですか。先輩のおかげで決心がついたって」
「そ、それにしてもいきなり過ぎるよ。し、心臓がバコバコ言ってる」
「……すみません」
「い、いや別に謝らなくても……」
「迷惑でしたよね。先輩は……別に……」
「ち、違う!!そういうことじゃなくて!!」
「取り調べは以上です。容疑者を釈放しました。おやすみなさい」

逢は僕を釈放した。

まずい!せっかくの雰囲気が僕のせいで台なしだ!!
僕に勇気がないせいで……僕がヘタレだから……逢が……。
いや、何を言ってるんだ!?まだ間に合うじゃないか!!
ここはいくしかない!!
男として、この誘い、ありがたく乗ってやるんだ!!
据え膳食わぬは男の恥!!
七咲しゅう容疑者、行きます!!
取り調べの最中に暴れて取り調べの刑事さんを襲います!!
そんな筋書きで。

「おやすみ……と言うとでも思ったか?」
「……」
「逢……覚悟するんだな。僕を本気にさせたな?」
「……ん?」
「僕の全身に流れているド変態の血が一気に騒ぎ出した。もう止まらない!!誰にもこの暴走は止められない」
「……」
「僕が……このド変態の僕が……今夜はおまえを寝かせないぞ」
「ええっ??」
「えいっ!」
「きゃあ!」

僕は一気に覚醒した。
僕は勢い良く逢に飛びついた。

「さーて、どこをどう治療してやろうか。要するにだ、胸を大きくしてやればいいんだろ?」
「えっ?は、はい」
「ふふふふ、まずはこうかな」

僕は両手で逢の両乳首をいじる。

「あ……ああん……あああ……」
「おやおや刑事さん……ずいぶんかわいい声で鳴くんだなぁ。ゾクゾクしてきたよ」
「しぇ、しぇん……ああん……ぱい……ああ……こ、怖い……はあん……でしゅ」
「ん?どうした?聞こえないよ」

僕が逢の乳首をいじると逢がものすごくかわいい声で喘ぐ。
そういえば、今まであんまり聞いたことなかったなぁ。逢の喘ぎ声。
いったい、どんなかわいい声を出せるのか、気になった。
よし、もっといじってみよう。

僕は両手で逢の両胸を強く鷲掴みした。

「はあああああああん。しぇ、しぇん……ああん……強すぎましゅ」
「……」
「も、もっと……ああ……優しく……」
「甘い!」
「えっ?」
「優しくとか言ってるからいつまで経っても大きくなれないんだよ」
「……」
「水泳でも常に自分に厳しくしてきたんだろ?だから今頭角を現している」
「はい」
「その逢が自分の胸を甘やかしてどうする!?もっと大きくして胸でも頭角を現すんだ!!」
「はい」
「返事が弱い!返事はどうした!?」
「はい!」
「僕は別にこのままでもいいんだよ。僕は逢の胸のことは一切気にしてないから」
「……」
「でも!その先輩に馬鹿にされて悔しかったから勇気を出して僕に頼んだんだろ?」
「そうです」
「だったら!僕は厳しくやる!!これは僕のためじゃない。逢のためなんだから」
「先輩……」
「違う!」
「えっ?」
「僕は先輩じゃない。コーチだ!!鬼コーチなんだ!!水泳ではなく、胸のトレーニングの鬼コーチなんだ!!」
「……はい!コーチ!!」
「よし、いい返事だ。いい結果を出したかったら、僕の言うことにすべて従うんだな」
「はい!もちろんです!」

ふふふ、我ながらうまいことを言ったもんだ。
自然な流れで逢を丸め込んだ。
僕の言うことにすべて従う……か。
つまり、何をしても逢は抵抗しないってことだ。
そう、何をしても……だ!!

「じゃあ、早速行くぞ。まずは基本を教えておく。息を止めるな!常に呼吸するために声を出すんだ」
「はい!」

そう、逢の喘ぎ声を聴くためにはまずはこれだ!

「よし、次にどこを鍛えればいいかチェックする」
「はい!よろしくお願いします」

僕は両手で逢の両胸を押してみる。

ぷにぷに。

「ああん……」
「おお!」

……や、柔らかい!!しかも弾力がある!!
それだけじゃない。奥の方は水泳で鍛えた胸筋が張っててちょっと硬い。
それに逢の胸は熱を帯びていて温もりがある。

すりすり。

「あ、ああん。コ、コーチ、な、何を?」
「温かい」
「え?」

僕は逢の胸に頬ずりしてみた。やはり温もりを感じられる。

ちゅっ。ちゅっ。

「ああん……だめ……」

僕は逢の乳首にキスをした。
逢の乳首はすでに硬くなって、ピーンと勃っていた。

「まったく。ちょっといじっただけなのに、すぐ硬くなって勃っちゃうなんて……」
「えっ?」
「感じやすいんだな」
「ち、ちが……ひゃうん……」
「これはお仕置きが必要だな。この駄目な乳首め!!」
「きゃああああああああああ」

カプッ。ヂュー。

「ああ、ああん」

僕は逢の左の乳首をアマガミして、噛みながら上へ引き上げた。

カプッ。ヂュー。

「ああ、ああん……だめ……」

右でも同じことをする。
それを数回繰り返した。

「はぁはぁ」
「うう……」
「い、今のは胸を上に引き上げて胸を大きくするためのトレーニングだ」
「う……」
「よし、次は……」
「はい」

ペロペロ。カプッ。ヂュー。
ペロペロ。カプッ。ヂュー。

「はあん!ああああん」

さっきの動作に舐めるを加えた。
逢の胸を舐めて乳首をアマガミして、噛みながら上へ引き上げた。
左右繰り返す。

「はぁはぁはぁ」
「あ、あの、コーチ」
「ど、どうした?」
「さっきから……何か当たってます」
「何がだ?」
「よく……分かりませんが、何か硬いものが私の脚の付け根辺りに」

逢に言われて気付いた。
……勃ってる!
僕の肉棒がさっきからいきり立っている!!

「ああ、これか」

そう言って僕は逢の股間にソレを押し付けた!!

「ああああ……い、痛い」
「ん?痛いのか?」
「はい」

そっか。逢はこっちも初めてだもんな。痛いって思うのも無理はない。
逢がちょっと泣きそうな顔をしていたので、遠慮した。
僕はふと時計を見上げる。
……もう2時だ。
さっき逢に今夜は寝かせないと言ったものの、明日は僕も逢も朝早いってことを今思い出した。
今寝ておかないと死んでしまう!

「よし、もう2時だから、今日はここまでにしよう」
「え?で、でも、私まだ頑張れます!」
「いや、駄目だ。……確かにやる気は大事だ。でもな、頑張り過ぎは禁物だ」

そう言って僕は逢に手拭きを渡す。

「毎日いいトレーニングをするためには休息も大事だよ。ほら、これで拭いて」
「ありがとうございます」

逢は僕が舐めたところを手拭きで拭いた。
僕は逢から手拭きを受け取ってゴミ箱に捨て、下着とパジャマを逢に渡した。
逢がパジャマを着終えたところで……

「今日の胸のトレーニングは以上だ。また明日やろう。必ずな」
「はい!コーチ、ありがとうございました」
「お疲れ様。本当によく頑張ったな」
「い、いえ、そんなに……あ……」

僕は逢にキスをした。ちょっと深めに。

「んん……」

「頑張ったご褒美だ」
「ありがとうございます、コーチ」
「いや、もうトレーニングは終了してるから普通でいいよ」
「え?あ、はい」
「自分で言っておいて難だけど……やっぱりちょっとだけ恥ずかしい」
「クスッ」
「な、何がおかしい?」
「いえ、何でもありません。元の先輩に戻って、ちょっとホッとしました」
「え?」
「だって、さっきの先輩ちょっと怖かったです」
「あ、ごめん。やり過ぎたかな?」
「いえ。私は別に厳しくても構いませんよ。明日ちゃーんと先輩に報告しておきますから」
「え?報告って何を?」
「今日しゅう先輩にされたことを漏らすことなく全部」
「えっ?や、やめてくれ!!そんなことしたら僕は……」
「私に厳しくした罰です。覚悟して下さい」
「あ、逢ぃぃぃ……」
「冗談ですっ!クスッ」
「え?じょ、冗談だったのか。よかった」
「あ、やっぱり報告します」
「どっちだよ!?」
「クスッ。それじゃ、今度こそおやすみなさい」
「お、おやすみ」

くそう!逢の奴……謀ったな!
これじゃあ今夜は気になって眠れないじゃないか!!
ど、どうしよう!?大変なことになったよ。
あ、明日……明日逢が言い触らさないことを祈るしかないな。


翌朝
女子更衣室
「せーんぱいっ。おはようございます。今日もいい天気ですね」
「あれ?七咲さん今日はずいぶんとご機嫌じゃない。どうしたの??」
「ふふっ。何でもありませんよ。それじゃ」
「あ、ああ」

逢は弾んでプールへと向かう。

「もしかして……実践しちゃった?あーあ。あれ冗談のつもりで言ったのに」

「おはようございます、おはようございます」

「でもま、いっか。これで七咲さんも大人の階段を一歩昇ったってことで!いいよね?」


一方その頃、警察署では……

「七咲、行くぞ」
「はい!」

あれ?変だな。今日はまったく悪寒がしない。
もしかして逢が黙っててくれてる?
だといいんだけどな。


プールでは……

「位置について!」

逢と先輩が二人一緒に飛び込み台の上に立ち、位置についている。
先輩が逢の横顔をちらっと見ている。

――ふふっ。七咲夫婦って本当に仲がいい夫婦ね。うらやましいわ。

「よーい……」

――二人とも、幸せになるの……

「どん!」

――よっ!

ドッボーーン。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、私を好きにして下さい」(ノベル)(※18禁注意)
END?

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2010-11-08

エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~続編」(ノベル)

前編:エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~」(ノベル)

外はしんしんと今年の初雪が降り積もる。
逢の部屋に僕と逢の二人きり。
逢はベッドで温かく安静にしていて、僕は逢の勉強机用の椅子に座ってベッドサイドで逢の看病をしている。
時刻は午後二時。ついさっき二人でお粥を食べたところだ。
部屋は暖房が効いてるけど、足元が少し寒い。
ベッドで布団被ってる逢はいいけど、僕は少し寒いんだよな……。
逢が少しうらやましい。僕も寝たいよ。
だけど……こんな時だからこそ、逢のそばにいてやらないとな。

「……」
「……」
「……」
「……う!な、何ですか?さっきからジロジロと」
「い、いや……あはは」
「……」

ジロジロって……あのなぁ!こっちは心配して逢の顔色を見ていただけなんだぞ!
べ、別に……覗きとかじゃ……。
まったく、こういう時ってどこに視線を合わせたらいいんだ?
看病って言っても何をすればいいのやら。

「寒くないか?」
「はい」
「そっか」
「先輩こそ、見るからに寒そうですが」
「僕は大丈夫だよ」
「本当ですか?足、震えてますよ」
「ああ、これは……単なる貧乏揺すりだ」

そう言って僕はわざと貧乏揺すりをした。寒いのをごまかすために。

「寒いんですね?」
「いや、だから貧乏揺すりだって!」
「じゃあ、その貧乏揺すり、やめてください。みっともないです」
「……はい」

僕は仕方なく貧乏揺すりをやめた。

「うちはただでさえ貧乏なのに、貧乏揺すりなんて縁起でもないです」
「そ、そっか……ごめん」

そうだった!七咲家はずっと貧乏だったんだ!なのに僕って奴は……

「そんなに落ち込まないでください」
「いや、僕が悪いんだ……」
「もういいですから」
「……」
「あの、もし、先輩が寒いなら……」
「ん?」
「……入りますか?」

そう言って逢は掛け布団をめくった。

「あ、いいよ。平気だから」
「遠慮しなくてもいいですよ」
「え、遠慮なんてしてないよ」
「それとも……私が風邪だからですか?」
「うん。いや、あの……決して風邪うつされるからっていう理由じゃなくて……」
「はい。分かってます。風邪うつされることを気にしているなら、そもそも私のそばにいないはずですし」
「うん。僕の心配はいいから、逢はちゃんと温かくして、早く風邪を治すことを考えてよ」
「お気遣い、ありがとうございます」
「……あ!」
「どうしました?」
「思い出した!ちょっと一人で寝てて」
「え?あ、はい」

七咲家のことを考えていたら思い出した!逢のお母さんから言われてたことを。

「お待たせ」
「あ……それ」
「そう、生姜汁だよ。これを飲んで温まろう」
「はい」
「……う、熱いなぁ。飲んだ瞬間に身体が温まっていく感じがする!」
「ん!?この味……どこかで……」
「味がどうした?」
「あ!思い出しました!!これ、昔よくお母さんが作ってくれた生姜汁です」
「そうなの?」
「はい。先輩がどうしてこれを知ってるんです?」
「実はな……さっき逢が眠ってる間に、逢のお母さんに電話したんだ」
「私のお母さんに?」
「うん。逢が風邪ひいたの初めてだから、どうやって看病したらいいかわからなくて」
「それで生姜汁を?」
「そう。きっと幼い頃を思い出すはずだから飲ませてあげてって」
「そう……ですか。じゃ、じゃあ水枕の雪のことも?」
「え?い、いや、それは僕が思い付いたことだから」
「そうなんですか?」
「うん」
「……」
「あの……もしかしてさ……」
「はい」
「前にもこんなことがあったの?」
「え?こんなことって?」
「生姜汁を飲ませてもらったこと、水枕に雪を詰めてもらったこと……それに……」
「……それに?」
「……ペンギン」
「……え?ペンギン?」
「さっきペンギンって言いかけただろ?」
「え?……」
「気になる!すごく気になる!何があったか言ってほしい」
「……」
「もしかして……言えないようなこと?恥ずかしいこと?」
「い、いえ……別にそんなことでは……」
「あ……嫌ならいいんだ。ただ……僕と出逢う前の逢をもっと知りたいってだけだから」
「いえ、別に嫌ではないです。ただ……幼い頃の話なので……」
「幼い頃?」
「はい。……笑わないで聞いてくれますか?」
「うん」

笑わないでって……いったいどんな話なんだろう?

それから逢は小学1年生の時の初雪の思い出について、僕に話してくれた。
逢の小学1年生の時の初雪の日……
逢は風邪で熱を出して家で大人しくしてなきゃいけなくて……
せっかくの初雪を体験出来なくて悔しい思いをした。
無理してでも学校に行って友達と雪で遊びたかった逢。
そんな逢を当然の如く、お母さんは止めた。
逢の体調を気遣っての事だった。それは親として当然の事だ。
だけど、逢はそんなお母さんを恨んだ。
雪で遊びたいのに、お母さんが意地悪する!!嫌い。大っ嫌い。
泣きながら寝室に戻り、寝室で泣きじゃくる逢。
そんな逢を不憫に思ったお母さんは逢のためにと思い、ある秘策を考える。

「……え?じゃあ、僕だけじゃなく逢のお母さんも水枕に雪を詰めたのか。しかもペンギンの枕カバー」
「そうなんです。先輩とまったく同じ理由で」
「奇遇だなぁ。僕が逢のお母さんとまったく同じ理由でまったく同じことをするなんて……」
「ええ。びっくりしました。本当に先輩が自力で思い付いたんですか?」
「うん」
「そうですか……」
「じゃあ、ちなみに、その涙の跡は今話したことをついさっきまで夢に見ていたからなのか」
「そうなりますね。どうやらその夢を見ながら泣いてしまったようです」
「で、この出来事がきっかけでペンギンが好きになって水泳を始めたと?」
「はい」
「なるほど……」
「今考えてみれば、おかしな話ですよね。ペンギンさんが雪を運んで来ただなんて……」
「……」
「先輩?」
「……」
「やっぱり……つまらないですか?こんな昔話」
「いや、すごくいい話だと思う」
「え?」
「逢が羨ましい。そんなにいいお母さんに育てられて羨ましいよ」
「そ、そんなこと……ないと思います」
「いや、そんなことあるよ!僕にはそんな感動的な思い出がないからね」
「……」
「第一、雪自体にそんなにいい思い出がないんだ。逢と出逢うまではね」

例えば、中学2年生のクリスマスの日にデートをすっぽかされたりとか。
あれは本当に嫌な思い出だった。
逢と出逢うまでの僕には雪の日にろくなことがなかった。
だから……今の逢の話を聞いててすごく羨ましく思えた。

僕は独り俯いて感傷的な気分に浸った。

「……」
「……先輩?」
「……」
「……先輩!」
「……」
「……先輩!!」
「あ、ああ……何?」
「どうしたんですか?顔色……悪いですよ?」
「ああ、大丈夫」
「もしかして、すでに私の風邪がうつったとか?」
「それはないから大丈夫」
「そう……ですか?」
「うん。馬鹿は風邪ひかないって言うし」
「先輩の場合は馬鹿と変態は風邪ひかない……ですよね?クスッ」
「ん?今何か言った?」
「い、いえ、何も」
「そっか。……それよりもさ」
「はい」
「その後の年は初雪を体験出来た?」
「いえ。初雪どころか他の雪の日もあまり積もらなくなり……まったく」
「ああ、そっか。そういえばその日以来あまり雪降らなかったもんな」
「温暖化の影響でしょうか?」
「かもね」
「先輩は当時小学2年生でしたね?」
「うん」
「その初雪の日に誰かと遊びましたか?」
「うん。一応」
「やっぱり……美也ちゃんと?」
「美也もいたし……梅原や幼馴染みの桜井とも一緒に遊んだよ」
「そうですか……羨ましいです」
「そんなことないよ。逢の方が絶対羨ましいって!いいよな、優しいお母さんで」
「……」
「僕も七咲家の家族ならよかったのに。きっと昔から温かい家族なんだろうな」
「先輩はすでに七咲家の家族じゃないですか!違いますか、七咲しゅう先輩」
「まあ、そうだけど……出来れば逢の弟とかがよかったかもな」
「嫌です」
「え?」
「郁夫だけでも世話するの大変なのに、もっと手の掛かりそうな先輩が弟だなんて……」
「ちょ……それどういう意味?」
「そのままの意味です!」
「う……」

逢の奴……さっきまで高熱で眠ってた割にはやけに元気じゃないか。
いつもの如く、僕をいじめる……。
まあ、元気なのはいいことだ。

「そっか。逢は生まれてからずっと雪で遊んだことがないんだな……」
「はい」
「しかも今日は17年ぶりの大雪の初雪の日だっていうのに、また風邪ひくなんて……かわいそうだな」
「仕方ないですよ」
「うーん……」
「初雪は体験出来ませんでしたが、先輩もお母さんと同じことをしてくれました。私はそれで満足です」
「うーん……それで満足……か。いや!きっとそれじゃ駄目なんだ!!」
「え?」
「逢にそれで満足って言われて……僕は悔しい!!納得がいかない!!」
「どうしてですか?」
「だって……僕は結局逢のお母さんと同じことしかしてあげられていない」
「え?それでいいと思いますが……」
「それじゃ駄目だ!!」
「え?」
「僕は何のために逢と結婚したんだ!?僕にしか出来ないことをしてあげるためなんだよ!!」
「先輩……?」
「僕にしか出来ないことはないのか!?逢を、僕なりの手段で本当の意味で満足させてあげたい!!」
「……え?」
「考えるんだ……逢のために……」
「……」

僕は……逢のために何が出来るんだろう?
逢は17年前、小学1年生の時に初雪を体験することが出来なかった。
そして現在、17年ぶりに大雪の初雪の日が到来した。
だけど、逢はまた風邪をひいて、17年前と同じ状況に陥ってしまった。
今度はいつ大雪の初雪の日が到来するか分からない。
もしかしたら、今日ずっとこのまま寝ていたら、逢は二度と初雪を体験出来なくなる!!
悔しい……何とかして逢を外に連れ出してあげたい!!
何とかして逢に初雪を体験させてあげたい!!
でも、逢は風邪をひいている……無茶させるわけにはいかないんだ!!
どうする!?どうすればいい!?

「先輩!」
「ん?」
「どうしたんですか?今度は何だか思い詰めた顔をしていましたよ。本当に大丈夫なんですか?」
「うん。大丈夫」
「そうですか。それならいいですけど……」

はは……思い詰めた顔……か。
どうしたら逢に初雪を体験させてあげられるんだろう?
こうなったら、一か八かやってみるか!
それでもし逢が風邪をこじらせてしまったら、僕が責任を取る!!

「はぁ……外は……真っ白ですね」

逢は窓の外を見つめ、ため息をついた。
その表情は……ちょっと寂しそう。
やっぱり逢は外で遊びたいんだろうな。
よし!!やってみるか!!

「なあ、逢」
「はい。何ですか?」
「やっぱり……外に出たいか?」
「え?それは……出たいですけど。……この風邪じゃちょっと無理そうですね」
「じゃあ……出よう」
「はい??今何て?」
「外に出て、雪で遊んで来よう」
「ですが、私は風邪をひいて……」
「僕が責任を取る!もしも逢が風邪をこじらせたら、逢のご両親に誠心誠意謝罪して、逢を全力で看病する!」
「い、いえ、そこまでして遊びたいわけではないので……風邪が治ってからでも……」
「そこまでしなきゃ駄目なんだ!!風邪が治ってからじゃ手遅れだ!!」
「え?でも……」
「このままじゃ逢は一生初雪を体験出来ない!!逢がかわいそうで仕方がない!!」
「先輩……」
「僕は僕にしか出来ないことをしてあげるために逢と結婚したんだ!!」
「……」
「なのに、僕は逢のお母さんと同じことしか出来ていない。悔しいよ」
「……」
「僕は……僕にしか出来ないことをやるんだ!!!」

そう言って僕は急いで自分の部屋で防寒着とスキーウェアを着て、逢の部屋に戻った。

「ほら、逢も防寒着とスキーウェアを着て」
「え?本当に外に出るんですか?」
「うん。早く行こう」
「あの……しかもどうしてスキーウェアを着るんです?」
「そのままの格好じゃ雪で濡れるから」
「なるほど……。え?でも……」
「ほら、早く着て」
「あ、はい」

逢は上体を起こして防寒着とスキーウェアを着た。ちょっと嬉しそうだ。

「気分はどうだ?」
「はい。まだ熱で少しだけフラフラします」
「まだ熱あるのか……」
「はい」
「でも、せっかくの初雪だから行こう!!」
「行くって……どこにです?」
「午前中に行ったあの公園に行こう」
「え?あそこまで歩くんですか?私熱あるのに……」
「僕が連れて行く。だから……ちょっと体育座りして」
「え……?体育座り……?」
「うん」

逢は訳も分からず、とりあえず体育座りする。

「……こうですか?でも、ここからどうやって……?」

僕は逢の背中と膝の裏に手を回す。

「え?これってまさか……」
「せいの!」

僕は逢をお姫様抱っこした。
しかし……

「う……重い!」

逢は以前よりも重くなっていた。
当然だ。現在逢は妊娠5ヶ月でお腹に子供がいる。
ちなみに以前というのは7年前、逢が高校2年生の時だ。
インターバルで全力を出し切った逢は帰りのバスで疲れて爆睡した。
終点の輝日東駅前に着いても起きなかった逢を僕はお姫様抱っこでバスから降ろした。
(参照:第6話「先輩、夏休みですね」第7話「先輩、兄弟っていいですね」
あの日が懐かしいな。

「う……くくく……」
「先輩、危ないです!無理しないでください」
「で、でも……」
「普通におんぶでいいじゃないですか。何でわざわざお姫様抱っこなんです?」
「だって……逢はお姫様だし」
「え?」
「何でもない!じゃあ、一旦降ろすよ」
「はい」

おんぶか……やりたいんだけど、やりたくないんだよな。どっちだよ!?
おんぶすると僕の背中に逢の胸が当たって緊張するし……
前に一度足を捻挫した逢をおんぶしたら、ふざけて耳をアマガミされて……
びっくりして危うく落としかけたことあるし!!
それに今は大きくなった逢のお腹が僕の背中に当たるし。
いろんな意味で緊張する。

「じゃあ、おんぶするけど、ふざけて耳をアマガミしないでくれよ」
「しませんよ。もう落とされたくないので」
「ならいいんだ。あれは本当に危なかったから」
「ふふっ、先輩って結構単純なんですね。いきなり耳をアマガミされただけでびっくりするなんて」
「いや、それが普通の反応だし。よし、今度逢を不意打ちしてやろうか」
「ふふっ、そんなことをしたら、どうなるかわかりますよね?先輩っ!」
「う……怖い」
「クスッ」
「ほら、冗談言ってないで早く乗れよ」

僕は逢に背を向けてしゃがむ。

「はい。では遠慮なく」

逢をおんぶする。やっぱり……いろんな意味で緊張する。

「それじゃ、行こうか」
「はい」

家を出て公園に向かう。

「おお、午前中よりも結構積もったなぁ」
「辺りは一面の銀世界……きれいですね」
「うん。あ、寒くない?」
「はい」

おんぶでもやっぱり逢が以前よりも重く感じられる。
しかも辺りは一面の銀世界……路面もところどころ凍っている。
滑って逢を落とさないように慎重に慎重に一歩一歩歩みを進める。

「ごめんな。お互いに無理をしないっていう約束……破ることになる」
「構いませんよ。先輩がちゃんと責任を取ってくれるなら」
「ありがとう」
「いえ、お礼を言うのは私の方です。私のために……私に初雪を体験させるためにわざわざ……」
「いや、それこそお礼はいいよ。逢にどうしても初雪を体験してもらいたかったから」
「……」
「こんなに素晴らしい一面の銀世界を今まで味わえなかった逢がかわいそうで仕方なくてさ」
「……」
「ん?逢?どうした?……ま、まさか!?」
「も、もう……どうなっても知りませんからね!」
「……え?あ……ああ」

なんだ、ただ照れて何も言えなかっただけなのか。
てっきり熱で意識が朦朧としたのかと思って心配しちゃったじゃないか!

「もし、具合悪くなったらすぐ言って。あまり逢に無理させないようにするから」
「はい。分かりました」

そして公園に到着した。
公園は雪で埋もれていた。

「はい、到着」

僕はゆっくりしゃがんで逢を降ろした。

「きれいだなぁ」
「はい」
「……」
「……」
「どう?初雪の感想は」
「何だか……すごく神秘的です!」
「……そっか」
「先輩、ありがとうございます」
「逢こそありがとう」
「え?」
「ほら、さっき初雪の思い出について話してくれただろ?」
「はい」
「幼い頃の逢のことをまた一つ知ることが出来た」
「……」
「それに、さっきの話を聞いてなかったら僕らは今ここにはいなかったと思う」
「そう……ですね」

公園には僕と逢の二人しかいない。

「とりあえずさ……」
「はい」
「ずっと立ってるの辛いだろうから、どこかに座らない?」
「どこに座るんですか?ブランコにもベンチにも雪が積もっていますが」
「まあ、どこに座ろうとスキーウェアを着てるから濡れる心配はない。何も問題はない!」
「なるほど……そのためのスキーウェアだったんですね」
「うん。どこに行っても雪が積もってて濡れない場所なんてないと思ったから」

よし!!今日の僕は珍しく頭が冴えているぞ!!大成功だ!!

「今日は……珍しく先輩の頭が冴えていますね」
「う……」

今思ったことをバシッと逢に言われてしまった!ちょっと屈辱。

「それで?どこに座ります?」
「そうだな……じゃあ、このままここに座るか」
「ここにですか?」
「うん。熱があるのにブランコに乗ったら危ないし、ベンチじゃ具合が悪くなっても狭くて寝転がれないし」

そう、この状況なら地面に座るのが一番安全なんだ。
倒れてもこれだけ雪が降り積もっていれば雪がクッションになって衝撃を防いでくれる。
それにスキーウェア着てるから汚れても平気だし。
うん、我ながら逢のことを考えた最善の選択をしたと思う。

「分かりました。そういう事なら」

僕と逢は地面にゆっくりと腰を降ろした。
ちょっと一息ついて……

「よし。記念に1枚撮ろうか」
「え?」
「じゃじゃーん」
「カメラ!?」

僕は逢の初!初雪記念に写真を撮ろうと思ってポケットにカメラを忍ばせておいた。

「じゃあ、撮るよ」
「あ、待って下さい……いいですよ」
「はい、チーズ!」

パシャッ!

「よし。これが逢の初!初雪記念写真だ。もう1枚撮るか」
「はい。お願いします」
「はい、チーズ!」

パシャッ!

「今度は私が撮ります」

逢は少しフラフラしながら僕に近寄って来た。

「だ、大丈夫か?」
「はい。撮影なら任せて下さい」
「いや、そっちじゃなくて身体の方は……」
「早く座って下さい」
「……はい」

逢も2枚写真を撮った。

「今度はツーショット写真でも撮りたいなぁ」
「でも、この公園には私と先輩以外の人はいませんよ」
「そうなんだよな……困った」
「だったらこうしましょう」

そう言って逢は地面に寝転がった。

「え?雪の上に寝転がったりしたら身体が冷えて風邪ひどくなるぞ」
「大丈夫です!ほら、先輩も早く寝転がって下さい」
「う、うん」

僕も逢の右隣に寝転がった。

「それで、こうやって……」

逢が寝転がった時点で何となく想像はついていた。
逢は空に向かって思いっきり腕を突き上げた。

「あ、僕がやるよ。僕の方が腕長いし」
「はい。お願いします」
「じゃあ、いくよ!……はい、チーズ!」

パシャッ!

「ちゃんとうまく撮れてますか?」
「分からない」
「じゃあ、不安なのでもう数枚撮りましょう」
「うん。じゃあ、いくよ!」

僕と逢のツーショット写真を数枚撮った。
カメラをポケットに入れ、僕と逢は寝転がったまましばらく空を見つめた。

「……はぁ」
「……」
「……」
「……先輩」
「ん?」
「午前中にした話を覚えてますか?」
「午前中?」
「雪はいつか溶けてなくなってしまうから切ない……という話です」
「ああ、うん。覚えているよ。逢が熱で倒れる前にした話か」
「はい」
「うん。確かに逢の言う通りだな。雪は儚いと思う」
「……」

僕は上体を起こした。

「でもさ」

逢も上体を起こした。

「はい」
「中には溶けてなくなることのない雪もあるんじゃないか?」
「え?そんな雪あるんですか?」
「あるよ。例えば逢の小学1年生の時の初雪とかね」
「え?それならもうとっくの昔に溶けてなくなってますよ」
「うん。雪自体はね。だけど、逢は当時の事をまだ覚えている!」
「……」
「確かに外の雪は全部溶けてなくなってしまった。だけど、逢の思い出の中の雪はまだ溶けていない」
「……」
「17年前の初雪はまだ逢の心の中に降り積もったままだよ。逢が覚えている限りね」
「……」
「その雪は逢と逢のお母さんの心の中にまだ降り積もっている。決して溶けることのない思い出として」

逢は黙って僕の話にそっと耳を傾けていた。
というより、何と返事したらいいか分からないから黙っている……といった感じかな。
さらに僕は続ける。

「でも、その雪は逢と逢のお母さんだけのものだ。僕の心の中にはその雪は存在しない」
「……」
「当然だよ。僕はその場にいなかったんだから。僕の思い出であるはずがない」
「……」

僕は手袋を取って両手で素手で地面に積もった雪を掬った。

「だからさ、今度はこの雪を僕と逢だけの……決して溶けることのない思い出の雪にしよう!」
「……はい」
「二人だけの……思い出にね!」
「……はい!」

ヒュ~。

「うっ!寒い!!特にさっき雪を触った手が冷たい……」
「先輩」
「ん?」

ぎゅっ。

「え?」

逢がいつの間にか手袋を取って両手で素手で地面に積もった雪を掬い……
雪を持ったままのその手で僕の手を握った!

「つ、冷たい!!」
「あははは……」
「こら、逢!何するんだ!?」
「その慌てぶり……先輩ったら、おかしいです」
「ひどいじゃないか!僕は真面目な話をしてたんだぞ」

逢は再び手袋を両手にはめた。
僕も再び手袋を両手にはめた。

「今のも立派な思い出です。先輩が私に意地悪をされたという」
「い、嫌な思い出を作るなよ勝手に」
「クスッ」
「だったら、これも立派な思い出だ!」
「あ……」

ぎゅーーーっ。

僕は思いっきり逢を抱きしめた。ちょっと痛いくらいに。

「逢……好きだ!大好きだ!この気持ちは生涯決して溶けることがない!!」
「先輩……」

僕は逢の後頭部に左手を軽く添え、逢の身体をゆっくりと後ろに倒した。
逢の背中と頭をゆっくりと地面に降ろした。
そして……

「ん……」
「ん……」

キスは僕にしか出来ないことの一つだと思う。
しかもただのキスではなく大雪原での周りの雪を溶かしてしまうくらい熱いキス。

「ん……」
「ん……」
「んん……」
「んん……」

逢……逢……たまらなく好きだ!
公園には僕と逢の二人しかいない。
もっと……熱くしてもいいよね?

ペロッ。

「あ……ん……」

僕は舌を出して逢の唇をなめた。

「あん……ちゅっちゅ……あん……」
「ん……ちゅっちゅ……ん……」

お互いに舌を出してもっと深いキスをする。

「あん……ちゅっちゅ……あん……」
「んん……あ……んんん……」

僕は逢の口の中に舌を突き入れた。
もう……逢を食べてしまいたい。
さすがの逢もちょっと苦しそうだけど、それでも何とか抵抗してくる。
だから構わず行く!!

「あん……ちゅっちゅ……あん……」
「んん……あ……んんん……」

僕たちはお互いに無我夢中で気付かなかったけど……いつの間にか雪が止んでいた。
それでも僕と逢の周りだけ吹雪が吹き荒れていた。
何度も何度も吹雪の如く激しく……止むことを知らないキスの応酬。

「あん……ちゅっちゅ……あん……」
「んん……あ……んんん……」

それはしばらく繰り返され、最終的には二人とも息が荒くなっていた。
逢の体調を考え、僕の方から唇を離した。

「はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……」
「あ、あはは……」
「ふふっ、ふふふ……」
「疲れたぁ」
「それはこっちのセリフです」
「そ、そっか。あはは……」
「もう……本当にエッチな先輩なんですから……」
「逢」
「はい」
「寒くないか?気分は?」
「大丈夫です。雪の上に寝たのでちょっと熱が下がって気分も楽になりました」
「ならよかった。でも、あまり冷えると逢の身体にもお腹の子にもよくないと思う」
「では、そろそろ帰りますか?」
「もう十分初雪を味わえた?」
「はい。おかげさまで」
「そっか。えっと……今何時だろ?」

相当長い時間公園にいた気がする。
気になって立ち上がり、公園にある時計を見上げると……

「げっ!もう5時か!!夕飯の支度何もしてないよ」
「ちょっと先輩……何してるんですか」
「だ、だって……誰かさんが初雪体験したいって言うから……」
「私は何も言いませんでしたよ。先輩に勝手に連れて来られただけですから」
「う……そうだった。僕が連れて来たんだった。でも勝手にって何だよ……」
「私は別に家にいてもよかったんですよ」
「ああ!僕が逢のためにわざわざ連れて来てやったっていうのにそういうこと言うのか!」
「ええ」
「最悪。もう……逢なんて置いて帰ってやるー」
「どうぞ、ご自由に。熱も下がってきたので、私は一人で帰れますよ」

そう言って逢は立ち上がるが、まだ熱があるらしくフラフラして前に倒れそうになる!

「あ……」
「危ない!」

ドサッ。

僕は咄嗟に逢を前から抱きしめて支えてやる。

「……」
「……」
「嘘だよ。帰りもおんぶするから!」
「……お願いします」

僕は少しの間だけ逢を自力で立たせて、急いで逢に背を向けてしゃがんだ。

「よいしょ」

そして逢をおんぶする。

「はぁ……世話が焼けるなぁ」
「それはこっちのセリフです。夕飯のことを何も考えずに私を連れて来た先輩に世話が焼けます」
「ほっとけ……」
「でも、そこが逆に先輩のいいところかもしれません」
「え?」
「私のお母さんにはない、先輩だけの優しさだと思います」
「逢……」
「……」
「……」
「……」
「……ん?逢?」
「……」

寝ちゃったのか。おんぶされて安心して寝ちゃうなんて……まるで子供みたいだな。
でも、たまにはこういうのも悪くないかもしれないな。
逢はいつも僕を子供みたいって馬鹿にする。クールで大人びていて、まるで逢の方が年上みたいだ。
だけど、たまにこうして子供みたいに甘えられると普段の逢とのギャップを感じてすごくいい!!
こういう時だけ、逢に頼られている気がしてすごく嬉しい。
僕はちゃんと責任を持ってこれからも逢を全力で守っていこうと思う。


――先輩から教わったこと
雪はどんなにたくさん降ってもいつかは全部溶けてなくなってしまう。
だけど、雪に関する思い出は人の心の中に降り積もり、その人が忘れない限り、溶けてなくなることはない。
現に私も17年前の初雪のことを覚えていた。あの時の雪はまだ私の心の中に溶けずに残っている。
私と私のお母さん……二人だけの思い出の初雪はまだ溶けずに残っている。
そして今、今度は私と先輩……二人だけの思い出の初雪が二人の心の中に降り積もった。
しゅう先輩……。本当に不思議な人。
先輩は私のお母さんみたいに優しい。何も知らずに私のお母さんと同じことをしてくれた。
私は本当にそれだけで十分だった……。
だけど、17年前の初雪の思い出について話した途端、先輩ったら急に熱くなって……
私のお母さんと同じことをするだけじゃ駄目だとか言い出した。
僕にしか出来ないことをしてあげるために逢と結婚したんだ……
とか突然言い出して……私を無理矢理外に連れ出した。
もしかして私のお母さんを勝手にライバル視した!?
僕が責任を取る!
……先輩はそう強く断言したけど、本当に先輩に責任が取れるのか私は正直不安で仕方がない。
確かに先輩は私のお母さんみたいに優しい。
だけど、私のお母さんとは違って、いつも無計画で衝動的。
現に夕飯のことを何も考えていなかった。
本当に困った先輩ですね。
あ、でも、スキーウェアを用意したこと、ブランコやベンチではなく地面を座る場所に選んだことは……
先輩にしては珍しく計画的で、正直びっくりした。
先輩はいつも私のことになると一生懸命……というより、一所懸命になる。
私のことを想うあまり、私だけを見つめ、周りが見えなくなり……後先考えない衝動的な行動に出る!
その先輩の行動が無意識に私の心を熱くし、私を溶かしていく。
それが私のお母さんにはない先輩のいいところかもしれない。
でも、計画性がないって裏を返せば……馬鹿……ってことなのかな?
うん、先輩はきっと馬鹿なんだ。
正直、そこまでしなくていいのにっていつも思う。
私は満足しているのに、先輩は馬鹿だから、そこまでしなきゃ気が済まないらしい。
馬鹿なだけじゃなくて、おまけにエッチで……本当にどうしようもない先輩です。
でも、そんな馬鹿でエッチな先輩だからこそ、一緒にいるととっても心地よくて幸せな気分になる。
私はそれだけしゅう先輩に愛されているっていうことなのかな?

――と、そんなことを考えていたら、いつの間にか眠気が襲ってきた。
たぶん先輩と公園で遊んで疲れたんだと思う。
先輩の背中……大きくて……温かい。
先輩になら……先輩のこの背中になら……安心して身体を預けられる。
後で先輩に子供みたいだって馬鹿にされるかもしれないけど……
たまには……先輩に甘えてもいいですよね?
私はそのまま目を閉じた。
いつまでも……頼りにしてますからね……しゅう先輩。


それからしばらくして僕は逢を無事に家まで連れ帰った。
家までの道中、逢のかわいい寝息がすぐ耳元から聞こえてきた。
逢のかわいい寝息で僕の耳元が少しくすぐったかった。
まったく、逢って奴は困ったもんだ。
耳をアマガミしないって約束は守ったのに、今度は耳に寝息を吹きかけてくるなんて。
まあ、でもかわいいから許す!
僕は逢をベッドに寝かしつけるなり、急いで夕飯の準備をした。

そして翌朝。
僕は一晩、逢が風邪をこじらせないか心配で寝付けなかったが……
逢は風邪をこじらせるどころか、一晩で全快した。
もともと水泳やってて体力があるとはいえ……恐ろしい女だ。
本当に魔女みたいに驚異的な回復力を発揮した。
逢のご先祖様はもしかして魔女なんじゃ……?
いや、違う。そんなはずはない!
むしろ僕の方が魔法使いで、キスという魔法で逢を全快させたに違いない!!

「そうだ、きっとそうだ!!」
「先輩?何を一人で納得してるんですか?」
「うわっ!逢か!びっくりした」
「何を一人で驚いているんです?」
「い、いや、何でもない」
「……変な先輩」
「じゃ、じゃあ仕事に行って来る!」

僕は外に出た。
逢も僕を仕事に送り出すために一緒に外に出た。

「先輩、行ってらっしゃい。今日もお仕事頑張って下さい」
「うん。ありがとう、逢。行って来るよ」

僕は逢に背を向けて歩き出す。数歩歩いたところで……

「あ、先輩。待って下さい」
「ん?」
「ほら、これ忘れ物です……よっ!」

ズシャッ!

「うわっ!」

ツルッ!ステン!

「あ……」
「いてて……」
「クスッ。あはははは……先輩って本当に単純ですよね」
「くそぅ……逢め……振り向き様に雪を投げるなんて卑怯だぞ!おかげでびっくりしてコケたじゃないか!」
「あはははは……」
「にゃろう!覚えとけ!仕事から帰ったらたくさん仕返ししてやるからな!」
「これも……大切な初雪の思い出ですね」
「僕は嫌だよ、こんなカッコ悪い思い出。……早く溶けてしまえばいいのに」
「それは……私に対する負け惜しみですか?」
「……」
「あ……先輩、逃げた」

何とでも言え!
僕は逢の言葉を無視してさっさと仕事に向かった。
これ以上関わっているとまた何かひどいことされそうだ。
逢の奴……覚えとけ!仕事から帰ったらたくさん仕返ししてやるからな!
やっぱり……昨日意地悪して公園に置いてくればよかったかな~。


――こうして、僕と逢……二人だけの初雪の思い出が出来た。
昨日逢を無理矢理連れ出して、無理矢理思い出を作って、一時はどうなることかと思ったけど……
結局何事もなく、逢も一晩で全快して一件落着だ。
全快した逢は相変わらず僕に対してちょっと意地悪だけど……
昨日は逢にとってもいい体験をさせてもらったから、それでよしとしよう。
次はいつ大雪が降るのだろうか。
今度は家族3人で同じ体験が出来たらいいな。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~続編」(ノベル)
END

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2010-10-21

エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~」(ノベル)

七咲逢(23)、妊娠5ヶ月を過ぎた頃のエピソード。
2月のある日曜日のことだった。
今年は暖冬で雪はまだ一度も降っていない。
天気予報によると今日一日特に冷え込んで、
所によっては雪が降るとのこと。
本当かなぁ?

僕は今日ちょうど仕事が休みなので、
逢を誘って外を軽く散歩してみようと思った。
妊娠が発覚してからドクターストップがかかり、
逢は大好きな水泳が出来ずにずっと家で大人しくしている。
僕が無理をするなと念を押しているため、
逢は一人で外出することも出来ない。
毎日が暇で暇で仕方がない。
そんな逢を不憫に思った僕は、
日曜日を利用して逢を外に連れ出してあげることにした。
他の曜日は仕事なので、
逢と丸一日一緒にいられるのは日曜日だけなんだ。

逢と丸一日一緒にいられる日曜日。
逢にとってはこの日が一番楽しみなんだ。
僕にとってもこの日が一番楽しみなんだ。
この日のためだけに一生懸命仕事していると言っても過言ではない。

「逢、行くよ」
「あ、ちょっと待ってください」
「う、うん。わかった」
「んしょ……っと。いいですよ、行きましょう」
「よし、行こうか」
「はい」

ドアをそっと開ける。

ヒュ~~~。

「う!さ、寒い!!」
「当然ですよ。今日は特に冷え込む一日なんですから」
「そんなの知ってるよ」
「知ってるならどうしてそんな薄着なんです?」
「いや、別に薄くないよ」
「その格好、寒そうですよ」
「そう?」
「いいから、早く着替えて来てください」
「わかった」

僕は急いで着替えて玄関に戻った。

「こ、これなら寒くないだろ?……よし」
「ええ。それなら大丈夫そうですね」
「じゃ、気を取り直して出掛けよう」
「はい」

逢といつもの散歩コースを廻る。
道の途中で逢が突然立ち止まった。

「先輩、ここ左です」
「え?右だろ?」
「いいえ、左なんです」
「そ、そっか。そういえば左は行ったことないな」
「付いて来てください」
「うん」

逢に付いて左の道を進む。
新しい散歩コースの開拓だ。

「あ、公園だ!」
「はい。ここに公園があること、ご存知でしたか?」
「いや、知らない。逢こそ、どうして知ってるの?まさかこっそり……」
「それはありません。先輩との約束なので」
「そっか。じゃあ、出歩かずにどうやって知ったの?」
「ふふっ。インターネットって便利ですね」
「そっか。インターネットの地図を使ったのか」
「はい。先輩の留守中に来た私の大学時代の友達に教えてもらいました」
「インターネットを?」
「はい」
「そっか。逢もインターネット使えるようになったんだな」
「私だって、やれば出来ますよ……」
「あ、ごめん。そういうつもりじゃ……」
「いえ、いいですよ」
「それより、せっかく公園に来たので少し遊びませんか?」
「うん。そうだな……えっと……」
「じゃあ、このブランコで」
「え?ブランコ??む、無理するなよ」
「大丈夫です。普通に乗って漕ぐだけです」
「それならいいか。よし、ちょうど二人分ある!」

僕と逢はブランコに乗って漕ぎ始めた。
一つのブランコに逢と二人で乗ってキスしたあの日が懐かしく感じられる。
またあれをやってほしいなと思っていたら……

「懐かしいですね」
「え?」
「忘れたんですか?キス……したじゃないですか!」
「ああ、それなら覚えてるよ。今僕も同じこと思っていた」
「あの時は本当にエッチな先輩でしたね」
「まあ、あの時はね。だけど今……」
「今もです!」
「う!」
「そういうところ、全然変わっていませんね」
「……」
「……先輩?」
「逢……」
「はい。何ですか?」
「また……してほしいな」
「え?」
「お願い!……だめ?」
「だめ……ではないです。先輩のためならいつでもしてあげます」
「本当!?じゃ、じゃあ早速」
「はい」

逢がブランコから降りて僕の正面に立つ。
僕はブランコの鎖を両手で持ったまま身体を反らす。
逢が僕の乗っているブランコの鎖を両手で持って
僕の唇にキスしようとしたその時だった。

「あ……」

逢がそう呟いた。
逢の頬に白く冷たい何かが当たった。
逢がそっと上を見上げる
―――雪だ。初雪だ。

「先輩、見てください。初雪です!!」
「おお!やっと降り出したか!」

結構、大粒の雪だ。これはきっと積もるに違いない!!

「積りそうですね」
「うん。よかったじゃないか、いい暇潰しが出来て」
「え?あ……さすがにこの歳なので雪遊びはちょっと」
「しかも一人だからな。さすがに恥ずかしいか」
「はい」
「あ、えっと……続きを」
「あ……すみません」

初雪に気を取られて一瞬二人とも肝心のキスを忘れかけていた。

「ん……」

逢の柔らかい唇が僕の唇にそっと触れた。気持ちいい。

「んん……」

逢はちょっと強めにキスしてくる。幸せだ……

(逢……逢……大好きだ!)
(先輩……私もです!)

一瞬逢と心が通じ合ったような気がした。

キスしている僕と逢の周りにはどんどん雪が降り積もっていく。
大粒の雪が何故か二人だけを避けて降り積もっていく。
まるで二人の熱いキスが二人に降り積もる雪を溶かしているかのように。

キスを終え……
逢は僕の乗っているブランコの鎖を両手で持ったまま僕の正面に立つ。

「逢……ありがとう」
「ふふっ。どういたしまして」
「あはは」
「ふふっ……くしゅっ!」
「ん?寒い?大丈夫?」
「はい。逆にちょっと暑いくらいです。こんなに熱いキスをしたので」
「そっか。ならいいんだ。風邪引くなよ」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
「じゃあ、そろそろ帰るか?」
「いえ、もう少しだけここにいたいです」
「そっか。じゃあ、もう少しだけな」
「はい」

それからしばらく僕と逢は降り積もる雪を見つめていた。
お互い何も言葉を交わさず、ただただ雪を見つめていた。
その沈黙を破ったのは逢の方だった。

「先輩」
「うん?」
「何だか不思議ですね」
「何が?」
「これだけ降り積もった雪もいつかは溶けてなくなってしまうんです」
「そうだな」
「雪って……何だか切ないですね」
「……う、うん。それがどうかしたの?」

逢が急にしんみりしたことを言い出すから僕はちょっと驚いた。

「私が雪なら……先輩は太陽ですね」
「逢?」
「でも、私先輩になら溶かされても……いいですよ」
「逢?ど、どうしたんだ?いきなり」
「暑い……先輩……私を……溶……か……し……て……」

逢は倒れ込むようにして僕に抱きついてきた。

「逢!どうしたんだ、逢!?」
「先……輩……」

僕は逢の額にそっと手を当ててみた。

「……あ、熱だ!!それもものすごい熱じゃないか!!」
「ん……」
「大変だ!早く逢を家に連れて帰らなくちゃ!!」
「先輩……あ……」
「逢!しっかりするんだ!!逢!!」

逢……逢いいいいい!!!!!


―――それから私の意識は遠くなっていった。
先輩が私を呼ぶ声が完全に聞こえなくなった。
私はそのまま意識を失った。


「逢!逢!起きなさい!!」
「え?」
「早く起きないと学校に遅刻するわよ」
「あ……お母……さん?」
「寝ぼけてるのね。早く顔を洗ってらっしゃい」
「う、うん」

どうなってるの?どうして私の目の前にお母さんが?
しかも今よりも若い。
あれ?私、背が縮んだ?……いや、違う。まだ小学生なんだ……。
じゃあ、この夢は小学生時代?

「いただきます」
「しっかり食べるのよ、逢」
「はーい」
「それと今日は特に冷え込むらしいから、あったかい格好をしなさい」
「特に冷え込む?え、じゃあ雪降るの?」
「ふふっ、実を言うと……」

お母さんがそっとカーテンをめくると……

「もう降ってるわよ」
「わあ……雪だ……やった!」
「ふふっ」
「今日は友達と雪合戦とかしたいな」
「そうね。初雪だからね。思いっきり楽しんでらっしゃい」
「うん!……くしゅっ!」
「あら、風邪?寒くない?」
「ううん。大丈夫。おコタに当たってるから逆に暑いくらい」
「そう?ならいいんだけど……ちょっといい?」

お母さんが私の額にそっと手を当てようとしてくる。

「え?お、お熱なんてないよ」
「いいから。じっとしてて」
「う、うん……」
「……あらやだ!ものすごい熱じゃない!」
「え?」
「逢。今日は学校休んで大人しく寝てなさい」
「え?だ、だって雪が……」
「雪遊びもいけません。大人しく寝てるの!いい?」
「いやだ!!友達と雪合戦したい!!雪だるまだって……」
「だめ!風邪をこじらせたらどうするの?」
「いやだ……いやだよ、お母さん」
「早く、寝に行きなさい!!お母さんの言う事聞いて!!」

私のためを思って私を叱りつけるお母さん。
でも、私はそんなお母さんに必死に抗おうとした。
だって、どうしても初雪を体験したかったから!!
お母さんに厳しく叱られ、私はとうとう……

「いやだ……いやだ……お母さん嫌い。大っ嫌い」
「逢……」

私は泣きながら寝室に戻った。
お母さんのことを恨みながら寝室に戻った。

「ぐすん……ぐすん……雪……雪……」

私は寝室で思いっきり泣きじゃくった!!

「……」

その様子をドア越しにお母さんがそっと見ている。
泣いている私を不憫に思ったんだろう。

しばらく寝室で泣きじゃくった後、
私は疲れ果てて眠りに就いた。
何時間眠ったんだろう?気付いたら辺りは真っ暗になっていた。

「あれ?なんか……頭が……冷たい……」

気付いたら私は水枕に頭を付けて寝ていた。
かわいいペンギンの枕カバーに包まれた水枕で。

「おはよう、逢。と言ってももう夕方だけどね」
「お母さん……ふん!」

私はまだお母さんのことを恨んでいた。

「まだ怒ってるの?もうそろそろ許してくれてもいいんじゃない?」
「お母さんなんか……お母さんなんか……嫌いだもん」
「そう。嫌いで結構」
「……」
「それよりも水枕、ちょっとぬるくなってきたから貸して」
「……」

私は無言でお母さんに水枕を渡す。
数分してお母さんが戻って来た。

「はい、これで大丈夫」

お母さんが水枕を持って来るが、口が閉じられていない。

「……こぼれるよ?」
「大丈夫。だって中身は水じゃないから」
「え?」
「ほら、見てみなさい」

お母さんが私に水枕の中身を見せた!

「あ……雪だ!どうして?」
「だって……お母さんのこと嫌いになってほしくなかったから」
「あ……」
「逢の今朝のあの切なそうな顔を見ていたら、何だかかわいそうになって」
「……」
「せめて初雪の冷たさだけでも味わってほしくてね」
「お母さん」
「ん?」
「お母さん!ごめんなさい!!嫌いなんて言ってごめんなさい!!」
「逢……」
「お母さん!好きだよ、大好きだからね!!」
「逢……」
「お母さん……」

私とお母さんはしばらく抱き合った。
二人とも嬉し涙を流しながら。

「あ、それと」
「ん?」
「お母さんだけじゃなく、このペンギンさんにも感謝しなさい」

そう言ってお母さんは私の枕カバーのペンギンを指差した。

「ペンギンさん?」
「実はね、お母さん今日お仕事があったの」
「うん」
「それでね、忙しかったから、このペンギンさんに雪かきしてもらったの」
「ペンギンさんが?」
「そう。玄関先に雪の積もったバケツを置いてあるんだけど……」
「それをペンギンさんが?」
「うん」
「そうだったんだ……ペンギンさん、ありがとう」

そう言って私は枕カバーのペンギンを優しく撫でてあげた。


―――そうだ、思い出した。
これは私がまだ水泳を始める前の小学1年生の時の初雪の思い出。
風邪で熱を出して家で大人しくしてなきゃいけなくて……
せっかくの初雪を体験出来なくて悔しい思いをしたんだ。
この時、私はペンギンが大好きになった。
後に病弱な身体を鍛えるためにスイミングスクールに通い出すけど、
最初は嫌々だった。
でも、スイミングスクールの入り口にある大きなペンギンの像が
大好きになって、それから今まで水泳を続けてこれたんだ。
この日のお母さんのおかげで今の私がある。
本当にありがとう。

「……」
「逢?」
「……」
「逢?逢ったら!」
「……」
「もう……安心してまた寝ちゃったのね?」
「……」
「ちゃんと布団で寝ないと風邪引くわよ」
「……」
「逢!起きなさい!逢!!逢!!」


逢!!逢!!


―――ん?あれ?先輩?
私はやっと意識を取り戻した。
目の前には先輩がいて……ここは……自宅?

「よかった、意識を取り戻したみたいだな」
「先輩」
「もう、びっくりしたよ!!逢ったら突然泣き出すんだから」
「え?私泣いてました?」
「うん。思いっきりね。涙の跡もちゃんと残っている」
「あ……」
「悲しい夢でも見てたのか」
「いえ……別に悲しくは……」
「あ、それはそうとさ」
「はい」
「その水枕の中身……何だと思う?」
「え?まさか……雪?」
「え?ど、どうしてわかった?」
「あ、いえ。何となくです」
「そ、そっか。そうだよな」

そうに決まってる!絶対!!
僕が初雪を体験出来ない逢のために水枕に雪を詰めたことが
逢に一発で分かるわけない!!
逢はきっと当てずっぽで答えたんだろう。

「くすっ。ありがとうございます、先輩」
「え?」
「だって……私のために……」
「え?」

まさか、逢……すでに感づいているのか?
女は直感が鋭いってよく言うけど、逢は鋭過ぎるぞ!!

「そ、そうだよ。初雪を体験出来ない逢のために水枕に雪を詰めたんだ」
「ペンギンが……ですか?」
「え?ペンギン??何のこと?」
「え?あ……な、何でもないです」
「ん?」


―――いけない、思わずペンギンって言ってしまった。
先輩に通じるわけない。
というか当時のお母さんもきっとわざと嘘を吐いたんだと思う。
仕事で忙しいからペンギンに頼んだ……だなんて。
きっと照れ隠しに決まってる。
でも、それでも私は嬉しい。
お母さんの優しさはとても温かかった。逆に私の心は冷たかった。
お母さんの優しさで私の心は溶かされた。まるで雪のように。
そして先輩も、お母さんと同じ優しさで私の心を溶かしてくれた。
私は結局、二度の初雪を体験し損ねたけれども、
代わりにもっと大切な何かを手に入れたんだ。

「逢?どうした?ボーッとして」
「え?いえ、別に」
「まだ熱あるんじゃないか?」
「そ、そんなこと……ないですよ」
「本当?」
「はい」
「ならいいか」


―――そして今私のお腹にはこれから生まれて来る新しい生命が宿っている。
この子にも同じ優しさを分けてあげたい。
私が二度味わった、この優しさを……。


何だかよく分からないけど、逢は喜んでくれたみたいだ。
これが僕と逢にとっての初めての、初雪の思い出となった。
甘く切なく、でもとっても温かい思い出となった。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~」(ノベル)
END

エピソード「先輩、私を溶かしてください~初雪の思い出~続編」(ノベル)に続く。

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2010-08-27

エピソード「先輩、一緒にゲームしましょう」

七咲逢(23)、妊娠7ヶ月を過ぎた頃のエピソード。
季節は春。例年になく暖かい1日だった。
僕、七咲しゅう(24)はこの日も朝から仕事だった。
競泳の選手である妻、逢は妊娠が発覚してからも……
軽く、筋力を維持するための筋力トレーニングを行っていたが……
妊娠5ヶ月を過ぎた頃……ついにドクターストップがかかり……
筋力トレーニングすら行えなくなった。
そこから本格的に産休が始まった。
だから、僕がその分頑張って働くしかない!!
僕が外で、産休の逢の分まで頑張って汗水垂らして働き……
逢は四六時中、家で安静にしている。
そんな毎日を送っていたある日のことだった。


七咲家
しゅう「ただいま」
逢「お帰りなさい。今日は早かったですね」
しゅう「うん。逢がお腹空かせてるといけないから、早めに切り上げて来た」
逢「そうですか……」
しゅう「あ、そうだ。お昼の肉野菜炒め……どうだった?」
しゅう「ちょっといつもとは違う隠し味を使ってみたんだけど」
逢「あ……道理で。いつもより美味しかったです」
しゅう「ならよかった」
逢「いつも、ありがとうございます」
逢「私のためにお昼ごはんまで作り置きしてくださって」
しゅう「ん?いいんだよ。あれは僕のお弁当でもあるんだから」
しゅう「逢こそ、毎日僕のために3食作ってくれてたじゃないか」
しゅう「逢に出来て僕に出来ないことなんてないんだから」
逢「先輩……」
しゅう「さあさあ、僕もお腹減った。早く作ろうか」
逢「……今日は肉じゃがですか?」
しゅう「当たり!買い物袋の中身を見ただけで当てるなんて……」
逢「いえ、別に普通ですよ。それに、私だてに主婦やってませんから……」
しゅう「それもそっか」



しゅう「いただきます」
逢「いただきます」
しゅう「……」
逢「……」
しゅう「うん、おいしい……」
逢「ええ……先輩にしては上出来ですね」
しゅう「うう……何だ、その褒め方。素直に喜べない」
逢「いえ、喜んでいいですよ。本当に……上出来なので」
逢「味が染みてなくてあまり美味しくなかった最初の頃に比べ……」
逢「今ではちゃんと味の染みたおいしい肉じゃがを作れるようになったので……」
逢「本当に、先輩は成長しました」
しゅう「う……そう言われると……今度は照れるな」
逢「クスッ」
しゅう(確かに料理の腕は半年前よりも格段に上がった気がする!)
しゅう(でも、それを逢に言われると……何だかすごく照れるんだよな)
逢「はぁ……おいしい」
しゅう(逢、あんなに喜んでいる……頑張ってよかった)
逢「ん?どうしたんですか?私の顔をジロジロと……」
しゅう「あ、いや、別に。何でもない……」
逢「……?」
しゅう「あ、それよりも!」
逢「はい」
しゅう「僕が仕事に行ってる間、具合悪くならなかった?」
逢「いえ、平気でした」
しゅう「そっか。ならいいんだ」
逢「ただ……」
しゅう「ただ?」
逢「暇です」
しゅう「暇?」
逢「何もすることなくて、すごく暇でした」
しゅう「はぁ……んで?」
逢「んで?って何ですか?」
しゅう「いや、他には?って意味だけど」
逢「それだけです」
しゅう「……ふーん」
逢「何ですか、その薄いリアクションは?」
しゅう「え?だって暇って言われても……なぁ?」
逢「……」
しゅう「仕方ないよ」
しゅう「僕は日曜以外は仕事だから、一緒に家にいられるのは平日の夜か日曜だけ」
しゅう「それに逢はそんな身体じゃ出歩けないし。僕が一緒でもね」
しゅう「となると、平日は逢一人でしかもこの家の中で暇潰しするしかないね」
逢「……」
しゅう「逢?どうした?」
逢「……本当に……暇なんです……」
逢「今までずっと忙しかった私にとってはあり得ないほど暇なんです……」
逢「だから困っているんです」
しゅう「そ、そうだったな……ごめん。僕が悪かった」
逢「別に先輩が謝らなくても……」
しゅう「いや、配慮が足りなかったんだ」
しゅう「よく考えてみれば逢の言う通りだよ」
しゅう「子供の頃からずっと家事に勉強に部活に弟の世話に……って何かと忙しくて……」
しゅう「結婚してからも家事に仕事に僕の世話に……って何かと忙しかった逢……」
しゅう「今、やっとそれらから初めて解放された」
しゅう「今まで味わったことのないすごく暇な時間……」
しゅう「だから何したらいいか分からないっていうのも無理はない」
逢「はい……」
しゅう「そうだな……こういう時って……本当に何したらいいんだろう?」
逢「……」
しゅう(考えるんだ……逢のために全力で!!)
逢「じゃあ、逆に聞きます」
しゅう「うん」
逢「先輩は今まで暇な時って何してたんですか?」
しゅう「え?そ、そうだな……」
しゅう(対外、お宝本の山を読んで暇潰ししてたけど……そんな事、口が裂けても言えない)
しゅう(えっと、他には……あ、そうだ!!)
しゅう「ゲーム!」
逢「ゲーム?」
しゅう「うん、今流行っているRPGがあるんだ」
逢「RPG?何ですか、それ?」
しゅう「やりながら説明するか。ちょっと待ってて」
逢「はい」

しゅう「これ!正月に実家に帰った時に、久々にやりたくなって持って来たんだ」
しゅう「きっと逢もハマると思う」
逢「はぁ……」
僕はゲームを始める準備をした。
しゅう「まず、この電源を押して始める」
逢「あ、画面にゲームのタイトルが!」
しゅう「オープニングは飛ばすね」
しゅう「主人公の性別と名前は……そうだな」
『女 アイ』
しゅう「これでいい?」
逢「はい。それで?」
しゅう「まずは女勇者のアイが誕生した」
しゅう「RPGって言うのはRole Playing Gameの略……」
しゅう「登場人物それぞれに役割があるんだ」
しゅう「アイには女勇者としてこの世界を平和にする役割がある」
逢「な、何だか……すごい役割ですね」
しゅう「まあ、これが現実ならね。所詮ゲームだからそれほどでもないよ」
逢「なるほど。確かに」
しゅう「まず最初にすることは隣町に行けって」
逢「行ってみてください」
しゅう「了解」

逢「あ、町から出たらこんな風になってるんですね」
しゅう「うん。町の外をフィールドって言って、ここにはモンスターも登場する」
逢「あ、そういえば思い出しました」
逢「前にも郁夫がこんな感じのゲームをやっていた覚えがあります」
逢「私は横から見ていただけですが」
しゅう「なら話は早い。ほら、早速モンスターとの戦闘だ」
しゅう「やってみる?」
逢「はい」
僕は逢にコントローラーを渡す。
逢「えっと、確か……ここを選んで……こうですね」
しゅう「そうそう。すごいな。郁夫のを見ただけでやり方を覚えるなんて」
逢「いえ、それほどでも」


それから約2時間ほど逢と一緒にゲームをプレーした。
逢「……面白いですね!意外とハマりますね」
しゅう「だろ?僕なんか1日5時間くらいやってたよ」
逢「そんなに?」
しゅう「だって、やり始めたら止まらないし」
逢「そうですね……その気持ち、分かります」
しゅう「でも、今日はここまでだ。あまり無理はしちゃいけない」
しゅう「僕はまた明日も仕事だし、逢も身体を休めないといけないしな」
逢「ええ。名残り惜しいけど、我慢します。また明日やります」
しゅう「じゃ、おやすみ。ちゅっ」
僕は逢におやすみのキスをした。
逢「クスッ。おやすみなさい」

それからというもの……
逢は一人で家にいても退屈しなくなった。
僕が持って来たゲームを毎日堪能しているようだ。
仕事から帰った僕を出迎える逢の表情も日に日に明るくなっていった。
夕飯の会話もゲームの話で盛り上がることが多くなった。
どうやら大成功だったようだ。ゲームってすごいんだなぁ。

しゅう「もしかして今日はいよいよ?」
逢「はい、ラストダンジョンです」
しゅう「そっか。じゃあ、一緒にやるか」
逢「ええ。なかなか攻略出来なくて苦戦しました」
しゅう「まあね」
しゅう「あのダンジョン、僕でも攻略に1日かかったしなぁ……無理もない!」
しゅう「でも、今なら1時間なくても攻略出来るよ」
逢「本当ですか?それは心強いです」
しゅう「まあ、それだけやり込んだってことだよ」
逢「じゃあ、早速お願いします」
しゅう「うん。任せろ!」

逢「あ……これが?」
しゅう「どうやらラスボスのようだね」
逢「見るからに強そうですが……勝てますか?」
しゅう「えっと……うん!レベルは大丈夫。勝てる」
しゅう「今から僕が言うように動かしてみて!」
逢「はい!」
しゅう「ここは……攻撃!」
逢「はい!」
しゅう「ここは……回復かな」
逢「いえ、攻撃だと思います」
しゅう「え?だって体力が……」
逢「回復なら……間に合いますよ……ほら!」
しゅう「あ……本当だ。相手は攻撃して来ない」
逢「ふふっ!私だってやれば出来ますよ」
逢「先輩に出来て私に出来ないことなんてありませんので」
しゅう「そ、そうだな……」
逢「おそらくこの一撃で……」
しゅう「うわ……ラスボスを倒した……当時の僕よりも早く!」
逢「ふふふっ。どうですか?私の腕前は」
しゅう「恐れ入りました!まさかこの短時間でここまでいけるとは……」
逢「そんなに驚くことでもないですよ?」
逢「何となく相手の行動パターンが読めたので、倒しやすかったです」
しゅう「すごいなぁ。逢って実は天才なんじゃないの?」
しゅう「つい最近ゲームを始めて……最初はRPGって何?とか言ってた人が……」
しゅう「どんどんコツを掴んで、しまいにはいとも簡単にラスボスを撃破した……」
逢「でも、ダンジョンは私一人では攻略出来ませんでした」
逢「先輩がそばにいて助けてくださったからです」
しゅう「うん。まあ、ダンジョンは助けたけどさ……」
しゅう「ラスボスはほとんど逢の自力で倒したようなもんだ」
しゅう「逢は最初ラスボスを見て、『見るからに強そう』とか言ってたのにな」
逢「実を言うと……それも先輩がそばにいてくださったからですよ」
しゅう「えっ?」
逢「安心出来ました。ちょっとくらい無理する勇気も湧きました」
しゅう「どういうこと?」
逢「さっき、私は相手の行動パターンが読めたと言いましたが……」
逢「実はあれ、かなり適当でした」
しゅう「うん……」
逢「体力が残り少なくて本当は回復すべきだったのに攻撃を仕掛けたのも……」
逢「ちょっとくらい無理しても平気だと思ったからです」
逢「私は一人じゃない。先輩がそばにいる。だから安心出来たんです」
しゅう「逢……そっか。安心出来たならよかった」
しゅう(逢は僕がそばにいれば安心して何でも出来るんだな)
しゅう(どんなに辛いことだって一緒に乗り越えていける)
しゅう(まあ、僕らは夫婦だから、当然のことかもしれないけどね……)
しゅう(でも……だとしたら……あれだって同じ事が言えるんじゃ……)
しゅう「なぁ、逢」
逢「はい。何ですか?」
僕は逢の両手を自分の両手で包み込むようにして持った。
逢「え……?先輩?」
しゅう「約束する!どんな時でも必ず逢のそばにいるって!」
しゅう「そう、例えば……出産とか」
しゅう「今7ヶ月だからたぶんもうじきだと思う」
しゅう「これからが逢にとって一番辛い時期になると思う!」
しゅう「そんな時は遠慮せずに僕を頼ってほしい!!」
しゅう「僕は今みたいに必ず逢のそばにいて、逢をサポートするから!!」
しゅう「僕も逢と痛みを分け合って、逢だけが辛い思いをする事がないようにする!!」
逢「しゅう……さん……」
しゅう「まあ、逢はこの通り天才だし、所詮僕なんか皮の盾くらいにしかならないと思うけど」
逢「いいえ、そんなことないです!先輩は鉄の盾です!」
しゅう「そ、そっかな?」
逢「ええ。心強い味方です!」
しゅう「ありがと……あ……」
逢「ん……」
逢が僕の唇にキスをしてきた。
しゅう(逢……好きだ。必ず守ってみせるからな)
しゅう「んん……」
逢「んん……」
しゅう「はぁ……」
逢「クスッ。これからも、頼りにしてますからね、あ・な・た♪」
しゅう「あ……うん!任せろ!」

こうして、僕はどんな時も逢と共に闘うことを誓った。このゲームのようにね!
ただゲームを一緒にクリアしただけなのに、何故かこんな甘い展開に発展した。
まあ、仕方ないか。だって、僕と逢だもんな。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、一緒にゲームしましょう」
END

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