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2010-11-01

エピソード「先輩、今日は塚原先輩の誕生日です」

僕が大学1年生で七咲が高校3年生の年の10月末。
第16話の続編だ。
僕は今夜もまた七咲と電話していた。


橘しゅうのアパート
七咲「はい。それで水泳部の次期部長も決まり、いよいよ引退です」
橘「そっかぁ。もうそんな時期なんだな」
七咲「あ、それより、先輩」
橘「うん?」
七咲「来週というか来月の1日が何の日か知っていますか?」
橘「え?11月1日?えっと……文化の日……かな」
七咲「それは3日です」
橘「あれ?そうだっけ?ああ、そっか」
七咲「覚えてないんですか?この前聞いたばかりなのに」
橘「え?この前聞いた??何を?」
七咲「呆れました。この前私がそっちに行ったじゃないですか」
橘「え?七咲がこっちに?」
橘「えっと、確か……あの日は僕と七咲と塚原先輩と森島先輩で食事して……」
七咲「その時何か話しましたよね?」
橘「えっと……七咲、大学受験合格おめでとう!!……って話」
七咲「それも確かに話しましたが……はぁ。まったく覚えてないんですね」
橘「分かんないよ」
七咲「ヒントは塚原先輩と森島先輩……そしてお酒です」
橘「酒?あの時、誰も酒呑まなかったよな」
七咲「はい。その理由は?」
橘「えっと……未成年だから?……ああ!!そっか、思い出した!!」

回想
全員ジュースで乾杯する。
ちなみに森島先輩は先月誕生日を迎えて一人だけ20歳だが……
塚原先輩に止められてジュースで我慢している。
橘「そういえば、先月の22日って森島先輩の20歳の誕生日でしたね」
七咲「あ!森島先輩。20歳のお誕生日、おめでとうございます!!」
橘「おめでとうございます」
森島「ありがとう。2人とも」
塚原「そう。だからはるかに乾杯をやらせたの」
塚原「このパーティは七咲の合格祝賀パーティであるのと同時に……」
塚原「はるかの成人祝賀パーティでもあるからね」
橘「そうだったんですか」
森島「だったら、お酒呑んでもいいじゃない!ひびきのいけず!!」
塚原「バカね。はるか以外は全員未成年なのよ」
塚原「私だって来月やっと成人になるんだし」
塚原「それに高校生が1人いるから悪いお手本は見せられないわ」
七咲「さすが、塚原先輩。森島先輩も少しは塚原先輩を見習ってください」
森島「逢ちゃんにまで言われるとは……世知辛い世の中じゃのぅ」
森島先輩は独りで落ち込んでいる。

橘「塚原先輩の誕生日か!!」
七咲「やっと気付きましたか」
橘「忘れてた」
七咲「それで私も何かお祝いがしたいのですが……」
橘「ちなみに学校はいつ休みだっけ?」
七咲「3日だけですが」
橘「そ、そっか。1日とかにこっち来るのは無理だよな」
七咲「ええ。不可能です。それにズル休みなんかしたら塚原先輩に叱られます」
橘「う、うん……じゃあ3日に日帰りで来てよ」
橘「朝そっちを出て、夕方そっちに戻ればいい」
七咲「え?私が行って何を……?」
橘「こっちにおいしいケーキ屋さんがあるんだ」
橘「森島先輩に密かに頼んで塚原先輩を連れ出してもらう」
橘「ついでに森島先輩に塚原先輩の欲しい物を聞く」
七咲「なるほど!森島先輩を利用するわけですね」
橘「う、うん。人聞き悪いけど……つまりはそういうことだ」
七咲「分かりました」
橘「じゃあ、森島先輩と連絡取れ次第知らせるよ」
七咲「はい!」
橘「おやすみ」
七咲「おやすみなさい、先輩」

こうして11月3日の塚原先輩の誕生日パーティに向けて動き出すことになった。
僕と七咲と森島先輩、それに塚原先輩。前回と同じ4人だ。


そして来る11月3日
ケーキ屋さん
森島「早く早く!」
塚原「もう、はるかったら。ケーキ食べたいなら一人で来ればよかったでしょ」
森島「どうしてもひびきちゃんと一緒に食べたいケーキがあったの!」
塚原「それも突然言い出すなんて。たまたま休みだからよかったものの……」
塚原「もし今日祝日なのに授業があったらどうするつもりだったの?」
森島「だーいじょーぶっ。さ、入ろ」
塚原「はいはい」
森島「ふふふ」
塚原「ん?」

森島先輩、塚原先輩がケーキ屋さんに入ろうとしたその時!!

パーーーン!パーーーン!
森島「わわ!」
塚原「え?」
店内の扉付近で待機していた僕と七咲が鳴らしたクラッカーにびっくりする先輩方。
橘「塚原先輩……」
七咲「お誕生日……」
橘・七咲「おめでとうございます!!」
カチッ。
僕はラジカセの再生ボタンを押した。
「Happy Birthday to You」が流れる。
塚原「あ……あなたたち……」
橘・七咲「Happy Birthday to You……」
橘・七咲「Happy Birthday to You……」
橘・七咲「Happy Birthday Dear……」
橘・七咲「塚原先輩……」
森島「ひびきちゃーーーん」
橘・七咲・森島「Happy Birthday to You♪」
橘・七咲・森島「イェーーーイ!」
パーーーン!
森島先輩が隠し持っていたクラッカーを塚原先輩の耳元で鳴らした!
塚原「わ!こら、はるか!!」
森島「ふふふ」
橘「さ、塚原先輩。中へどうぞ」
七咲「もうケーキは注文してあります」
塚原「あ、ありがとう」
森島「私の分もある?」
橘「はい。もちろんです」
森島「わぉ!楽しみだわ」

全員座席に着いてホールケーキがテーブルに運ばれて来る。
それを七咲がきれいに四等分に分けた。

橘「へぇ。ケーキの切り方もうまいな」
七咲「ええ。うちで誕生日パーティやる時はいつも私が切ってるので」
塚原「ご両親と弟さん、それに七咲で4人家族だったわね」
七咲「はい。なのでちょうど今うちの家族と同じ人数です」
森島「ひびきちゃんがお父さんで、私がお母さん、橘くんが弟さんってとこね」
橘「え?ぼ、僕を七咲の弟と一緒にしないでくださいよ……」
七咲「はい、これ郁夫の分」
そう言って七咲が僕にケーキを渡す。
橘「だから僕は郁夫じゃないって!」
七咲「あ、いらないんですか?じゃあ私が……」
橘「わーい、お姉ちゃんありがとー(棒読み)」
七咲「ふふっ」
橘(何で僕がこんな目に……)
塚原「それじゃ、お父さんの誕生日を祝って郁夫、お前が乾杯をしなさい」
橘「はい??」
橘(塚原先輩まで乗り気だ!もういい、こうなったら!!)
橘「お父さん、誕生日おめでとう!!乾杯!!」
森島・七咲・塚原「乾杯!!」
カチャン!!
全員、紅茶で乾杯する。
森島「郁夫、残さず食べなさいよ。ま、ケーキだから残さないと思うけど……」
橘「はーい」
橘(だから何で僕が郁夫??)
塚原「橘くんがかわいそうだから、そろそろやめにしましょう」
塚原「それで?七咲、水泳部はどうなの?」
七咲「はい。次期部長も決まって一安心です」
塚原「そう……ならよかった」
橘「それに水泳部にまた期待の新人が現れたんだろ?」
七咲「はい。例の1年生の彼女がいるので当分は安心出来ますね」
塚原「私に七咲にその子……ふふっ、輝日東高校水泳部は安泰ね」
森島「ね!その子どんな子?かわいい?胸ある?」
七咲「え?も、森島先輩は何が知りたいんですか?」
橘「森島先輩って実は中身は変態ですよね」
森島「郁夫、お母さんに何てこと言うの!悪い子」
橘「え?だって事実じゃ……ねえ、お姉ちゃん」
七咲「郁夫ほどの変態に変態って言われるなんて……世も末だね」
橘「ひ、ひどい……」
七咲「え?だって事実じゃ……だよね、お父さん」
塚原「ふふっ、かもしれないな」
森島「ほら!!」
橘「み、みんなしてひどい……」
橘(こ、これじゃあ塚原先輩の誕生日パーティじゃなくて……僕を虐めるパーティじゃないか!)
橘(で、でもこのメンバーに虐められるのも悪くはない!!うん、いいかも)
橘(いや、待てよ!!今の僕は郁夫だ。つまり僕じゃなくて郁夫が虐められている!)
橘(何てこった……悔しい)
塚原「あ……もう、はるかったら。橘くんがかわいそうだから、やめろって言ったのに」
森島「あ……ごめん、つい言っちゃった」
七咲「いえ、かわいそうなのは橘先輩ではなく郁夫だと思いますが……」
塚原「あ……なるほどね。気付かなかったわ」
森島「そうでさぁねぇ……」
橘「あの……郁夫じゃなくて僕を虐めてください。お願いします」
七咲「え?あ、そうですね、郁夫がかわいそうですから……」
森島「橘くん優しいのね」
塚原「ふふっ。どうかしら。どうやら彼自身が虐めてもらいたいみたいだわ」
橘「そうです!」
七咲「……え?」
森島「わぉ!」
塚原「ふふっ、図星……というわけね」

こうして僕はこのメンバーにこの後も虐められることになった。
あれれ?塚原先輩の誕生日パーティはどこへ消えたんだ!?
ま、いっか。僕は大満足だったし、塚原先輩本人も何だか楽しそうだったし。
それに七咲も森島先輩も……。4人とも存分に楽しめたパーティだったので、よしとしよう。

あ、ちなみに森島先輩が塚原先輩の欲しい物を聞いたけど、いらないって言われたので……
残念ながら誕生日プレゼントは渡せなかった。
でも!

塚原「こんなに大勢に祝ってもらったの初めてだわ。今日は楽しかった。みんな、ありがとう」
橘「礼なら七咲に言ってください。七咲が塚原先輩の誕生日のことを思い出させてくれたので」
森島「そうね、私も橘くんから聞くまで忘れてたわ」
塚原「はるかまで忘れるなんて……」
森島「ご、ごめんね、ひびきちゃん!!」
塚原「もういいわ。はるかは物忘れがひどいから仕方がない。七咲、ありがとう」
七咲「い、いえ……私も……その……たまたま覚えていただけですから」
七咲は少し照れている。
塚原「それでもまったく覚えていなかった人たちよりはいい方だから」
橘「あはは……」
森島「あ……あはは……」
塚原「七咲、本当にありがとう」
七咲「ど、どういたしまして」
塚原「じゃ、はるか。帰るわよ。橘くんも七咲も、暗いから気を付けて帰りなさい」
橘「はい」
七咲「塚原先輩、森島先輩もお気を付けて」

こんなふうに最後は4人とも笑顔で終われたので、よかったんじゃないかな。
11月3日。
七咲を始め、みんなの都合で残念ながら……
本来の塚原先輩の誕生日である11月1日に塚原先輩の誕生日パーティを行えなかったが……
それでもこうして2日遅れで行うことが出来てよかったと思う。
何故なら……この4人でこうして集まれる機会はもう二度とないかもしれないから。
いや、実際はあるんだけど……まあ、この時の僕はそんなこと知る由もなかった。



七咲アフターストーリー
エピソード「先輩、今日は塚原先輩の誕生日です」
END

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2010-10-22

エピソード記念作「先輩との出逢い~恋はみずいろ~」(ノベル)

今日は11月上旬のある日曜日。
先月某体育大学への進学を決めた七咲と一緒に、
僕のアパートから電車で少し行った先にある、先月出来たばっかりの新しい遊園地に来ている。
この遊園地の売りは中心部にある大きな噴水だ。
前に電話でこの遊園地のことを七咲に話したらものすごく行きたがっていたので、
大学受験合格祝いに一緒に行くことにした。

「すごいなぁ、地元の遊園地とは桁違いの規模だ」
「そうですね。びっくりしました」
「早速入り口で入場券を買うか」
「はい」

僕と七咲は入場券売り場に並ぶ。
僕はポケットから財布を取り出す。
ふと七咲を見ると七咲も鞄から財布を取り出そうとしている。

「あ、いいよ。財布しまって」
「え?」
「今日は全部僕の奢りだから」
「でも……」
「いいって。七咲の大学受験合格祝いだから」
「……」
「七咲はこの1年ものすごく頑張った!だから今日一日その努力を僕が労ってあげるよ」
「でも、それを言うなら先輩こそ私の学費を稼ぐためにアルバイトを……」
「いや。そんなの、ただ七咲を助けただけだよ。僕が好き好んでやっただけのこと」
「……」
「本当に努力したのは七咲の方だから」
「でも……何だか先輩に悪い気がします」
「うーん……」
「……」
「よし。だったらこうしよう!」
「え?」
「僕はこれから好き好んで七咲に全部奢る!!これならいいだろ?」
「……」
「まだ納得がいかないか」
「はい」
「……僕は七咲のことが好きだ。大好きなんだ」
「はい……私も先輩のことが大好きです」
「大好きな七咲に奢ってあげたい。大好きだからこそ……してあげたいんだ」
「先輩……」
「僕に……任せてくれないか?」
「……仕方ありませんね。そういうことでしたら」
「よし。じゃあ僕が二人分の入場料出すね」
「はい。そうしてください」

ふっ、こんな朝っぱらからものすごく甘い台詞を言ってしまったよ。
でも、僕の言ったことに嘘なんて一つもない。
僕が七咲を想う気持ちは本当なんだから。

「じゃあ、中に入ろうか」
「はい」

僕と七咲は遊園地の中へ入る。

「七咲は何に乗りたい?」
「そうですね……」

僕は七咲の目線を追った。
七咲の目線があるアトラクションに止まった!
一瞬僕は嫌な予感がした。
ははは……ま、まさか……これとか言わないよな?

「じゃあ、あのジェットコースターで」
「え?ええっ??」
「嫌なんですか?」
「い、嫌じゃないよ。別に。でもな……」
「大好きな七咲に奢ってあげたい。大好きだからこそ……してあげたいんだ」
「え??」
「先輩。さっきのこの台詞は嘘だったんですか?」
「え……う、嘘なんかじゃないよ!!」
「じゃあ、私の乗りたいアトラクションに乗らせてください」
「う、うん……」
「ほら、早く行きますよ」
「え?僕も行くの??」
「当たり前です。まさかジェットコースターが怖いんですか?」
「そ、そんなことない!!断じてない!!」
「じゃあ、行きましょう」
「……うん」

とほほ……あんな台詞言うんじゃなかった。
つい勢いで口を突いて出た台詞に少しだけ後悔した。

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ」
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん。何とか」
「もう……ジェットコースターが苦手なら最初からそう言ってください」
「ご、ごめん。七咲がどうしても僕と一緒に乗りたいって言うから……」
「……」
「……」
「バカ」
「え?」
「先輩のバカ」
「七咲」
「また私のために無理なさったんですね」
「う……ごめん」
「もう……いいです。その代わり、次からは無理しないでくださいね」
「分かった。じゃあ、気分が直ったから次に行こう」
「はい」

ちょっと気分を害してしまったな。これはさすがにまずかったか。
以前、風邪を引いていたにも関わらず、七咲とデートして
風邪をこじらせてしまったことがあった。
あの時も今日と同じ。七咲のために無理をしちゃったんだ。
僕はあの時と全然変わってない。全く反省してないんだな。
この先、七咲にどれだけの心配をかければ気が済むんだろうか?
ま、いいや。今はデート中なのでそれは考えないことにしよう。
気を取り直していつものように明るく!明るく!

「七咲!ゴーカートにでも乗らないか?」
「あ、いいですね!」

「よし、七咲よりも速いぞ!!このまま行けば勝てる!!」
「う……先輩に負ける!!」
「よし!!楽勝だ!!」

ヒュ~~~。

「きゃっ!風でスカートが……」
「え?風でスカートだと!?」

僕は思わず後ろを振り返った!
神風が吹いて七咲のスカートがめくれて……あとちょっとで見えそうだ!!

「お、おお……こ、これは……」

七咲のスカートに目が釘付けで、僕は前を見るのを忘れていた。

ガッシャーン。

「うわあ……か、壁に激突した!!」
「ふふっ。私のスカートの中を見ようとした罰です。先輩、お先に」
「な、七咲いいい」

七咲が逆転し、そのまま独走、ゴールした。
僕は……皮肉にも神風と七咲のスカートの誘惑に負けたんだ。

「はい、温かいココア」
「ありがとうございます」
「はぁ~~~悔しいなぁ」
「先輩……まだ落ち込んでいるんですか?」
「当たり前だよ。あそこで風さえ吹かなければ僕が勝っていた」
「ふふっ。それを言うなら私がズボンを履いていたら……じゃないんですか?」
「違うよ。七咲はむしろスカートの方がいい」
「覗けるからですか?相変わらずエッチな先輩ですね」
「ち、違うよ」
「何が違うんですか?」
「そ、その……スカートが……似合ってるから」
「……え?」
「い、いや……え?じゃなくてさ……その……褒めてるんだから」
「……ちょっとトイレ行って来ます」
「え?な、七咲!?」

……逃げられた。

こうして午前が終わり、二人で昼食を取った。

午後も思いっきり遊んで気付いた時にはもう夕方だ。

「はぁ……」

七咲が噴水の柵に両腕をのせ、身を任せ、噴水を眺めながら、そっとため息をついた。

「疲れた?」
「はい。ちょっとだけですが」
「だよね。僕もだ」
「先輩もですか」
「うん。七咲と一緒だと時間が経つのがあっという間な気がする」
「分かります。私も先輩と一緒だと時間が経つのがあっという間な気がします」
「噴水……きれいだね」
「はい」

それから二人でじっと噴水を眺めた。お互いに終始無言で。
僕はふと水面に映った七咲の顔を見つめた。
七咲は……黄昏ていた。
何だか元気なさそうな顔をしていた。疲れ切ってしまったのかな?
心配になって七咲に声を掛けようとしたその時だった。

「先輩」
「え?どうした?」
「人の心って……まるでこの水みたいですね」
「え?あ……うん」

――水って……何も外から刺激がない限り、水面が動くことはありません。
でも、風が吹いたり、石が投げ込まれたりして……
外から何らかの刺激が加わったら水面はゆらゆらと動き出します。

「そう……だな」

――私がこの水だとしたら……先輩は石ですね

「七咲が水で、僕が石……?」

――はい。
先輩という石が私の中に投げ込まれて、私の水面(みなも)が動き出した……
先輩と出逢ってから私の心はゆらゆらと動き出した……
初めは小さな揺れでちょっとくすぐったかったけど、心地良かった……
でも、だんだん揺れは大きくなり、停まらくなっていった……
それだけ先輩という石が私の中で大きな存在になったからです。

「七咲……」

――正直、不安でした。
あまりにも先輩に心を揺られ過ぎて、私はどうしていいか分からなくなりました。
大好きな水泳にも波紋は広がってしまいました。

「……」

――先輩は私に必死に石を投げ続けた。私の水面(みなも)はずっと揺れ続けました。
私は何とかして揺れを隠そうとしました。いつもの私でいるために。
でも、それはついに限界に達してしまいました。
揺れが大きくなり過ぎて、ついには容器から水が溢れ出てしまいました。
心という名の容器から、気持ちという名の水が溢れ出てしまったんです。
もう、我慢出来なくなって……しまいました。

「七咲……」
「先輩……先輩!」

七咲は涙を流していた。

「あ……」

ポタン……。

七咲の流した涙が噴水に落ちて水面に波紋が広がった。

「七咲……好きだ!大好きだ!」
「先輩……あ……」

僕はそっと七咲を抱きしめた。

ここの遊園地の売り、噴水は日没とともにライトアップされる仕掛けになっていた。
噴水の水が水色に照らされた。
水面(みなも)にライトからの光が反射して僕と七咲も水色に照らされた。

「ん……」
「ん……」

僕は七咲の唇にキスをした。
涙が混じっててちょっとだけしょっぱい味がした。

「んん……」
「んん……」

うん、やっぱりしょっぱいな、このキスは。
でも、僕は敢えて七咲の涙を拭くことはしなかった。
七咲から溢れ出て来た気持ちと一緒に、僕の心で七咲の涙をそっと受け止めてあげる。
僕の心は僕自身の気持ちを貯めておく場所であるのと同時に七咲の気持ちの受け皿でもある。
僕がしっかりと七咲の気持ちを受け止めてあげなくちゃいけないんだ。
一滴もこぼすことなく、七咲の気持ちを受け止めてあげなくちゃいけないんだ。

「七咲」
「はい」
「さっきの話、ちょっとだけ間違っているぞ」
「え?」
「僕は石なんかじゃない!僕も……水だよ」
「えっ?」
「だって、石じゃ当たった時に痛いだろ?」
「ええ、まあ」
「僕……七咲を痛めつけるようなことしたっけ?」
「いえ!そんなこと……ないです」
「よかった。あるとか言われたらどうしようかと思った」
「クスッ。それはないですから安心してください」
「うん」
「でも、どうして水なんです?」

――さっき、七咲の涙が噴水にこぼれ落ちるのを見て思ったんだ。
恋っていうのはさ、お互いの気持ちのぶつかり合いだろ?
みんながみんな、心という名の容器に気持ちという名の水を持っている。
僕が偶然七咲の心に垂らした一滴の気持ちが、七咲の水面(みなも)を揺らした。
それが恋の始まりだと思うんだ。違う?

「いえ、それで合っていると思います」

――それでさ、相手のことを考えずに水ではなく石を投げつけた時……
相手の気持ちは痛む。激しく動揺する。
僕は七咲のことを想うあまり、無理をしてしまい、七咲に心配をかけてしまう。
その時の僕ってきっと七咲に水ではなく石を投げつけていたんだろうな。
それも無意識に……。ごめんな。

「そんなこと……ありません。先輩は……決して石なんかじゃありません!!」

――ありがとう。そう言ってもらえて安心したよ。

「先輩……」

――逢。これからも僕は逢に迷惑をかけ続けると思う。
出来るだけ迷惑をかけないように努力するけど、それでも迷惑をかけてしまうと思う。
そんな僕で良ければ、これからもよろしくな!!
一生、一緒にいような、逢。

「先輩……迷惑だなんて、言わないでください。私は先輩と一緒にいられるだけで幸せですから」
「これからもよろしくお願いします」

それから僕と逢は噴水の水色の光に照らされ、静かに抱き合った。キスをした。
永遠の愛を誓い合った。



七咲アフターストーリー
エピソード記念作「先輩との出逢い~恋はみずいろ~」(ノベル)
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2010-06-24

第16話「先輩、私卒業します」

10月上旬
橘しゅうのアパート
七咲と電話している
橘「……」
七咲「……」
橘(七咲の奴……妙に焦らすなぁ。早く聞きたいのに)
七咲「……あのですね。えっと……」
橘「……うん」
橘(ごくり)
七咲「えっとですね……」
橘「う……うん」
橘(どうしたんだ!?……まさか!?)
七咲「……」
橘「そっか。そりゃ残念だったな」
七咲「えっ?」
橘「大丈夫。推薦は落ちてもまだ一般があるって!」
橘「次も応援してるから」
七咲「あの……先輩?」
橘「ぼ、僕はべ、別にか、悲しくなんか……ないんだからな!!」
七咲「先輩?さっきから……何を言ってるんです?」
橘「うん。大丈夫だ。落ち着け、橘しゅう」
七咲「もしもーし?せんぱーい??」
橘「うん。というわけだ。七咲も頑張れよ」
七咲「あの……言ってる意味がよくわかりません」
橘「だから!つまりは……ダメだったってことだろ?」
七咲「はい??」
橘「つまり!推薦入試は不合格だったってことなんだろ?」
七咲「誰もそんなこと言ってません。勝手に決め付けないでください」
橘「え?じゃあ、まさか?」
七咲「はい。合格でした!」
橘「ご、合格……だと??」
橘(マ、マジ……かよ……)
橘「おめでとう、七咲!!」
七咲「はい。ありがとうございます!!」
橘「でも、合格ならわざわざ焦らす必要なかったんじゃないか?」
橘「おかげで変な先入観を持ってしまった」
七咲「すみません。合格の文字を見た時、嬉しさの余り、一瞬言葉が……」
橘「出なかったのか」
七咲「はい」
橘「そ、そっか。そうだよな。とにかく、おめでとう!!」
橘「そうだ!せっかくだから塚原先輩にも報告しろよ」
七咲「はい。そうします」
橘「もう親御さんには報告したのか?」
七咲「いえ。先輩に一番最初に報告したくて……」
七咲「玄関で郵便屋さんを待ち伏せて、私が真っ先に合格通知を受け取りました」
橘「そりゃどうも。僕はもういいから、早く親御さんに報告してやれよ」
七咲「はい。そうします」
橘「じゃあ、一旦電話切るよ」
七咲「はい。失礼しました」

橘「そっかぁ。合格かぁ。いいいよっしゃああああああああああああああああ!!」
僕は近所迷惑を考えずにとにかくはしゃぎまくった。
案の定、後で隣人から苦情が殺到した。

その数分後……
今度は塚原先輩と電話している。
塚原「橘くん、おめでとう。七咲から聞いたわよ」
橘「塚原先輩。ありがとうございます」
塚原「七咲は羨ましいなぁ。こんなにも応援してくれる彼氏がいて」
橘「何をおっしゃるんです?塚原先輩にもきっとそんな彼氏がいずれ見つかりますって!」
塚原「あらあら。お世辞をどうも」
橘「お世辞じゃないですから!」
森島「ひびきちゃんにも彼氏ができるのかね~」
塚原「はるか!?」
橘「えっ!?そこに森島先輩もいらっしゃるんです?」
森島「受話器貸して。もしもし、橘くん?お手!」
橘「え?ワン!」
森島「グー!ベリーグーよ!」
塚原「はるか……」
森島「私よくひびきん家に遊びに来るのよ」
森島「そしたらさ~、逢ちゃんから電話がかかってきてびっくりしちゃった」
橘「ああ、例の合格報告ですね!七咲は本当によく頑張りましたよ」
森島「いやあ、それほどでも。照れるなぁ」
橘「って!」
塚原「何ではるかが照れてるのよ……」
森島「それでさ、今度また4人で集まらない?こっちに」
橘「え?4人って、僕と七咲と塚原先輩と森島先輩ですよね」
森島「そうそう」
橘「え?お二人は僕のアパートから近いんですか?」
森島「うん。だって同じ都道府県だから」
橘「へぇ。それで先輩方はいつなら都合がよろしいんですか?」
森島「そうでさぁねぇ……私はいつでも。ひびきは?」
塚原「今度の日曜日なら空いてるわ」
森島「……だそうよ」
橘「わかりました。で、集まって何するんですか?」
森島「えーわかんないの?」
橘「はい」
塚原「はるか、貸しなさい。七咲の合格祝賀パーティよ」
橘「合格祝賀パーティ……いいですね!やりましょう!!」
塚原「七咲は私が誘っておいたわ。来るって言ってた」
塚原「はるかが手配した切符は明日七咲家に届くから……」
塚原「七咲の旅費の心配はいらないわ」
橘「え!?そこまでして下さるんですか?」
塚原「ええ。だって私のかわいい後輩であり……」
塚原「教え子でもある七咲の合格祝賀パーティだもの」
塚原「このくらいしてあげないとね」
橘(そっか。水泳部で塚原先輩の指導を受けた七咲は……)
橘(塚原先輩の教え子ってことになるのか)
橘「あの…何から何までありがとうございました!!」
塚原「お礼はいいから。じゃあ、今度の日曜日ね。また逢いましょう」
橘「はい」


日曜日
12時
集合場所
七咲「塚原先輩、お久しぶりです」
七咲「今日はこのようなパーティを開いていただき、ありがとうございます」
塚原「七咲、お久しぶり。合格おめでとう。スポーツ推薦に受かるなんてやるじゃない!」
七咲「いえ。それほどでも」
塚原「彼ともうまくいってるみたいで、安心したわ」
橘「え?ああ。当然ですよ!僕しか七咲の相手はいませんから!」
七咲「えっ?」
七咲は少し照れている。
橘「だって……他の男じゃ……」
七咲「……!!」
橘「七咲の意地悪に付いていけませんから!!」
七咲「……!?」
塚原「……」
塚原先輩はちょっと微笑んでいる。
七咲「……はい?それ、どういう意味ですか?」
甘い展開を密かに期待していた七咲は、期待外れな展開に少しがっかりしているようだ。
橘「え?いや、そのまんまの意味だよ」
橘「他の男じゃ七咲にしてやられっぱなしで……」
七咲「……橘先輩のバカ!!」
橘「うおお……待て待て!!誤解するな!!落ち着け!!」
七咲「いいえ。今日という今日は絶対に許しません」
塚原「クスッ。喧嘩するほどなんちゃらってやつね」
塚原「それにしてもはるか、遅いわね。何してるのかしら」
橘「寝てるんじゃないでしょうか。まだお昼ですし」
七咲「森島先輩なら考えられますね」
森島「ごめーん。着替えに手間取った!」
塚原「噂をすれば影」
橘「遅いですよー!何してたんですか?」
森島「だから言ったじゃない。着替えに手間取ったって」
七咲「森島先輩。遅刻です!」
森島「あ、逢ちゃん!合格おめでとう!!」
七咲「ありがとうございます」
塚原「じゃあ、全員揃ったから行きましょう」
塚原「はるかと2人で予約した日本料理のお店にね」
森島「あ、今日は私たちの奢りだから、お金の心配はしなくていいよ」
橘「はい!楽しみです。ありがとうございます」
七咲「私もです!ありがとうございます」
森島「グー!いいお返事ね」


12時半
日本料理のお店
塚原「それじゃ。七咲の合格祝賀パーティを始めるわ。はるか」
森島「うん。じゃあ、みんな。乾杯!!」
橘「乾杯!!」
七咲「乾杯!!」
塚原「乾杯!!」
全員ジュースで乾杯する。
ちなみに森島先輩は先月誕生日を迎えて一人だけ20歳だが……
塚原先輩に止められてジュースで我慢している。
橘「そういえば、先月の22日って森島先輩の20歳の誕生日でしたね」
七咲「あ!森島先輩。20歳のお誕生日、おめでとうございます!!」
橘「おめでとうございます」
森島「ありがとう。2人とも」
塚原「そう。だからはるかに乾杯をやらせたの」
塚原「このパーティは七咲の合格祝賀パーティであるのと同時に……」
塚原「はるかの成人祝賀パーティでもあるからね」
橘「そうだったんですか」
森島「だったら、お酒呑んでもいいじゃない!ひびきのいけず!!」
塚原「バカね。はるか以外は全員未成年なのよ」
塚原「私だって来月やっと成人になるんだし」
塚原「それに高校生が1人いるから悪いお手本は見せられないわ」
七咲「さすが、塚原先輩。森島先輩も少しは塚原先輩を見習ってください」
森島「逢ちゃんにまで言われるとは……世知辛い世の中じゃのぅ」
森島先輩は独りで落ち込んでいる。
塚原「ねぇ。それはそうと、よく同棲を七咲の親御さんが許可したわね?」
橘「……」
七咲「……」
塚原「もし、差し支えなければ、私に説明してくれない?」
橘「……」
七咲「……」
僕と七咲はお互い無言で顔を見合わせる。
そして
「塚原先輩なら話してもいいだろう?」
「そうですね!」
と心の中で会話し、お互いこくりと頷いた後……
橘「わかりました。すべてお話します」
僕がそう言って、七咲家の25年間の出来事について塚原先輩に説明した。
塚原先輩は言葉を発することなく、親身になって話を聞いてくれた。
森島先輩はその横でボロボロ涙を流していた。
僕は食事の席でこんな重い話をしていいのだろうかと迷いつつも話を進めた。
七咲も塚原先輩同様、静かに話を聞いていた。
橘「だから……僕は……こんなに重い過去を背負っている七咲を……」
橘「絶対に幸せにするって、七咲の親御さんに誓ったんです」
橘「口で言うのは簡単ですが、それでも僕は覚悟を決めて……」
橘「七咲を信じて……この修羅の道を突き進むことにしました」
橘「例え……この先……何があっても」
橘「七咲がそばにいてくれれば、僕はすべてを乗り越えられる気がします!」
橘「いえ、絶対に乗り越えてみせます!!決して諦めません」
橘「こんな僕を好きになってくれた七咲を……絶対に、絶対に守ってみせます!!」
七咲「……」
塚原「……」
森島「だでぃばなぐーん、ぎみえらいよぉ。がっごいいよ」
森島先輩はもはや何を言ってるのかわからない泣き崩れている。
塚原「決めた」
七咲「えっ?」
塚原「私も、二人に協力させてもらうことにした。いいわよね、はるか?」
森島「うん……もぢろんよ」
橘「え?本当ですか?」
塚原「ええ。だって二人は私の大事な後輩たちだからね」
塚原「それに七咲に対してこんなにも必死になっている橘くんを初めて見たから」
塚原「余計なお世話かもしれないけど、よろしくね」
七咲「いえ。とんでもないです。余計だなんて思っていません」
七咲「こちらこそよろしくお願いします」
塚原「ほーら、はるか。いつまでも泣き崩れているんじゃないの!」
塚原「何か言ったらどう?」
森島「うん」
森島先輩は自慢のダッくんタオルで涙を拭いた。ちょっとだけ場違いな気もするが……。
森島「二人とも、よろしくね」
橘「よろしくお願いします」
七咲「よろしくお願いします」
塚原「私たちも七咲の両親を助けた輝日東の人たちみたいになれたらいいわね」
塚原「頑張りましょう」
森島「それにしても……」
森島先輩が突然僕の目の前にやって来る。
橘「えっ?」
森島「キミも隅に置けないな!このこの!!」
橘「うおおお……森島先輩、勘弁してください」
僕は座ったまま森島先輩に後ろに押し倒されて、ほっぺたをつつかれている。
森島「いいなぁ!いいなぁ!逢ちゃんにはこんな素敵な彼氏がいて!!」
森島「羨ましいぞぉ!!」
七咲「え?森島先輩って彼氏いらっしゃらないんですか?」
七咲「大学でもモテると思ったのに意外」
塚原「100人」
七咲「え?」
塚原「大学入学から今までに、はるかに告白して振られた男子の数」
橘「え?ひゃ、100人!?うわ…100人の男が呆気無く散った……」
塚原「教員延べ30人、男子学生延べ60人。その他、街頭の男10人」
七咲「街頭の男!?え……それって……」
塚原「ナンパね」
橘「うわ……何てこった。ナンパまでされたのか……」
塚原「しかも、私がそばにいたのに、無視してはるかにだけ話しかけるんだもの」
塚原「まったく、失礼しちゃうわ」
塚原先輩がボソッと呟いた。
森島「え?今何か言った?はるかがどうとかって……」
塚原「何でもない。それより、もう彼を離してあげたら?」
森島「嫌よ!!……ねぇ、橘くん」
橘「え?は、はい。何でしょう?」
森島「私と……付き合わない?」
橘「……はい?」
七咲「え?」
塚原「何でそうなるの?」
森島「だって!さっきの壮大な告白を聞いちゃったらねぇ……」
森島「ねぇ、いいでしょう?」
橘「え……そう言われましても……無理……」
森島「ねぇ、いいでしょう?ねぇってば!」
塚原「あーあ。聞く耳持たず。三角関係の修羅場か」
七咲「や、やめてください。そんなの!!」
橘「だから、無理だと……」
森島「い・い・で・しょ?」
橘「う……」
橘(この体勢じゃ逃げられない……助けて!!)
塚原「はるか。もう許してあげなさい。彼困ってるじゃない」
森島「仕方ないわね。わかった。ごめんね、意地悪して」
森島先輩が僕から離れる。
橘「ふぅ。一時はどうなるかと」
森島「ああ、今のは冗談だから気にしないで」
塚原「いや、私には100%本気に見えたけど」
七咲「ええ。私もです。終いには怒り出すところでした」
森島「ええ!?か、勘弁してください、お代官様!!」
橘「誰がお代官様ですか!?」
塚原「時代劇の見過ぎね。じゃあ、気を取り直して」
七咲「そうですね」

こうして僕、七咲、塚原先輩、森島先輩の4人で……
森島先輩の成人祝賀パーティ兼、七咲の合格祝賀パーティを行った。
この後は普通に食事して、4人それぞれの世間話をした。
それにしても、塚原先輩、森島先輩は本当にいい人たちだと思った。
助けてくれるって言ってくれた時、僕はすごく心強い味方を手に入れたと思った。
来年は七咲もこっちで暮らすことになるので、またこうして4人でいつでも逢えるだろう。
先輩方、いつまでも僕たちをよろしくお願いしますね。



そしてついにその時が来た……
3月3日
輝日東高校卒業式
1週間ほど前に七咲の両親から直々に電話があって……
卒業式の日はどうしても仕事で来られないということで……
急遽僕が七咲の保護者として卒業式に参加することになった。
果たしてこれでよかったのだろうか?
まあ、僕は本来美也の保護者でもあるので、別にいっか。
僕はこの日だけ美也と七咲、二人の保護者を務めることになった。
とりあえず、式直前に七咲から渡されたビデオカメラで……
卒業式の一部始終を撮影した。
「にししし」とか笑いながらいつもの如くガキっぽい美也に対して……
背筋を伸ばして凛としてすごく大人っぽい七咲。
まったく、同じ卒業生でも何でこんなに差があるんだろうか。
僕は兄として凄く恥ずかしい……。

式が終わり……
3年B組
女子1「あ。あれ、例の逢ちゃんの彼氏じゃない?」
女子2「一昨年の創設祭。ベストカップルコンテストの伝説の二人」
橘(ま、まだ覚えていたのか!?しかも伝説って何だ!?)
男子1「なぁ、あれ橘のお兄さんだろ?」
美也「え?誰が?」
男子2「ほら、あれだよ。あの校内にエロ本隠してそうな顔してる奴」
美也「ああ!そう言われてみれば!」
橘(おい!美也……お前そこはちゃんと否定しろよ)
美也「知らないよ。あの人誰?」
男子1「え?あいつお前のお兄さんじゃないのか?」
美也「あんな恥ずかしい人がお兄ちゃんなわけないよ」
男子2「それもそっか!」
橘(おい!僕から言わせれば、いつまでもガキっぽい美也の方がよっぽど恥ずかしいよ!)
女子1「ねぇ、逢ちゃん!あの人……」
七咲「違うよ」
女子2「え?」
七咲「だって、あんな恥ずかしい人が私の彼氏なわけないじゃない。クスッ」
橘(ガクッ。おい!二人してその態度か!?……がっかりだ)
橘(僕は……もう……帰らせていただきます)
僕が教室を出ようとするとタイミング良く七咲たちの担任の先生がやって来た。
橘(くそ……逃げ遅れた)
その後……僕は……七咲たちのクラスメイトからの熱烈な視線を浴びながら……
担任の先生の話を聞いていた。
美也の奴……後で覚えておけ!ちなみに七咲は無条件で無罪放免とする!

ホームルームが終わり、3年B組の生徒たちは次々と教室を出て行く。
美也は僕を無視してさっさと教室を出て行ってしまった。
あんにゃろう!つくっづくっ憎ったらしい妹だな……。
一方七咲は、涙を流しながらクラスメイトに別れを告げた後……
校舎裏で待っている水泳部一同の元へ向った。
僕も付いて行くことにしたが、一緒には行かず……
七咲が行った後でこっそりと陰から様子を伺うことにした。

12時
校舎裏
水泳部新部長「七咲前部長、卒業おめでとうございます」
水泳部一同「おめでとうございます」
七咲「ありがとう。みんな」
向井「ぐすっ、ぐすっ。七咲しぇんぱい。私……私……」
七咲「向井さん。泣かないで!」
向井「でも、私悲しくなんかないのに、変ですね。涙が……止まらない」
1年男子「おい、向井。泣くなよ!!別れが辛くなるだろうが!!」
向井「だって。七咲先輩は私の憧れの先輩だったから!!」
向井「余計別れるのが辛い」
七咲「……」
橘(そうだよな。彼女が一番七咲に世話になった部員だったしな)
橘(そりゃ涙が止まらないのは当然だよ)
橘(2年前の七咲も塚原先輩に対してあんな感じだったし)

回想(2年前)
水泳部新部長「塚原前部長、卒業おめでとうございます」
水泳部一同「おめでとうございます」
塚原「ありがとう。みんな」
七咲「ぐすっ、ぐすっ。塚原先輩」
塚原「七咲。泣かないの!」
七咲「でも!私塚原先輩には人一倍お世話になったので」
1年男子「おい、七咲。泣くんじゃねぇよ!!別れが辛くなるだろうが!!」
七咲「そんなこと言われたって!塚原先輩は私の憧れの先輩だったから!!」
七咲「余計別れるのが辛い」
塚原「……」

橘(さて、2年前の塚原先輩の立場になった七咲はどうするのかな?)
七咲「いいよ。思いっきり泣いて」
向井「え?いいんですか?」
七咲「確かに私も目の前で泣かれたら別れが辛くなる」
七咲「でもね。泣きたい時に泣かないと損をすると思う」
七咲「それに自然に出る涙は……凄く輝いているから!凄く綺麗だから!」
七咲「泣いたらみっともないなんてことはない!」
七咲「涙の数だけ、その人の人生が輝いて見える!」
七咲「そう思わない?」
向井「はい!七咲先輩!!ぐすっ、ぐすっ」
1年男子「お、俺は絶対に泣かないからな!男の子だし!!」
1年男子「べ、別に汚い人生になったって構わないさ!なぁ、お前ら!」
1年男子「そ、そう、だな」
と、言いつつも男子の目からも隠しきれなくなった涙が溢れ出てきた。
七咲「クスッ」
橘(結局、2年前の塚原先輩と同じこと言ったな?)
橘(でも、とてもいい言葉だと思う。塚原先輩らしい)

こうして、七咲は約1時間もの間、水泳部員たちと涙のお別れをした。
最後に水泳部員たちの感謝の気持ちのこもった色紙と花束が七咲に贈呈された。
これでもう輝日東高校に思い残すことはない。


13時
輝日東高校正門
七咲「橘先輩、お待たせしました」
橘「もういいのか?」
七咲「はい。もう何も思い残すことはありません」
橘「そっか」
七咲「私も……塚原先輩みたいな優秀な部長になれたでしょうか?」
橘「ああ。なれたよ。最後のセリフとかそのまんまだったしな」
七咲「え?先輩、どうして塚原先輩のセリフをご存知なんですか?」
橘「え?いや……その……何でだろう?」
橘(しまった!)
七咲「まさかまた覗きですか?」
七咲「塚原先輩との別れが惜しくて泣き崩れていた私を見てしまったんですね?」
橘「えっと……とりあえず、腹減ったな。何か食いに行こうか?」
七咲「ああ!やっぱり見てしまったんですね!?よくも私の恥ずかしい所を……」
橘「あー腹減った。走るかー!!」
七咲「誤魔化しても無駄です!!待ってください、橘先輩!!」

満面の笑みで追いかけっこをする僕と七咲。
これから二人は夢のキャンパスライフ……
そして夢の同棲ライフへと全力で走っていく。
待ち伏せている幾多のハードルを力を合わせて跳び越えて……
二人は明るい未来へと全力で向かっていく。
果たして、この二人に幸せは訪れるのだろうか?


第10~16話「橘しゅう大学生活編」…完!


そして第17話~「同棲編」に続く。

2010-06-23

第15話「先輩、私受験頑張ります」

9月上旬
七咲推薦入試前日
16時
某駅
七咲「あ、先輩。お待たせしました」
橘「七咲。お疲れ~」
七咲「ここ思ったよりも田舎なんですね」
橘「もっと都会だと思ってたのか」
七咲「はい。駅構内で迷ったらどうしようかなと思ってしまいました」
橘「あはは……うん、確かにな」
七咲「でも、ここは大丈夫そうですね」
橘「うん。じゃあ、行こっか」
七咲「はい」

駅前通り
橘「そういえば、どうしてホテルじゃなくて僕のアパートにしたんだ?」
七咲「それは前も言ったじゃないですか。節約って」
橘「でもさ、僕なんかが一緒じゃ勉強できないんじゃないの?」
七咲「いえ。面接なので勉強は特に必要ないですね」
橘「そっか。でもさ、僕の部屋狭いし、散らかってるよ」
橘「荷物置いたり寝るスペースがあるかどうか……」
七咲「一晩だけなので……我慢します」
橘「それならいいんだけど……」
七咲「あ。一つだけ気になることが」
橘「ん?」
七咲「食事はどうしますか?外食もいいですが、私が何か作りましょうか?」
橘「ああ、それなら任せといて。もう材料は買ってあるから僕がごちそうするよ」
七咲「先輩が?先輩、料理できるんですか?」
橘「ああ。来年に向けて試しに色々作ってるんだ」
橘「ほら、僕の方が帰りが早かった時、七咲を待って二人ともお腹を空かすよりは……」
橘「僕が作っておく方が効率がいいだろ?」
七咲「ええ。確かに」
橘「僕だって負けてられないさ」
七咲「先輩……」

橘しゅうのアパート前
橘「ほら、これが僕のアパート。すぐ着いただろ?」
七咲「ええ。本当に駅から近いんですね」
橘「どうする?まだ明るいからここから一緒に試験会場に行ってみるか?」
七咲「そうですね。その方が明日道に迷わなくて済むので」
橘「よし、行こう」
七咲「はい」

駅前通り
橘「ところで自信の程は?」
七咲「え、ええ。たぶん大丈夫かと思われます」
橘「七咲にしては妙に自信なさそうだな」
七咲「先輩?今の表現は正しくありませんよ」
橘「何が?」
七咲「今のじゃまるで私が何事にも自信があって強い人間だと誤解されるじゃないですか」
七咲「私はこう見えて結構繊細なんですよ…」
橘「……ごめん。だって今まで幾多の水泳の大会を突破してきた七咲だから……」
橘「てっきり今回の大学受験も自信あるのかと」
七咲「……」
橘「そうだよな。どんなプロだって最初から自信があるわけじゃないんだよな」
橘「どんなに出慣れた大会でもやっぱり不安な時は不安なんだよな」
橘「だけど、七咲は実力の持ち主なんだ。それは誇りに思うべきだよ」
橘「その誇りがあるからこそ自信を持って戦うべきだと思う」
七咲「そう……ですね。その通りだと思います」
橘(まずい。僕のせいで空気が重くなってしまった。話題を変えよう)
橘「そういえばさ、美也って何してんの?」
七咲「美也ちゃんですか?それは先輩の方がご存知なんじゃ……」
橘「いや、まったく連絡とってないんだ。あいつ受験するのかな?」
七咲「するみたいですよ。去年アニメ研究所を卒業したそうです」
橘「ああ、中多さんと組んでいたアレか。連中ロクな奴じゃないからな」
橘「二人とも心配だったんだ」
七咲「いえ、卒業したのは美也ちゃんだけだそうです」
橘「中多さんはまだ続けるのか……」
橘「美也はどっか受けるとか言ってた?」
七咲「それがですね……模試の成績がひどすぎてどこにも行けないそうです」
橘「あっちゃあ!美也らしいって言ったら美也らしいけど……」
橘「先が思い遣られるな」
七咲「ええ。一般試験を受けない私でさえ努力して順位が真ん中よりも上なのに……」
橘「ああ。確か前そんなこと聞いたなぁ」
七咲「クスッ。でも、そのおかげで評定平均値4なので推薦は余裕なんですけどね」
橘「七咲にとってネックだった数学を一緒に克服していた時期があったなぁ」
七咲「懐かしいですね」

七咲の試験会場前
橘「……と話しているうちに、ほら。目の前に見えるアレが試験会場だよ」
七咲「……建物が大きいですね。びっくりしました」
橘「アパートからここまではほぼ一本道だったな。会話に夢中でも迷わず辿り着けたな」
七咲「ええ。これなら明日の心配は要らなくなりましたね」
橘「じゃあ、帰ってご飯にしようか。僕もう腹ペコだよ」
七咲「私もです」

駅前通り
七咲「ところで先輩。今夜のメニューは何ですか?」
橘「肉野菜チャーハンにしようかと思ってる」
橘「ほら、七咲は明日受験だから、肉野菜をしっかり食べてスタミナを付けた方がいいかなって」
橘「僕一人だともっと簡単なメニューで済ますんだけど、今回はそうもいかないだろ」
七咲「お気遣いありがとうございます」
橘「僕の自慢の逸品だからな。食べて感動のあまり泣いたりするなよ?」
七咲「さあ。それはどうでしょうね」
橘「おっ。今僕の腕を疑ったな?見てろ、泣かせてやるからな」
七咲「ふふっ。臨むところです」

橘しゅうのアパート
橘「ただいま。さあ、入って。汚いとこだけど」
七咲「お邪魔します。でも、先輩にしては綺麗なんじゃないですか?」
橘「……それどういう意味?」
七咲「あ、いえ。何でもありません」
橘「じゃあ、早速支度するか」

橘「野菜はこう切って……」
七咲「ああ、先輩。それは違います。ここはこう切るんです」
橘「え?そうなの?」
七咲「はい。こうした方が火の通りがいいんですよ」
橘「えっと、こうだっけ?」
七咲「いえ、こうですよ。手、そのままにしててくださいね」
橘「……!!」
橘(な、七咲が僕の手の上から包丁の柄を掴んでいる……)
七咲「ここはこうやって……」
橘(七咲の手、温かくて柔らかい。ちょっと……意識してしまう)
七咲「こうですよ。ん?先輩?聞いてますか?」
橘「……」
七咲「あの、先輩?どこか……具合でも悪いんですか?」
橘「あ、いや。何でもないんだ。ただ、ちょっとだけ……」
七咲「ちょっとだけ?」
橘「意識……してたんだ。七咲が僕の手を触った時」
七咲「あっ」
頬をちょっとだけ赤らめる七咲。
橘「あ、変なこと言ってごめん。早く、作ろうか」
七咲「そ、そうですね」



橘「おいしい!はぁ。完全に僕の負けだ。やっぱり七咲には勝てないよ」
七咲「ふふっ。先輩が料理で私に勝とうだなんて100年早いですよ」
橘「おっ。言うねぇ。でも勝てなくて当然か」
橘「幼い時から家事を手伝っていた七咲には敵わないや」
橘「経験の差ってやつか」
七咲「そうですね」
橘(七咲は今まで、ずっとそうやって苦労してきたんだもんな)
橘(だから、何としても僕が幸せにしてあげないと)
七咲「ごちそうさまでした。後片付けは私がやっておくので……」
七咲「先輩は先にお風呂にどうぞ」
橘「うん。ってこれじゃどっちが受験生かわかんないな」
七咲「クスッ。そう言われてみれば」

僕が先に風呂に入ってる間に七咲が夕食の後片付けを終え、
入れ替わりで七咲が風呂に入った。
「覗かないでくださいね、橘先輩」
やっぱり言われると思ったよ。僕は変態じゃないのに!!
七咲の着替えられる場所がないので、七咲は風呂でパジャマに着替えたようだ。

橘「か、かわいい……」
七咲「えっ?あ。これ似合いますか?」
橘「そのパジャマすごく似合うよ!」
七咲「そ、そうですか。ありがとうございます」
橘「じゃ、じゃあ、明日に備えてそろそろ寝るか」
橘「と言っても、ベッドは一つしかないんだよな」
橘「七咲は僕のベッドを使ってよ。僕はリビングで寝るから」
七咲「え?それは先輩に悪いですよ」
七咲「先輩こそベッドを使ってください」
橘「何を言ってるんだ?大事な受験生を変な所で寝かせて……」
橘「風邪でもひかせたら僕はどう責任をとればいいんだ?」
七咲「でも、私も先輩に風邪をひいてほしくないです」
七咲「受験生ではないですが、先輩だって私にとって大事な人ですから」
橘「七咲……。でも一体どうすれば?」
七咲「簡単なことです。先輩、ここどうぞ」
橘「え!?な、七咲の……隣……だと??」
橘「1つのベッドに……男女2人。まさかとは思ったが本当にやるのか?」
七咲「嫌……ですか?」
橘「別に嫌じゃないんだけど、七咲はそれでいいの?」
七咲「はい。私は別に構いません。先輩がよければ」
橘「じゃ、じゃ、じゃあ、ここに寝るね」
七咲「は、はい」

まさかとは思ったが……
この展開は最初から予想していたが……
本当に実現してしまうとはな。
大学受験前夜に何やってるんだよ、僕らは……
ほ、本当にこんな甘い展開でよかったのだろうか……

橘「……」
七咲「……」
お互いに頬を赤らめる二人。
橘「な、七咲?」
七咲「は、はい。先輩」
橘「何か、すごく緊張するなぁ」
七咲「え、ええ。明日の受験が」
橘「そ、そっか。そうだよな」
七咲「は、はい」
橘(ど、どうしよう。この後って何話したらいいんだ!?)
橘(緊張し過ぎて頭が真っ白に)
橘(興奮し過ぎて眠れないよ)
橘「あ、あの、七咲」
七咲「はい」
橘「明日の面接は緊張するだろうけど、落ち着いて頑張るんだぞ」
七咲「はい。そうします」
橘「七咲の人柄の良さはみんなが認めているからな」
橘「塚原先輩、森島先輩、向井さんや他の水泳部員、高橋先生、それに僕も」
橘「その他大勢の人が応援してるからな」
橘「この前の向井さんとの会話を聞いてて思ったんだ」
七咲「はい」
橘「七咲のその優しさは周わりのみんなに向けられているんだなって」
橘「だから、きっと、面接官も一目見ただけで見抜いてくれるさ」
橘「自信持って頑張れよ」
七咲「先輩……。ありがとうございます」
橘「ううん。いいって」
七咲「……よかった」
橘「何が?」
七咲「私、実は不安で不安で仕方なかったんです」
七咲「先輩がそばにいてくれないとなかなか自信が持てなくて」
橘「七咲……」
七咲「だから無理を言って先輩のアパートに泊めさせてもらうことにしたんです」
七咲「試験前夜はものすごく不安で緊張して眠れなくなりそうだったので……」
七咲「先輩にそばにいてほしかったんです」
橘「七咲……そうだったのか。ごめんな、さっきはあんな適当なこと言っちゃって」
橘「七咲がそこまで不安だったなんてわからなかったから」
橘「それなのに僕と来たら、七咲にしては妙に自信なさそうとか言っちゃって……」
橘「ごめん。本当にごめん」
七咲「いえ、いいんです。あれはあれで励みに……」
いい終わらないうちに……
橘「七咲!」
七咲「あっ」
天井を向いていた七咲の顔を両手で僕の方に向けてそのまま唇にキスをした。
橘(こんなんで……許してもらえれば……)
七咲「ん……」
橘「これ、お詫びのつもりなんだけど……ど、どう……かな?」
七咲「……ダメですね。そんなんじゃ全然気持ちが伝わりません」
橘「え?じゃあ、どうすれば?」
七咲「お詫びと言うならもっとこうでなくちゃダメですよ」
今度は七咲から、先程よりも強く長いキスをした。
七咲「んん……」
橘(そうきたか!僕も負けないぞ)
僕の方が押されがちになっていたので、思いっきり強く押し返した。
七咲「んん……」
七咲も負けじと強く押し返してきた。
橘(それならもっと強く!)
七咲「んんん……んんん……」
橘(うっ、僕も息が苦しくなってきた。そろそろやめよう)
七咲「はぁはぁはぁ……」
橘「はぁはぁはぁ……あははは」
七咲「あははは」
橘「まったく、明日は大事な試験だってのに何やってんだよ?」
七咲「それは私のセリフです。先輩ったらいきなりキスをしてきて」
七咲「本当に、えっちな先輩ですね」
橘「あははは……」
七咲「笑い事じゃないです」
橘「ごめん、ごめん。でもさ、よく考えたら試験よりもこっちの方が緊張するよな」
七咲「あ……確かに。そう言われてみれば」
橘「だろ?試験よりも緊張することを平気でやっているっていうことは……」
七咲「明日の試験は案外楽かもしれませんね。クスッ」
橘「そういうこと。って、早く寝なきゃまずいぞ」
七咲「もう、先輩のせいで緊張して眠れません」
七咲「やっぱり先輩には変な所で寝てもらった方がよかったですね」
橘「馬鹿言え。風邪ひくじゃないか。あ、でもむしろ風邪ひいた方がいいのかも」
七咲「私は看病しませんよ。風邪ひきたいならどうぞ、ご勝手に」
橘「ひどい……」
七咲「冗談ですよ、クスッ。一緒に寝ましょう、先輩」
橘「一緒にって、ここもともと僕のベッドなんですけど」
七咲「そうでしたっけ?ま、いいです。別に」
橘「うう……。最後までしてやられたな」

こうして僕と七咲は試験前夜にちょっとだけえっちな馬鹿騒ぎをした。
本当、何やってるんだろう?


七咲推薦入試当日
7時
橘「ん……ああ。もう、朝かぁ」
橘「僕はいつの間に眠ってたんだろ?」
橘「あれ?そういえば、隣に寝ていた七咲がいつの間にかいなくなってる」
橘「しかも台所からはいいにおいが……七咲かな」

橘「七咲、おはよう」
七咲「あ、先輩。おはようございます」
七咲はすでに輝日東高校の制服に着替えていた。
橘「おっ!ご飯に目玉焼きに味噌汁……定番の朝ご飯だな」
七咲「冷蔵庫にあったもので作りました。先輩の分も用意したのでどうぞ」
橘「ありがとう。いただきます」
七咲「いただきます」
橘「昨日あんなことがあったのにお互いよく眠れたな?」
七咲「本当に不思議でした。私もいつの間にか眠っていました」
橘「どう?緊張はとれた?」
七咲「ええ。おかげさまで」
橘「ならよかった」
七咲「本当にえっちな先輩ですよ、まったく」
橘「あははは…」
七咲「ふふっ」
橘「こうして二人で朝ご飯を食べているとまるで新こ……」
七咲「あっ。受験の準備は大丈夫だったかな?」
橘「う……」
七咲「ん?今先輩何か言いました?」
橘「いえ。何でもありません」
七咲「ならいいです。クスッ」
橘(よくないよー!!)
七咲「さてと、それじゃ私はそろそろ行く準備をしますね」
橘「頑張れよ」
七咲「はい」

七咲「受験票は持った。面接だけど筆記用具もある」
七咲「他には……特に忘れ物なし」
橘「一緒に行くか?」
七咲「いえ。私一人で十分です」
橘「本当に大丈夫か?」
七咲「ええ。逆に先輩が一緒だと恥ずかしいです」
橘「……そっか。そうだよな」
橘(彼氏を連れて受験しに来る受験生がどこにいるんだよ??)
七咲「じゃ、行って来ます」
橘「……」
七咲が後ろを向いてドアを開けようとした、その時……
橘「待って」
七咲「はい?」
橘「忘れ物だよ」
七咲の振り向きざまに、七咲の唇に軽くキスをした。
七咲「あっ。ん……」
橘「……頑張れよ。行ってらっしゃい」
七咲「行ってきます」
七咲は少し照れているようだ。当たり前か。


こうして七咲を見送った。
この日は午前中に面接が終わり、午後ちょっとだけ七咲と街を散歩した。
本人曰く緊張せずに落ち着いて、いつも通りの七咲で面接に臨んだようだ。
やっぱり昨夜のアレが効いたのだろうか。うん、きっとそうだ。
七咲のお役に立てて僕は光栄だ。
そして、受験を終えた七咲は再び輝日東へと戻って行った。
別れ際にまたキスをした。
七咲が合格しているといいな。うん、七咲なら合格してるだろう。
そう信じて僕は合格発表の日を待つことにした。



第16話に続く。

2010-06-22

第14話「先輩、私2度目のインターハイ頑張ります」

季節は過ぎ、大学の試験も無事に終わり、夏休みに入った。
僕は勉強して何とかすべての試験科目を合格した。たぶん。
でも、松原と華村は……。

松原「ちくしょうううううううう!!」
華村「何で俺が不合格なんですか!?」
橘「そんなもん、勉強しなかったからに決まってるじゃないか」
松原「よく言うよ。自分は勝ち組のくせしやがって!」
橘「勝ち組?僕が?」
華村「精神的に支えてくれる彼女がいる奴はうらやましいよなぁ」
橘「精神的に支える?馬鹿を言っちゃいけない……」

回想
試験数日前の夜
橘しゅうのアパート
七咲と電話している。
七咲「先輩。アルバイトもいいですが、ちゃんと勉強してますか?」
橘「う……」
七咲「……してないんですね?はぁ」
橘「ご、ごめん」
七咲「いいですか?もし先輩が留年でもしたら、その時は絶交ですからね」
橘「え?ぜ、絶交だと……??」
七咲「はい。留年すると余計学費がかかりますよね」
橘「ああ。当然だな……」
七咲「……ただでさえ苦しい家計なのに、先輩の留年のせいで余計苦しくなったら困ります」
橘「そ、そう……だな。わかった、次の試験頑張ってみるよ」
七咲「はい。期待してます!」
橘「うう……」

橘「精神的に支えるどころか、余計プレッシャーを与えてくれたよ、まったく」
橘「絶交なんてことがないように頑張らなきゃいけない」
松原「……」
華村「……」
橘「ん?どうした?」
松原「……行こうぜ」
華村「……ああ」
橘(僕、何かまずいことでも言ったかな?)



その日の夜
橘しゅうのアパート
七咲と電話している。
橘「……でさあ、何とか全部合格できたと思う」
七咲「お疲れ様です。先輩、頑張ったんですね」
橘「誰かさんが絶交とか言うもんだから……」
七咲「クスッ、誰が言ったんでしょうね」
橘「……」
橘(またとぼけて……七咲らしいな)
七咲「それはそうと、先輩。夏休みの予定は?」
橘「ああ、ごめん。夏休みは帰れそうにない」
七咲「アルバイトですね」
橘「うん。まだ全然足りないからな。夏休みが稼ぎ時なんだ」
七咲「頑張ってください」
橘「うん」
橘「七咲の予定は?」
七咲「はい。8月の中旬にまたインターハイがあります」
橘「どこ?」
七咲「えっとですね……」

橘「え?それって僕んちのすぐ近くじゃないか!?」
七咲「はい」
橘「よし、今年も応援に行くよ!!」
七咲「え?でもアルバイトは……」
橘「店長に頼んで日程を変更してもらうよ」
橘「だって、これは七咲にとって大事な大会だもんな。行くに決まってる!」
七咲「ありがとうございます」
橘「この大会で8位以内になれば、特殊な推薦が狙えるんだろ?」
七咲「ええ。ちょっと日程は急ですが、インターハイで入賞して……」
七咲「その3日後までに出願すれば試験を受けられます」
橘「ずいぶん急な話だなぁ」
七咲「そうですね」
橘「試験って……書類と面接だっけ?」
七咲「はい。それでもう10月の頭には合否がわかるそうです」
橘「早いなぁ。そしたらさ、僕といっぱい遊べるじゃないか!」
橘「頑張ろうよ!僕も絶対に応援に行くから」
七咲「来てもいいですけど……」
橘「けど?」
七咲「またあんな大声出さないでくださいね」
七咲「恥ずかしくて余計集中できなくなります」
橘「う……うん。気を付ける」
七咲「はい。そうしてください。クスッ」
橘「それじゃ、お互いに頑張ろうな」
七咲「ええ。もちろんです」



8月中旬
インターハイ当日
12時
インターハイ会場
橘(よし、会場に到着したぞ)
七咲たち輝日東高校水泳部の一行は前日にホテルに泊まって、すでに会場入りしている。
輝日東高校水泳部女子は、部長の七咲を含め……
3年生5名、2年生4名、1年生1名の計10名が出場する。
たった1名だけ出場する1年生は、前に七咲が言っていた練習熱心な子で、名前は向井るり。
去年は直前まで他校志望だったらしいが、インターハイでの七咲の勇姿を見て……
七咲に憧れて輝日東高校に入学したらしい。
そして七咲の熱心な指導で徐々に1年生の中で頭角を現し……
1年生でたった一人、インターハイの代表に選ばれた。
七咲同様、彼女も将来有望なアスリートと言えるだろう。
「先輩。私だけじゃなくて向井さんや他の部員もちゃんと応援してあげてくださいね」
と、七咲に言われたので、そうすることにした。


13時
競技開始!
まずは100m自由形予選。
1年生が最初で、次に2年生、最後に3年生という順に行われた。
向井さんは序盤から独走し、その組のトップとなった。
七咲も負けていない!同様に序盤から独走し、その組のトップとなった。
しかも皮肉にも二人と同じ組に松原・華村の出身高校の選手がいた。
またあいつら悔しがるんだろうな。いい気味だ。
そして決勝。
決勝では学年関係なく組まれる。
七咲、向井さんの他に、3年生1名、2年生1名が残る。
七咲と向井さんは何と、同じ組で競うことになった。
運命のいたずらってやつだろうか。
開始の合図で二人はほぼ同時に発進する。
七咲は2位の他校の選手と頭一つ分の差をつけてトップで泳ぐ。
対する向井さんは2位の他校の選手と頭一つ分の差で3位で泳ぐ。
結果は七咲がそのままトップを譲らずゴールした。
向井さんも3位をキープした。
他の組と合わせ、最終的な結果は七咲が見事に優勝……
向井さんは惜しくも4位に終わった。
しかし、入学早々インターハイ4位というのは大したものだ。
彼女は七咲以上の実力の持ち主かもしれない。

続いて400mリレー。
七咲と3年生2人、それに向井さんの4人組で行う。
50mプールを4人が1往復ずつする。
七咲がトップとアンカーを担当し、他の3人が間を繋ぐ。
七咲の独走でトップに立ち、その後もトップを維持した輝日東高校だったが……
最後から2番目の向井さんが突然失速する。
何と、頑張りすぎて足がつったらしい。
2人に抜かれて輝日東高校はピンチに陥る。
それでも向井さんはみんなに迷惑をかけまいと懸命に泳ぎ……
3位でアンカーの七咲に繋いだ。
彼女の必死さが伝わり、七咲が懸命に追い上げようとする。
ついにトップに並ぶが、タッチの差で輝日東高校は準優勝に終わった。
去年と同じく準優勝だった。
責任を感じてその場で泣き崩れる向井さん……。
それを慰める七咲や他の部員たち。
本当に輝日東高校は温かいんだなと思った。


そしてインターハイは終了した。
時刻はもう16時だ。
七咲に逢いに行った僕だが、そこで目にしたものは……
橘(あ……七咲のそばにいるのって向井さんじゃないか)
橘(今は声をかけない方がいいな。ここで様子を伺おう)

向井「ぐすっ。ぐすっ。七咲先輩……ごめんなさい」
向井「私、個人でも4位だったし、団体ではみんなの足を引っ張ってしまいました」
向井「アンカーの七咲先輩に……本当に申し訳ないと思っています」
七咲「……」
七咲はそっとハンカチを彼女に渡す。
向井「え?」
七咲「それを使って」
向井「ありがとうございます。ぐすっ。ぐすっ」
七咲「足、まだ痛む?大丈夫?」
向井「大丈夫です。いたっ」
七咲「ちょっとそこに座って」
向井「はい」
七咲が丁寧に向井さんのふくらはぎのケアをしてあげる。
七咲「こんなに腫れて……よく頑張ったね」
向井「え?いえ、私は全然」
七咲「ううん。よく頑張った。偉いと思う」
七咲「だって私なんか1年生の時は地区大会止まりだったから」
向井「そうだったんですか?」
七咲「うん。だからこの結果にもっと誇りを持って」
向井「でも私、リレーではみんなの足を引っ張ってしまいました」
向井「せっかく七咲先輩が作って下さったリードを私が無駄にして……」
向井「アンカーの七咲先輩に負担をかけてしまいました」
向井「私は憧れの七咲先輩に何も恩返しができませんでした」
向井「本当に……本当に……ご迷惑をお掛けしました」
七咲「ううん。迷惑なんかじゃない!」
向井「え?」
七咲「このふくらはぎを見ればわかる。一生懸命頑張ってくれたんだなって」
七咲「こんなになるまで全力で頑張ってくれたんだなって」
七咲「だから私がアンカーとして何としても取り返してあげようと思った」
七咲「向井さんの努力を無駄にしないように私がやるしかないって思った」
向井「先輩」
七咲「でも、惜しかったな。タッチの差で負けちゃった」
向井「先輩……」
七咲「だから、泣くのはやめて。ほら、笑って」
向井「先輩!はい!わかりました。ありがとうございます」
向井さんは七咲の言葉を受けて、涙を拭いて、精一杯笑ってみせる。
七咲「そう。その笑顔。大切にね」
向井「はい!」
七咲「立てる?」
向井「はい!!」
橘(七咲……まるで向井さんのお母さんみたいだな)
橘(塚原先輩みたいにすごく温かい雰囲気を感じる)
橘(本当に、誰に対しても優しいんだな)
向井「あ。何だか足が楽になりました」
七咲「うん。ストレッチしておいたから。楽になったはず」
向井「七咲先輩、何から何まで本当にありがとうございました」
向井「一緒の舞台に立てたこと、誇りに思います。それでは、失礼します」
七咲「うん。また後でね」
向井「はい」
向井さんは嬉しそうに去っていく。
橘「へぇ、優しいんだな」
七咲「あ、先輩。見てたんですか?」
橘「うん。邪魔しちゃ悪いと思って物陰からこっそりと」
七咲「ふふっ。また覗きですか?」
橘「ち、違うよ。真面目に言ったんだ!!」
七咲「冗談ですよ、クスッ」
橘「もう……人聞きの悪い冗談だな……」
橘「あ、それはそうと、お疲れ様。そして連覇おめでとう」
七咲「ありがとうございます」
橘「これで、受験資格が得られたね」
七咲「はい。急いで願書を書かなければなりませんね」
橘「どうする?この後どこか寄る予定ある?」
七咲「そうですね……帰りのバスまでまだ時間があるので……」
七咲「ちょっとこの辺を散歩でもしましょうか」
橘「うん。そうしよう」


16時半
インターハイ会場周辺
橘「さっきの向井さんって子……本当に努力家なんだな」
七咲「ええ。彼女は間違いなく努力家です」
橘「まるで2年前の七咲みたいだ」
七咲「いえ。彼女は私以上ですよ」
橘「そうか?」
七咲「ええ。本当に……私以上です」
橘「……」
七咲「部活の合間に彼女から聞きました」
七咲「彼女は、本来は地元の高校に行く予定だったそうです」
七咲「当時の彼女には明確な将来の夢がなかったので……」
七咲「両親の勧めで地元の高校に通うはずでした」
橘「それが去年のインターハイの七咲を見て考えが変わったんだろ?」
七咲「はい。彼女曰く、私が他の選手よりもすごく輝いて見えたそうです」
七咲「何でって聞いたら……」
七咲「よくわからないけど他の選手よりもすごく努力しているんだなってわかった……」
七咲「と彼女は答えました」
橘「うーん。他校の選手のことは僕にもよくわからないけど……」
橘「七咲がすごく努力しているっていうのは、そばにいる僕が一番よくわかる」
七咲「ええ。でも、当時の彼女には一生懸命打ち込めるものがなかったそうです」
七咲「だから、一生懸命何かに打ち込むことで得られる快感がわからなかったんだと思います」
七咲「友達に誘われて仕方なく見に来たインターハイで……」
七咲「私の泳ぎを見てすごく魅せられたそうです」
七咲「この人みたいに水泳を頑張ってみたい……」
七咲「何か努力したことで得られる快感を味わいたい……」
七咲「そう思ったそうです」
橘「いい話じゃないか!」
七咲「ええ。私が頑張ったことで触発された人がいたんだなってわかって嬉しかったです」
橘「うん。そうだな。でもさ」
七咲「はい」
橘「地元の高校じゃなくて輝日東高校を受験することになって……」
橘「彼女の両親はどうしたんだ?」
七咲「はい。それが……彼女の両親は一応賛成したそうです」
橘「よかったな」
七咲「でも、条件付きで、部活で結果が出せなかったら即退学させると言われたそうです」
橘「は?ひどい話だな。でも、こうやって結果が出せたからよかったな」
七咲「ええ。私が責任をもって彼女の夢を叶えてあげられたので……」
七咲「これで安心して輝日東高校水泳部を引退できます」
橘「さっき向井さん……七咲に恩返しできなかったって言ってたけど……」
橘「僕は違うと思うな」
橘「彼女が七咲の後継者となって輝日東高校水泳部を引っ張っていくことこそ……」
橘「七咲への最高の恩返しだと思う」
七咲「はい。私もそう思います」
七咲「そう考えると私も塚原先輩に最高の恩返しができたんでしょうか?」
橘「もちろんだよ。だって七咲は塚原先輩に続いてインターハイで2連覇したんだし」
橘「これ以上の恩返しはないと思うよ」
七咲「先輩……」
橘「後は……僕への恩返しだけかな」
七咲「え?橘先輩に……ですか?」
橘「うん。必ず、合格しろよ。じゃなきゃ何のためのアルバイトか……」
七咲「クスッ。そうでしたね。私頑張ります」
橘「うん。僕も頑張りながら応援してるから」
七咲「はい。あ……そろそろ行かなくてはいけません」
橘「もうそんな時間か。早いなぁ。気を付けて輝日東に帰れよ」
七咲「はい。それじゃ、失礼します」


こうして汗と涙の熱いインターハイは終わった。
七咲たち輝日東高校水泳部一行もまたバスで輝日東へと帰って行った。
会場に一人残された僕はこのままここにいても寂しいので……
さっさとアパートへ帰ることにした。

次に七咲と逢えるのは受験なのかな?いや、無理か。
さすがに受験の時くらい僕のアパートじゃなくてホテルに泊まるよな、きっと。
しかし、後日七咲から電話がかかってきて……
意外にも、宿泊代を節約するために僕のアパートに泊まりたいと言って来た!
さあ、受験の前夜は一体どんな夜になるのだろうか?



第15話に続く。

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